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弓屋 晶都

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第3話 嘘と事実と友達 (3/6)

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皆とDtDの中で待ち合わせをする。
アイカのお兄ちゃんのギルドが拠点にしてるという広い村があるワールドの、花畑に4人で集まった。
ひまりは玲菜も誘っていたが「やる気ないから」とバッサリ断られていた。

4人で村の中にある花畑に座って話していると、なんだか学校にいる時みたいだ。
ひまりは魔法使い、遥は商人だった。
アイカはご自慢のメイド服で職業がよく分からなかったけど、魔法使いらしい。
私も弓手だし、後衛ばっかりだなぁ。
商人……は、前衛に数えるんだろうか?

そんな私たちの横を、ふわふわの雲兎が通る。
街や村の中にはモンスターは出ないので、あれは誰かのペットだろう。
「私もペット欲しいなー」
アイカの言葉に、ドキッと心臓が跳ねる。
きなこもちのことは内緒にしといた方がいいよね……。
「あー、私も思ったー」と遥がコクコク頷くマークを出しつつ同意する。
「でも、ペットって捕まえるアイテムも高いし、維持費もかかるんだよねー」
「そうなの?」
「そーそー、あのふわふわの兎捕まえるやつ10万レルだったーっ」
「うわぁ」
「高!」
「高いねー」とその話に乗りながら、私は内心首を傾げる。
それならどうして、あの時私はきなこもちをペットにできたんだろう。
そんなアイテムは何も持ってなかったはずなのに……。
「じゃあせっかくだし、お金と経験値を稼ぎに、ひと狩り行きますか!」
そう言って立ち上がるアイカにひまりが突っ込む。
「それ違うゲームっしょ」
あははと盛り上がる私たちだったけど、楽しかったのはここまでだった。

アイカが作ったパーティーに3人で入り、同じワールド内のアイカのおすすめ狩場に行ってみる。
でもそこは魔法使いに向いたマップで、敵はすごく足が遅いけど叩かれると一撃が即死に近くて、商人の遥が死にまくってしまった。
私も2回、逃げきれずに追いつかれて殺される。
遥は逃げ惑うばかりだし、ほとんどひまりとアイカだけが倒している状態に2人がイライラし始めて、ひまりと遥のレベルが2つ上がったところで別の初心者用ワールドに移動した。
こちらは少々叩かれても大丈夫な、スライムがいっぱい湧くマップだった。
それでも、4人の中でレベルの高い私たち2人も壁役ができるほどの体力はないので、結局は皆それぞれが各自で叩く。
「あーっ。もう魔法出ないーっ」
ひまりが回復のために座り込む。
「ポーション無くなったーっ」
遥はこっちのマップでも大変そうだ。
「みさきつっよ!」
「あ、これスキルなんだ」
そのうち、商人の遥がペチンと叩いた敵を連れて逃げ回るところを、2人の魔法と私の矢で倒す形になった。
「待って待って!」
「こっちこないでーっ!!」
「もーっ、遥もうちょっとぐるーっと回ってよ!!」
「みさき、早く倒しちゃって!」
「動いてると、なかなか当たんないーっ」
その上4人で経験値を分け合っているだけあって、10匹倒しても20匹倒してもなかなか経験値が上がらない。
自分たちだけでやると、レベルってこんなに上がりにくいものだったんだ……。
私は、自分がいかにカタナに楽をさせてもらっていたのか痛感した。
そのうち、アイカがもうちょっと奥に行こうと提案して、結果、皆でボスに遭遇して全滅してしまった。
「あはははは、全滅ーーっっ!!」
楽しそうなアイカに、ひまりが怒る。
「何笑ってんのよーっっ!! アイカがもうひとマス向こうに魔法壁出してくれてたら大丈夫だったっしょっっ!?」
「えー? 私のせいじゃないしー、ひまりが魔法打つの遅いからだしー」
「これで精一杯っしょーーーっっ!!」
この揉め揉めの全滅のシーンは遥がスクショを撮っていて、後から送ってくれた。
結局、その後もレベルの不相応な場所に行って3回全滅してしまったけど、ひまりと遥のレベルが何とか一つずつ上がると、今日の狩りはもうここまでということになって寝るまで花畑で一時間くらいダラダラ話をして解散した。

私は、みんながログアウトしたのを確認して、そっとパーティーを抜けるとセーブポイントに飛んだ。
Eサーバーのワールドセレクトルーム。
この、どこまでも続く草原の、静かな雰囲気にホッとする。
フレンドリストを開くと、カタナとGMさんはオンラインだった。
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