Dead or Alive

ジャム

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「アキタミチルだ!今どうなってる!?早く調べろ!」

深夜の病院の受付の人だかりを押しのけて、ナースの手を掴んだ。
小さく看護師は悲鳴を上げる。
「シロウさんっ落ち着いて!相手は看護婦ですよ!」
「ウルセエ!!早く言え!!ミチルは生きてんだろうな!?」
「待って、待ってくださ・・!」
看護師が震える指で、パソコンのキーを打つ。
その時間すらイライラする。
「早くしろ!!」
看護師を怒鳴りつけた直後、
「アキタシロウ」
と、聞き覚えのある呼び声に振り返ると、ロビーでタバコを咥えた男がいた。

「石田・・・さん!」
「ミチルは生きてるぞ」
煙を吐き出して、また吸う。
「まさか・・・会長も運ばれたんですか・・!?」
キリサカの台詞に、石田の頭がコクリと縦に揺れた。
「てめえらなぁ。実の兄貴より先に、オヤジの心配だろうが・・。違うか?」
「スミマセンッ情報不足で、知りませんでしたっ」
キリサカがビシッと腰を折る。
「だろうなぁ・・?だって、極秘事項だ。誰にも言うんじゃねえぞ」
フフッと石田が笑う。
その笑みに恐ろしく寒いものを感じた。
「来いよ。ミチルは上だ」
石田の背中を追いながら、考えた。
この男の顔からは、何も感じられない。
焦りや、不安。
恐れや戸惑い。
怒りさえも感じられない。
ただ歩く男の背中を、気持ち悪く感じながら、ついて行く。
石田でなければ、絶対についてなど行かない。遠慮したい空気だった。




エレベーターに乗り、7階で降りた。
ICUの表示に肝を冷やしながら進むと、まだその奥に、いくつか病室が並んでいるのが見えた。
その3つ目の部屋の前で石田が止まった。
顔で、病室を見ろと促す。
確かにドアの横のプレートには秋田路流の名前が入っている。
その瞬間、ゾっと背筋が凍る。
それから、ゆっくりとドアノブを廻した。
室内は薄らと、暗いオレンジの灯りがついていた。
「ミチル・・・!」
マッサラな白い布団を掛けられた路流が仰向けに目を閉じていた。
「ミチル・・!!」
路流の髪を両手で撫で、頬を摩る。
そこに路流の体温を感じて、目の奥がジンと熱くなった。
「ミチル・・!」
ベッドサイドに膝をつき、項垂れるようにミチルに縋りつくと、背後でドアの閉まる音がした。
二人が気を利かせて出て行ったようだ。
病室は、二人きりになる。
それから暫く祈るように腕を組んで、路流の顔を見つめ続けた。

すると。
「シ・・ロウ、か?」
今、目が覚めたような、掠れた声。
「ミチル・・・っ」
顔を覗く。
ミチルは薄っすらと目を開け、また瞬きし、もそもそと腕を動かして、目を擦る。
「クスリが、効きすぎた・・」
「大丈夫か?痛いとこないのか?吐き気は?頭痛は?」
思いつく症状を早口に口にして、路流に鼻で笑われた。
「オレは妊娠でもしたのか・・?」
「フザケルな!!死に損なったんだぞ・・!?」
思わず出た大声に、路流がシーッと指を立てた。
「・・・生きてる。お前より先に死ぬ気は無い」
「ああ・・・誓ってくれ。もう二度とこんな思いはご免だ」
それを聞いた路流の目が、ゆったりと微笑んだ。
「それは、オレのセリフだ。シロウ」
そう言って、布団を捲り、オレに手を伸ばす。
ミチルは服を脱がされ、病院の検査服のようなエプロン一枚だけの姿だった。
「抱け。抱いて、誓え」
「・・ミチル・・」
真っ直ぐな瞳に、射竦められ、唇から名前が零れた。
「離さないと、誓え。シロウ。オレを・・抱け」

この誘惑に、喉が焼ける。
ゴクリと生唾を飲み込み、オレは路流の手を掴んだ。
ゆっくりと立ち上がり、ベッドの上の路流の肢体に目が釘付けになった。
裾から伸び出た内腿、その白い肌に散らされた雄の痕。

抱き潰してしまえ、と、叫び声が聞こえた。

全てを排除して・・・それで、初めて、オレ達は始められる。
そう思っていた。

ミチルを自由にして。

それからだと。

いや、違う。ただ、単にオレは。

ミチルを抱いた男達に、嫉妬していただけなんだ。
憎くて、殺してやりたくて、されるがままの路流さえも、憎らしくて。

「シロウ・・?」
路流の声にボヤけていた視界が合わさる。
目の前には欲情の色を乗せ、潤んだ路流の瞳。

抗う術は無い。

オレは無我夢中で、路流の唇を自分のもので塞いだ。

荒々しく口付けながら、ミチルの前を肌蹴けさせ、その肌の上を手の指と平で撫で摩った。
「んんんーーー」
呻き声に、目を開けると、朱に染まった目元。
唇を離すと、オレの唾液を飲むように、ゴクリと路流が喉を鳴らせる。
「シロウ・・やめるな。続けろ」
「つづけるさ・・。やめられやしねえよ、もう」
耳朶をやわく噛み、耳の中を舐める。同時に、ズボンのベルトを緩め、自分のモノを引き出す。
路流が身じろぐと、膝丈の衣服が捲れ上がった。
そこには、あられもなくそそり立つ路流の性器が覗いていた。

今度は、オレが息を飲む番だった。
「マッパかよ・・」
露わになったソレをそっと握る、と、アッと路流が顔を横に振った。
「仕方、無いだろう・・っ脱げって言われたんだ」
ミチルは堪らないのか、腕の筋を立たせてギュッと枕を掴む。
「見せたのかよ?」
路流の今にも噴き出す寸前のモノを、ゆっくりと手の中で動かす。
「相手は・・アっ、医者だッ・・ん、・・シロウッ」
吐息混じりの言い訳に、わかっちゃいるが納得出来ない。
「全く、油断も隙もあったもんじゃねえ・・っ」
どれだけ、男を煽るのか。
一体何人を虜にすれば、気が済むのか。
「マジだったら、殺す」
「ンッ・・潰す気か・・?」
張り詰めた性器を握る手に思わず力が入り、路流が口端を引き上げた。
「それも、いいか・・使いモノにならなくなった方が、話が早い」
苦しそうに眉間に皺を寄せ、大きく喘ぎながらオレの前で、両膝を立てた。
路流の全てが、オレの前に露わになる。
男達を咥え込んできた場所は、どれだけの男をここへ跪かせてきたのか、おびただしい数のキスマークの痕で埋め尽くされていた。
凄絶な光景だ。
一人の男の股ぐらを、刺青を背負った男達が何人もで奪い合い、競い合い、ここにしゃぶりついたのだ。
「女王蜂みてえ・・」
思わず呟いた口を、手で抑えた。
「シロウ・・?」
オレの膝を、路流の爪先が撫でた。

その膝の裏に手を入れ、片足だけ、胸に付く程上げさせる。
「シロウ・・・!」
ミチルの顔が羞恥に歪む。まるで、憎たらしいという顔をする。
憎いのはこっちも一緒だ。

なんで、アンタと兄弟なんかに生まれたんだ。

なんで、アンタは易々とヤクザになんかなったんだ。

なんで、アンタはオレじゃないヤツに抱かれたんだ・・!

拓いた窄まりへ、何の予告も無しに、勃起を押し付けた。
「あ・・!!シロウ・・ッ!」
グイと無理やり腰を突き出すと、引き攣り捲れるように緋肉が割れた。
「アツイな・・。ミチル・・ドクドクいってる」
解しても無いし、濡れてもないから、力尽くでも先端しか入らない。
「あ・・ふ・・」
痛みを堪え、なんとか息を吐き、路流がオレを必死に受け入れようとする。
その健気な表情に、顔が弛んだ。
「欲しいか・・?ミチル?もっと欲しいか?」
「・・欲しい・・っシロウが欲しい・・っずっと、欲しかった・・シロウだけ、シロウだけが欲しい・・っ」
そう泣きながら、オレの背中と腰を抱き寄せ、自ら、もっと自分の中へ引き込もうとする。
グッと腰を掴まれて、更に結合が増した。
「すげえ・・ミチルと、繋がってる・・。ミチルの中に・・いる」
「シロウ・・っ」
路流の手がオレの首に回った。今度は唇を奪い合いながら、腰を揺らし、より挿入を深くする。
ズルズルと路流の腹の中を貫きつつ、路流の勃起を握りしめた。
強く握れば握る程、路流のモノがビクビクと震える。
強く握ったまま、ゆっくりと扱いてやると、生暖かいモノが指を伝った。
路流の蜜口から出た先走りが、水のようにオレの指の間を滴り落ちていく。
「ミチル・・」
「シロウ・・シロウ・・っ」
目の焦点の合わない路流が、痙攣しながら腰をカクカクと動かしている。
小さく喘ぎながら、まだ半分も挿れてないのに、路流はイッてしまったようだった。

ドライ・・ってやつか・・

すると、路流の身体に変化が起きた。
一回、ドライで達した路流の全身から力が抜け、無理な挿入に引き攣れていた緋肉が弛み、その先の挿入が楽になる。
なら、この隙に。体重を掛けて、根元まで一気に路流の男膣の中を貫いていく。
「あ・・あ・・ア・・っ」
顔を横に振って、いやいやする路流を押さえつけ、再び唇を重ねた。
深く大きく腰を動かして、徐々に抽挿のスピードを上げていく。
刹那。
「ア、ーーーッ・・ひっ・・ひっ・・ダメ・・シロウっ」
すぐに路流が背中を仰け反らせて、熱い白濁を噴き上げた。
が、オレは抽挿を止めず、腰を動かし続ける。
「だめ・・だめ、シロウ・・っシロウ・・っ壊れ、る・・」
「はえーよ・・ミチル」
「バカ・・ッ・・お前が相手じゃなきゃ・・こんな風じゃないっ・・こんな、簡単に・・イカないっ」
ハァハァと息を荒くしながら、ミチルはオレを喜ばせる。
精液で濡れた腹から、それを指先に掬って舌に乗せると、独特の雄の匂いが鼻から抜けた。
今度はそれを胸の突起に塗りたくって、僅かに芯を持って膨らんだ乳首を押し潰してやる。
「フ・・・ンッ・・・っや」
胸にも敏感に感じるのか、ミチルはビクビクと腰を震えさせた。
「ミチル・・ああ、イキたくねえ・・チクショウッ・・」
ここが何処だかも忘れ、オレはミチルの腰を掴んで引きつけ、ガンガン突き上げていく。
「もっもう、やめ・・!やめてくれ・・っあ、・・!」
薄暗い灯りの中で、ミチルが再び蜜を噴き上げた。
今まで、何度も路流と誰かのこんな場面に遭遇して来たが、こんな路流の泣き声を聞いたのは、確かに初めてかも知れない。
身を捩り、興奮に顔を染めて、爪先までシビレさせる。
「シロウ・・・!ヤメ・・・!死、ぬ・・・!!」
呼吸が止りそうな程、全身の筋肉が収縮し、路流が手足を振って暴れようとするのを抱き留め、その最奥で、オレも勢い良く精を吐き出した。
二人でゼーゼーと荒い呼吸をしながら、ベッドの上に頽れた。
「すげえ出た・・!あ、ミチル・・ミチルっ・・ああ、まだ出る・・っ空っぽに、なりそう・・だっ」
そう笑ったら、路流が涙目で、オレを睨んだ。
「もう、・・本当に・・死ぬっ・・殺す気か、お前は・・!」
憎まれ口を叩きつつ、オレに口付けてくる路流が、愛しくて可愛くて、オレは病院だというのも忘れ、その後、抜かずの3発を路流に決め、そのまま寝落ち。
早朝の検温に来たナースに悲鳴を上げさせた。








「病院で・・・」
溜息混じりのキリサカの台詞に、思わず振り返った。
すると、ジットリとした目がオレを睨む。

2日後、路流は、体調特変無しで、胃薬だけ処方され退院した。
同じ病院に入院した品川の会長は、意識はあるものの、後遺症が残る恐れもありそうだという話で、暫くの間、入院が必要との事だった。

「まったく・・・」
キリサカのあからさまな溜息が聞こえる。
オレは、居たたまれず、早々に聞こえないフリをして、煙草を買いに行くと言って、事務所から逃出した。



「全く、極道向きじゃないですよ・・」
「仕方無いだろう?好きで入ったんだ」
窓際からシロウの姿を見留めたキリサカが呟く。
「本当に・・アナタにこそ、極道の器があると思いますよ。ミチルさん」
キリサカが路流に顔を向けると、にっこりと、路流が微笑み返した。
「河豚のせいだなんて・・笑わせてくれますよね、本当」
「いいだろ?どうせ、毒を持ってるって皆知ってるんだからな。それも、よりによって、極道の通夜の席でなんて、シャレが利いてるだろ?世間のいい笑いもんだ。まぁマスコミは怖がって、どこも報道したがらなかっただろうけどな」
ノートパソコンのキーを叩きながら、ペンを揺らすミチル。
「コーヒー」
「はい」
キリサカは、その部屋の続きにある、カウンターキッチンで、しっかりと豆から落としたコーヒーを淹れた。
「お前は、殺しより、コーヒーを淹れてる方が上手いんじゃないか?」
「そうですね・・。補佐は経営なんかより、殺しの方が上手そうですが」
皮肉を笑って、コーヒーを啜る。
「殺しちゃいないさ・・・。殺さなくてもいいって事に気づいただけだ。要は使い物にならなくすればいいってな」
「石田さんも、グルですか?」
路流の動揺を誘う質問。
「誰がそんな事を?」
知らないな、と笑うミチル。
「ここへ電話を入れたのが、あの人だったからですよ」
暫く、ミチルはコーヒーを楽しんでから、カップを置き、キリサカの顔を見上げた。

「世代交代は必要だろ?」
至極まともな意見に、キリサカは肩を竦めて見せた。

そんな事は微塵もアンタは思っちゃいないくせに・・・。
弟の手を汚させたくないから、重い腰を上げただけだろ。
なんて、弟に甘々な兄貴なんだ。

呆れていると、パソコンの電源を落とした路流が、椅子から立ち上がった。
「何処へ?」
「新幹部会へ、挨拶だ」
「石田会長の所ですね」
キリサカが車のキーを取り、先にドアを開ける。
扉を開けると、
「若頭」
と、事務所にいた組員達が一同に立ち上がり、路流に頭を垂れた。

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