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第一話 消えた写真と私のヒミツ (2/4)
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うーん、千山くんってちょっと苦手だなぁ……。
去年から部活で一緒なんだけど、なんか私時々にらまれるんだよね。
何でだろう……。
「さようなら」の声が響いて、三組の人たちがどっと廊下に溢れる。
「さーちゃん!」私が手を振ると、咲歩は小さく手をあげて駆け寄ってきた。
「みこちゃん。お待たせしてしまってすみません」
「へーきへーき。何かあったの? 写真がどうとか言ってたけど……」
「ああ、それが……」
咲歩の話では、朝の会で注文者全員に配られた写真を、帰りにランドセルに入れようと思ったら無くなっていたらしい。
「確かに受け取って、机の道具かごに入れたはずなんですが、おかしいですね……」
咲歩が不思議そうに首を傾げる。
「もう一回探してみる?」
私が咲歩と一緒に咲歩の机を覗き込むと、机の向こうに人影が……。
「!?」
顔を上げると、そこには千山くんが立っていた。
「ちやまくんっ!?」
「……なんだよ」
千山くんはやっぱり私をギロっと睨んでそう言った。
いや、なんだってのはこっちのセリフなんじゃないかな。
「な、何してるの?」
「写真、探してるんなら俺も手伝う」
「ありがとうございます」
咲歩がぺこりと頭をさげる。
私たちは三人で、教室を隅から隅まで探した。
「どこにもないね……」
「そうですね……」
そこに見回りに来たのか教頭先生が顔を出す。
「君たち、今日は一斉下校だ。もう帰りなさい」
うーん仕方ない。今日のところは帰りますか。
私たちは顔を見合わせると「はーい」と返事をした。
「くそっ、疑われたままとか気分悪ぃ……」
靴をはきながら千山くんが呟いている。けどその音量は独り言には大きすぎないかな。
「すみません、私のせいで……」
「別に、内野さんがあやまることじゃねーよ」
それなら千山くんはもっと小さい声で呟いてほしい。
「あ、俺家こっちだから。またな」
校門を出たところで、千山くんはそう言って片手をあげた。
「今日はありがとうございました」
ぺこりと咲歩が頭を下げる。
「別に、俺なんも役に立ってねーし、礼はいーよ」
なんか千山くんって、咲歩が謝っても礼を言っても断ってない?
当の咲歩は全く気にしてなさそうだけど。
ともかくよかった。家の方向が違って。
千山くんとずっと一緒にいたら、さらに千山くんが苦手になりそうだったし。
私がホッとして千山くんに背を向けると、背中にでっかい声がかかった。
「写真、早く見つかるといいな!」
犬の散歩をしていたおばちゃんも、エコバッグを下げたおじちゃんも、自転車の人まで振り返っている。
いや、そんなキリッと手を上げられても反応に困るんだけど。
隣を見れば、咲歩はちょっぴり恥ずかしそうにしながらも手を振り返していた。
その時、咲歩のランドセルの横で揺れる白いフェルトのマスコット、ぷっぷちゃんが目に入る。
そうだ。咲歩のランドセルは今日もずっと教室のロッカーにあったはず。
それなら、このぷっぷちゃんはずっと教室を見ていたんじゃない?
とはいえ私はまだ誰にも……、親友の咲歩にもこのヒミツを話してない。
私が、ぬいぐるみに命を吹き込むことができるのも。その方法も。
「みこちゃん? どうかしたんですか?」
咲歩に言われて、私は慌てて顔を上げる。
そりゃ私にじーーっと背中を見つめられたら咲歩も気になるよね。
「え、えーっと……」
どうしよう、何て言えば……。
その時、ぷっぷちゃんのお腹側の糸がほつれてぴょろりと伸びているのに気付いた。
これだ!
「ぷっぷちゃんがちょっとほつれちゃってるみたいだから、気になっちゃって……」
あはは、と笑いながら私が言うと、咲歩は「えっ、そうなんですか?」とおどろいた顔をした。多分。
去年から部活で一緒なんだけど、なんか私時々にらまれるんだよね。
何でだろう……。
「さようなら」の声が響いて、三組の人たちがどっと廊下に溢れる。
「さーちゃん!」私が手を振ると、咲歩は小さく手をあげて駆け寄ってきた。
「みこちゃん。お待たせしてしまってすみません」
「へーきへーき。何かあったの? 写真がどうとか言ってたけど……」
「ああ、それが……」
咲歩の話では、朝の会で注文者全員に配られた写真を、帰りにランドセルに入れようと思ったら無くなっていたらしい。
「確かに受け取って、机の道具かごに入れたはずなんですが、おかしいですね……」
咲歩が不思議そうに首を傾げる。
「もう一回探してみる?」
私が咲歩と一緒に咲歩の机を覗き込むと、机の向こうに人影が……。
「!?」
顔を上げると、そこには千山くんが立っていた。
「ちやまくんっ!?」
「……なんだよ」
千山くんはやっぱり私をギロっと睨んでそう言った。
いや、なんだってのはこっちのセリフなんじゃないかな。
「な、何してるの?」
「写真、探してるんなら俺も手伝う」
「ありがとうございます」
咲歩がぺこりと頭をさげる。
私たちは三人で、教室を隅から隅まで探した。
「どこにもないね……」
「そうですね……」
そこに見回りに来たのか教頭先生が顔を出す。
「君たち、今日は一斉下校だ。もう帰りなさい」
うーん仕方ない。今日のところは帰りますか。
私たちは顔を見合わせると「はーい」と返事をした。
「くそっ、疑われたままとか気分悪ぃ……」
靴をはきながら千山くんが呟いている。けどその音量は独り言には大きすぎないかな。
「すみません、私のせいで……」
「別に、内野さんがあやまることじゃねーよ」
それなら千山くんはもっと小さい声で呟いてほしい。
「あ、俺家こっちだから。またな」
校門を出たところで、千山くんはそう言って片手をあげた。
「今日はありがとうございました」
ぺこりと咲歩が頭を下げる。
「別に、俺なんも役に立ってねーし、礼はいーよ」
なんか千山くんって、咲歩が謝っても礼を言っても断ってない?
当の咲歩は全く気にしてなさそうだけど。
ともかくよかった。家の方向が違って。
千山くんとずっと一緒にいたら、さらに千山くんが苦手になりそうだったし。
私がホッとして千山くんに背を向けると、背中にでっかい声がかかった。
「写真、早く見つかるといいな!」
犬の散歩をしていたおばちゃんも、エコバッグを下げたおじちゃんも、自転車の人まで振り返っている。
いや、そんなキリッと手を上げられても反応に困るんだけど。
隣を見れば、咲歩はちょっぴり恥ずかしそうにしながらも手を振り返していた。
その時、咲歩のランドセルの横で揺れる白いフェルトのマスコット、ぷっぷちゃんが目に入る。
そうだ。咲歩のランドセルは今日もずっと教室のロッカーにあったはず。
それなら、このぷっぷちゃんはずっと教室を見ていたんじゃない?
とはいえ私はまだ誰にも……、親友の咲歩にもこのヒミツを話してない。
私が、ぬいぐるみに命を吹き込むことができるのも。その方法も。
「みこちゃん? どうかしたんですか?」
咲歩に言われて、私は慌てて顔を上げる。
そりゃ私にじーーっと背中を見つめられたら咲歩も気になるよね。
「え、えーっと……」
どうしよう、何て言えば……。
その時、ぷっぷちゃんのお腹側の糸がほつれてぴょろりと伸びているのに気付いた。
これだ!
「ぷっぷちゃんがちょっとほつれちゃってるみたいだから、気になっちゃって……」
あはは、と笑いながら私が言うと、咲歩は「えっ、そうなんですか?」とおどろいた顔をした。多分。
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