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温かい背中を抱き締めてた。
腕の中にあるダイキの背中。
なんてしあわせな夢だろう。
ダイキがオレに抱きついて、キスをしてくれる。
ダイキ、お前、オレの事好きになってくれたのか?
もう無理矢理押さえつけなくても、オレとキスしてくれるのか?
そんなこと、嬉し過ぎる。
嬉し過ぎて、なんだか恐い。
幸せ過ぎると恐いって本当だったんだな・・。
そこで、しあわせな夢からパッと目が覚めた。
今の今まで、アルコールで朦朧としてた視界も頭の中も、くっきりハッキリと輪郭が際立った。
オレは自分の部屋のベッドで、ダイキを抱き締めて眠っていたらしい。
それも、裸のダイキを。
なぜ?
セックスしたからだ。
オレがダイキを押し倒して、無理矢理抱いたからだ。
いや、多分、そうなんだろう。
そうとしか思えなかった。
素っ裸のダイキの内股にポタポタと何かが零れ出て、ダイキはそれを慌てて手で拭った。
あいつの白い肌の上を、それよりも白い液体が、ダイキの小振りな尻たぶの狭間から滴っていた。
今にも泣きそうにダイキの目が潤み、口元は悔しそうに引き結ばれ、一瞬オレを強い眼光で睨みつけたダイキは、何を文句を言うことも無く、オレの部屋から出て行ってしまった。
一人部屋に残されたオレは、自分の愚かさに、どうしようもなく後悔する。
両手で額を押え、ベッドの上、体を仰向けに倒した。
「なに、やってんだよ・・!オレは・・!」
溜め息を吐き、自分の頭を両手の拳で叩いた。
本当に、全部夢にしちまった・・!
何がしあわせ過ぎて恐いだ・・!
思い出せよ!!
どうやって、アイツを抱いたんだ!?
無理矢理犯したのか!?
ダイキは泣いたのか!?
痛めつけたのか!?
どうして、何も思い出せないんだ!!
自分のことが許せない。
自分自身にハラワタが煮えくり返る程の怒りを覚えた。
ダイキに許して貰うどころじゃない。
まず自分を許せなかった。
酔っぱらっていたからって、許される行為じゃない。
しかも、その事を何も覚えていないなんて、なんて質が悪いんだ。
思い出せよ・・!!
思いっきり拳で自分の頭を殴ってみたが、沸いてくるのはジンジンとした痛みだけだった。
ダイキに会わせる顔が無い。
本当に、どうしようもなくて、オレは適当に服を着てコートを羽織って外へ出た。
玄関へ抜ける手前で、リビングの引き戸の磨りガラスに、遠く滲んだ肌色が見える。
それがダイキなのかどうかは、遠くてわからなかった。
こんなに自分に腹が立ってるのに、やっぱりダイキが恋しくてしょうがない。
顔を見たら、抱き締めたくなるし、きっとキスもしたくなる。
自分が全部悪いってことはわかってる。
だけど、どうにも出来ずに、オレは自分が許せない。
飲むんじゃなかった・・。
それしか、後悔しようが無い。
ダイキを抱いたことを忘れるなんて、信じられなかった。
なんで、覚えてねえんだよ・・っ
こんなことってあるかよ・・?
好きで好きで、やっとこっち見てくれるようになったのに・・、それをオレは自分の手で・・!
家の外は12月の寒さ。
冷たく突き刺すような風に、慌ててPコートの前を締め、ニット帽を被って、オレは当ても無く歩き出した。
近所の家からは、賑やかな声が聞こえる。
年末の大掃除や、買い物、遠くに住んでいる家族が一同に集まっての家族団らん。
普通の家なら当たり前の暮の雰囲気だ。
普通、か。
オレが普通じゃねえんだろ?
嘲笑染みた笑いが口の端に浮かぶ。
自分が悪い。
オレという存在が全て悪いんだ。
オレなんか居なけりゃ良かったんだ。
そう思って、気持ちがやけにイジけてくる。
思わず振り返った我が家は、家を出た時と一緒で、何事も無さそうに、そこに建っていた。
「ダイキ?お前具合悪いのか?」
ソファーの上で寝転がっていると、父にそう言われて額を掌で覆われた。
父は四十代でまあまあ肉付きのいい、眼鏡の似合う白髪混じりの七三だ。
「ん~・・寝不足かな・・?」
「ちょっと熱くないか?お前、こんなとこで寝てないで布団で寝ろ。余計に悪くするぞ」
「えー・・」
イヤだと言うと、どうしてと聞かれそうで、渋々僕はソファーから起き上がった。
すると、本当に頭がクラクラする。
あ、れ・・?
熱、マジであるのかな・・?
もしかして・・めちゃくちゃヤリまくった、から?
そう思って、自分で笑ってしまった。
だって事実だ。
兄ちゃんは、全部忘れちゃったみたいだけど、僕は全部覚えてる。
兄ちゃんにヤられた事、全部、どんな風に身体を繋げて、どんな風に兄ちゃんが僕を抱いたのか。
覚えてて欲しかった・・。
あんな顔するなんて、卑怯だよ。
抱いたくせに。
さんざん抱いて、それでも身体を離さなかったくせに。
それだけに、悔しかった。
腕の中にあるダイキの背中。
なんてしあわせな夢だろう。
ダイキがオレに抱きついて、キスをしてくれる。
ダイキ、お前、オレの事好きになってくれたのか?
もう無理矢理押さえつけなくても、オレとキスしてくれるのか?
そんなこと、嬉し過ぎる。
嬉し過ぎて、なんだか恐い。
幸せ過ぎると恐いって本当だったんだな・・。
そこで、しあわせな夢からパッと目が覚めた。
今の今まで、アルコールで朦朧としてた視界も頭の中も、くっきりハッキリと輪郭が際立った。
オレは自分の部屋のベッドで、ダイキを抱き締めて眠っていたらしい。
それも、裸のダイキを。
なぜ?
セックスしたからだ。
オレがダイキを押し倒して、無理矢理抱いたからだ。
いや、多分、そうなんだろう。
そうとしか思えなかった。
素っ裸のダイキの内股にポタポタと何かが零れ出て、ダイキはそれを慌てて手で拭った。
あいつの白い肌の上を、それよりも白い液体が、ダイキの小振りな尻たぶの狭間から滴っていた。
今にも泣きそうにダイキの目が潤み、口元は悔しそうに引き結ばれ、一瞬オレを強い眼光で睨みつけたダイキは、何を文句を言うことも無く、オレの部屋から出て行ってしまった。
一人部屋に残されたオレは、自分の愚かさに、どうしようもなく後悔する。
両手で額を押え、ベッドの上、体を仰向けに倒した。
「なに、やってんだよ・・!オレは・・!」
溜め息を吐き、自分の頭を両手の拳で叩いた。
本当に、全部夢にしちまった・・!
何がしあわせ過ぎて恐いだ・・!
思い出せよ!!
どうやって、アイツを抱いたんだ!?
無理矢理犯したのか!?
ダイキは泣いたのか!?
痛めつけたのか!?
どうして、何も思い出せないんだ!!
自分のことが許せない。
自分自身にハラワタが煮えくり返る程の怒りを覚えた。
ダイキに許して貰うどころじゃない。
まず自分を許せなかった。
酔っぱらっていたからって、許される行為じゃない。
しかも、その事を何も覚えていないなんて、なんて質が悪いんだ。
思い出せよ・・!!
思いっきり拳で自分の頭を殴ってみたが、沸いてくるのはジンジンとした痛みだけだった。
ダイキに会わせる顔が無い。
本当に、どうしようもなくて、オレは適当に服を着てコートを羽織って外へ出た。
玄関へ抜ける手前で、リビングの引き戸の磨りガラスに、遠く滲んだ肌色が見える。
それがダイキなのかどうかは、遠くてわからなかった。
こんなに自分に腹が立ってるのに、やっぱりダイキが恋しくてしょうがない。
顔を見たら、抱き締めたくなるし、きっとキスもしたくなる。
自分が全部悪いってことはわかってる。
だけど、どうにも出来ずに、オレは自分が許せない。
飲むんじゃなかった・・。
それしか、後悔しようが無い。
ダイキを抱いたことを忘れるなんて、信じられなかった。
なんで、覚えてねえんだよ・・っ
こんなことってあるかよ・・?
好きで好きで、やっとこっち見てくれるようになったのに・・、それをオレは自分の手で・・!
家の外は12月の寒さ。
冷たく突き刺すような風に、慌ててPコートの前を締め、ニット帽を被って、オレは当ても無く歩き出した。
近所の家からは、賑やかな声が聞こえる。
年末の大掃除や、買い物、遠くに住んでいる家族が一同に集まっての家族団らん。
普通の家なら当たり前の暮の雰囲気だ。
普通、か。
オレが普通じゃねえんだろ?
嘲笑染みた笑いが口の端に浮かぶ。
自分が悪い。
オレという存在が全て悪いんだ。
オレなんか居なけりゃ良かったんだ。
そう思って、気持ちがやけにイジけてくる。
思わず振り返った我が家は、家を出た時と一緒で、何事も無さそうに、そこに建っていた。
「ダイキ?お前具合悪いのか?」
ソファーの上で寝転がっていると、父にそう言われて額を掌で覆われた。
父は四十代でまあまあ肉付きのいい、眼鏡の似合う白髪混じりの七三だ。
「ん~・・寝不足かな・・?」
「ちょっと熱くないか?お前、こんなとこで寝てないで布団で寝ろ。余計に悪くするぞ」
「えー・・」
イヤだと言うと、どうしてと聞かれそうで、渋々僕はソファーから起き上がった。
すると、本当に頭がクラクラする。
あ、れ・・?
熱、マジであるのかな・・?
もしかして・・めちゃくちゃヤリまくった、から?
そう思って、自分で笑ってしまった。
だって事実だ。
兄ちゃんは、全部忘れちゃったみたいだけど、僕は全部覚えてる。
兄ちゃんにヤられた事、全部、どんな風に身体を繋げて、どんな風に兄ちゃんが僕を抱いたのか。
覚えてて欲しかった・・。
あんな顔するなんて、卑怯だよ。
抱いたくせに。
さんざん抱いて、それでも身体を離さなかったくせに。
それだけに、悔しかった。
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