【R18】勇者は淫らに犯される

来々法師

文字の大きさ
26 / 27

ヴァードはあやしい煙草を吸ってしまう

しおりを挟む
1

ヴァードとミリアが
酒場の白鹿亭しろじかてい
宿に定めてからというもの
二人の圧倒的な強さは
瞬く間に街中に知れ渡り
王都の混乱に乗じてひと稼ぎをたくらんでいた
ごろつき連中はほとんど街を去ってしまった
ケイルバウス市の治安も回復し
ガルデンとポーラも改心してまじめに店を切り盛りし始めた
客もぽつりぽつりと入ってくるようになって
少しではあるが賑やかになってきた

しかし、あまりに平和であるとかえって
戸惑ってしまうのが闘う者の宿命である
ヴァードは雪を踏みしめながら官舎に繁く通って
官吏に「もういいじゃないか、通してくれ」と催促をするのだが
「返事はまだ返ってきてませんよ」とけんもほろろであり
結果は芳しくないのだった

白鹿亭の中では
ミリアは短剣で百発百中の的当てを見せて
客たちから拍手喝采をもらっていた
そしてヴァードはテーブルで酒をあおっている
つまり、いま二人は暇なのである

山道への立ち入りが許可が下りないのであれば
やることは荷造りくらいしかない
ヴァードは馬車を処分しないといけないことに気づいた
あまりに険しい山道に馬車をともなうことはできない
ヴァードは酒場の客たちに呼びかけた

「この中に馬車が欲しいやつはいるか?
旅先に連れていけないんだ」

客の一人が応じた

「ヴァードさん、俺たちに聞くより
中央市場の商人たちと話をしてきたほうがいいよ
馬車なんか何台あっても困らないはずだ
すぐに買い手が見つかるよ」

「ほう、なるほどな、
さっそく出向くか」

ヴァードはミリアに行き先を告げて
白鹿亭を出た
積もる雪を踏みしめ踏みしめ、街の大通りを歩いて
その一角にある駅に着くと
預けてあった馬車と馬があった
理由がわかったのだろうか
馬はさみしそうにヴァードを見つめてきた

「お前の新しい主人を探しに行くぞ」

ヴァードは御者台に乗って手綱を軽く叩いた
曇り空からしっとりとした粉雪が降ってきた
馬車はわだちを残しながら中央市場へと向かった


2

ヴァードが市街地の中央部に着くと
区画の大部分を占めるほどの建物が見えた
建物の上には雪を防ぐための巨大な屋根が設置されていて
命綱をつけた若い男たちが雪かきをしている
入り口には受付があり、中年の女が話しかけてきた

「市場へいらっしゃい、ああ……あんた、白鹿亭の……」

「ヴァードだ、この馬車を売りにきたんだが」

「売り目当ての一時入場ならこの札をつけておくれ
あ、売上金には手数料がかかるからね
うちも慈善でやってるわけじゃないから」

ヴァードは女から大きな札を渡され、説明を受けた
市場に売りに来た人間は
品目と希望する価格を記して首から下げて市を歩くのだ
札を下げているものに対しては
誰でも自由に話しかけて交渉していいことになっている
市場内の常設の店へ売りに行ってもいい
売買が成立したら金額を受け取り
その額の一部を手数料として市場へ渡すのである

「欲張って値を吊り上げてしまうと
買い手がつかないからね
かといって卑屈になって安売りしても大損だ
そこらへんのさじ加減かげんは自分で決めるんだね」

「駆け引きは商いでも同じか」

「ここは鉄火場てっかばだよ、あんたも
ひん剥かれないようにね、あっはっは
ああ、馬車はあっちから専用の入場口があるからね」

係の人間がやってきて、ついてくるように言われた
蹄鉄の音を響かせながら長い長い通路を抜けると
専用の厩舎に入った
小さな衝立の向こうでは大勢の人々が賑わいを見せている
市場の客が馬の品定めのために
厩舎を一望できるようになっているのだ
ヴァードは馬を繋ぎ止めると、さっそく買い手を探すことにした

「しかし、まあ……
あまり売買に時間をかけすぎるのも
良くなさそうだ
山登りの準備をしたいしな」

ヴァードは手近に歩いていた
商人の男に話しかけた

「この馬車を売りたいんだが
金貨1000枚でどうだ」

商人は目を丸くして驚いた

「1000!?
えっ、いいのかい!」

「旅先に連れていけないんだ、
持ち腐れになるより
誰かが使った方がいいだろう」

「そうかい、それじゃあ買わせてもらおうかな……」

その会話を聞いていた他の商人たちが割り込んできた

「おい!おい!ちょっと待て!
そんな良い馬車と馬を
1000枚で買い叩こうなんてずるいぞ!
にいちゃん!俺は2000出すぞ!」

「いいや!2500だ!」

「わたしは3000だ!」

ヴァードが軽い気持ちで売りに出した途端に
周囲の商人たちが群がって値段が上がり始めた
手数料収入が上がるからか
市場の管理人たちもすぐにかぎつけてきて
その場で競売となってしまった
右から左から数字が飛び交い
最終的に7800枚で売買成立となった
市場への手数料である800枚を差し引いた金貨7000枚が
正味の取り分である
ヴァードはずっしりと重くなった皮袋を見た
中では7000枚の金貨が微笑んでいた

3

ヴァードは皮袋を背負って市場を歩いた
懐にかなりの余裕が生まれたので
ヴァードは無駄物買いをしてみる気になった

「ミリアに土産でも買って行くか……」

ヴァードは広い市場を歩き回ってみると
#嗜好品__しこうひん__を売っているらしい店があった
出所のよくわからない酒やら精力薬やら
夜の道具やらが所狭しと並んでいた

「兄さんどうだい?イイモノあるよ
これなんか大地の国の珍しい煙草だ
とびっきり強烈なやつだよ、うっふっふ」

「ほう煙草たばこか、何年も吸っていなかったな」

ふところは馬車を売って余裕があった
ヴァードは興味が湧いて買ってみることにした

「じゃあ、それをもらおう
ところでどうやって吸うんだ?」

「水に溶いたり、直接吸ってもいいけど、
一番やりやすいのは火で炙るやり方だね
ちょっと吸ってみるかい、ひひひ……」

店主が皿の上に少量の煙草を散らし
火打ち石で点火した
赤色の細い煙がふわっと浮かび上がる
店主はさじをつかって火の点いた煙草を
煙管きせるの中に入れるとヴァードに手渡してきた
ヴァードは煙管を口に含んで吸い込んだ
なんだか妙な気持ちになった

「なんか……変な味だな」

「ま、慣れないうちはそんなもんさ
せいぜい楽しんできな……
若い娘ならそこらじゅうに歩いてる
適当なやつを連れて行くといいさ、兄さん男前だしな」

ヴァードは煙管を吸いながら市場を歩くことにした
市場の目抜き通りにミリアの姿が見えた
白い息を吐いて、毛皮のコートを羽織っている

「ミリア来てたのか」

「あ、ヴァードさん!探しましたよ
ポーラさんが戻ってきてくれって……え!?」

ヴァードはミリアを抱き寄せた

「ヴァード……さん……」

ミリアの手を握りしめた
そこから先はよく覚えていない

3

ヴァードが目覚めると見慣れた天井が見えた
白鹿亭の部屋のベッドの上であった
部屋から出ると朝食が用意されていた
ヴァードの姿を認めると
宿屋の娘のポーラが恥ずかしそうに言葉を紡いで言った

「あの………ヴァードさん……その……
もうちょっと……お静かに……」

「何かあったのか?」

「ええっ」

ポーラは信じられないといった面持ちであった
ヴァードは無視して進むことにした
先に着替えを済ませていたミリアがテーブルについていた

「その……」

「ん?」

「ヴァードさん……昨日は……」

「昨日?」

「覚えてないんですか?」

「なんのことだ」

「いえ……いいです」

「どうした?」

「なんでもないです!」

「……そうか」

「ヴァードさん……今日もするんですか?」

ヴァードは官舎への催促を訊かれているのかと思った

「当たり前だ、毎日やるぞ」

「ああっ……」

ミリアの全身が紅潮していた

「ん?どうした、嫌か?」

「いえ……嫌じゃ……ないですよ」

その日、ミリアはヴァードと目を合わせようとしなかった
ヴァードがそばにいると恥ずかしそうに逃げて行くのだった
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...