自衛官×変身ヒーロー×呪われた姫=スキル制約

鹿

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22 偶然【Side.ビニール仮面】

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アスカは北欧風の街並みを歩いていた。

「ここは……」

見覚えのある風景だった。

「あの噴水どこかで……」

公園には美しい噴水があり、子供達が足を入れてバシャバシャと水遊びをしている。

『ミミ~』

それを見た頭上のミミが、急かすようにアスカに声をかける。

「おう!行って来い」

『ミィ~!』

ミミは嬉しそうに飛び跳ねて、噴水に向かってジャンプした。そして子供たちと、楽しそうに遊び始めた。

「のどかだねぇ」

「きゃーー!モンスターよ!」

突如後ろから、女性の叫び声がこだまする。

「しまった!フラグだったか!」

そう思った途端に、アスカは目を覚ました。

「はっ!夢か……良かった。夢はもう、こりご…」

「きゃーー!モンスターよ!」

「!?夢…じゃない!なんだ?」

「いやぁー!モンスターに食べられたわ!」

「木の裏から聞こえる!まさかキュウたちか」

『ミミ~』

「ミミ行くぞ!」

ミミを頭にのせたまま、アスカは急いで木の反対側へと走った。

そこには四人の女性たちと、何かを貪り食うキュウたちがいた。

「ハァハァ。オイ!何やってるんだ!」

「た、助けて下さい!モンスターに襲われています」

「何だと!おい!お前たちそこに座れ!彼女たちを襲ったのか!?」

キュウたちは慌てて一列に並び、背筋を正して見事なお座りをした。
五匹は皆一様に、口をモゴモゴ動かしている。

アスカは足元に散乱している干し肉を見て言った。

「何食ってるんだ?腹が減っていたとしても、人様の物を奪ったりするな!いいか!?」

『ゴッキューン!』

『『『『ゴックゥォン』』』』

「しっかり飲み込みながら返事しやがって。だがまぁ分かればいいんだ。次からは気を付けろよ!」

そしてアスカは四人の女性に向き直った。

「みなさんすみません。お怪我は……ありま…せん…か?」

(綺麗な人達だ……)

四人ともスタイルが良く、整った顔立ちをしていた。

「え?モンスターが言う事を聞いてる?どういう事ですか?」

(ナイスバディー)

「ナイスバ…いや、こいつらは俺の仲間なんだ。申し訳ない!」

アスカは、非難されることを覚悟の上で、腰を直角に曲げて謝罪した。

「スライムが頭に乗ってる?貴方はテイマーなのですね?凄い!!」

一際スタイルの良い女性が、羨望の眼差しでアスカに近寄った。

「テイマー?」

怒られると覚悟をしていたアスカは、聞いたこともない言葉で褒められた。

「私たち助かったのね!こんなにたくさんのモンスターをテイムしてるなんて」

一際胸が大きい女性が、羨望の眼差しでアスカに擦り寄った。

(テ、テイマー?テイム?イケメン?モテモテ?ハーレム?)

「そうなんです。実は私はテイマーのテイムです」

アスカはフンスと鼻息を鳴らしながら、意味のわからない事を胸を張って答えた。

「やっぱり!良かった!お願いがあります」

一際美人の女性が、羨望の眼差しでアスカに言い寄った。

「お願い?」

「はい。私たちと一緒に、村まで行ってくれませんか?」

「近くに村があるのか!?」

(旅館で寝れる!飯が食える!)

「はい。私たちのテランタ村があります。私たちをその村に連れて行ってください」

一際可愛い女性が、羨望の眼差しでアスカに詰め寄った。

(キュウ!お前らでかした!!)

「その大役、テイマーのテイムである、この私にお任せ下さい!」

アスカは右足を引き、左手を横へ水平に差し出すと、右手をクルクル回しながら胸に添え、貴族のお辞儀を行った。すなわち、ボウ・アンド・スクレープである。

普通は手を回したりはしないが、アスカは地球のどこかで見た記憶があったのだ。しかし、それはお笑い番組か何かだったのだろう。

「まぁ頼もしい」

一際美人の女性が、胸の前で手を合わせ祈る様に言った。

(異世界最高!)

「よろしくお願いします」

一際胸が大きい女性が、胸の前で指を絡め祈る様に言った。

(異世界最高峰!盛り上がってる!その破壊力。神!)

「任しろ!」

(良いとこで噛んだ……)

「取り敢えず、何処へ向かえば良いのかな?」

気を取り直して、表情をキリリと変えたアスカは、一際スタイルの良い女性に聞いた。

「あちらに大きな川があります。そこを上流に向かって行けば村があります」

一際スタイルの良い女性が、木を背にして正面を指さした。

「上流か。早速行こうか?」

「はい。ついて行きます!もし良かったら、あの盾を使いませんか?ここに落ちてました」

一際可愛い女性が、川を背にして右側を指した。
アスカは木を見ると、そこには黒い大楯が立て掛けられていた。

「盾か……君たちを守るのに盾は必要ない!俺にはこの拳一つで十分だ!」

アスカは拳を握りしめ、自分の目の前に持って行きポーズを決めた!

「「「「まぁ素敵」」」」

「村まで護衛する。案内してくれ」

(女神様!この偶然の出会いにありがとう!)

四人の女性は川に向かって歩き始めた。それを守るようにシロ、クロ、ブチ、チャはそれぞれ一人に一匹ずつ付いている。
四匹とも胸を張り、周囲をキョロキョロ見回し警戒する姿は何とも勇ましい。そして可愛い。

(雨で濡れてなきゃモフモフ出来るのになぁ)

キュウとミミは、アスカの両肩を占領中である。

最後尾を歩くアスカは、女性たちに聞こえないようにナレーションに聞いた。

「テイマーとかテイムって何だ?」

イヤーカフを触れ、ボソリとアスカは呟いた。

『説明しよう!
テイマーとは魔物を捕獲して自分の配下、いわゆる従魔として戦闘や労働をさせる、魔物使いの事である。
テイムとは魔物を調教したり、魔法を使用して手懐けることなのである』

(な~る!俺の場合はイセカイザーピンクの誘惑スキルで魅了してるから、あながちテイマーでも間違いじゃぁないな)

途中、ベコベコにへこんだ大楯が二つ転がっていたが、それをスルーして少し歩くと、向こう岸が見えないほど幅の広い川に着いた。

「スゲェ……木の側にいた時は気付かなかったが、この川とんでもない爆音だな!お前たちそれ以上川に近付くなよ」

怒り狂うモンスターが、地の底から唸り声を上げているかのように、轟音と共に我先にと言わんばかりの激流が川に近付く事を躊躇させていた。

『『『『ワォン!』』』』

シロたちはアスカを見て一斉に返事をした。

「やっぱ可愛いな。まるで忠犬のようだが…俺のピンチには逃げるんだよな…」

それを聞いたシロたちは、直ぐ様視線を外し、聞こえなかったかのように前を向いた。

「魅了してはいるが、信頼関係は別なんだろうか?いざとなったら逃げるのか?それともあの魔石が魅了以上の存在なのか…まぁ分からない事を考えても始まらないな」

アスカは肩に乗るキュウを優しく撫でた。

(異世界は分からない事だらけだな……地球にはスキルなんて無かったから、どんな効果があるのかも分からないし…色々注意しないとな。そう考えるとこの川も怪しいな!まさか川の流れが反対って事はないか?)

「ここからどっちに進むんだ?上流だからこっちであってるか?」

アスカは激流が流れ来る方向を指した。

「勿論です。この川を上流に向けて歩くと私たちのテランタ村があります」

スタイルの良い女性が、悲しそうな顔をして振り向いた。

(そこは地球と同じだな。用心に越したことはないが、慎重になり過ぎるのも考え物だな)

「考え過ぎか…しかしどうしたんだ?そんな悲しそうな顔をして」

「テイマー様に伝えなければならない事があるのです」

胸の大きな女性が、切なそうな顔をして振り向いた。

(まさか愛の告白か?四人の中から一人を選べってか?)

「急にどうしたんだい?このミスターテイマーが貴女方のお悩みを何でも聞いてあげましょう」

「実は私たち……テイマー様に隠していた事がございます」

美人の女性が、不安そうな顔をして振り向いた。

「そんな些細な事など気にしないさ」

可愛い女性は、振り向かない。

「……」

(最後の一人は勿体ぶるねぇ)

そして可愛い女性が、ゆっくりアスカに振り向くと、不敵な笑みをこぼした。

「ふふふふ、嬉しいわ。悩みを何でも聞くとおっしゃいましたね?」

「お、おう。ま、任しろ!」

(また噛んだ!)

「「「「ふふふふ」」」」

他の三人の女性たちも笑い出した。

「急にどうしたんだ?な、何か変だ」

(ヤバイ、何かヤバイ!しまった!ここは異世界!もっと疑うべきだった)

すると四人の女性は、アスカにスーッと近づいて一列に並んだ。

「お前たち何者だ!?」

アスカは半身になり戦闘態勢を取った。

「シロ!クロ!ブチ!チャ!こっちに来い!」

危険を感じたアスカは、シロたちを彼女たちから遠ざけた。

『『『『ワォン』』』』

シロたちは慌ててアスカの後ろへ駆け寄った。

「何を笑ってるんだ!!」

すると彼女たちは笑うのをやめた。そして一斉にアスカに向き直った。

その顔に、先ほどまでの笑顔は無かった。

「まさか!モンスター?」

「言質は取りました」

可愛い女性が、震えながら言った。

「へ?」

アスカは気の抜けた声を漏らした。

「約束をしましたね」

胸の大きな女性が脅えながら言った。

「約束?」

アスカはキョトンとして、オウム返しをする事しか出来なかった。

「何でも聞くという約束を守って頂けますか?」

スタイルの良い女性が、萎縮しながら言った。

「騙すような事をしてごめんなさい。でも約束は守って下さい」

美人の女性が、強張りながら言った。

(やはりこいつらモンスターか?)

アスカは手を叩き、超亜空間から緑の魔石を呼び出し手に取った。そしていつでも変身出来るように、魔石を持った手を胸の前に添えた。


『偶然の黄金。そして偶然の出会い。
偶然の出会いは続く。その出会いは、もはや必然!
そして、近くに村があることを知ったアスカ。村へ行けば食事にありつくことができる。生き延びる。
しかしアスカは鼻の下が伸びる。
伸ばせアスカ!鼻の下イセカイザー!
次回予告
再会』

「今回、何か悪い事言いましたっけ?」
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