僕の体で神様を送ります。

ジャム

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親友

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あのお祭りの日から開けた、月曜日。

「オマエね。メールくらい返しなさいヨ」

休み時間に、リュウトの席の前に座ったテッタがリュウトの顔を覗き込んだ。

「あ・・ごめん」

浮かない顔のリュウトにテッタは本当に心配になって「なんかあったのか?」と小声になる。

テッタの心配そうな顔を見ていると、リュウトは堪らない気持ちになって、じわっと目に涙が浮かんできた。

が、言える筈も無い。

自分に起っているこの途方も無い話を信じて貰える自信が全く無かったし、しかも、男(神さま)に抱かれているという事実を打ち明けるには、相当の勇気がいる。

涙目になるリュウトに、テッタは立ちあがり、リュウトの腕を引いて教室を出る。

「テッタ・・」

ただ黙って手を引かれて、廊下を通り、階段を上がる。

屋上の直前の踊り場は、丁度人が2人座れるくらいのスペースしか無かった。

そこへ隠れるようにテッタとリュウトは座り、テッタはリュウトの手を握ったまま離さなかった。

無論、テッタには見えていないが、睡蓮も付いて来ていて、そのすぐ下の踊り場の壁に寄りかかり、二人を見上げる。

「リュウト。オレね。結構マジで心配してんだよ?」

その言葉に、リュウトの顔が歪む。

今にも涙が零れそうになる目元を、リュウトは手の甲で急いで拭った。

「だってさ、事故から、なんか変だし・・毎日一人でいるし、メール返さないし・・。それに、オレ、祭りの時、オマエが黒い服の奴と一緒にいるとこ見ちゃったんだ」

テッタの思わぬ台詞に、リュウトは驚き、テッタの目を見つめる。

「そいつが、もしかして、リュウトを元気なくさせてんじゃねえの?怖い奴かも知んないけど言えねえ話なのかも知んねえけど・・・話せよ!オレには話せよ!何でも聞くから!何聞いたってビビんねえし!オレら10年くらいの付き合いだろ!?オマエの面倒ならオレ見れるから。殺人以外だったら何でも協力してやるから・・」

テッタが握りっばなしになっていた手に力を入れて、リュウトの手を強く握った。

自分に頼れ、と豪語するテッタの力強い手に、リュウトは泣きながら笑ってしまう。

その笑顔に、テッタはリュウトの頭を撫でて「わかったのかよ・・?」と呟く。

リュウトは頷きながら、その拍子に零れてくる涙を拭う。

「なんか、ほんと、いっぱい色々あって・・ごめ、何から話せばいいかわかんないんだけど・・黒い服の人って、ちょっと歳いってる感じの人だった?」

リュウトの質問にテッタが「ちょっと白髪混じりのオッサンだった」と返した。

その返事に、リュウトは噴き出して笑ってしまう。

「な、なんだよ?笑うとこあったか?」

リュウトの破顔にホッとしつつも、テッタは頭が混乱する。

「いや、ごめん、嬉しくて・・その人は、大丈夫。オレの味方!あの祭りの日も、オレを揉め事から助けてくれたんだ。ごめん。言わなくてごめん。でも、まさかその人の事をテッタと話せるなんて思わなかった!嬉しいっ!すげえ、オレ、今、嬉しいよ」

そう言ってリュウトはテッタの首に抱きつく。

「なんなんだよ~っ祭りの時って~!やっぱトラブってたのかよっ」

「うん・・でも、助けて貰って・・。一緒にいてくれたんだ。ずっと」

さっきまでの青褪めたような顔とは違い、リュウトは仄かに顔を赤らめて笑った。

その表情に、さっきまでの深刻さはどこにいった?とテッタが、

「まさか、オマエ惚れたんじゃねえだろうな。そのオッサンに・・」

と、リュウトを訝しむ。

「え!!や、そんなんじゃないって・・・そんなんじゃ」

と、リュウトは視線を空中に彷徨わせた。

「あ~、もうその顔決定じゃん。大好きって書いてあるケド~?」

頬杖をつくテッタが、リュウトの顔を覗き込んで揶揄ってくる。

「テッタ!」

もう言うなって、リュウトが声を上げると、テッタが楽しそうに笑った。

「いいじゃん。オレ、リュウトが笑ってる方がいいもん。そんで、隠し事しないで、色々言ってくれたら、オレも嬉しい。ダメ?」

テッタの目が真っすぐにリュウトの目を見つめてくる。

リュウトは長い溜め息を吐いて、背中を壁に寄り掛かせて「全然ダメじゃない」と答えた。

テッタは前を向いたまま、膝を抱え直しながら前後に体を揺らし、

「じゃ、なんかあったらリュウトはオレに話して。オレ、何でも聞くから。オレ、リュウトの何でも屋だから」

と、宣言した。

そして、立ち上がると、リュウトに手を伸ばす。

その手を取ってリュウトはテッタに小さく聞き返した。

「もし。もしさ、ホントに、・・『好き』って、言っても・・テッタ引かない?」

「引かない」

テッタがリュウトの手を掴んで立ち上がらせ、「三時間目なんだっけ?」と階段を降りて行く。

リュウトは赤い顔を伏せて「ありがと。テッタ」と小さく囁いた。

そんなリュウトにテッタはピースサインを出して笑う。


テッタが友達で、良かった。


こんな風に、自分に気を掛けてくれる親友に、リュウトは感謝した。

そのテッタの向こう側に。

誰にも見えない睡蓮が、腕を組んで壁に寄り掛かり、リュウトをジッと見つめていた。

リュウトもその目を見つめ返す。

この数時間前、睡蓮はリュウトを無理やりに抱こうとした。

抵抗しても、強引に性器を勃たせられ、乱暴に扱かれた。

最後は、本気で相手を拒絶して突き飛ばすしか、睡蓮から逃れる方法は無かった。

「行かないんですか?リュウト」

睡蓮が階段を一段、二段と上り、動かないリュウトに近づいて来る。


睡蓮が伸ばした手に腕を掴まれ、リュウトは、その腕をなんとか引き戻そうと暴れた。

が、睡蓮に容易く両腕を拘束され、唇を合わせさせられる。

暴れるリュウトの髪を掴み、その喉元に睡蓮が噛み付くと階下から「リュウトー」と、テッタが呼んだ。

睡蓮が手の力を緩めた瞬間、リュウトは勢い良く階段を駆け降りて行く。



そのリュウトの後ろ姿に、睡蓮は更に苛立つ。

なぜ、こんなにもイライラするのか・・?
誰よりリュウトの近くにいるのは自分なのに。
あの死神のせいか。
アイツがリュウトを誑かした。
だからリュウトは・・・。

憂火に思慕を寄せるリュウトに、睡蓮の苛立ちが、自ずとリュウトへと向いてしまう。

大切な人だ。

今生で巡り会えたのは、奇跡でもなんでもない。

自分達がそういう定めに生まれたからだ。

例え、その記憶が彼に無くとも・・。

自分は、この運命を壊したくない。

なのに。

優しくできず、リュウトを酷く傷つけてしまう。

睡蓮は深く息を吐き出し、壁に凭れた。

どうして、あんな邪魔な奴とリュウトが出会ってしまったのか。

どうしようもない焦りが睡蓮の胸を掻き乱す。

「初めから、居なかった事にしてしまおうか・・」

そう口元を歪め、睡蓮はリュウトの後を追った。
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