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拉致事件3
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拉致事件があった後の、土曜日。
なんとなく目が覚めて、隣に目をやると、既に矢島の姿はベッドにない。
いつもなら、朝、出掛ける前に自分に一言声を掛けて(キスして)から、出掛ける筈なのに、今日はそれがなかったようだ。
きっと朝早くに出掛ける矢島がオレに気を使って、起こさないように出て行ったんだろう。
けど、黙って出て行かれた事に拗ねる気持ちが沸く。
あんな事があった後の週末くらい、一緒に居て甘やかせてくれたらいいのに。
心細さを感じつつ、不機嫌にベッドから降り、部屋の外に出て、蘭は驚いた。
「坊ちゃん、おはようございます!」
まだ9時前だというのに、歳若い岸田と加瀬が、室内の掃除に来ていた。
「おはよ・・」
「すみません。静かにやってたつもりだったんですが、起こしちゃいましたか?」
「ううん。すごい静かだった・・から、お前らが来てんの気づかなかった。矢島はもう行ったんだよな?」
「少し前に出て行かれました。たぶん、すぐ戻られると思います」
「ふーん・・」
その『すぐ』ってどのくらいなんだろう。
大人の『ちょっと』と『すぐ』程、あてにならない物はない。
昨夜だって。
矢島は『すぐ』済むと言いつつ、誰かからの電話に出て、結局、電話が終ったのは1時間も経った頃だった。
その間、オレはベッドの上で、電話をしながらイタズラしてくる矢島の手に体を撫で回され、際どい刺激を与えられては、ストップ、の繰り返し。
いい加減、これ以上耐えられない、と、自分でヤろうと前を握ったら、矢島の思うツボだった。
オレから離れた矢島は、ベッドの横へ椅子を引いて座ると、変わらず携帯電話に耳を傾けたまま足を組み、オレの自慰行為を興味深そうに眺めた。
矢島の目に射竦められ、あと少しでイケそうなのにイケない。
余計に、焦らされているようになって、下腹が熱くて痛くて、先端が濡れてくる。
見られているのが恥ずかしくて、早くイキいたいのに、どうしてもイケない。
思わず縋るように矢島の顔を見上げたのが、またまずかった。
矢島と視線が絡む。
そうなったら、もう視線を外せない。
矢島の目を見つめながら、手を動かした。
自分の手なのに、矢島に見られてるせいか、自分の手じゃないみたいに感じる。
呼吸も荒い。
矢島の手で触って欲しい。
矢島の体温に包まれて、イキたい。
あの手が欲しい。
矢島の手の感触を思い出す。
節が太くて長い指。
あの指が、手が自分の腰を掴んで這い回る。
強く、優しく。
肌に指を喰い込ませ、揺さぶられる。
快感に啼いて暴れるオレの身体を、護るように、あやすように、矢島の手がオレを抱きしめてくれる。
だから。
オレはどんな風になっても、最後は矢島の腕の中で、安心する。
この腕は、オレを絶対裏切らない。
オレを絶対離さない。
目に浮かんだ涙で、矢島の顔がボヤけて見える。
それが、フィルターを一枚通して、夢の中で喘いでるみたいで、なんだか現実味がなかった。
脳髄が、快感にシビレる。が、何かが足りない。
手元にあるのは、ダラダラと続く緩慢な快楽。
蘭は矢島を知って以来、自慰などしていない。
いや、する暇もなかった。
なぜなら、矢島に毎晩のように全身を蕩かされて、啼かされているのだ。
自分でする必要も、したいと思う事もなかった。
だからこうして、久しぶりに自分の手で快楽を追ってみても、今ひとつ手応えが得られないのも仕方が無い。
蘭の肉体は、稚拙な手淫ごときでは満足出来ない体へと、矢島に作り替えられてしまったのだから。
いつまでも一人で昇り詰める事も出来ず、手の力を緩め、もう、このままでいいか・・と、半ば諦めて目を閉じた時だった。
「もう、そんなに一生懸命扱かなくていいですよ。オレが蕩けるようにイカせてあげます」
いつの間に自分の傍へ来たのか、矢島に耳元でそう囁かれ、前を握っていた手を解かれる。
そしてーー
擦り過ぎて赤くなった性器を、矢島が口の中へ含んだ。
「ん・・・っあっああ・・っ矢島ぁ・・っ」
矢島の肩を力一杯ギュッと掴み、腰を浮かせて矢島の愛撫に身悶える。
浮いた腰に回された矢島の手が、尻の狭間に指を潜らせる。
先走りが滴って濡れた後孔の中に、矢島の指がヌルリと這入ると蘭のいい所を掻き回した。
「やじ・・まっっ・・!!」
すぐに射精の瞬間が訪れる。
腹筋が凹んだままひくつき、息が止まりそうになった。
それから全身の肌が、下から上へゾクゾクと粟立つ。
「や・・っやあ・・っ矢島・・!離し、てっ、離、して・・っ」
射精最中の口淫の強過ぎる悦楽に蘭は怯え、矢島から逃出そうと藻掻く。
が、まだ隠してある欲望を暴くように、矢島の口が、舌が、蘭の身体の奥から、生温い愛液を吸い上げていく。
悦びに打ち奮え、痙攣する蘭の胎内で、更に煽るように矢島が指を動かした。
「あ、ああ・・っあ、あ、アアッ・・!」
新たな愉悦が、蘭の肚の奥で燻り出す。
拓いていく。
矢島を受け入れるための路が、拓いていく。
なんとなく目が覚めて、隣に目をやると、既に矢島の姿はベッドにない。
いつもなら、朝、出掛ける前に自分に一言声を掛けて(キスして)から、出掛ける筈なのに、今日はそれがなかったようだ。
きっと朝早くに出掛ける矢島がオレに気を使って、起こさないように出て行ったんだろう。
けど、黙って出て行かれた事に拗ねる気持ちが沸く。
あんな事があった後の週末くらい、一緒に居て甘やかせてくれたらいいのに。
心細さを感じつつ、不機嫌にベッドから降り、部屋の外に出て、蘭は驚いた。
「坊ちゃん、おはようございます!」
まだ9時前だというのに、歳若い岸田と加瀬が、室内の掃除に来ていた。
「おはよ・・」
「すみません。静かにやってたつもりだったんですが、起こしちゃいましたか?」
「ううん。すごい静かだった・・から、お前らが来てんの気づかなかった。矢島はもう行ったんだよな?」
「少し前に出て行かれました。たぶん、すぐ戻られると思います」
「ふーん・・」
その『すぐ』ってどのくらいなんだろう。
大人の『ちょっと』と『すぐ』程、あてにならない物はない。
昨夜だって。
矢島は『すぐ』済むと言いつつ、誰かからの電話に出て、結局、電話が終ったのは1時間も経った頃だった。
その間、オレはベッドの上で、電話をしながらイタズラしてくる矢島の手に体を撫で回され、際どい刺激を与えられては、ストップ、の繰り返し。
いい加減、これ以上耐えられない、と、自分でヤろうと前を握ったら、矢島の思うツボだった。
オレから離れた矢島は、ベッドの横へ椅子を引いて座ると、変わらず携帯電話に耳を傾けたまま足を組み、オレの自慰行為を興味深そうに眺めた。
矢島の目に射竦められ、あと少しでイケそうなのにイケない。
余計に、焦らされているようになって、下腹が熱くて痛くて、先端が濡れてくる。
見られているのが恥ずかしくて、早くイキいたいのに、どうしてもイケない。
思わず縋るように矢島の顔を見上げたのが、またまずかった。
矢島と視線が絡む。
そうなったら、もう視線を外せない。
矢島の目を見つめながら、手を動かした。
自分の手なのに、矢島に見られてるせいか、自分の手じゃないみたいに感じる。
呼吸も荒い。
矢島の手で触って欲しい。
矢島の体温に包まれて、イキたい。
あの手が欲しい。
矢島の手の感触を思い出す。
節が太くて長い指。
あの指が、手が自分の腰を掴んで這い回る。
強く、優しく。
肌に指を喰い込ませ、揺さぶられる。
快感に啼いて暴れるオレの身体を、護るように、あやすように、矢島の手がオレを抱きしめてくれる。
だから。
オレはどんな風になっても、最後は矢島の腕の中で、安心する。
この腕は、オレを絶対裏切らない。
オレを絶対離さない。
目に浮かんだ涙で、矢島の顔がボヤけて見える。
それが、フィルターを一枚通して、夢の中で喘いでるみたいで、なんだか現実味がなかった。
脳髄が、快感にシビレる。が、何かが足りない。
手元にあるのは、ダラダラと続く緩慢な快楽。
蘭は矢島を知って以来、自慰などしていない。
いや、する暇もなかった。
なぜなら、矢島に毎晩のように全身を蕩かされて、啼かされているのだ。
自分でする必要も、したいと思う事もなかった。
だからこうして、久しぶりに自分の手で快楽を追ってみても、今ひとつ手応えが得られないのも仕方が無い。
蘭の肉体は、稚拙な手淫ごときでは満足出来ない体へと、矢島に作り替えられてしまったのだから。
いつまでも一人で昇り詰める事も出来ず、手の力を緩め、もう、このままでいいか・・と、半ば諦めて目を閉じた時だった。
「もう、そんなに一生懸命扱かなくていいですよ。オレが蕩けるようにイカせてあげます」
いつの間に自分の傍へ来たのか、矢島に耳元でそう囁かれ、前を握っていた手を解かれる。
そしてーー
擦り過ぎて赤くなった性器を、矢島が口の中へ含んだ。
「ん・・・っあっああ・・っ矢島ぁ・・っ」
矢島の肩を力一杯ギュッと掴み、腰を浮かせて矢島の愛撫に身悶える。
浮いた腰に回された矢島の手が、尻の狭間に指を潜らせる。
先走りが滴って濡れた後孔の中に、矢島の指がヌルリと這入ると蘭のいい所を掻き回した。
「やじ・・まっっ・・!!」
すぐに射精の瞬間が訪れる。
腹筋が凹んだままひくつき、息が止まりそうになった。
それから全身の肌が、下から上へゾクゾクと粟立つ。
「や・・っやあ・・っ矢島・・!離し、てっ、離、して・・っ」
射精最中の口淫の強過ぎる悦楽に蘭は怯え、矢島から逃出そうと藻掻く。
が、まだ隠してある欲望を暴くように、矢島の口が、舌が、蘭の身体の奥から、生温い愛液を吸い上げていく。
悦びに打ち奮え、痙攣する蘭の胎内で、更に煽るように矢島が指を動かした。
「あ、ああ・・っあ、あ、アアッ・・!」
新たな愉悦が、蘭の肚の奥で燻り出す。
拓いていく。
矢島を受け入れるための路が、拓いていく。
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