僕の体で神様を送ります。

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戻ってきた睡蓮

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慣れない体勢で、うまく動けない。

それでも、憂火と密着する襞からは快楽を得られる。

与えたいと思うのに、自分ばかりが追詰められていき、リュウトは涙目で憂火の名前を呼んだ。

「憂火・・憂火・・」

熱っぽく名前を呼ばれ、憂火は何も返さず黙ってリュウトの身体を腕に抱いた。

肋骨が軋む程強く抱き締められて、リュウトは息を詰め、中の憂火を締め付けてしまう。

刹那。
ブルッブルッと大きく痙攣したような憂火の昂りを自分の中に感じ、リュウトは意識を下腹に集中する。

そこに幾度かに分かれ、放出される熱い飛沫。

無意識下で最後の一滴まで出し尽くそうと憂火の昂りが躍動した。

リュウトの頭上で憂火が、大きく息を吐き出す。

「憂火・・もう、出た・・?」

リュウトが聞くと憂火は渋々、「しょうがねえだろ」と、答えた。

そんな拗ねたような憂火の表情がおかしくて、リュウトの口元が弛んでしまう。

それから、自分の下腹を撫で「憂火の・・すごい、熱い、ね」と、嬉しそうに笑うから質が悪い。

憂火はリュウトの中で秒殺され、半ばヤケになって、リュウトを押し倒した。

「だから言ったろうが・・ヤルなって・・。オマエにしゃぶられただけで逝きそうだった」

「・・気持ちよかった?」

「ど下手クソだったけどな」

「ヒデエ・・」

そう文句をつけながら、ヤラれっぱなしでいられるかと、憂火が激しく腰を打ち付けてくる。

「あっヤっ・・!!!ゆ、ゆう、かっ・・ゆう、かっ!!」

大きく膝を開かされ激しく身体を上下に揺さぶられ、リュウトは憂火の腰に手を伸ばすと更に奥へ入れて、と懇願する。

リュウトとの密着度が増す。

憂火はリュウトの膝を押し上げ、更にリュウトの奥へと腰を打ち付けた。

肌がぶつかり合う音と、リュウトの中を憂火自身が出這入りする水音が部屋の中に響く。

いくらもしない内に、リュウトの体がガクガクと痙攣して白濁を放出すると、憂火もこれ以上は無いくらいにリュウトの中へと昂りを突き入れ、全ての精をリュウトの中へと撒き散らした。

「ゆうかぁ・・」

涙目のリュウトが憂火に手を伸ばしてくる。
その指と指を絡めて握り合い、憂火は荒い息を吐きながらリュウトの体の上に折り重なった。

ドクドクと胸が爆ぜ、お互いの心臓の音に身体を支配され、心地よい気だるさに、二人は静かに目を閉じた。





夜になっても、暮は睡蓮を連れて来る筈の時間に、なかなか現れなかった。

リュウトと憂火はベッドに寄りかかり、二人、肩を寄せて暮と睡蓮が戻ってくるのを待っていた。

「遅いな・・」

憂火の呟きに、ウトウトとしながらリュウトが「うん」と答える。

クッタリと憂火の肩へ寄りかかるリュウトの顎を掬って、憂火がイタズラに口づけると、リュウトが目を覚まし、少し寝ぼけた様子で、憂火の首筋を噛もうとする。

それを今度は憂火が「噛むな」と制し、またリュウトの唇にキスし、その頭を撫でて自分の肩へと抱く。

それ以上のことは、もう出来ない。

いつ暮が到着してもいいように身支度は済んでいる二人だが、心の中では、もう少し遅くてもいい、と思ってしまう。

だが、二時を回り、三時になり、完全に眠りに落ちたリュウトをベッドへ寝かせた憂火は、ベランダへ出るとタバコに火をつけた。

深く吸った煙りをゆっくりと吐き出し、空を見上げる。

街灯の灯のせいで、星は見えず、空はじっとりとした暗闇に包まれていた。

肉眼で見える星は、わずか。

それでも、空に瞬く光りの粒を見上げていると、どこかホッとするような切ないような人間らしい感情が胸の奥から湧いてくる。



「帰りたくねえな・・」



口を突いて出た独り言に、憂火は自分で驚き、噴き出してしまう。

暮が連絡も寄越さず、時間に遅れていることは、普通に考えれば異常な事態なのだが、今はそれを責める気にもならなかった。


急ぎたい訳じゃない。


出来れば、睡蓮の顔など見たくもないが、リュウトの守護者としての役目をしっかり引き継いで貰わなければならない。

そう考えて、ふと睡蓮とリュウトとはどういう関係なのか、疑問に思った。

睡蓮はリュウトに『神送り』をさせるためのオペレーターだ。

その睡蓮をリュウトは異様に心配し、オレに助けを求めた。

リュウトは、事故で死にかけた自分の命を救ってくれた睡蓮に、理不尽な『神送り』をさせられているのに、奴を大事に思っている・・?


なぜだ?



「前世の記憶ですよ」

顔を上げると、そこに現れたのは睡蓮、本人だった。

「リュウトには、潜在的に私を優先し崇めようとする意識があるんです」

憂火は目の前の睡蓮の雰囲気の変わり様に、寒気がして鳥肌が立った。

「・・ずいぶん、バージョンアップしてるじゃねえか?死神の溶液は旨かったかよ?」

「ええ。助かりました。大分、時間を先に進めることが出来ましたよ。ありがとう憂火」

睡蓮がにっこりと憂火の肩を掴み、一歩近寄るとその耳元へ呟いた。

「ご苦労。もう下がれ」

そう言い捨てると、睡蓮はそのままリュウトの部屋の中へ、吸い込まれるように消えた。

憂火は、睡蓮に掴まれた肩を見て、渋面を作る。

睡蓮の指が食い込み、酸で溶けたかのようにスーツの生地が焼け、微かに煙りが立つ。

その下にある憂火の肌は、軽く火傷を負い、赤く爛れを起こしていた。

憂火は短くなったタバコを口で噴かし、また煙を吐くと、リュウトの部屋の中へ戻ろうとガラス戸に手を伸ばした。

が、パキパキと音が鳴り、凍り付いたように部屋全体が睡蓮の結界の中に収まる。

「ッチ!」

手を弾かれ、舌打ちした憂火が、拳を握り振り上げる。

「憂火さん!」

その手首を、いつの間に来たのか、暮が掴んで止めた。

「もう、終わりです。帰りましょう」

そのまま、すぐには、腕を降ろせずにいた憂火だったが、暮に宥められ、渋々、憂火は水橋家のベランダから降りた。

無言で車に乗り込む憂火に、暮が声を掛ける。

「少し、休んだ方がいいですよ」

が、憂火は、

「オレが休んでも、世の中の何が変わる訳じゃねえだろう」

と、本部へ戻れと暮に指示した。

睡蓮の異様な雰囲気と、リュウトと睡蓮の前世での繋がりを調べたい。

そう思いながらも憂火の瞼が下がっていき、車が走り出して、ものの5分後には憂火は寝息を立てていた。

暮は、徐々に車のスピードを落とすと、出来るだけゆっくり本部までの道のりをドライブした。






リュウトは夢見心地で、憂火に手を伸ばし、その胸に顔を寄せた。
すぐ傍にある人肌の心地よさに唇を這わせる。

「くすっぐたいですよ」

その声にリュウトは目を見開き、飛び起きる。

「睡蓮!!」

「ただいま、リュウト」

一瞬、どこか違和感を感じたが、睡蓮にキスをされ意識が逸れる。

するりと、口の中に這入ってきた少し冷たい体温。

やさしいキス。

すごく丁寧で、リュウトの反応を一つ一つ確認するような口付けに、リュウトは考えてはいけない事を考えてしまう。

ダメだと思っても、頭の中に浮かんでしまう。

このキスが、憂火のキスと違い過ぎて、どんなに思い出さないようにしようと思っても、あの熱いキスを全身に受けた事を思い出してしまう。

そう、全身に。

あの舌で、あの掌で、自分の全てを暴かれた。



「リュウト・・」

名前を呼ばれて、リュウトはギクリとする。

今、唇を繋いでいた相手に、自分の思考を全て読まれている事に気づく。

思わず我に返ったリュウトは目を背け「・・ごめん」と口にして、睡蓮から体を離した。

自分の肩を自分で抱き締めるように身を縮こめ、俯く。

それから、ハッと顔をあげ、憂火がもうここに居ない事に気づいた。

「睡蓮、憂火は?」

体を起こしかけたリュウトの腕を引いて、再び睡蓮がリュウトの体を抱き締める。

覆い被さるように上になった睡蓮が、リュウトの唇を塞いだ。

「ん・・」

睡蓮にしては、思い詰めたようなどこか焦りを見せるようなキスだった。

何もリュウトに喋らせたくない、聞きたくない。そんな気持ちが伝わる、苛ついたような強引なキス。


どうして?と、思う。

どうして、怒ってるんだろう?

だって、睡蓮じゃんか。

睡蓮が、『神送り』をオレにやらせたんじゃんか。

オレに、神に抱かれろって、それがオレの使命だって。

なんで、怒るんだよ。

相手が、憂火だったから?

オレが憂火に抱かれたから?



何度も口角を変え、濡れた唇を合わせて舌を吸う、と、リュウトは睡蓮の体を押し返して、唇の繋がりを解いた。

「私に抱かれるのは嫌ですか?」

睡蓮の手が、優しくリュウトの前髪を掻き上げて、梳う。

リュウトのクセっ毛を指に絡めて、リュウトの顔を睡蓮の水色の瞳が覗き込んだ。

恐いくらい透き通った瞳だ。

目の奥の奥、その向こうに澄んだ水面が空の色を映し出すように虹彩を放っている。

綺麗過ぎて、恐い。

この瞳に見つめられたら、自分は動けなくなってしまう。

思わず睡蓮から視線を伏せて、目を閉じた。

「ゴメン、睡蓮。オレ・・、ゴメン」


何を謝っているのか自分でもわからない。

わからないけれど、睡蓮が恐い。

自分を抱き締めるこの腕が恐い。

体が無意識に震えそうになって、リュウトは拳を握り込み、唇を噛んだ。


「あの死神の事が、随分、気に入ったみたいですね」


その一言に、リュウトは自分でも知らず、カッとなった。

「なんだよ、それ・・!」

「どうして、アイツなんですか?私にだって、あなたを満足させる自信はあるのに」


満足・・?

何言って・・?


睡蓮の台詞に、リュウトは愕然として目の前の顔を見つめた。


「いくらでも、私が抱いてあげるのに」


そう言って笑った睡蓮は、ゾッとするくらい冷淡な顔だった。

口元だけに笑みを浮かべ、静かに怒っている。


オレと憂火が、ここで一晩中抱き合っていた事を、睡蓮は激しく怒っている。



でも、それは・・と、言い訳をしようとしている自分を、リュウトは自分で諫めた。

始めは、睡蓮のためだった。

睡蓮を助けて貰うため。そう言い訳しそうになった言葉を飲み込んだ。

だって、そんな事は言い訳にはならない。

あれは、キモチイイだけじゃ説明がつかない。つけられない。

何度も何度も、憂火に激しく求められ、『神送り』をしない射精を何度もした。

体を繋ぐ事に夢中になって、憂火が舌打ちしたのも知っている。

それでも、オレを抱き続けた意味。

抱き合って、キスをする意味。


言葉に出されなくても、なんとなく、わかってしまった。



あの熱い掌で、心臓を揺さぶられた。



「睡蓮っ・・アッ・・やめろ・・」

酷く冷たい目でリュウトを見つめていた睡蓮の手が、リュウトの下肢に伸びる。

「あッ・・イッ・・」

いきなり下着の中に手を入れられ、性器を掴まれる。

「ヤダぁっ・・睡蓮、ヤメて・・睡蓮ッ・・ヤダあッ」

泣き声を上げるリュウトに構わず、睡蓮は手の中に閉じ込めたリュウトを無理やり大きくさせようと追い上げる。

「何がイヤなんですか?アイツより良くしてあげます」

「ヒッ・・ヤダ・・ヤメろッ・・もう、イヤだッ」

嫌でも、触れられれば反応を示してしまう自分の体に、リュウトは嫌悪した。

「嫌だ・・!!」

先端から薄らと粘液が滲み出し、それを睡蓮の指がニチャニチャとカリ全体に塗り込んでくる。

無理に体だけを昂らさせられ、気持ちばかりが置いていかれる行為に、寒気さえ覚えた。

そう、初めの『神送り』の時と一緒だ。

何も湧かない。
何も感じない。
ただ、苦しい。

まるで息が出来ない水の中から、水面に必死に手を伸ばして、ジタバタしてるみたい。

こんなの、嫌だ・・!!

「やめろ!!」

大声で叫ぶと、リュウトは睡蓮の体を力一杯突き飛ばしていた。

「やめろ・・よ・・やめてくれ・・お願いだから・・」

胸に針でも突き刺さされたように心臓が痛み、リュウトの頬を、次から次へと溢れてくる涙が濡らす。

痛い。
痛いよ。
苦しいよ。
睡蓮、どうして。



何の答えも見つからない。
ただ、黙ったままオレを責めるように見つめる睡蓮の瞳が、怖かった。



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