63 / 88
番外編:聖夜の記憶
しおりを挟む*本編既読が前提です。
窓の外ではさらさらと雪が降っている。とある夜の事だ。
「ミカエル、準備を手伝え」
ミカエルが赤いソファに座り、ゲームを弄っていると突然上から声がかけられた。
「ん、ルイスさん?」
「聖夜祭、やるんだよ」
「えー、俺は別にどうでも良いんだけど」
そう言いながらも、ソファに倒していた身体を起こして、部屋の中の様子を見る。
その部屋は広く、パーティー会場の様でタイタン操縦者が何人も集まっていた。 準備をするもの達は皆、普段と変わらない白色のワイシャツ姿である。どうにも年に一度の特別な日という事で、盛り上がっている様であった。
軍人たちによるパーティーの一環であった。戦争を忘れる様に、この日だけは楽しもうと全員で準備をするのだ。
「もしかしたら、俺たちに取って最後になるかもしれないからな」
軍人達はこれから先に戦争が起こる事を知っていた。だからこそ、もしかしたらこの聖夜祭が最後になるかもしれないなどと不安を抱えながらも、準備を進めるのだ。
「どうだ、ミカエル。準備は進んでいるか?」
ミカエルに尋ねるために近寄ってきたのは相変わらずの軍服姿のアダムであった。
「あ、アダムさん」
「アダム司令官」
「そこまで固くならなくても構わない」
そう柔らかく告げると、アダムは会場を見回した。
「そうですか」
「アダムさん、帰ってドラマ見ても良いかな?」
「普段なら帰っても良いと言うところなんだが、今日はダメだ」
「何で?」
「私たちがこれだけ楽しそうにできるのも最後かもしれないからな」
今も、部屋を飾り付けていく軍人の姿を視界に収めてアダムがルイスと同じ理由を呟く。
「わかったよ……。カルロス、手伝うよ」
そういってミカエルは準備を進めていたカルロスとアメリアの元に向かって歩いていく。
脚立がグラグラと揺れ、今にも倒れてしまいそうだ。
そして、そんな予測から数秒ほど脚立の上に立っていたカルロスが落下する。
「おっと、気をつけてね」
それを華麗にミカエルが抱きとめると、優しく降ろしてやる。
「ははっ、様になってんな」
そう苦笑いするのはジョージだ。
ツリーの飾り付けをエレノアと共に行いながら見ていたのだ。こちらもまた脚立の上にエレノアが立っているのだが、不安定さはない。
「俺も落ちてみようか?」
カラカラとエレノアが揶揄う様に言うと、脚立を支えているジョージは止めてくれと笑いながら答えた。
「俺はミカエルみたいに、あそこまで完璧にできる身体能力はねぇよ」
「それもそうだな」
「で、どうだエレノア」
「うん?」
「聖夜祭の準備だよ」
貧しい生まれのエレノアからして、これ程に楽しげな聖夜祭前夜を迎えた事はなかった。それは裕福な生まれのジョージもそうであったのだが、彼以上にエレノアには縁遠い話であっただろう。
「ーーああ、楽しいよ」
一瞬、答えに迷ったのか、満面の笑みをジョージに見せた。
「そっち、終わったか?」
そんな彼らの元にルイスが向かうと、丁度エレノアがツリーの天辺に巨大の星をつけ終えたところの様だ。
「ああ、終わったぞ」
脚立を支えながらジョージが答えると、そこからエレノアが降りてくる。
「ツリーは完璧」
「よし、あとは料理だな」
そう言ってから何分かすると三人の男性によって料理が運ばれてくる。
「よぉーし、ターキーとオードブル持ってきたぞぉ!」
「こっちはトルティーヤだ」
「ケーキもあるけど、ドリンクな」
にこやかにカートを押しながら料理を持ってきた。
これで準備は完璧だ。
丁度、時計の長針と短針が十二の数字で重なる。
その瞬間、電気が消えた。
準備をしていたもの達にも予想外の出来事。次に電気がついた時には全身を真っ赤な衣装に包み、白色の大きな袋を持った老人が立っている。
これにはアダムもあんぐりと口を開けて驚いていた。
「今宵は聖夜だ。存分に楽しもう」
奇抜な衣装に身を包んだ男、アイザック・エヴァンスはニンマリと笑いながら懐からクラッカーを取り出して紐を引く。
パァンと、小気味いい音が響いた。
聖夜祭の始まりだと告げる様に。
これは彼らの思い出。
聖夜の記憶だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる