僕の体で神様を送ります。

ジャム

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神の来訪

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睡蓮がニコニコしながら、リュウトの両手を自分の顔から剥がした。

「リュウトの部屋は・・南南西ですね。出来れば、北北東の部屋で行いたいのですが・・」

「北北東???えっと・・あっちってこと?」

そこは玄関の横の納戸で、収納棚と掃除機やら除湿器やら、履かなくなったブーツや子どもの時使っていたスケボーなどなど、ありとあらゆる物がごっちゃと置かれていた。

「この上は?」

「ねえちゃんの部屋だけど」

「では、そこで」

歩き出す睡蓮の腕を掴み、リュウトは必死に引き留める。

「ちょ、ちょっと待った!それはヤバいって!部屋入ったらオレ殺される。っていうか、いったいどんな事すんの?」

睡蓮は少し躊躇い勝ちに口を開いた。

「瞑想を、行います」

「めいそう?」

「そうです。あなたは神の国と思念で繋がり、この世界の門を開くのです」

門!?
神の国!?


現実離れした台詞に、バカにしてんのか!?と、怒りたくなる。

が、今、目の前にしている現実こそが、現実離れしている現象の何物でも無い事に気付き、反論する気も失せた。


「睡蓮だけでも・・オレにとっては信じらんないくらい衝撃あんのに・・この先に、まだもっと信じらんない事が待ってるってのかよ・・」

考える事を放棄したくなって来たが、とにかく姉の部屋はまずいと、睡蓮を自分の部屋へ案内した。

が、本気で困っているのは睡蓮のようで、リュウトの部屋に到着した睡蓮は目を閉じて腕を組んだまま動かなくなってしまう。


まさか・・電池切れか?


そんな事を思って、思わず、睡蓮のほっぺをつっついてみる。

一度つっついても動かない。

二度、三度。

楽しくなってきて、もう一度と指を近づけようとして、


「待て。今少し考えてるから・・」
と、手を捕まえられてしまった。



うわ・・二重人格・・っ
なんで、こんな全然違くなっちゃう訳?
急に男らしくなるなっつーの・・
びびるワ・・



胸の動悸が激しくなるのに、睡蓮が気付き、クスリと笑う。


「な、なに?」

「いいんだな?」

「なにが・・?」

「オレにキスされて、裸にされて」

「わーーーーーー!!読むな!!読むな!!頼むから、今、心の中読むなーーー!!!」

両手で睡蓮の口を塞いだ。

が、その両手を今度は睡蓮が押さえ込む。

「動くな」

睡蓮の低い声、命令口調に、鼓動が早くなって、顔が熱くなる。


「あ」


小さく驚いて、目を瞑った。

水の精と彼は言ったが、その体には体温もあったし、肌の感触も人のように感じられた。


そう、それは、唇も同じで。


いつの間にか腕の拘束は解かれ、睡蓮の手がリュウトの顎を取った。

あ、と思った瞬間。

睡蓮の唇を自分の唇の上に感じた。

重なった柔らかな感触。

唇だけではなく、リュウトの鼻先が睡蓮の顔に掠って、リュウトの体はビクリと震える。

体が石のように硬くなり、呼吸さえ止まったリュウトの唇の隙間を、睡蓮の舌が割って這入った。

唇が開いた事で、再び息を吸う事が出来たリュウトだったが、他人の舌が自分の口の中に入ってきた事にパニックを起こす。


「ん・・!や・・!」


逃出そうとするリュウトの体を抱き締め、より深く唇を合わせようと、睡蓮がリュウトの体の上に伸し掛かった。

「リュウト・・もっと」
「や、だ・・!なん・・こんな・・っ」
「リュウト・・」
「ンン・・~~~ッ!」


リュウトは睡蓮に口の中を嬲られ、訳の分からない熱にどうしようもなく混乱する。


どうして、自分は睡蓮とキスをしているのか?
どうして、こんな事になったのか?


やだ・・!まずい、・・まずいよ・・!
このままじゃ・・っ
オレ・・っ


睡蓮の舌先で口蓋をくすぐられ、身震いする。
リュウトは、自分さえ知らない自分の中身を、睡蓮に暴かれていくような恐怖に目眩さえ覚えた。

やだ・・っ恥ずかしいっ
こんなの、ヤダ・・!

体の中心に熱が集まる。

それを知られたくなくて、リュウトは腕を突っ張り、必死で睡蓮の体を押し返した。


「やだってば・・!」
「リュウト・・?」
「なんで・・!なんでこんな事すんだよ!」


睡蓮は、大声で自分を拒絶するリュウトの手を握り、リュウトの心の中を覗く。
爆発しそうに大きな脈動と、不安や困惑、そして恐怖、といった感情が胸の内に溢れ返る。

これでは、上手くない。

睡蓮の目的は、リュウトの好みの姿に変身し、彼がつつがなく役目を行うため、酩酊状態へ導く事ーーー

そうして、神とリュウトが体の契りを交わすことで『神送り』は完成するーーー


そのために、リュウトが苦痛を感じないようサポートするのが自分の仕事だ。

なのに、リュウトを上手く誘導するどころか、逆に彼を怒らせてしまった。

この第一関門で、自分は躓いてしまったことになる。




「リュウト・・どうして怒るんです?私とキスするのは嫌ですか?」

「い、いや・・じゃ、・・ないけどっ理由を言って!なんで、急に・・キス?」
不安そうな顔を真っ赤に染めたリュウトの頭を、睡蓮が優しく撫でる。

「私にキスされても、イヤじゃない?」
「う、うん・・でも、急過ぎるよ・・訳わかんないし・・」
「リュウト・・私を好き?」
「え!?・・えっと・・よくわかんない・・」
「キスはしてもいい?」
「う、うん・・」


そこで、再び睡蓮の唇がリュウトのものと重なる。


「あ・・っ」
何度か啄むようにキスを繰り返した後、それはすぐに濃いものへと変わる。

口角を変え、濡れた唇を押し付け合い、口の中でお互いの舌を絡ませる。

人に触られたことのない場所を舐められて、ゾクリとする。

その上、睡蓮の舌が、唇が、自分を食い尽くす勢いで攻めてくる。



ちょ、やば・・
睡蓮、スゴい・・っ



どうやれば正解なのかわからない。
とにかくリュウトは睡蓮の激しく動く舌を追いかけるように舌を動かした。

「・・ん、・・・ん」

開きっぱなしの唇の端から溢れそうになったリュウトの唾液を、睡蓮が口角をずらして舐め取る。

「リュウト・・」

リュウトの体を、睡蓮が胸に抱き締める。
何度も何度も髪を梳き、優しく背中を撫で、唇を合わせた。


自分のキスによって、リュウトの体から力が抜けていく。

リュウトの中には、戸惑いはあっても、もう拒絶の反応は見られなかった。

それに安堵した睡蓮は、唇が触れるか触れないかの距離に離し、目を開けた。

口付けが解けたリュウトも息を短く喘がせながら、恐る恐る目を開く。

リュウトの顔を両手で慈しむように撫で、額を合わせ、リュウトの濡れた瞳と見つめ合った。



このまま、ゆっくり・・






「おい、そいつから離れろ」
すぐ傍から聞こえた男の声に、リュウトは飛び上がった。

見れば、リュウトの部屋の中に、紺色のスーツ姿の見知らぬ男が立っている。



だ、誰!?
いつの間に、家の中に!?




リュウトは慌てて、唇を手の甲で拭い、睡蓮から体を離した。

「な、なんで!?誰だよ!?」

突然の来訪者に、睡蓮は舌打ちしたい気持ちを抑え、彼の顔を仰ぎ見る。


見た目には20代後半のサラリーマン。
イケ面では無いが、醜男でもない。
だが、確かに普通の人間からは出ない、禍々しい雰囲気が体中から溢れている。



早い。

いくらなんでも早過ぎる。

まだ、リュウトは、何の準備も用意も出来ていない。

それでも事態は、非情にも着々と進んでしまう。


「リュウト・・こちらが、神様です」
「はあ!?」


リュウトは目を見開いたまま数秒、固る。
どこからどう見ても、七三分けの普通のサラリーマンだ。

「な、何?神様って・・?うそ・・」

「リュウト・・申し訳ありません。今からリュウトに儀式を行って頂きます」

「儀式!?何の!?」

何やら不穏な雰囲気に気づいたリュウトは、この場から逃出そうと腰を浮かせた。
その腕を男が掴み、リュウトの体を自分の方へ引き寄せる。
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