センパイ

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23、誰の思惑?

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23、誰の思惑?

『抱きたいだろ?』
抱きたい?抱きたいって何だ?
セックスするって事?
セックスしたいって事?
オレが?
アイツと?
セックス?
アリエネーーーーーーーーッッ!
ツヅキ タカヒサ、16歳。高一。
目の前には、ヌクヌクと布団に包まるモリヤ。
熱のせいで、呼んでも起きやしねぇ。
つまり。
そういう事。
どうするオレ?

あのサッカー部の試合から、オレの視力には、モリヤ ナギ探知機というオプションがついた。
これが、またいい事がない。
オプションてのは、本体のレベルを上げてくれるモンのはずだ、フツウ。
それが、この機能のせいでオレのテンションは下がる一方だった。
その原因は、モリヤと一緒に視界に入るオトコ、ワタヌキ タツトだ。
他のヤツが気づかないのが不思議なくらい、モリヤにラブビームを送っている。
かわいくてかわいくて仕方が無いって感じに、ちょっかいを出す。
そのせいで、オレはこの二人がキスしてるシーンを、リプレイしてしまう訳だ。
思い出さなきゃいいのに。
人間の脳は削除する機能に欠けている。
だから、困る。
だから、オレがあの日、モリヤにキスした事も鮮明に記憶されていて、オレは何度も何度も夢に見る。
痛みに顔を歪めたモリヤが、オレの手を引く。
キスしてくれって涙を流す。(この辺はオレの脳が脚色してくれてる)
オレはイヤイヤをする(なんで自分からキスしてくれって言ってるのにイヤイヤするのか、この辺がオレの脳の脚色の適当さ)モリヤにキスする。
そんな朝は決まって、チンポが真っ赤に勃起している。
冷静に考えよう。
オレはモリヤが好きなのか?
イヤ、別に。
オレはなんでモリヤにキスしたのか?
う~ん、なんか、あの涙目見たら、勢いで。
なら、もう見ないようにすれば、そのうち忘れられるんじゃねーの?
・・・・そうだな。
もう見ない。
もう気にしない。
学校ではできるだけ教室から出ない。
そうすりゃ、そうそうモリヤ(達)に遭遇する事もなくなるだろう。
ヨシ。
オレは自分の視神経によぉく言い聞かせる。
大丈夫。オマエなら出来る。
出来なきゃ、メガネ外すぞ。
そしたら困るのオマエだぞ。(イヤ、オレなんだけど)
根性で乗り切れ!
もう二度とオレの視界へアイツ(ら)を入れるな!
そう。オレの脳は順調にアイツらを排除出来つつあった。
出来るだけイヤな妄想も抱かず、穏やかに過ごせたのだ。
それが、たった一日だったとしても。

「あ、センパぃ」
「名前で呼べよ」
「・・タツ、と」
タバコを忘れたオレが引き返して来た屋上。
屋上の澄んだ風が聴覚を鈍らせた。
一瞬、何か聞こえた音に、オレは動きを止める。
誰かいる?
「あ、ヤメっろ」
「バカ。このままじゃ戻れねーよ」
!!
モリヤと、・・・ワタヌキ!
オレは愕然と、膝をついてうな垂れた。
なんでオレはこんな場面にばっか・・・しかもモリヤの・・・!!
なんなんだよ?
オレにどうしろって言うんだよ?
こんな状況で、どうやって忘れろって!?
「センパイッ」
「名前」
「あ、・・た、ツト」
「うん」
オレが苦悩している間にも時間は着々と進行する。
ヤバイ。
冗談じゃねぇぞ。
誰がコイツらのフィニッシュまで見(聞き)届けるか!

オレは震える膝を立てて立ち上がる。
ドアを目指して、そこにカネダ先輩がいた。
空いた口が塞がらない。
なんて堂々と覗いてやがる!
オレなんて反対側で声が聞こえてるのもヤバイってのに、この人は堂々と!!
オレはカネダ先輩をひっつかまえて、ドアの中へ入った。
ニンマリ笑うこの人に、本気で殺意が芽生えた。
しかも、やっとで言えた、オレの告白に、カネダ先輩は、「『それだけかよ』(がっかり)」。
がっかりしやがった!!
そりゃ、あんたの武勇伝に比べりゃ耳クソみたいなもんだろうよ!
でもな、オレだって信じられねーけど。
それでも、モリヤを組み敷いた時の興奮は、並みじゃなかった。
あんたみたいに徹底的にオニになんてなれなかったけど、それでも、オレにはアレ以上に興奮した事なんて無かったんだ!
畜生!
今まで考えないようにしてた事が、一気に吹き出す。
キモチが抑えられない。
今なら、屋上に戻ってワタヌキだって殴れそうだ。
そうだ。
そうなんだよ。
気に入らねーんだよ!あの目!モリヤにだけするやさしい目!
そんな目でアイツを見るんじゃねーよ!
大事にしてるような顔するんじゃねーよ!
余計に手が出せなくなるんだよ・・!
モリヤが笑ってると、オレなんてどうでも良くなってくるんだよ。
そうやって、諦めてくんだ・・・。
ああ、オレって馬鹿。馬より鹿よりアホ。
誰なんだよ?
オレをこんな目に合わせるヤツは。
なんでこんな巡り合わせなんだよ?
オレをこんな苦しめて誰か得するのかよ?
そんなオレの耳元に先輩が囁いた。
「抱きたいだろ?」
オレの頭の中をソレだけがコダマする。
何回も何回もコダマするソレは、そのうち自分の声になっていた。

抱きたい。
抱きたい。
抱きたい。
モリヤを抱きたい。

抱いたら、少しはオレも救われるだろうか?

その夜は、徹夜でモリヤをレイプする妄想。
明け方には馬鹿らしくなって、格(闘)ゲー(ム)。
オレにはやっぱ、ハッピーなモリヤしかいらないらしい。
わんわん泣かせてセックスするなんて萎える。
マジで。
オレはカネダ先輩にはなれないらしい。
逆に羨ましい。いや、ウソ。
羨ましくなんかない。
あの人が背負ってるモノが何か知らないけど、
フツウじゃないのはわかる。
なんであんな方向を向いて歩いてくのか、自分をイジメながら笑ってる。
イッテルよ。
いっちゃってる。
オレにはムリだ。
自分で喜んで崖から飛び降りてく人に少しアコガレタ。
しかし。
やはり誰の思惑なのか、オレはとことん追い詰められる運命にあるらしい。
今朝(かなり早朝)、オレはもう、モリヤが幸せなのが一番いい、と答えを出した。
それを。
一番前のオレの席。
そこへ一通の茶封筒。
「なー、ツヅキってモリヤと同じ駅だよな?っていうか家近い?」
北村だ。よくモリヤと一緒にいるサッカー部の奴。
「まぁ、近い方かもな。なんで?」
「アイツ今日休みでさ、なんかオリエンテーリングの申し込みにハンコが無かったっつって、届けて貰えると助かんだけど」
休み?
そうか、今日休んでたのか。
オレは今日も(教室に)引き篭もりしてたから、そんな事にも気づかなかった。
ついに熱が出たか。
「じゃ、よろしく」と、北村はさっさと廊下へ出て行く。
「ちょ、待てって!」
シカトすんな!
オレはモリヤの家に行けるような資格ねーんだよ!
なのに北村はツレと笑いながら行っちまう。

誰だよ。オレを試してるのかよ。

部活をさぼって、電車に駅5つ分ボーっと揺られて辿りついた家には、モリヤの妹。
そうだ。この手があった。
「モリヤの同級生なんだけど」
オレは妹に手紙を渡そうとカバンを開けた。
「お兄ちゃんなら上の右のドアだよ。ツヅキ先輩」
オレは驚いて目を瞠る。
妹はニコニコしてすぐ近くの部屋へ入って行ってしまった。
オレは観念してガサゴソする手を止め、靴を脱いだ。
階段を昇りながら思う。
この状況で、オレに手を出すなって方がおかしいだろう。
そうだ。
これは、オレを苦しめた誰かが、あんまりオレが可哀想な事になってるから、やっぱ、オレにも幸せを分けてやろうって事になったんじゃないだろうか。

なら、話は早い。
イタダキます。
だってご褒美だろ?

開けたドア。
閉じられた遮光カーテン。
薄暗い部屋。
片付けられた部屋の中央には加湿器。
ベッドの脇、脱ぎ散らかされた服。
床に転がるポカリ。
「モリヤ」
オレはぐっすりと眠るモリヤを上から見下ろした。
暴睡。
オレは諦めて、鞄から封筒を取り出した。
置いて帰ろう。
だけど、何処に置けばいいか、考えた。
目立つ所に置かないと、オレがせっかく届けに来た意味が無い。
「センパイ?」
声に振り返ると、モリヤが熱そうに前髪をかき上げている。
「モリヤ」
「喉渇いた」
オレは落ちているポカリを取ってやる。
「飲まして・・。あ、でも染るか」
モリヤが笑って言う。
一瞬驚いたが、オレに言ったセリフじゃない、と気づいた。
だけど、オレを想って言った言葉に聞こえて、胸がチクリと痛くなる。
「・・いいよ。染つせよ。したら早く治るだろ」
オレはポカリの口を開け、一口含んだ。
枕元、モリヤの顔を挟むように手を付いて、顔を近づけた。
ゆっくり、口移しされる液体。
口付けたままで、モリヤの喉が動いた。
そのままベッドへ膝を乗せた。
モリヤが全て飲み込むのを待ってもう一度口付ける。
モリヤの舌がそこにあった。
オレより熱い体温のソレを軽く吸ってから舌を絡ませる。
「んー」
弱々しい抗議。
「何だよ・・まだ、鼻つまってんのかよ」
「ちょっと。あ」
オレはメガネを外して、モリヤの首筋に噛み付いた。
もう止まれやしなかった。
布団の中にオレも入って、めちゃくちゃに抱き寄せた。
「ふ、くすぐってぇ」
モリヤがクスクス笑って、体を離そうとする。
オレは自分のシャツのボタンを外して、モリヤの服を捲り上げて、ぎゅっと抱きしめた。
熱い体温。
ずっとこうしたかった。
ずっと、こうやって抱きしめたかった。
肌が直接触れて、オレは完全に勃起していた。
「センパイ、冷たくて、きもちいー」
モリヤがオレの背中に手を廻す。
体が隙間無く絡み合った。
『センパイ』
オレは、センパイじゃねーんだよ。
言ってやろうか。
言ったらどうなる?
センパイじゃないけど、きもちいーって言ってくれるか?
「モリヤ」
と、声を掛けた時だった。
ドカ!!
モリヤの足の裏が腹を蹴った。
その勢いでベッドから突き飛ばされる。
ドテって無様に尻餅をついたオレに、モリヤが半身起こして、ドスの効いた声で喋り出した。
「テメぇ。何勃起させてんだよ。誰のせいでオレが熱出して寝込んでると思ってんだ?テメぇが屋上でオレに突っ込んだせいだろうが・・・!昨日の今日で、家にまで来て、てめぇ・・!!」
やっぱ、オマエらあの後ヤッテたのかよ!
いや、今そんな事考えてる場合じゃないか。
いくら薄暗くても、はっきり覚醒したモリヤにオレがワタヌキに見えるわけがない。
ヤバイ・・!
オレはカバンを掴むと、そこから急いで逃げ出した。
走って走って走って、シャツが全開だった事にやっと気づいた。
手が震えてる。
外はまだ明るくて、小学生とかが川沿いで寄り道してる。
オレは片手でボタンを留めながら、噴出した。
なにやってんだ、オレ。
サイコウ。
サイコーだよ。
オレは沸き起こる笑いを止められず歩いた。
あー、いいキブン。
それが長続きしないなんて事はわかりきっていたけど。
オレのメガネと首に残した噛み傷が大波乱を呼ぶ。
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