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第31話 また人生終わったっぽい
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「ウィルフォード・リヒトリーベだな。貴様は地球上のフライハルト共和国とヒメルケンツ王国の国境で十二月四日に死亡した。これから裁判を行う。立て」
あれ、この状況、すごくデジャヴなんですけど。地鳴りのような声にも聞き覚えがある。声がした方を見上げると、牛久大仏並みの巨体をした閻魔様がいた。
「あ、どうも、お久しぶりです」
見知った顔だったものだから、初対面の時に感じた恐怖はなく、なんとなく懐かしい気持ちになる。
「なんて呑気な顔をしている。これから貴様の裁判を行うのだぞ?」
「あ、はい、そうですよね」
再びここへ来ているということは、僕は死んだってことだよね。意識を失う直前に、歌を歌い切ったことはかろうじて覚えていた。あとは、歌の力で、エルフの里が再生してくれればいいんだけど。
それに、死ぬ直前に自覚した、ルドへの気持ちを思い出す。今まで、異性としか関係を持ってこなかったから、まさか同性に対してこんな気持ちを抱くとは考えつかなかったが、ルドに感じる胸の痛みや、心臓の高鳴りは、つまり、そういうことだったんだ。
今となっては、この気持ちを本人に伝えることはできない。だけど、自分にもそういう感情を持つことができると分かって、嬉しかった。
後は、ルドとエタとハインツさんが、手を取り合ってとは言わなくても、お互いに命のやり取りをすることなく、無事生きていって欲しいと願うばかりだ。
「聞いているのか? 貴様は地球上のフライハルト共和国とヒメルケンツ王国の国境で十二月四日に死亡した。これから裁判を行う。立て!」
「は、はいっ!」
おっといけない。閻魔様を怒らせてしまうところだった。慌てて立ち上がり、ふと違和感に気づいた。今、閻魔様、『地球』て言わなかった?
「あの~閻魔様、裁判の前に、一つ質問してもよいでしょうか」
「構わん」
「今『地球』と仰ったように聞こえましたが、僕が転生する前にいた場所も『地球』でした。転生前後の世界は、同じ地球にあるのでしょうか」
「転生前の世界は『地球』と呼ばれている。転生後の世界は『地球』だ。同じ字だが、発音が違う」
「はぁ……」
誰だよそんな名前つけたの。ちょっと適当すぎないか。
「そんなことは些細なことだ。それよりも、裁判を始めるぞ」
「わ、わかりました」
「ウィルフォード・リヒトリーベ、貴様には、地獄行きを命じる」
「――!」
おお……そうか。やはり、地獄行きは回避できなかったか。ハインツさんが、先に転生した父だったらワンチャンあると思ったんだけど、そうか、違ったか。
あまり父親捜しに注力はできなかったけれど、もともと地獄に行くはずだったのが、十七年も別の人生を送ることができたんだ。それに、最後の最後に、前世でも抱くことのなかった感情を知ることができた。いろいろあったけれど、悔いはなかった。
「では、地獄に送還する。三、二――」
ところで、前も思ったけど、このカウントダウン方式なんなんだろう。ちょっとダサくないか?
「なんだと?」
「えっ――」
ヤバ……。閻魔様って心の声も聞こえるんだった。
「貴様、今ダサいと言ったか」
「イエ、ゴカイデスヨ~」
閻魔様の気に障ってしまったようで、カウントダウンが中断される。どうせ地獄に行くのだから、ちょっとくらいの悪態は許してくれてもいいと思うんだけど。
「許さん! ちょっとそこに正座しろ! 説教だ!」
「え~…………え、え、え、う、うわぁーーーーっ!!!」
これから地獄へ行くっていうのに、閻魔様から説教されるなんて理不尽だと思っていると、突然身体が下に引っ張られた。
「な、何だ!?」
閻魔様も驚いている。ということは、これって閻魔様がやってるわけではないのか!?
身体は下へ向かってぐいぐい引っ張られている。めちゃくちゃ強い重力が身体にかかっているような、そんな感じだ。気づくと、首に下げていたペンダントが光っている。これって……誕生日プレゼントにルドからもらったペンダントだ! そのペンダントがひと際大きく光ったかと思うと、次の瞬間、僕の身体は落下を始めた。
「ぎゃあぁぁぁーーーーー!!!!」
これって地獄に落ちてる状況なの!? 何なの? 酷いよ閻魔様。説教すると見せかけて、不意打ちで地獄に落とすなんて。そんなにダサいと言われたことが気に障ったのか。
落下のスピードに耐えられず、やがて僕は、気絶した。
あれ、この状況、すごくデジャヴなんですけど。地鳴りのような声にも聞き覚えがある。声がした方を見上げると、牛久大仏並みの巨体をした閻魔様がいた。
「あ、どうも、お久しぶりです」
見知った顔だったものだから、初対面の時に感じた恐怖はなく、なんとなく懐かしい気持ちになる。
「なんて呑気な顔をしている。これから貴様の裁判を行うのだぞ?」
「あ、はい、そうですよね」
再びここへ来ているということは、僕は死んだってことだよね。意識を失う直前に、歌を歌い切ったことはかろうじて覚えていた。あとは、歌の力で、エルフの里が再生してくれればいいんだけど。
それに、死ぬ直前に自覚した、ルドへの気持ちを思い出す。今まで、異性としか関係を持ってこなかったから、まさか同性に対してこんな気持ちを抱くとは考えつかなかったが、ルドに感じる胸の痛みや、心臓の高鳴りは、つまり、そういうことだったんだ。
今となっては、この気持ちを本人に伝えることはできない。だけど、自分にもそういう感情を持つことができると分かって、嬉しかった。
後は、ルドとエタとハインツさんが、手を取り合ってとは言わなくても、お互いに命のやり取りをすることなく、無事生きていって欲しいと願うばかりだ。
「聞いているのか? 貴様は地球上のフライハルト共和国とヒメルケンツ王国の国境で十二月四日に死亡した。これから裁判を行う。立て!」
「は、はいっ!」
おっといけない。閻魔様を怒らせてしまうところだった。慌てて立ち上がり、ふと違和感に気づいた。今、閻魔様、『地球』て言わなかった?
「あの~閻魔様、裁判の前に、一つ質問してもよいでしょうか」
「構わん」
「今『地球』と仰ったように聞こえましたが、僕が転生する前にいた場所も『地球』でした。転生前後の世界は、同じ地球にあるのでしょうか」
「転生前の世界は『地球』と呼ばれている。転生後の世界は『地球』だ。同じ字だが、発音が違う」
「はぁ……」
誰だよそんな名前つけたの。ちょっと適当すぎないか。
「そんなことは些細なことだ。それよりも、裁判を始めるぞ」
「わ、わかりました」
「ウィルフォード・リヒトリーベ、貴様には、地獄行きを命じる」
「――!」
おお……そうか。やはり、地獄行きは回避できなかったか。ハインツさんが、先に転生した父だったらワンチャンあると思ったんだけど、そうか、違ったか。
あまり父親捜しに注力はできなかったけれど、もともと地獄に行くはずだったのが、十七年も別の人生を送ることができたんだ。それに、最後の最後に、前世でも抱くことのなかった感情を知ることができた。いろいろあったけれど、悔いはなかった。
「では、地獄に送還する。三、二――」
ところで、前も思ったけど、このカウントダウン方式なんなんだろう。ちょっとダサくないか?
「なんだと?」
「えっ――」
ヤバ……。閻魔様って心の声も聞こえるんだった。
「貴様、今ダサいと言ったか」
「イエ、ゴカイデスヨ~」
閻魔様の気に障ってしまったようで、カウントダウンが中断される。どうせ地獄に行くのだから、ちょっとくらいの悪態は許してくれてもいいと思うんだけど。
「許さん! ちょっとそこに正座しろ! 説教だ!」
「え~…………え、え、え、う、うわぁーーーーっ!!!」
これから地獄へ行くっていうのに、閻魔様から説教されるなんて理不尽だと思っていると、突然身体が下に引っ張られた。
「な、何だ!?」
閻魔様も驚いている。ということは、これって閻魔様がやってるわけではないのか!?
身体は下へ向かってぐいぐい引っ張られている。めちゃくちゃ強い重力が身体にかかっているような、そんな感じだ。気づくと、首に下げていたペンダントが光っている。これって……誕生日プレゼントにルドからもらったペンダントだ! そのペンダントがひと際大きく光ったかと思うと、次の瞬間、僕の身体は落下を始めた。
「ぎゃあぁぁぁーーーーー!!!!」
これって地獄に落ちてる状況なの!? 何なの? 酷いよ閻魔様。説教すると見せかけて、不意打ちで地獄に落とすなんて。そんなにダサいと言われたことが気に障ったのか。
落下のスピードに耐えられず、やがて僕は、気絶した。
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