本気で好きになっていいですか

ジャム

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本気で好きになっていいですか3

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なんだ・・この状況?
どこ?ここ?ホテル・・?

なんとなく、一体自分はどうなっちゃったんだ的な、リアルにやばい雰囲気に、心臓がドクリドクリと高鳴る。
少し体を起こして自分の体を見ると、体のあちこちに赤い痣がついている。
「ああ・・!!こんなわかりやすいとこに!ウソだろ・・っ」
身体中に付けられたキスマークに愕然とする。
オレ達は職業柄、人前で脱ぐ事はザラで、チームメイトに裸を見られるのは日常茶飯事、当たり前のことだ。
だから普段からセックスの時は、痕をつけないでくれと、イク時でさえ気をつけていたのに、ジッターとのセッスクスが尋常じゃなかったせいで、ジッターを制止することが出来なかった。

ど、どうしよ・・っ
絶対・・男とヤったってバレ・・バレる・・!
いや、蚊だ。
蚊に刺されたって事にしよう。
南米の蚊がひどくてって事に・・するしかねえっ!

ひとまず、気持ちを落ち着けて、ベッドから下りた。
寝室からいくつも部屋が続いているようで、開け放たれたドアの向こうにも部屋があるのが見える。
とりあえず、着る物を探しているとベッドのサイドボードに自分の腕時計を発見した。
服を先に着るべきなのだが、まあ一応腕に嵌める。
ふと見た時計の表示に、血の気が一気に下がった。

アレ・・?
オレ、何時の飛行機に乗んなきゃいけないんだっけ・・?

時計は朝の10時過ぎをカウントしていたが、それは、飛行機の時間を1時間と丸一日も過ぎていたのだ。
「うわーーーーーーッ過ぎてる!めっちゃ過ぎてる!飛行機やばい!日本に・・日本に帰り損なった・・!!」
頭を抱えてベッドに仰向けに寝転がり青褪めるオレを、上から誰かが見下ろしてくる。
「じったー・・!」
名前を呼ばれ、甘い顔でニコッと微笑んだジッターがオレの服を持って立っていた。
「あ、ありがとうってか、ジッター、オレ日本に帰んないと・・、帰れなく・・、あー・・なんて言えばいいんだろっとにかく空港?でも、オレ、チケットって取れんのかな・・?」
ごちゃごちゃと呟いていると、ジッターが英語で「チケットなら大丈夫。心配いらない」と言った。
ただ、それだけ、他に何の説明も無いのに、ジッターがニッコリ笑うから、不思議と大丈夫な気になる。

そうか、とりあえず財布は持ってるし、カードもある。
ジッターが協力してくれそうだから、飛行機のチケットもきっと取れる。
ジッターの余裕の笑みからか、為せば成る的な前向きな思考が沸いてきた。
それから、ジッターに部屋の中にセットされていた食事に誘われ、一緒に食べた後、ジッターが出掛けると言う。
それにオレも付いて行くと、ホテルの前に用意された車に乗せられ、そのまま10分20分、30分車は走り続け、何やら町中からだんだん郊外に向かって車が進んで行く。
「ジッター?・・何処、行くんだ?」
さすがに不安になったオレがジッターの横顔に尋ねると、ジッターが口元を引き上げて上を指差した。
その瞬間、凄まじい轟音が車の真上に響き渡った。
思わず耳を塞ぎたくなる程の騒音の後、目の前に広がったのは広大な滑走路と飛行機だった。
「く、空港・・!?」
車を駐車場に入れるジッターの顔を見上げると、ジッターが親指を立てて自分の方へ振り、付いて来いとジェスチャーして車から下りた。
小さな飛行場は待合室も簡素で、飛行場のスタッフとジッターは二言三言、言葉を交わすと、さっさと滑走路へと歩き出した。
「ええっこっちって、飛行場の人しか入っちゃいけないんじゃ・・?いいのかよ?ジッター」
ジッターの背中を追いかけると、ジッターが不意に振り返り、オレに手を伸ばした。
長い手がオレの肩を抱き、飛行場特有の風圧の中、真っすぐ、その先にある飛行機へと向かって歩いて行く。
「うそ・・だろ?」
ジッターが世界で活躍する選手だって事は知ってる。
だけど、こんな、ホテルのスウィートに泊ったり、飛行機の自家用機を持ってたりするような金持ちだったなんて、全然知らなかった・・!!
すぐにオレは飛行機の中に乗るよう指示され、ジッターは駆けつけた乗務員から何か説明を受けていた。
飛行機の中は、コの字型のソファーと普通の座席の両方があって、何処に座ろうかと見渡していると、自分のバッグが座席の一つに置かれているのに気づいた。

あ~~!!オレのお土産・・!!
良かった・・ジッターに拉致られた後、どこやっちゃったのかと思った・・!
そういや・・オレの荷物ってどうなったんだろう・・っていうか、オレ、誰にも何にも連絡してねえじゃん・・!どうしよっそうだ・・携帯!!

慌ててバッグから携帯を取り出すと、着信6件にメールが10件入っている。
もっと大事になってるかと思ってただけに、拍子抜けして、メールを開くと、チームメイトの梶からで『ジッターとバカンスってマジ?いつ仲良くなったのお前。あとで説明な』とある。
もう一件も内容は似たようなもので『ジッターってあのジッターだろ!?サイン貰ってきてくれ!頼んだぞ』とか、『先に帰ってるぞ~~』とかだった。
着信も、チームメイトからばかりで、きっと揶揄いの電話か何かだろう。特にしつこく掛け直してる様子は無く、全て1日前のものだった。

ジッターって・・何者だよ・・。
っていうか・・オレが丸一日気絶してたせいか・・!?
それで・・ジッターがわざわざ・・日本のスタッフに連絡取ってくれて・・そんで・・もしかして、もしかしなくても・・自家用機で日本まで送ってくれるって・・こと・・?

バタンとハッチが締まる音に驚いて顔を上げると、ジッターが座席に座るよう席を指差した。
「ジッター・・あの、これ、日本に行くのか・・?」
ジッターもオレの隣の席に座り、オレの質問に「そうだ」と答えると、ジッターの手がオレの頭を引き寄せ、髪にキスをする。
見上げるジッターの目は、甘くて優しくて、その真っすぐな視線にオレは大いに戸惑った。

まずいって・・、まずいっしょ、これ・・。
こんな、ラブラブみたいな・・ほら、指、指組んで、手繋いじゃって・・!
だって、オレ、これじゃ・・オレ達、恋人同士みたいじゃないか・・!?

飛行機があっという間に加速し、西の空へ向かって飛び立った。
窓の外の景色が雲の中に見え隠れする頃、アナウンスが流れてジッターがベルトを外して、立ち上がる。
どこへ行くのかと見てると、ジッターが『こっちにおいで』と手招きする。
ソファー席の後方にあるドアを開けると、そこはには仮眠用なのかシングルのベッドがあった。

ま、まさか・・その、まさか・・か!?

恐る恐る見上げるジッターの目が細く微笑み、オレの腰に手が回される。
「ジッター・・あの、オレ、そういうつもりじゃ・・」
なんて日本語で言っても通じる訳もない。
ジッターの唇がゆっくりと下りてきて、オレの唇をやさしく塞いだ。
「ジッター・・っ」
「愛してる。愛してる、スワ」
情熱的で低く厚みのある声を耳元で囁かれて、オレは何も抵抗出来なくなる。
なぜなら、このキスとこの声で、ジッターと体を繋げたあの夜のことを鮮明に思い出してしまったからだ。
ジクジクと爛れた痛みが下腹に募り、刺激が欲しくて、尻の中が疼き始める。
きっと、これで最後だ。
そう思うと、自然とオレの体も動き出した。
なんの因果かわからないけれど、こんないい男に『愛してる』とまで言われちゃ仕方がない。
夢の国の一時のバカンスだと割り切って、後の事は終ってから考えればいいと、頭の中を切り替えた。
「ジッター・・!」
もう、どうにでもしてくれ・・と、自らジッターの体に抱きつき、抑えていた情欲を剥き出しにする。
そんなオレに、ジッターは嬉しそうに微笑むと、愛おしそうにオレの顔中にキスを降らせてくる。
「スワ、愛してる。愛してる」
英語で聞いているせいか、その言葉が恥ずかしくて堪らず、顔が真っ赤になったが、二人の間に言葉の壁があるせいで、慣れない英語を間に挟むしかなかった。
その言葉の辿々しささえも、もしかしたら、興奮に繋がっていたのかも知れない。

深く、体の奥までジッターを受け入れた体は、汗でびっしょりに濡れ、必死でシーツを手に掴んでいないと、襲い来る凄まじい快感に、あっという間に射精へと追い立てられてしまう。
本当に、一滴残らず、自分の精液をジッターに絞り取られてしまいそうだった。
「ジッター・・っジッター・・!」
嬌声を上げ続けたオレの喉はいつしか枯れ、数時間に及ぶ性交に耐えきれず、オレは、やはり意識を手放していた。
そうして、次に目が覚めると、そこは日本だった。
場所は、東京の調布にある飛行場。
結局、オレは裸で空の上を20時間以上飛んでいたという事になる。(途中で給油のため空港に降りていたのにも気づかなかった)
飛行機を降りて、小さなターミナルに向かう途中でジッターがオレを振り返った。
「スワ、オレの携帯番号だ。いつでも待ってるから電話してくれ」
ジッターがオレに番号の書かれたメモ用紙を差し出し、しきりにコールミーと繰り返す。
その意外な展開に、オレは唖然としてジッターの顔を見上げる。
「はは・・また、会いたいって、ことか・・」
そんなジッターの切なそうな顔を見たら、胸が締め付けられるような痛みに目頭が熱くなってくる。
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BL小説『センパイ』(本家サイト)
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