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24、首に咬み傷
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24、首に咬み傷
白いネットを揺らしボールは勢いを無くす。
全ての時間が止まり、体は感情を開放する。
真っ青な空に叫んだ喜びを今も忘れない。
汗だくの体を抱きしめ合い、無茶苦茶に振るわせた体。
いつだって、このゴール(前)に立てば、オレは支配者になれた。
ワタヌキタツト、17歳。高2。
誰でも知っているものなんだろうか?
体の中で闇色の煙が渦巻いている。
秋に見た天気予報の台風の写真みたいだ。
ただ、違うのはそこにあるのはソレが全てで、黒い事。
体の中でのた打ち回っている。
こんな気分を味わうのは、生まれて初めてだった。
初めてサッカーボールを蹴った日から、オレが今まで生きてきて、自分で選択した事はシュートと、モリヤ ナギを抱く事。
何百とネットを波立たせたシュートより、たった一ヶ月の付き合いのナギの方がオレを夢中にさせた。
この一ヶ月。
オレは殺したい程、ナギを愛してた。
この表現は今、正しくない。
今なら。
愛してるから、殺してやりたい。
ナギを殺してやりたい。
殺してやりたかった。
a.m.11:30--------
「モリヤのヤツ、昨日休んだくせにキスマークなんてつけてきてるんスよ」
(まさか!)
オレとアキタは一瞬だけ視線を合わせて、すぐ北村へ戻した。
アキタが笑いながら返す。
「やるな~、ガッコさぼってエッチしてたってか」
視線はオレに向けて訊いてくる。
(オマエじゃねーよな?)
当たり前だ。
「しかも咬み傷。カサブタになってるんスよ?
激しいオンナッスね~~~!野獣系スよきっと」
ケタケタと笑う北村に合わせて、アキタも笑い、
で?と聞き返した。
「アイツ、本当に熱出てたんじゃなかったか?」
それは、本当だ。
一昨日の放課後には顔を紅くして部活も休んで、駅までオレが送ってやって帰って行ったんだ。
「熱は今朝下がったって言ってましたよ。マジか知りませんけど。昨日のうちに熱引いてて、遊び行ってたんじゃないんですかね」
「なんじゃそりゃ、訊いたのか?」
アキタが顔から笑みを落とす。
それを見て、北村が慌てて否定した。
「いや、知りません。アイツ、聞いても、自分で引っ掻いたって言ってて・・・。でも、アレ、絶対キスマークですよ」
「へー。じゃ後で呼び出しかけるか。たまには先輩らしい事でもしてやらねーとな。部活休んで、遊んでたなんて、ズル許すわけにゃいかねーよな?」
アキタは意地の悪い笑みを浮かべて、北村を脅した。
「えーーー!?マジっすか。アキタ先輩ってそんな事するんですか?そんな、オレ、そんなつもりじゃ」
「あれ?知らなかったか?オレってコエェ~先輩なんだせ?だが、モリヤにはこの話は内緒だ、いいな?先輩命令」
アキタは口の前で、人差し指を立てた。
ゴクっと北村が喉を鳴らす。
「わかりました。じゃ、オレそろそろ戻ります」
少し青ざめた顔で笑って、北村は教室から出て行った。
「おう!また来いよ~」
アキタは机の上に座って、ブラブラ足を揺らしてから、オレの机を蹴った。
「んだよ!」
「冷静じゃん」
「冷静・・?冷静じゃねーよ。混乱だ」
「ああ、只今ロード中ってヤツか。今の話でサーバーダウンってか?」
「マジで・・・理解できねー・・。だって、有り得ねーよ・・・」
オレは口を手で覆って考えた。
キスマーク?
咬み傷?
とにかく気分が悪い。
ゾっと冷や汗が出て、背中が寒くなる。
顔を何度か掌で擦って、息を吐き出す。
「ワタヌキ、コンビニ行こうぜ」
アキタは腕時計を覗きながら言って立つと、さっさと歩き出した。
オレは考えがまとまらない頭で、アキタの後をついて行く。
ナギの体に誰が触った?
誰かが咬んで、傷をつけた?。
だから?
だから、なんだよ。
昇降口で人気がないのを見て、アキタが言う。
「オレの見解でいいなら言うぞ」
「やめろ」
「言わせろ」
「やめろよ。聞きたくねー」
「ああ、わかってるんだろ?昨日、モリヤは誰かにヤラれた。誰だ?」
「テメ、殺すぞ!」
オレは鉄製の下駄箱を蹴って、アキタの胸倉を掴んだ。
「んな場合いじゃねーだろ」
アキタがその手を押さえる。
「オマエ、今モリヤと話出来る自信あんのか?アイツの顔見て殴らねーって約束出来るのかよ」
ナギを殴る?
胸倉を掴んでいた手から力が抜けた。
「は?なんで、オレがナギを殴る?」
「オマエ、コエーんだよ。他の誰も近寄らせやしねーのに、モリヤだけを全てにしてねーか?アイツ無しんなっても、オマエ立ってられんのかよ?絶対ねーわけじゃねーんだぜ」
アキタがオレの手を放す。
「ねーよ。んな話・・・。」
「理想と現実を見ろ。今オマエが立たされてる現実から逃げんな」
「ナギを殴るわけがねぇ」
昇降口の引き戸を開けた向こう。
唐突に、カネダジュンヤの姿が目に入る。
オレの体が無意識に走り出す。
「ワタヌキ!!」
アキタの声がオレを追ってくる。
「カネダ先輩!!」
誰かの悲鳴みたいな声でカネダの名前が聞こえた。
掴まれた拳の痛みで、我に返る。
コンクリの上に押し倒したカネダの口元が赤黒い。
「見えるとこ、殴るんじゃねーよ、ドシロウト」
カネダが真っ赤な唾を吐き捨てた。
「で、オレが何した?」
「ウルセー!!」
メチャクチャに腕を振り上げた。
その肘がたぶんアキタに当たった。だが、構う事なく振り下ろした。二発三発、カネダが両腕でガードする上に殴りつけた。
その腕を一瞬でカネダに掴まれて、(たぶん巴投げの要領で)体が宙に浮いた。
視界が回って、繋がれた腕のせいで、オレはしこたまコンクリに背中を打ちつける。
「ツッーーーーー!!!」
背中の激痛にコンクリの上で転げまわった。
「この、クソヤロー・・・。アルティメット(ルール)かよ。いったい何のつもりだ?」
「オマエ、違うのか?昨日の」
アキタが顔を押さえながら言い、起き上がって、カネダを見上げた。
「昨日がなんだ?昨日は委員会でオレは優秀な生徒やってたぜ?」
カネダは指先で口元に触れて、また唾を吐いた。
「イッテェ・・。ザックリ切れちまったぜ。この馬鹿のせいで」
「カネダ先輩、大丈夫?」
カネダは後輩に手を引かれ起き上がると、オレを上から見下ろした。
「死んだか?」
アキタが笑う。
「死ぬかよ、コイツが。オイ!ワタヌキ、聞こえてんだろ?」
「テメーじゃ、ねーのかよ・・」
息を吐くだけで、痛みに顔が歪んだ。
「何がだ?いったい何の話だ?言えよ、コラ、寝るんじゃねえ」
カネダが、オイ!と、オレの肩を蹴る。
「ムリ言うな・・」
背中を強打したオレの意識はそこで切れた。
ナギ。
オレは壊れた。
こんな真っ黒な世界初めて見た。
オレの体は内側から真っ黒になっていく。
広げた掌さえも黒くなっていく。
終わりだ。
なにもかもが終わりに思えた。
ああ、わかった。
やっと、わかった。
これが、どんな感情か。
絶望だ。
絶望。
これが、この気持ちがそうなんだ。
今まで味わった事のない気分だ。
ナギ、オマエを失うって、こんな気分なのか?
オマエを誰にも取られたくないって気持ちが、オレをこんな気分にさせるんだ。
どうしてだよ?
オマエ、なんで、誰に、そんな事させちまったんだよ?
オトコのくせにヤられてんじゃねーよ。
誰だ?オマエは嫌じゃなかったのか?
ナギ、オマエはオレ以外にヤられてイったのかよ?
「アキタさん、ワタヌキセンパイ起きたみたいデスヨ」
「チキショ、起きるならもう少し早く起きろよったく」
そこは見慣れた天井。
それよりなにより、ナギの声。
「ナギ」
「じゃ、モリヤ、オレは戻る。後、ヨロシクな。しっかり説明しろよ」
「え、説明って・・」
ナギの困ったような声。
腕を上げてみた。痛みはなかった。その手でナギを探す。
「センパイ」
ナギの手がオレの手を掴んだ。
「オレ、誰にもヤラれてねーよ。本当に、自分で引っ掻いただけだし」
ナギの視線が泳いだ。
「じゃ、見せてみろよ」
見つめた目はいつもより歪んで光った。
「・・・ヤだ」
「なんで」
「なんでじゃねーよ!あんた、コンクリートの上にブン投げられて、もしかしたら死んでたんだぞ!何考えてんだよ!オレがどんな心配したと思ってんだよ!」
「・・・それと、これと、関係ねーだろ」
オレはナギの首筋に貼られた絆創膏を撫でた。カリっと爪を立てて引っぺがす。
「イッ」
首を押さえようとするナギの手を、掴んで引き寄せる。
オレの上に被さるようにナギを引き寄せると、至近距離で見たナギの顔は、瞼がギュッと閉じられてた。
そのナギの首に、赤紫色の痣がある。
噛んで、吸われた跡がその首にクッキリと浮き出ていた。
何秒経ったろう。ジっとオレはそれを見つめてた。
ソレがそこにある事が信じられなかった。
見えているのに、信じられなかった。
オレ以外のヤツがナギに残した跡。
「でも、ヤラれたわけじゃねー!オレは、た、タツトにしかっ」
「ナギ」
「タツトにしかっ」
ナギがオレを抱きしめてくる。
「だから、だからヤメロよ。ケンカするな。誰だっていい。こんなもんなんでもねーし。あんたが約束してくんなきゃ、オレは、何も話さない。これはただの引っ掻き傷だっ」
「ナギ、オレだって、別に意識して殴りに行ったワケじゃねえ。アイツの顔見たら、殴ってた。それだけだ。だいたいアイツじゃねーんだろ?」
スンとナギが鼻を啜る。
「・・カネダさんじゃねーと思う」
「『思う』?」
「・・・オレ、・・・熱で、ボケてて、・・・アンタだと思って、キス・・・して・・・ゴメン!!」
涙が伝った顔を上げて、ナギが体を離した。
「なんで、間違えんだよ?オレのキスくらい覚えろ」
「部屋、暗くて、寝起きで、・・・キスしてくるのなんて、アンタだとしか思えなかった・・。でも、オレが起き上がったら、イキナリ逃げてったから・・変だなって思ってた・・」
ナギは俯いて、目元を手の甲でこすった。
「キスだけかよ」
「うん」
「ナギ、キスしろよ。死ぬ程抱いてやるから」
ナギが顔を向けて、その目からスッと涙の筋が引いた。
線は唇を辿り、膨らみを撫でて、その下へ雫となって落ちた。
落ちた先はナギのタイで、その雫の跡だけタイの色を濃くする。
その目を再び手の甲で拭って、ナギが上着を脱いだ。
バサバサとその場に二人で脱ぎ捨てて、ナギはオレの上へ這い上
がると口付けてから言った。
「死ぬまで、ヤって」
「死んだら、一緒に埋めてもらおうぜ」
ナギの髪に指を絡ませて引き寄せて、もっと深く舌を入れた。
「・・・んっんっ」
「ナギ」
オレは首筋の噛み傷を舌で舐めてからきつく吸い上げた。
「い、イタっセンパイ、イ・タイ・よっ」
荒い吐息と抗議。
「許せネェよ。ナギ。オマエの体に触ったヤツがいるなんて許せねえ。殺してやりたい。オマエも殺してやりたい。」
言いながら、体を入れ替える。
「殺していいよ。タツトになら、殺されたい」
オレはキスしながらベッドヘッドの引き出しから、ジェルを取り出した。
オレもナギもギッチギチに勃起してる。
白光りする缶をあけて、たっぷりとジェルを指に乗せた。
「膝、開けよ」
ナギはオレから顔を背けて、自分の膝を抱えた。
その肉の入り口に指が触れると、ビクンと震え、指の意図を知ると、真っ赤な口が開き始めた。
指を少しうねらせるように曲げ伸ばししながら奥へ潜らせた。
だが、肉の壷がソレを嫌がって締め付けてくる。
それでも、オレはナギのコリっとした前立腺まで指を届かせてからジェルを塗りつけた。
ナギの体がブルっと震える。
「あ、つ、・・。中が熱い・・」
うなされるように呟いたナギの体を上下逆さまに、顔の上へ跨がる。
「しゃぶれ」
「た、つと」
ナギは目を薄く開けて、オレを両手で握ると舌でタマの方から舐め上げた。
オレはナギの舌の感触に息を殺して、自分もナギのチンポにしゃぶりついた。
「んんん!!」
「もう我慢汁が出てる。オレをイカせる前に、イクなよ」
言って、オレはナギをすっぽりと咥えこんでやる。
「あ、ああっ、そんな、したら、出るっ」
「出すな。オレをイカせてからだ」
「あ、んーーーーーっ」
イキそうな体を捩りながら、ナギが再びオレを咥えた。
熱い口腔で舌が裏筋を必死に嘗め回す。
両手で握りこまれたソレをナギはゆっくりと扱いた。
カリの括れを舌に巻かれて、吹っ飛びそうだった。
思わず、強く吸ったナギの先端が先に弾ける。
「んんんーーーーーー!!!」
ナギの喉の奥へ一瞬突き入れて、オレも射精した。
ビクビクと白濁を吐き出し膨れ上がる先端をきつく吸ってやる。
口の中にはまだ飲みきれない精液が粘ついていた。
唇を離して、ナギの顔の方へ体を直すと、真っ赤になってナギが口を押さえて泣いていた。
「飲めた?」
小さく首を振るその唇にオレは舌を入れた。
綺麗に飲み込むことの難しいその粘りを絡み合わせる。
一度離した唇に白い糸が引いた。
それをもう一度舐め取って、大きく息を吐いた。
「死ぬまで、ヤるからな」
ナギの両膝の間に入り、濡れた穴にグリっと先端を捻じ込む。
ナギの水っぽい目が大きく見開かれる。
その目元から雫が落ちた。
「っはッ・・センパイッ」
「なぁ」
ゆっくり勃起をナギの中へ沈めていく。
「あ、あ、」
「マジで」
「うぅっはぁ、あっうっ」
「ヤられてねえ?」
ぴっちりと腰を合わせて、腕を引き寄せた。
「ヤってない・・!」
「来いよ」
「まだ、キツ・・!」
オレの上に引き上げた腰がズルっと落ちた。
「アぅッ」
「キツいなら広げてやるよ」
乗せたまま、腰を回した。
「ア!!」
力の抜けたナギの頭がオレの肩へ乗る。
「ん、ん、あ、あ、セ、ンパィ・・センパイッ」
凭れたままでナギが、オレの肩へ噛みついた。
「・・・ツっ」
「ふ・・・すげ、・・・オレ、の、だね。アッ、セン、パイ」
「アキタにバレるからな」
「いいよ、もう。・・・アアっセンパイ、裂けそうっすごい奥まで這入ってる!」
その腰を突き上げる。
「アアアアッッーーーー!!」
チンポの先にジワっと蜜が染み出る。
大人みたいに、愛してるって言えたら楽だろうって思う。
今のオレには愛してるって言葉じゃ足りない位いに、ナギが好きだ。
好きよりも愛してるよりももっと上。
それを伝えられる言葉。
なんて言葉?
「センパイ、一緒に、死のう?」
ナギの手がオレに伸ばされる。
ああ、ソレかも。
ナギの泣き腫らした顔。
額から瞼、頬から唇、唇から首筋、順に口付けた。
最後の最後はオマエしかいらないから。
「アキタに誰にも見つからないとこに埋めてもらおうぜ」
二人で少し笑った。
そして、死ぬまでセックスした。
白いネットを揺らしボールは勢いを無くす。
全ての時間が止まり、体は感情を開放する。
真っ青な空に叫んだ喜びを今も忘れない。
汗だくの体を抱きしめ合い、無茶苦茶に振るわせた体。
いつだって、このゴール(前)に立てば、オレは支配者になれた。
ワタヌキタツト、17歳。高2。
誰でも知っているものなんだろうか?
体の中で闇色の煙が渦巻いている。
秋に見た天気予報の台風の写真みたいだ。
ただ、違うのはそこにあるのはソレが全てで、黒い事。
体の中でのた打ち回っている。
こんな気分を味わうのは、生まれて初めてだった。
初めてサッカーボールを蹴った日から、オレが今まで生きてきて、自分で選択した事はシュートと、モリヤ ナギを抱く事。
何百とネットを波立たせたシュートより、たった一ヶ月の付き合いのナギの方がオレを夢中にさせた。
この一ヶ月。
オレは殺したい程、ナギを愛してた。
この表現は今、正しくない。
今なら。
愛してるから、殺してやりたい。
ナギを殺してやりたい。
殺してやりたかった。
a.m.11:30--------
「モリヤのヤツ、昨日休んだくせにキスマークなんてつけてきてるんスよ」
(まさか!)
オレとアキタは一瞬だけ視線を合わせて、すぐ北村へ戻した。
アキタが笑いながら返す。
「やるな~、ガッコさぼってエッチしてたってか」
視線はオレに向けて訊いてくる。
(オマエじゃねーよな?)
当たり前だ。
「しかも咬み傷。カサブタになってるんスよ?
激しいオンナッスね~~~!野獣系スよきっと」
ケタケタと笑う北村に合わせて、アキタも笑い、
で?と聞き返した。
「アイツ、本当に熱出てたんじゃなかったか?」
それは、本当だ。
一昨日の放課後には顔を紅くして部活も休んで、駅までオレが送ってやって帰って行ったんだ。
「熱は今朝下がったって言ってましたよ。マジか知りませんけど。昨日のうちに熱引いてて、遊び行ってたんじゃないんですかね」
「なんじゃそりゃ、訊いたのか?」
アキタが顔から笑みを落とす。
それを見て、北村が慌てて否定した。
「いや、知りません。アイツ、聞いても、自分で引っ掻いたって言ってて・・・。でも、アレ、絶対キスマークですよ」
「へー。じゃ後で呼び出しかけるか。たまには先輩らしい事でもしてやらねーとな。部活休んで、遊んでたなんて、ズル許すわけにゃいかねーよな?」
アキタは意地の悪い笑みを浮かべて、北村を脅した。
「えーーー!?マジっすか。アキタ先輩ってそんな事するんですか?そんな、オレ、そんなつもりじゃ」
「あれ?知らなかったか?オレってコエェ~先輩なんだせ?だが、モリヤにはこの話は内緒だ、いいな?先輩命令」
アキタは口の前で、人差し指を立てた。
ゴクっと北村が喉を鳴らす。
「わかりました。じゃ、オレそろそろ戻ります」
少し青ざめた顔で笑って、北村は教室から出て行った。
「おう!また来いよ~」
アキタは机の上に座って、ブラブラ足を揺らしてから、オレの机を蹴った。
「んだよ!」
「冷静じゃん」
「冷静・・?冷静じゃねーよ。混乱だ」
「ああ、只今ロード中ってヤツか。今の話でサーバーダウンってか?」
「マジで・・・理解できねー・・。だって、有り得ねーよ・・・」
オレは口を手で覆って考えた。
キスマーク?
咬み傷?
とにかく気分が悪い。
ゾっと冷や汗が出て、背中が寒くなる。
顔を何度か掌で擦って、息を吐き出す。
「ワタヌキ、コンビニ行こうぜ」
アキタは腕時計を覗きながら言って立つと、さっさと歩き出した。
オレは考えがまとまらない頭で、アキタの後をついて行く。
ナギの体に誰が触った?
誰かが咬んで、傷をつけた?。
だから?
だから、なんだよ。
昇降口で人気がないのを見て、アキタが言う。
「オレの見解でいいなら言うぞ」
「やめろ」
「言わせろ」
「やめろよ。聞きたくねー」
「ああ、わかってるんだろ?昨日、モリヤは誰かにヤラれた。誰だ?」
「テメ、殺すぞ!」
オレは鉄製の下駄箱を蹴って、アキタの胸倉を掴んだ。
「んな場合いじゃねーだろ」
アキタがその手を押さえる。
「オマエ、今モリヤと話出来る自信あんのか?アイツの顔見て殴らねーって約束出来るのかよ」
ナギを殴る?
胸倉を掴んでいた手から力が抜けた。
「は?なんで、オレがナギを殴る?」
「オマエ、コエーんだよ。他の誰も近寄らせやしねーのに、モリヤだけを全てにしてねーか?アイツ無しんなっても、オマエ立ってられんのかよ?絶対ねーわけじゃねーんだぜ」
アキタがオレの手を放す。
「ねーよ。んな話・・・。」
「理想と現実を見ろ。今オマエが立たされてる現実から逃げんな」
「ナギを殴るわけがねぇ」
昇降口の引き戸を開けた向こう。
唐突に、カネダジュンヤの姿が目に入る。
オレの体が無意識に走り出す。
「ワタヌキ!!」
アキタの声がオレを追ってくる。
「カネダ先輩!!」
誰かの悲鳴みたいな声でカネダの名前が聞こえた。
掴まれた拳の痛みで、我に返る。
コンクリの上に押し倒したカネダの口元が赤黒い。
「見えるとこ、殴るんじゃねーよ、ドシロウト」
カネダが真っ赤な唾を吐き捨てた。
「で、オレが何した?」
「ウルセー!!」
メチャクチャに腕を振り上げた。
その肘がたぶんアキタに当たった。だが、構う事なく振り下ろした。二発三発、カネダが両腕でガードする上に殴りつけた。
その腕を一瞬でカネダに掴まれて、(たぶん巴投げの要領で)体が宙に浮いた。
視界が回って、繋がれた腕のせいで、オレはしこたまコンクリに背中を打ちつける。
「ツッーーーーー!!!」
背中の激痛にコンクリの上で転げまわった。
「この、クソヤロー・・・。アルティメット(ルール)かよ。いったい何のつもりだ?」
「オマエ、違うのか?昨日の」
アキタが顔を押さえながら言い、起き上がって、カネダを見上げた。
「昨日がなんだ?昨日は委員会でオレは優秀な生徒やってたぜ?」
カネダは指先で口元に触れて、また唾を吐いた。
「イッテェ・・。ザックリ切れちまったぜ。この馬鹿のせいで」
「カネダ先輩、大丈夫?」
カネダは後輩に手を引かれ起き上がると、オレを上から見下ろした。
「死んだか?」
アキタが笑う。
「死ぬかよ、コイツが。オイ!ワタヌキ、聞こえてんだろ?」
「テメーじゃ、ねーのかよ・・」
息を吐くだけで、痛みに顔が歪んだ。
「何がだ?いったい何の話だ?言えよ、コラ、寝るんじゃねえ」
カネダが、オイ!と、オレの肩を蹴る。
「ムリ言うな・・」
背中を強打したオレの意識はそこで切れた。
ナギ。
オレは壊れた。
こんな真っ黒な世界初めて見た。
オレの体は内側から真っ黒になっていく。
広げた掌さえも黒くなっていく。
終わりだ。
なにもかもが終わりに思えた。
ああ、わかった。
やっと、わかった。
これが、どんな感情か。
絶望だ。
絶望。
これが、この気持ちがそうなんだ。
今まで味わった事のない気分だ。
ナギ、オマエを失うって、こんな気分なのか?
オマエを誰にも取られたくないって気持ちが、オレをこんな気分にさせるんだ。
どうしてだよ?
オマエ、なんで、誰に、そんな事させちまったんだよ?
オトコのくせにヤられてんじゃねーよ。
誰だ?オマエは嫌じゃなかったのか?
ナギ、オマエはオレ以外にヤられてイったのかよ?
「アキタさん、ワタヌキセンパイ起きたみたいデスヨ」
「チキショ、起きるならもう少し早く起きろよったく」
そこは見慣れた天井。
それよりなにより、ナギの声。
「ナギ」
「じゃ、モリヤ、オレは戻る。後、ヨロシクな。しっかり説明しろよ」
「え、説明って・・」
ナギの困ったような声。
腕を上げてみた。痛みはなかった。その手でナギを探す。
「センパイ」
ナギの手がオレの手を掴んだ。
「オレ、誰にもヤラれてねーよ。本当に、自分で引っ掻いただけだし」
ナギの視線が泳いだ。
「じゃ、見せてみろよ」
見つめた目はいつもより歪んで光った。
「・・・ヤだ」
「なんで」
「なんでじゃねーよ!あんた、コンクリートの上にブン投げられて、もしかしたら死んでたんだぞ!何考えてんだよ!オレがどんな心配したと思ってんだよ!」
「・・・それと、これと、関係ねーだろ」
オレはナギの首筋に貼られた絆創膏を撫でた。カリっと爪を立てて引っぺがす。
「イッ」
首を押さえようとするナギの手を、掴んで引き寄せる。
オレの上に被さるようにナギを引き寄せると、至近距離で見たナギの顔は、瞼がギュッと閉じられてた。
そのナギの首に、赤紫色の痣がある。
噛んで、吸われた跡がその首にクッキリと浮き出ていた。
何秒経ったろう。ジっとオレはそれを見つめてた。
ソレがそこにある事が信じられなかった。
見えているのに、信じられなかった。
オレ以外のヤツがナギに残した跡。
「でも、ヤラれたわけじゃねー!オレは、た、タツトにしかっ」
「ナギ」
「タツトにしかっ」
ナギがオレを抱きしめてくる。
「だから、だからヤメロよ。ケンカするな。誰だっていい。こんなもんなんでもねーし。あんたが約束してくんなきゃ、オレは、何も話さない。これはただの引っ掻き傷だっ」
「ナギ、オレだって、別に意識して殴りに行ったワケじゃねえ。アイツの顔見たら、殴ってた。それだけだ。だいたいアイツじゃねーんだろ?」
スンとナギが鼻を啜る。
「・・カネダさんじゃねーと思う」
「『思う』?」
「・・・オレ、・・・熱で、ボケてて、・・・アンタだと思って、キス・・・して・・・ゴメン!!」
涙が伝った顔を上げて、ナギが体を離した。
「なんで、間違えんだよ?オレのキスくらい覚えろ」
「部屋、暗くて、寝起きで、・・・キスしてくるのなんて、アンタだとしか思えなかった・・。でも、オレが起き上がったら、イキナリ逃げてったから・・変だなって思ってた・・」
ナギは俯いて、目元を手の甲でこすった。
「キスだけかよ」
「うん」
「ナギ、キスしろよ。死ぬ程抱いてやるから」
ナギが顔を向けて、その目からスッと涙の筋が引いた。
線は唇を辿り、膨らみを撫でて、その下へ雫となって落ちた。
落ちた先はナギのタイで、その雫の跡だけタイの色を濃くする。
その目を再び手の甲で拭って、ナギが上着を脱いだ。
バサバサとその場に二人で脱ぎ捨てて、ナギはオレの上へ這い上
がると口付けてから言った。
「死ぬまで、ヤって」
「死んだら、一緒に埋めてもらおうぜ」
ナギの髪に指を絡ませて引き寄せて、もっと深く舌を入れた。
「・・・んっんっ」
「ナギ」
オレは首筋の噛み傷を舌で舐めてからきつく吸い上げた。
「い、イタっセンパイ、イ・タイ・よっ」
荒い吐息と抗議。
「許せネェよ。ナギ。オマエの体に触ったヤツがいるなんて許せねえ。殺してやりたい。オマエも殺してやりたい。」
言いながら、体を入れ替える。
「殺していいよ。タツトになら、殺されたい」
オレはキスしながらベッドヘッドの引き出しから、ジェルを取り出した。
オレもナギもギッチギチに勃起してる。
白光りする缶をあけて、たっぷりとジェルを指に乗せた。
「膝、開けよ」
ナギはオレから顔を背けて、自分の膝を抱えた。
その肉の入り口に指が触れると、ビクンと震え、指の意図を知ると、真っ赤な口が開き始めた。
指を少しうねらせるように曲げ伸ばししながら奥へ潜らせた。
だが、肉の壷がソレを嫌がって締め付けてくる。
それでも、オレはナギのコリっとした前立腺まで指を届かせてからジェルを塗りつけた。
ナギの体がブルっと震える。
「あ、つ、・・。中が熱い・・」
うなされるように呟いたナギの体を上下逆さまに、顔の上へ跨がる。
「しゃぶれ」
「た、つと」
ナギは目を薄く開けて、オレを両手で握ると舌でタマの方から舐め上げた。
オレはナギの舌の感触に息を殺して、自分もナギのチンポにしゃぶりついた。
「んんん!!」
「もう我慢汁が出てる。オレをイカせる前に、イクなよ」
言って、オレはナギをすっぽりと咥えこんでやる。
「あ、ああっ、そんな、したら、出るっ」
「出すな。オレをイカせてからだ」
「あ、んーーーーーっ」
イキそうな体を捩りながら、ナギが再びオレを咥えた。
熱い口腔で舌が裏筋を必死に嘗め回す。
両手で握りこまれたソレをナギはゆっくりと扱いた。
カリの括れを舌に巻かれて、吹っ飛びそうだった。
思わず、強く吸ったナギの先端が先に弾ける。
「んんんーーーーーー!!!」
ナギの喉の奥へ一瞬突き入れて、オレも射精した。
ビクビクと白濁を吐き出し膨れ上がる先端をきつく吸ってやる。
口の中にはまだ飲みきれない精液が粘ついていた。
唇を離して、ナギの顔の方へ体を直すと、真っ赤になってナギが口を押さえて泣いていた。
「飲めた?」
小さく首を振るその唇にオレは舌を入れた。
綺麗に飲み込むことの難しいその粘りを絡み合わせる。
一度離した唇に白い糸が引いた。
それをもう一度舐め取って、大きく息を吐いた。
「死ぬまで、ヤるからな」
ナギの両膝の間に入り、濡れた穴にグリっと先端を捻じ込む。
ナギの水っぽい目が大きく見開かれる。
その目元から雫が落ちた。
「っはッ・・センパイッ」
「なぁ」
ゆっくり勃起をナギの中へ沈めていく。
「あ、あ、」
「マジで」
「うぅっはぁ、あっうっ」
「ヤられてねえ?」
ぴっちりと腰を合わせて、腕を引き寄せた。
「ヤってない・・!」
「来いよ」
「まだ、キツ・・!」
オレの上に引き上げた腰がズルっと落ちた。
「アぅッ」
「キツいなら広げてやるよ」
乗せたまま、腰を回した。
「ア!!」
力の抜けたナギの頭がオレの肩へ乗る。
「ん、ん、あ、あ、セ、ンパィ・・センパイッ」
凭れたままでナギが、オレの肩へ噛みついた。
「・・・ツっ」
「ふ・・・すげ、・・・オレ、の、だね。アッ、セン、パイ」
「アキタにバレるからな」
「いいよ、もう。・・・アアっセンパイ、裂けそうっすごい奥まで這入ってる!」
その腰を突き上げる。
「アアアアッッーーーー!!」
チンポの先にジワっと蜜が染み出る。
大人みたいに、愛してるって言えたら楽だろうって思う。
今のオレには愛してるって言葉じゃ足りない位いに、ナギが好きだ。
好きよりも愛してるよりももっと上。
それを伝えられる言葉。
なんて言葉?
「センパイ、一緒に、死のう?」
ナギの手がオレに伸ばされる。
ああ、ソレかも。
ナギの泣き腫らした顔。
額から瞼、頬から唇、唇から首筋、順に口付けた。
最後の最後はオマエしかいらないから。
「アキタに誰にも見つからないとこに埋めてもらおうぜ」
二人で少し笑った。
そして、死ぬまでセックスした。
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