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甲斐谷くんの誕生日
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「なあ、誕生日だろ」
その一言に、嬉しさのあまり、座ったまま飛び上がりそうになる。
吉岡の部屋に遊びに来ていた甲斐谷がパッと顔を上げると、目の前の男はあぐらの上でゲーム機を操作していた。
勿論、ゲーム中なので、目線は一切こっちを見ない。
甲斐谷の顔が嬉しそうな表情で、固まる。
「・・うん。明後日・・」
「ダヨな・・」
そう言うと、ゲームがいいところなのか、それ以上の会話が途絶える。
それでも、自分の誕生日を覚えていてくれた事が、まあ嬉しいので、良しとする。
なのに。
「なあ・・、その日さ・・誰かと、約束してんの?」
言葉が途切れ途切れなのは、ゲームが危機的状況にあるからだろうか。
いや、ソレ以前に、これが恋人に対して言う台詞か。
「誰かって、誰だよ」
棘を含んだ声音で甲斐谷が聞き返す。
「さあ・・だって、お前、モテるし・・。いっつも取り巻きに囲まれてるし・・」
「いつもじゃねえだろ」
吉岡とこんなラブい関係になれると思っていなかったから、片っ端から体の関係を持ったのはまずかった。
「あのな・・別れたって言ってんだろ・・」
「え、そうなの?・・なんか・・そう思ってんのは甲斐谷だけ・・っぽいよ?」
自分が撒いた種とは言え、それを言われると痛い。
はなっから、真面目なお付き合いで奴らと付き合ってた訳じゃなかった。そのせいで、こっちが別れると言っても、返事はニッコリ笑って『あ、そ』だけ。
元々は、吉岡の回りにあったフオンブンシ達を喰っていたに過ぎないのだが(同類憐れみの性欲解消)、こっちが一抜けしたと言っても本気に取ってはくれない。
『そんなの気紛れだろう。3日もして、ヤリたくなったら戻ってくるよ』くらいのライトさだ。
そのくらい、セックスは簡単だった。
何せ、その気になればいくらでもヤラせてくれる奴が、すぐ側にいるんだから。
吉岡に色目を使う奴がいれば、突っ込み、吉岡に恨みのある奴を捕まえては、お仕置きに突っ込み、果ては、来る者拒まずで突っ込み、していた訳だ。
このローテーションで週に3回。1年から3年まで、月に12人。かなりの回転率だ。
そんな自分がド本命ゲットしたからって、『これから真面目にそいつと付き合います』って言っても、誰も本気にしちゃくれない。
「とりあえず、おめでとう」
口がその形に動いただけ。無感動な発音にオレの顔は強ばった。
「いや、まだ、はえーだろ。あと2日あんだぞ」
「え、だって誕生日、オレと一緒に居るかわかんないだろ。だから、もし会えなかったら、おめでとう言えないかも知んないから、先言っとく」
この時点でオレへの不信感9割、かなりえげつなく捻くれてる感じの嫉妬で吉岡はご立腹中。
「・・祝ってくれねえの?」
長い溜め息を吐きながら首を掻き、下から上目遣いに吉岡の顔を盗み見る。
一瞬、唇が開き、それが再び閉じて少しだけ力が入る。
視線はゲームに釘付けのまま下唇を噛み、眉間に深い皺が入る。
苦しそうな表情を見せる吉岡に、心臓がドクリと高鳴る。
吉岡が、自分のせいで苦しんでる。
そういう顔を自分がさせているんだと思うと、昏い喜びに満たされる。
吉岡は、他の奴とオレが一緒にいるのが本当はイヤで、苛立って、けど、そんな本音を曝す自分も許せなくて、何も言えずに黙っている。
「プレゼントは?」
吉岡の目が、ここで初めてオレを見た。
「ねえの・・?なんだ、今日、祝ってくれるつもりじゃねえの?」
吉岡の眉根が吊り上がり、甲斐谷を見る目が鋭く眇められた。
爆発寸前。
唇が細かく震え、恐ろしく低い声で「ない」と、吉岡が返事を返す。
「オレが用意しなくたって、他の奴が何かくれんだろ?」
ゲーム機を掴む吉岡の手の拳に力が入り、指の関節が血色を失って白く見える。
「・・そうだな。トレーニングシューズとかゲームシャツ買ってくれるって奴もいた気するワ。お前、物くれなそうだから、貰っとこうかな」
言い終わる瞬間、オレの顔目掛けてゲーム機が飛んで来た。
すかさず、それを手でキャッチし、布団の上へ放る。
直後、目の前に吉岡の拳が視界に入ったが、さすがに避け切れず顔面を打たれる。
真っ正面から顔面を強打。
打たれた瞬間、ガッと鼻が潰れたような痛みが走り、鼻の奥から血が噴き出したかと思ったが、そこまでのダメージはなかった。
それでも涙が出そうなくらいには痛い。
「吉岡・・!」
次の打撃を防ぐために、吉岡の両腕を掴んで取り押さえる。
元々、力はオレの方が強いから、どんなに暴れようが放さない。
そのままベッドの上に引き摺り上げ、足の攻撃を回避しながら(一発でも入れば、KO確定)吉岡の上に馬乗りになる。
マウントを取れば、7割方、上になった方が勝つ。
「放せよ・・!」
「なんで怒る?」
オレの問いに、吉岡は目を見開いた。
「ハ!?」
「お前、なんで怒ってんだよ?」
「なんでって・・わかんねえの・・!?」
吉岡の目が涙ぐむ。
「わかんねえ」
「だって、お前・・プレゼントあいつらに貰うって・・」
「お前がくんなきゃな。誕生日に何も貰えないなんて、悲惨だろ」
「だからって・・!お前、本当、いい加減・・っ」
わなわなと腕が怒りに震え、吉岡が腕を放せと暴れ出す。
それを、再び押さえ付け、力の差を見せつける。
「でも、くれるだろ?吉岡、オレにプレゼント用意してあるんだろ?」
鼻先がつきそうな位、近くで見つめ合う。
吉岡の瞳孔が涙で揺れている。
なんとか、オレの下から這い出そうと吉岡が体を捩って抵抗する。
「・・ない」
ここで、オレは自分の耳を疑った。
さすがにあるだろうと思ってたのに、吉岡本人の口から無いと聞かされたのだ。
ある意味、サプライズ過ぎる。
いや、こんなサプライズいらない。いらな過ぎる。
「嘘だよな・・?」
きっと、オレは自分を助けたい一身で言葉を紡いでた。
「だって、オレ達付き合って・・オレの事、好きだって・・なあ、吉岡・・?」
付き合ってるだろ?
オレ達、恋人になったんだよな?
涙に濡れた視線が、不意に外される。
「・・・付き合ってない。ただの、性欲処理係だろ・・っ」
これは、吉岡の最高の強がりだ、と、オレは解釈した。
決して、吉岡の本心なんかじゃない。
嫉妬に狂い、オレの気を引きたいがあまり、吉岡が間違った選択をしてしまっただけだ。
でなきゃ誕生日前に破局なんて、絶望過ぎる。
ちょっと色々不満が募って、吉岡はオレに強がりを言ってるだけだ。そうだ、そうに決まっている。と、自分に言い聞かせる。
「あっそ・・じゃあ、その性欲処理に付き合って貰おうかな・・?どうせ、オレだってお前からプレゼント貰えるなんて思ってなかったし・・?なんなら、オレの誕生日も全然、『コレ』でいいし」
言いながら、お互いの下肢を剥き出しにして、ゴリゴリと興奮しきったブツを吉岡の尻に擦り付ける。
「やめ・・!裂ける・・!!」
本気で恐怖に引き攣った顔の吉岡が可愛くて、もっと虐めたくなる。
「じゃあ、舐めてやるから、手で広げろ」
吉岡の手を尻たぶに誘導し、肉を掴ませる。
「手、放したら、すぐ突っ込むからな。痛い思いするのは自分だぞ」
「やだ・・」
半べそで自分の尻に伸ばした手で、赤い窄まりをオレに広げて見せる。
この女王様め・・、ぐっちょぐっちょに濡らして、ガン突きしてやる。
たっぷり唾液を乗せた舌で窄まりを舐める。
ぐるぐると輪を描き、弛んだ襞の中へ舌先を突っ込んだ。
股の間に唇を這わせ、痕が付く程尻たぶに吸付く。
その刺激に、中が疼くのか、吉岡の足の爪先が反り返った。
ジュプジュプと卑猥な水音を上げて緋肉を掻き混ぜ、穴の中を舌で犯す。
次第に広がりつつある男膣が、舌じゃ物足りなそうにヒクついてきて、オレはゆっくりと指を入れた。吉岡の粘膜が指に絡む。その隙間をこじ開けるように指を突っ込む。
「鳴けよ」
声を聞かせろと催促するが、吉岡は目も唇も閉じてオレの指に抗う。
中で動かされて、堪らないだろうに、必死に声を抑える顔が憎らしい。
指を2本に増やす。
唾液をたっぷり絡ませ、奥へ奥へと塗り込める。
熱いだけだった一点が『もっと』と、せがむように指を締め付けた。
何度も同じ場所を狙って動かす。その度に、吉岡の息が止まったり、早くなったり、慌ただしい。
「抵抗されると・・・萌えんだよな・・」
いつもなら指3本、ねっとりじっくり出し入れして、中がトロトロに濡れるくらい解してから、合体してた。
急ぐ必要は無い。
時間はあるだけ使う。
それが愛だ。
「もう、いいよな?性欲処理係だし?」
中に入れた指2本をV字に開いて、狭い肉筒を目一杯広げる。
「ンンンッ・・!!」
滑る指で自分の勃起を掴んで、閉じかけてる窄まりに先端を押し当てた。
グググッと肉圧が掛かり、肉襞が無理に広がっていく。
「甲斐、谷・・っ」
まだ固い蕾を押し広げられ、苦痛に吉岡の目が潤む。
先端を三分の一くらいしか咥えられない入り口から一旦腰を引き、吉岡の体をひっくり返す。
腹這いにさせ、腰を高く上げさせる。
犬の交尾みたいに覆い被さって、押し当てた性器を小刻みに振りながら、吉岡のモノを扱く。
吉岡の性器は、全く勃起してなかった。
これからセックスしようとしてるこっちとしては、テンション下がる景色だ。
ヌチャヌチャと、突き上げる動きと同時に手を動かし、吉岡を煽るが、なかなか硬くならない。
前を擦って、きつい挿入から気を逸らせてやるつもりだったが、不発に終る。
掌の中で多少熱を持った性器を握りながら、諦めた。
「これじゃ、性欲処理になんねえだろ・・」
憎々し気に腰を突き出す。
グジュッと緋肉の狭間に勃起がめり込んだ。
「ア!」
「キッツ・・・ッ」
チクショ・・
舌打ちしながら、絶対バックでイカしてやる、と、腰を前に振る。
「中、挿れさせろ・・って!」
少しずつ、何度か出し入れを繰り返し、やっと吉岡の深部まで潜り込む事が出来た。
「ったく、手間かけさせやがって・・」
吉岡の肘を取って、体をそのまま起こす。
自分のあぐらの上へ座らせるようにして、吉岡の首筋に噛み付いた。
「ふあ・・ッ」
「おい、性欲処理係、自分だけイッてんじゃねえよ」
「イッて、ない~っイッて、ない、も・・っ」
いつから泣いてたのか、吉岡の顎を取って振り向かせる。
真っ赤な顔でオレを睨む吉岡の顔は、超絶にクる。
その下腹では、どう見ても、吉岡の勃起が白い物を溢れさせていた。
生意気言うから、吉岡の噴き出し孔を指の腹で押し潰してやる。
「はああ・・ッ」
思わず自分の手でそこを握りしめる吉岡の両膝を後ろから抱え上げる。
「ヤダ・・!こんなカッコ、やだあ・・っ」
「じゃあ、自分で動けよ?オレのが出るまでノンストップな。オレの性欲が収まるまで頑張れよ」
冷たく言い放つと、吉岡は涙を流しながら腰をゆっくりと上げ下げし始めた。
時折、嗚咽を噛むようにヒックヒックと喉を引き攣らせ、大きく溜め息を吐いて、それでも一生懸命に腰を動かして、オレのモノをアナルで扱いている。
そんな健気な姿を眺めている内に、売り言葉に買い言葉だったと、さっきの喧嘩を振り返った。
こんなに丁寧に自分の中で擦って締めてイカせようとしてくれてるのに、あんまりな責め方だったと反省する。
吉岡の頭に手を伸ばして、撫でる。
撫でて、背中にキスを落とす。
すると、吉岡の嗚咽がさっきより大きくなる。
「泣くなって・・吉岡」
「甲斐谷のバカ・・、キライ・・キライ、お前なんか・・っ」
そう言いながらも、意地になって吉岡は腰を動かす。
バツが悪い気持ちで、吉岡の体を後ろから抱き締める。
耳の後ろにキスをして、耳たぶを噛む。
「やだ、キライ・・キライ・・っ」
首を横に振ってキスを嫌がるのに、下半身は深く噛み合い、吉岡は動き続ける。
「そんな事言うなよ・・好きだ、すげえ好き。ずっと好きだった。ずっと抱きたくて、我慢出来なくて、でも、傷つけると思って、手出せなくて・・。好きだよ、吉岡・・。お前しか、好きじゃねえ」
「ヤダ・・、キライ・・っっ」
「って・・・お前、イッてんじゃん・・」
オレの告白に感極まったのか、浅く腰を揺らめかしながら、吉岡が2度目の射精を迎える。
「何してんだよ、お前は・・これじゃ本当に、オレの方が吉岡の性欲処理の道具だろ」
苦笑するオレに、こっちを振り向いた吉岡は涙の雫を頬に滑らせながら、唇を噛んだ。
「そうだよっ甲斐谷は、オレ専用なんだから・・他の奴にコレ貸したりすんな・・っ」
「・・・っ可愛いこと言ってんじゃねえ、よ・・」
抱き寄せ、唇を寄せて、吉岡の顔中にキスをする。
噛み付く合うように唇を合わせ、お互いの口の中で舌を絡ませ合う。
大して動いてもいないのに、吉岡の締め付けが良かったせいか、吉岡の態度が可愛過ぎたせいか、気付いたら吉岡の中でイッてた。
2日後、誕生日の日。
オレは、元関係者達から誕プレ祝福を受けるも、プレゼント交換的に貰った物を次にプレゼント持って来た奴にどんどん回し、その度にお約束のような肉体的誘惑に対し「オレは、吉岡専用機だから」を発信し続けた結果、サッカー部内で『初号機が覚醒した』と密かに噂されるようになった。
ちなみに、吉岡から貰ったプレゼント(やっぱり事前に買って用意してたらしい)は、吉岡が最近嵌ってるゲームの対戦ソフトだった。ゲーム機本体を持っていないオレは、吉岡と遊ぶためにソフトの倍の値段する本体を買う事になった。
ハピバスデ自分・・。
その一言に、嬉しさのあまり、座ったまま飛び上がりそうになる。
吉岡の部屋に遊びに来ていた甲斐谷がパッと顔を上げると、目の前の男はあぐらの上でゲーム機を操作していた。
勿論、ゲーム中なので、目線は一切こっちを見ない。
甲斐谷の顔が嬉しそうな表情で、固まる。
「・・うん。明後日・・」
「ダヨな・・」
そう言うと、ゲームがいいところなのか、それ以上の会話が途絶える。
それでも、自分の誕生日を覚えていてくれた事が、まあ嬉しいので、良しとする。
なのに。
「なあ・・、その日さ・・誰かと、約束してんの?」
言葉が途切れ途切れなのは、ゲームが危機的状況にあるからだろうか。
いや、ソレ以前に、これが恋人に対して言う台詞か。
「誰かって、誰だよ」
棘を含んだ声音で甲斐谷が聞き返す。
「さあ・・だって、お前、モテるし・・。いっつも取り巻きに囲まれてるし・・」
「いつもじゃねえだろ」
吉岡とこんなラブい関係になれると思っていなかったから、片っ端から体の関係を持ったのはまずかった。
「あのな・・別れたって言ってんだろ・・」
「え、そうなの?・・なんか・・そう思ってんのは甲斐谷だけ・・っぽいよ?」
自分が撒いた種とは言え、それを言われると痛い。
はなっから、真面目なお付き合いで奴らと付き合ってた訳じゃなかった。そのせいで、こっちが別れると言っても、返事はニッコリ笑って『あ、そ』だけ。
元々は、吉岡の回りにあったフオンブンシ達を喰っていたに過ぎないのだが(同類憐れみの性欲解消)、こっちが一抜けしたと言っても本気に取ってはくれない。
『そんなの気紛れだろう。3日もして、ヤリたくなったら戻ってくるよ』くらいのライトさだ。
そのくらい、セックスは簡単だった。
何せ、その気になればいくらでもヤラせてくれる奴が、すぐ側にいるんだから。
吉岡に色目を使う奴がいれば、突っ込み、吉岡に恨みのある奴を捕まえては、お仕置きに突っ込み、果ては、来る者拒まずで突っ込み、していた訳だ。
このローテーションで週に3回。1年から3年まで、月に12人。かなりの回転率だ。
そんな自分がド本命ゲットしたからって、『これから真面目にそいつと付き合います』って言っても、誰も本気にしちゃくれない。
「とりあえず、おめでとう」
口がその形に動いただけ。無感動な発音にオレの顔は強ばった。
「いや、まだ、はえーだろ。あと2日あんだぞ」
「え、だって誕生日、オレと一緒に居るかわかんないだろ。だから、もし会えなかったら、おめでとう言えないかも知んないから、先言っとく」
この時点でオレへの不信感9割、かなりえげつなく捻くれてる感じの嫉妬で吉岡はご立腹中。
「・・祝ってくれねえの?」
長い溜め息を吐きながら首を掻き、下から上目遣いに吉岡の顔を盗み見る。
一瞬、唇が開き、それが再び閉じて少しだけ力が入る。
視線はゲームに釘付けのまま下唇を噛み、眉間に深い皺が入る。
苦しそうな表情を見せる吉岡に、心臓がドクリと高鳴る。
吉岡が、自分のせいで苦しんでる。
そういう顔を自分がさせているんだと思うと、昏い喜びに満たされる。
吉岡は、他の奴とオレが一緒にいるのが本当はイヤで、苛立って、けど、そんな本音を曝す自分も許せなくて、何も言えずに黙っている。
「プレゼントは?」
吉岡の目が、ここで初めてオレを見た。
「ねえの・・?なんだ、今日、祝ってくれるつもりじゃねえの?」
吉岡の眉根が吊り上がり、甲斐谷を見る目が鋭く眇められた。
爆発寸前。
唇が細かく震え、恐ろしく低い声で「ない」と、吉岡が返事を返す。
「オレが用意しなくたって、他の奴が何かくれんだろ?」
ゲーム機を掴む吉岡の手の拳に力が入り、指の関節が血色を失って白く見える。
「・・そうだな。トレーニングシューズとかゲームシャツ買ってくれるって奴もいた気するワ。お前、物くれなそうだから、貰っとこうかな」
言い終わる瞬間、オレの顔目掛けてゲーム機が飛んで来た。
すかさず、それを手でキャッチし、布団の上へ放る。
直後、目の前に吉岡の拳が視界に入ったが、さすがに避け切れず顔面を打たれる。
真っ正面から顔面を強打。
打たれた瞬間、ガッと鼻が潰れたような痛みが走り、鼻の奥から血が噴き出したかと思ったが、そこまでのダメージはなかった。
それでも涙が出そうなくらいには痛い。
「吉岡・・!」
次の打撃を防ぐために、吉岡の両腕を掴んで取り押さえる。
元々、力はオレの方が強いから、どんなに暴れようが放さない。
そのままベッドの上に引き摺り上げ、足の攻撃を回避しながら(一発でも入れば、KO確定)吉岡の上に馬乗りになる。
マウントを取れば、7割方、上になった方が勝つ。
「放せよ・・!」
「なんで怒る?」
オレの問いに、吉岡は目を見開いた。
「ハ!?」
「お前、なんで怒ってんだよ?」
「なんでって・・わかんねえの・・!?」
吉岡の目が涙ぐむ。
「わかんねえ」
「だって、お前・・プレゼントあいつらに貰うって・・」
「お前がくんなきゃな。誕生日に何も貰えないなんて、悲惨だろ」
「だからって・・!お前、本当、いい加減・・っ」
わなわなと腕が怒りに震え、吉岡が腕を放せと暴れ出す。
それを、再び押さえ付け、力の差を見せつける。
「でも、くれるだろ?吉岡、オレにプレゼント用意してあるんだろ?」
鼻先がつきそうな位、近くで見つめ合う。
吉岡の瞳孔が涙で揺れている。
なんとか、オレの下から這い出そうと吉岡が体を捩って抵抗する。
「・・ない」
ここで、オレは自分の耳を疑った。
さすがにあるだろうと思ってたのに、吉岡本人の口から無いと聞かされたのだ。
ある意味、サプライズ過ぎる。
いや、こんなサプライズいらない。いらな過ぎる。
「嘘だよな・・?」
きっと、オレは自分を助けたい一身で言葉を紡いでた。
「だって、オレ達付き合って・・オレの事、好きだって・・なあ、吉岡・・?」
付き合ってるだろ?
オレ達、恋人になったんだよな?
涙に濡れた視線が、不意に外される。
「・・・付き合ってない。ただの、性欲処理係だろ・・っ」
これは、吉岡の最高の強がりだ、と、オレは解釈した。
決して、吉岡の本心なんかじゃない。
嫉妬に狂い、オレの気を引きたいがあまり、吉岡が間違った選択をしてしまっただけだ。
でなきゃ誕生日前に破局なんて、絶望過ぎる。
ちょっと色々不満が募って、吉岡はオレに強がりを言ってるだけだ。そうだ、そうに決まっている。と、自分に言い聞かせる。
「あっそ・・じゃあ、その性欲処理に付き合って貰おうかな・・?どうせ、オレだってお前からプレゼント貰えるなんて思ってなかったし・・?なんなら、オレの誕生日も全然、『コレ』でいいし」
言いながら、お互いの下肢を剥き出しにして、ゴリゴリと興奮しきったブツを吉岡の尻に擦り付ける。
「やめ・・!裂ける・・!!」
本気で恐怖に引き攣った顔の吉岡が可愛くて、もっと虐めたくなる。
「じゃあ、舐めてやるから、手で広げろ」
吉岡の手を尻たぶに誘導し、肉を掴ませる。
「手、放したら、すぐ突っ込むからな。痛い思いするのは自分だぞ」
「やだ・・」
半べそで自分の尻に伸ばした手で、赤い窄まりをオレに広げて見せる。
この女王様め・・、ぐっちょぐっちょに濡らして、ガン突きしてやる。
たっぷり唾液を乗せた舌で窄まりを舐める。
ぐるぐると輪を描き、弛んだ襞の中へ舌先を突っ込んだ。
股の間に唇を這わせ、痕が付く程尻たぶに吸付く。
その刺激に、中が疼くのか、吉岡の足の爪先が反り返った。
ジュプジュプと卑猥な水音を上げて緋肉を掻き混ぜ、穴の中を舌で犯す。
次第に広がりつつある男膣が、舌じゃ物足りなそうにヒクついてきて、オレはゆっくりと指を入れた。吉岡の粘膜が指に絡む。その隙間をこじ開けるように指を突っ込む。
「鳴けよ」
声を聞かせろと催促するが、吉岡は目も唇も閉じてオレの指に抗う。
中で動かされて、堪らないだろうに、必死に声を抑える顔が憎らしい。
指を2本に増やす。
唾液をたっぷり絡ませ、奥へ奥へと塗り込める。
熱いだけだった一点が『もっと』と、せがむように指を締め付けた。
何度も同じ場所を狙って動かす。その度に、吉岡の息が止まったり、早くなったり、慌ただしい。
「抵抗されると・・・萌えんだよな・・」
いつもなら指3本、ねっとりじっくり出し入れして、中がトロトロに濡れるくらい解してから、合体してた。
急ぐ必要は無い。
時間はあるだけ使う。
それが愛だ。
「もう、いいよな?性欲処理係だし?」
中に入れた指2本をV字に開いて、狭い肉筒を目一杯広げる。
「ンンンッ・・!!」
滑る指で自分の勃起を掴んで、閉じかけてる窄まりに先端を押し当てた。
グググッと肉圧が掛かり、肉襞が無理に広がっていく。
「甲斐、谷・・っ」
まだ固い蕾を押し広げられ、苦痛に吉岡の目が潤む。
先端を三分の一くらいしか咥えられない入り口から一旦腰を引き、吉岡の体をひっくり返す。
腹這いにさせ、腰を高く上げさせる。
犬の交尾みたいに覆い被さって、押し当てた性器を小刻みに振りながら、吉岡のモノを扱く。
吉岡の性器は、全く勃起してなかった。
これからセックスしようとしてるこっちとしては、テンション下がる景色だ。
ヌチャヌチャと、突き上げる動きと同時に手を動かし、吉岡を煽るが、なかなか硬くならない。
前を擦って、きつい挿入から気を逸らせてやるつもりだったが、不発に終る。
掌の中で多少熱を持った性器を握りながら、諦めた。
「これじゃ、性欲処理になんねえだろ・・」
憎々し気に腰を突き出す。
グジュッと緋肉の狭間に勃起がめり込んだ。
「ア!」
「キッツ・・・ッ」
チクショ・・
舌打ちしながら、絶対バックでイカしてやる、と、腰を前に振る。
「中、挿れさせろ・・って!」
少しずつ、何度か出し入れを繰り返し、やっと吉岡の深部まで潜り込む事が出来た。
「ったく、手間かけさせやがって・・」
吉岡の肘を取って、体をそのまま起こす。
自分のあぐらの上へ座らせるようにして、吉岡の首筋に噛み付いた。
「ふあ・・ッ」
「おい、性欲処理係、自分だけイッてんじゃねえよ」
「イッて、ない~っイッて、ない、も・・っ」
いつから泣いてたのか、吉岡の顎を取って振り向かせる。
真っ赤な顔でオレを睨む吉岡の顔は、超絶にクる。
その下腹では、どう見ても、吉岡の勃起が白い物を溢れさせていた。
生意気言うから、吉岡の噴き出し孔を指の腹で押し潰してやる。
「はああ・・ッ」
思わず自分の手でそこを握りしめる吉岡の両膝を後ろから抱え上げる。
「ヤダ・・!こんなカッコ、やだあ・・っ」
「じゃあ、自分で動けよ?オレのが出るまでノンストップな。オレの性欲が収まるまで頑張れよ」
冷たく言い放つと、吉岡は涙を流しながら腰をゆっくりと上げ下げし始めた。
時折、嗚咽を噛むようにヒックヒックと喉を引き攣らせ、大きく溜め息を吐いて、それでも一生懸命に腰を動かして、オレのモノをアナルで扱いている。
そんな健気な姿を眺めている内に、売り言葉に買い言葉だったと、さっきの喧嘩を振り返った。
こんなに丁寧に自分の中で擦って締めてイカせようとしてくれてるのに、あんまりな責め方だったと反省する。
吉岡の頭に手を伸ばして、撫でる。
撫でて、背中にキスを落とす。
すると、吉岡の嗚咽がさっきより大きくなる。
「泣くなって・・吉岡」
「甲斐谷のバカ・・、キライ・・キライ、お前なんか・・っ」
そう言いながらも、意地になって吉岡は腰を動かす。
バツが悪い気持ちで、吉岡の体を後ろから抱き締める。
耳の後ろにキスをして、耳たぶを噛む。
「やだ、キライ・・キライ・・っ」
首を横に振ってキスを嫌がるのに、下半身は深く噛み合い、吉岡は動き続ける。
「そんな事言うなよ・・好きだ、すげえ好き。ずっと好きだった。ずっと抱きたくて、我慢出来なくて、でも、傷つけると思って、手出せなくて・・。好きだよ、吉岡・・。お前しか、好きじゃねえ」
「ヤダ・・、キライ・・っっ」
「って・・・お前、イッてんじゃん・・」
オレの告白に感極まったのか、浅く腰を揺らめかしながら、吉岡が2度目の射精を迎える。
「何してんだよ、お前は・・これじゃ本当に、オレの方が吉岡の性欲処理の道具だろ」
苦笑するオレに、こっちを振り向いた吉岡は涙の雫を頬に滑らせながら、唇を噛んだ。
「そうだよっ甲斐谷は、オレ専用なんだから・・他の奴にコレ貸したりすんな・・っ」
「・・・っ可愛いこと言ってんじゃねえ、よ・・」
抱き寄せ、唇を寄せて、吉岡の顔中にキスをする。
噛み付く合うように唇を合わせ、お互いの口の中で舌を絡ませ合う。
大して動いてもいないのに、吉岡の締め付けが良かったせいか、吉岡の態度が可愛過ぎたせいか、気付いたら吉岡の中でイッてた。
2日後、誕生日の日。
オレは、元関係者達から誕プレ祝福を受けるも、プレゼント交換的に貰った物を次にプレゼント持って来た奴にどんどん回し、その度にお約束のような肉体的誘惑に対し「オレは、吉岡専用機だから」を発信し続けた結果、サッカー部内で『初号機が覚醒した』と密かに噂されるようになった。
ちなみに、吉岡から貰ったプレゼント(やっぱり事前に買って用意してたらしい)は、吉岡が最近嵌ってるゲームの対戦ソフトだった。ゲーム機本体を持っていないオレは、吉岡と遊ぶためにソフトの倍の値段する本体を買う事になった。
ハピバスデ自分・・。
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完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
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