14 / 29
第三話 二回目の犯行予告と意外な一面 (3/5)
しおりを挟む
***
二時間目の中頃、教室にやってきた教頭先生を見て、そういえばあの日もこんな風に教頭先生が各教室を回ってたな。とぼんやり思う。
三時間目が自習になったのも先週と一緒だけど、今日は算数の時間だった。
ってことは先週とは曜日が違うって事だよね。
今日は木曜日だけど、前回はえーっと……。
「先週の火曜と同じ感じじゃない?」
「また爆弾予告とか?」
「でも結局どこの小学校も爆弾とか無かったよね」
「俺たちが知らねーだけで、どっかで爆発してたとかあんじゃねーの?」
テレビではそんなニュースは見なかったし、そもそも先週の爆破予告のことだってテレビのニュースにはなってなかった。
世の中の事って、実はあんまりテレビではわかんないのかも知れないなぁ。
そんな事をぼんやり考えていたら、先生が戻ってきた。
前回よりも早い気がする。
算数のドリルはまだ二問目までしか解けてない。
「また、前と同じような予告状が市役所に届いたそうです。どうやら他県でも同じような予告状が届いているらしくて、今日は警察のパトロールと地域の方の見守りが出てくださいますが、下校時刻は変わりません」
沢田先生はいつも通りの声で、一息に説明した。
「やっぱり」とか「またかー」とか「どーせいたずらだよ」といった声でクラスがざわつく。
先生は「下校中、何か不審なものを見かけたら、触らずにすぐ先生や保護者の方に知らせてください」と前と同じような注意をしていた。
今日はせっかくセオルを連れてきたのにな。
放課後残っていたら、先週みたいに注意されちゃうんだろうな。
「爆弾ってどんなのかな」
「原子爆弾だろ!」
「そんなの個人じゃ持ってないよ」
「だってあちこちの小学校で……」
今日は一日中、あちこちで爆弾の話が飛び交っていたけど、不思議と本当に怖がっているような声は聞こえてこなかった。
みんな心のどこかで、自分たちは大丈夫だって、自分たちの学校は選ばれないだろうって思ってるみたいだ。
「でも私も、なぜか皆と同じでそんな風に思えちゃうんだよね。安心だと思っていい理由なんて、どこにもないのに不思議だよね」
帰りの会が終わって、皆が帰っていくのを見送りながら私はそう呟く。
私の呟きに、背中に背負ったランドセルの中からセオルが小さい声で答えた。
「それは、正常性バイアスと同調性バイアスのせいだね」
「セージョーセー……なに?」
少し遅れて、咲歩の三組からもぞろぞろと人が出てくる。
私は人が途切れるのを待ってから、咲歩のところに向かった。
「どちらも心が自分を守るための正しい機能だよ。予告状くらいたいした事じゃない、と危険や不安を過小評価することで安心しようとするのが正常性バイアス。誰も爆弾が怖いって逃げ出さないから、皆同じように授業を受けてるんだから自分も大丈夫だと安心させてくれるのが同調性バイアス」
「面白い話をしているんですね」
咲歩の隣まで行くと、咲歩は嬉しそうにそう言った。
「そう言われたら、確かに……。本当は、爆弾が仕掛けられてる可能性があるなら、すぐ学校から帰るのが良いんじゃないのかな」
「その通りだよ。さすがはマイレディ。バイアスに惑わされる事なく、よく正解に気付いたね」
ランドセルの蓋を開けると、セオルが決めポーズっぽいポーズで私に向かって手を差し伸べてきた。
「きゃーっ、セオル様のそのポーズは! 真実に辿り着いた時のポーズ!!」
「えっ、なに? ポーズにもいちいち名前がついてるの?」
「そうですよっ。私は全シリーズ全ポーズコンプリートしてますからねっ」
そういう収集要素があるんだ……?
咲歩はちょっとドヤ顔してるみたいだ。
「ふふ、ありがとう。咲歩さんはボクの事を本当によく知ってくれているね」
セオルに微笑まれて、咲歩が激しく動揺している。
「そそそそんなっっ、わ、私なんて、まだまだですぅぅっ」
確かにゲームのセオルはイケメンかも知れないけど、このセオルぬいぐるみはランドセルに六人くらいは詰め込めそうなサイズだし、ぬいぐるみなだけあって顔は丸っとしている。
それでもそんなにときめけるって、恋する乙女はすごいなぁと思う。
……これは、千山くん負けちゃうんじゃないの?
このちっこいぷにっとしたセオル様に。
二時間目の中頃、教室にやってきた教頭先生を見て、そういえばあの日もこんな風に教頭先生が各教室を回ってたな。とぼんやり思う。
三時間目が自習になったのも先週と一緒だけど、今日は算数の時間だった。
ってことは先週とは曜日が違うって事だよね。
今日は木曜日だけど、前回はえーっと……。
「先週の火曜と同じ感じじゃない?」
「また爆弾予告とか?」
「でも結局どこの小学校も爆弾とか無かったよね」
「俺たちが知らねーだけで、どっかで爆発してたとかあんじゃねーの?」
テレビではそんなニュースは見なかったし、そもそも先週の爆破予告のことだってテレビのニュースにはなってなかった。
世の中の事って、実はあんまりテレビではわかんないのかも知れないなぁ。
そんな事をぼんやり考えていたら、先生が戻ってきた。
前回よりも早い気がする。
算数のドリルはまだ二問目までしか解けてない。
「また、前と同じような予告状が市役所に届いたそうです。どうやら他県でも同じような予告状が届いているらしくて、今日は警察のパトロールと地域の方の見守りが出てくださいますが、下校時刻は変わりません」
沢田先生はいつも通りの声で、一息に説明した。
「やっぱり」とか「またかー」とか「どーせいたずらだよ」といった声でクラスがざわつく。
先生は「下校中、何か不審なものを見かけたら、触らずにすぐ先生や保護者の方に知らせてください」と前と同じような注意をしていた。
今日はせっかくセオルを連れてきたのにな。
放課後残っていたら、先週みたいに注意されちゃうんだろうな。
「爆弾ってどんなのかな」
「原子爆弾だろ!」
「そんなの個人じゃ持ってないよ」
「だってあちこちの小学校で……」
今日は一日中、あちこちで爆弾の話が飛び交っていたけど、不思議と本当に怖がっているような声は聞こえてこなかった。
みんな心のどこかで、自分たちは大丈夫だって、自分たちの学校は選ばれないだろうって思ってるみたいだ。
「でも私も、なぜか皆と同じでそんな風に思えちゃうんだよね。安心だと思っていい理由なんて、どこにもないのに不思議だよね」
帰りの会が終わって、皆が帰っていくのを見送りながら私はそう呟く。
私の呟きに、背中に背負ったランドセルの中からセオルが小さい声で答えた。
「それは、正常性バイアスと同調性バイアスのせいだね」
「セージョーセー……なに?」
少し遅れて、咲歩の三組からもぞろぞろと人が出てくる。
私は人が途切れるのを待ってから、咲歩のところに向かった。
「どちらも心が自分を守るための正しい機能だよ。予告状くらいたいした事じゃない、と危険や不安を過小評価することで安心しようとするのが正常性バイアス。誰も爆弾が怖いって逃げ出さないから、皆同じように授業を受けてるんだから自分も大丈夫だと安心させてくれるのが同調性バイアス」
「面白い話をしているんですね」
咲歩の隣まで行くと、咲歩は嬉しそうにそう言った。
「そう言われたら、確かに……。本当は、爆弾が仕掛けられてる可能性があるなら、すぐ学校から帰るのが良いんじゃないのかな」
「その通りだよ。さすがはマイレディ。バイアスに惑わされる事なく、よく正解に気付いたね」
ランドセルの蓋を開けると、セオルが決めポーズっぽいポーズで私に向かって手を差し伸べてきた。
「きゃーっ、セオル様のそのポーズは! 真実に辿り着いた時のポーズ!!」
「えっ、なに? ポーズにもいちいち名前がついてるの?」
「そうですよっ。私は全シリーズ全ポーズコンプリートしてますからねっ」
そういう収集要素があるんだ……?
咲歩はちょっとドヤ顔してるみたいだ。
「ふふ、ありがとう。咲歩さんはボクの事を本当によく知ってくれているね」
セオルに微笑まれて、咲歩が激しく動揺している。
「そそそそんなっっ、わ、私なんて、まだまだですぅぅっ」
確かにゲームのセオルはイケメンかも知れないけど、このセオルぬいぐるみはランドセルに六人くらいは詰め込めそうなサイズだし、ぬいぐるみなだけあって顔は丸っとしている。
それでもそんなにときめけるって、恋する乙女はすごいなぁと思う。
……これは、千山くん負けちゃうんじゃないの?
このちっこいぷにっとしたセオル様に。
1
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる