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虚々実々
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漆黒龍との戦いが終わりヴァードは
返りで血でどろどろになった戦斧を背負った
レフィリアが駆け寄ってきた
「ヴァードさん」
「レフィリア、二人を元に戻してやってくれ」
「ええ」
レフィリアは詠唱して杖で地面を叩くと結晶が割れた
火の玉がひゅうっと浮かび上がって
氷漬けになっていたミリアとフィーナを包み込んだ
閉じ込められていた二人が解き放たれて地面に倒れた
その瞬間、どこからともなく庭園に現れた兵士たちが二人を担いで攫ってしまった
「ミリア!フィーナ!ええい、休む間もなしか!」
ヴァードが戦斧に手をかけると、低い声が聞こえた
「待ちたまえ!ヴァード・アッパード君!」
声の方向に振り向くと、鎧をまとった中年の男がレフィリアを羽交いじめにして首筋に刃を向けていた
「お初目にかかる、私は栄えある王都兵団の長を勤めるプリスモンというものだ」
「だからなんだ」
「君にお願いがあってきたのだ」
プリスモンは自分の髭を撫でながら言った
「聞けない相談だな」
ヴァードは背中の戦斧に手をかけようとした
「おっと!私とて武人のはしくれ、君の斧捌きよりはやく
この御令嬢の動脈を裂くことくらいできるぞ」
プリスモンはレフィリアに刃を突きつけた
「ヴァードさん、私はかまいません、そのままお斬りなさい」
レフィリアは凛とした声で言った
「いいや!君は意外に仲間を大切にする方だ!そんな真似はできない」
「プリスモン、お前は真っ先に殺してやる」
「君はでしゃばりすぎだよ
われわれ兵隊にもいちおうメンツというものがあってね
商会の私兵ごときに魔物討伐の手柄を取られたことが国民に知られては
沽券にかかわるのだ」
「俺と商会は関係はない」
「事実はどうでも良い、大事なのは真実だよ
われわれが国民に伝える……その内容だ
王都を襲った龍は我が兵団が国民を守りながら
勇猛果敢に戦いピート・パーリン隊長が討ち取った!
そして……ヴァード・アッパードは混乱に乗じて宮殿に侵入し、
国王陛下を亡き者にしようとしていた!!
シルエール商会は毒物を製造し!それを幇助したのだ!」
プリスモンは一気呵成にまくしたてた
「あなた!何を言っているんです!?そんなデタラメを!」
レフィリアは怒鳴った
「はっはっは……御令嬢、証拠というのはね、
点と点を繋ぎ合わせればいくらでも生み出すことができるんだ
その線が妥当であるかなんて、誰も気にしないんだよ」
「目撃者がいるぞ、ここにも市街地にも」
「ふっふっふ……ここにおられる避難民の方々はみな我々の支持者さ
それ以外は……そう、夜の闇でよく見えていなかったのだろう、
気が動転していたのだろう……いくらでも言い分は立つさ
われわれに逆らってまで、真実を言おうとするものなどいはしないよ」
そうそう、お願いだったね、
ヴァード君、ここで歴史から消えてくれないか
君は昨晩死んだ、いいね?」
「人間同士で争っている場合か!魔王軍の攻勢がこの龍で終わるわけがない
すぐに同格以上の魔物が王都に来るぞ!」
「そうだ……王都にこれほどの脅威を与えた突撃龍だが……
その龍を倒した君こそが、現在の王都にとっての最大の脅威ではないかな!?」
空が白み始めた、潜んでいた弓兵たちが姿をあらわし、ヴァードたちに矢を向けている
「ふふふ……確かにその通りだな、
なら俺も言っておく……三人に何かあったら王都を滅ぼす」
ヴァードはプリスモンをまっすぐに睨みつけた
「うるさい……!いまの君になにが出来るんだ」
傷だらけのピートが兵士の肩を借りて宮殿へ歩いているのが見えた
ヴァードは叫んだ
「ピート・パーリン!!聞こえているだろう!これがお前らのやり方か!
お前の兄貴は住民を守るために最期まで龍と戦って一撃を与えたぞ!
こいつの口の中を見てみろ!」
ピートはヴァードを一瞥したが兵士たちに連れて行かれてしまった
「ごちゃごちゃと喋りすぎだよ!死にたまえヴァード君
弓兵!射……」
「秘術!水煙!」
誰かが精霊術を唱えたらしい
あたり一面が急速に霧で覆われ、何も見えなくなってしまった
馬の蹄鉄の音が一気に近づいてくる
「お客様!ここです、お乗りください!」
しゃがれた声のする方向を振り向くと
霧の中にかすかに馬車の姿があった
ヴァードは走って荷台に飛び乗った
「一時退却しますぞ!」
「仕方ない!」
馬車は霧の中を突っ走り
城門を飛び出し、王都の路地を駆け抜けた
戦いの疲れの中でヴァードは微睡んだ
返りで血でどろどろになった戦斧を背負った
レフィリアが駆け寄ってきた
「ヴァードさん」
「レフィリア、二人を元に戻してやってくれ」
「ええ」
レフィリアは詠唱して杖で地面を叩くと結晶が割れた
火の玉がひゅうっと浮かび上がって
氷漬けになっていたミリアとフィーナを包み込んだ
閉じ込められていた二人が解き放たれて地面に倒れた
その瞬間、どこからともなく庭園に現れた兵士たちが二人を担いで攫ってしまった
「ミリア!フィーナ!ええい、休む間もなしか!」
ヴァードが戦斧に手をかけると、低い声が聞こえた
「待ちたまえ!ヴァード・アッパード君!」
声の方向に振り向くと、鎧をまとった中年の男がレフィリアを羽交いじめにして首筋に刃を向けていた
「お初目にかかる、私は栄えある王都兵団の長を勤めるプリスモンというものだ」
「だからなんだ」
「君にお願いがあってきたのだ」
プリスモンは自分の髭を撫でながら言った
「聞けない相談だな」
ヴァードは背中の戦斧に手をかけようとした
「おっと!私とて武人のはしくれ、君の斧捌きよりはやく
この御令嬢の動脈を裂くことくらいできるぞ」
プリスモンはレフィリアに刃を突きつけた
「ヴァードさん、私はかまいません、そのままお斬りなさい」
レフィリアは凛とした声で言った
「いいや!君は意外に仲間を大切にする方だ!そんな真似はできない」
「プリスモン、お前は真っ先に殺してやる」
「君はでしゃばりすぎだよ
われわれ兵隊にもいちおうメンツというものがあってね
商会の私兵ごときに魔物討伐の手柄を取られたことが国民に知られては
沽券にかかわるのだ」
「俺と商会は関係はない」
「事実はどうでも良い、大事なのは真実だよ
われわれが国民に伝える……その内容だ
王都を襲った龍は我が兵団が国民を守りながら
勇猛果敢に戦いピート・パーリン隊長が討ち取った!
そして……ヴァード・アッパードは混乱に乗じて宮殿に侵入し、
国王陛下を亡き者にしようとしていた!!
シルエール商会は毒物を製造し!それを幇助したのだ!」
プリスモンは一気呵成にまくしたてた
「あなた!何を言っているんです!?そんなデタラメを!」
レフィリアは怒鳴った
「はっはっは……御令嬢、証拠というのはね、
点と点を繋ぎ合わせればいくらでも生み出すことができるんだ
その線が妥当であるかなんて、誰も気にしないんだよ」
「目撃者がいるぞ、ここにも市街地にも」
「ふっふっふ……ここにおられる避難民の方々はみな我々の支持者さ
それ以外は……そう、夜の闇でよく見えていなかったのだろう、
気が動転していたのだろう……いくらでも言い分は立つさ
われわれに逆らってまで、真実を言おうとするものなどいはしないよ」
そうそう、お願いだったね、
ヴァード君、ここで歴史から消えてくれないか
君は昨晩死んだ、いいね?」
「人間同士で争っている場合か!魔王軍の攻勢がこの龍で終わるわけがない
すぐに同格以上の魔物が王都に来るぞ!」
「そうだ……王都にこれほどの脅威を与えた突撃龍だが……
その龍を倒した君こそが、現在の王都にとっての最大の脅威ではないかな!?」
空が白み始めた、潜んでいた弓兵たちが姿をあらわし、ヴァードたちに矢を向けている
「ふふふ……確かにその通りだな、
なら俺も言っておく……三人に何かあったら王都を滅ぼす」
ヴァードはプリスモンをまっすぐに睨みつけた
「うるさい……!いまの君になにが出来るんだ」
傷だらけのピートが兵士の肩を借りて宮殿へ歩いているのが見えた
ヴァードは叫んだ
「ピート・パーリン!!聞こえているだろう!これがお前らのやり方か!
お前の兄貴は住民を守るために最期まで龍と戦って一撃を与えたぞ!
こいつの口の中を見てみろ!」
ピートはヴァードを一瞥したが兵士たちに連れて行かれてしまった
「ごちゃごちゃと喋りすぎだよ!死にたまえヴァード君
弓兵!射……」
「秘術!水煙!」
誰かが精霊術を唱えたらしい
あたり一面が急速に霧で覆われ、何も見えなくなってしまった
馬の蹄鉄の音が一気に近づいてくる
「お客様!ここです、お乗りください!」
しゃがれた声のする方向を振り向くと
霧の中にかすかに馬車の姿があった
ヴァードは走って荷台に飛び乗った
「一時退却しますぞ!」
「仕方ない!」
馬車は霧の中を突っ走り
城門を飛び出し、王都の路地を駆け抜けた
戦いの疲れの中でヴァードは微睡んだ
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