鍛冶師×学生×大賢者~継承された記憶で、とんでもスローライフ!?~

かたなかじ

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第二十話

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「あぁ、お前たちか。ちょうどよかった、探してたんだよ」

 三体はユーゴの言葉を聞いて首を傾げる。


「お前たちの住処、みたいな場所はあるのか?」

「ピーピー!」

 ユーゴの質問に返事をしたのは毛玉の魔物だった。


 そして、どこかにユーゴを先導しようと進んでいく。それと同時に狼と猪がユーゴを後ろから押していく。

「お、おっと、押すなって、わかったから」

 押されてよろけながらユーゴは慌てて毛玉の魔物を追いかけていく。


 森の中を進んでいくと、根元に穴が開いた木へとたどり着く。


「ここに住んでるのか?」

「ガウ!」

 今度は狼の魔物が返事をする。


 すると、穴の中に毛玉、猪、そして狼と三体が入り込んで丸まって横になる。

 どうやら、三体は一緒にこの穴倉で生活をしているようだった。


「この間手伝ってくれたお礼に俺の魔力をやったと思うんだけど……」

 そこまで言うと、三体は穴倉から飛び出してユーゴの周りをぴょんぴょん飛び跳ねる。


「ピッピッピー!」

「ガウガウガー!」

「ブルブルブルルー!」

 三体ともこの間のユーゴの魔力を思い出してテンションが跳ね上がっていた。

 あの時にもらった魔力は三体にとってどんな食事よりも贅沢なものだった。


「お、おいおい、あんまり騒ぐなって。とにかくお前たちが俺の魔力が好きだってのはわかった。そこで提案だ」

 提案と聞いた瞬間、三体は静かになり、ユーゴの足元で整列する。


 前回に会った時もそうだが、今回もユーゴの言葉を理解しているようで知能の高さを感じていた。


「ふむ、俺の提案っていうのがお前たちの利益になるかもしれないってわかってるんだな」

「ピー!」

 代表して毛玉が返事をし、狼と猪は頷いている。


「それじゃあ、まずは俺の方から要望を。この森は昔からあまりよくない噂が流れているらしい。魔物も多くて、めぼしい素材も手に入らない、と」

 静かにユーゴの話を聞く三体。


「だけど、この間一緒に素材を探した時もそうだし、以前一人で見た時も特薬草が手に入った。つまり……この森は珍しい素材の宝庫だ。恐らくは、長らく人が足を踏み入れなかったから環境が変わったんだと思う」

 三体ともわかっているのかわかっていないのか、あいまいに頷いている。


「まあ、難しい話はいいか……とにかく俺はこの森で色々素材を手に入れたいんだ。それには、普段からここで生活をしているお前たちの手助けがいる。この間のように珍しい素材を見つけたら案内してほしいんだ」

 珍しいの基準は難しいが、この間三体が案内してくれた場所では生命の実を手に入れることができた。その実績を信用しての提案だった。


「ピピー!」

「ガウ!」

「ブルル!」

 三体ともどうやら乗り気らしく、ユーゴの頼みを聞くと返事をしている――ように見える。


「ただお前たちに頼むのは悪い。だから、今回は報酬を用意してきた」

 そういって、魔力放出器を取り出し三体の前に置く。


 首を傾げる三体。見たこともないものを置かれ、それが何かわからない。


「これの上のボタンの部分を押すと……」

 魔力放出器からユーゴの魔力が徐々に放出されていく。

 出力は低めに設定してあるため、少しずつしか出ていないが、三体はその魔力がユーゴのものであると気づき、興奮交じりに驚きながら魔力放出器を見ている。


「上のボタンを押すと俺の魔力が放出されて、もう一度押すと止まる。ここに来るまでの間にかなりの量の魔力を込めておいたから、一週間くらいはもつはずだ」

 少しずつしかでないといっても、ユーゴの魔力をもらえるということは三体にとっては、とんでもないメリットだった。


「ピピー?」

 使ってもいいの? と毛玉がうかがう。

 狼と猪も上目遣いでユーゴの返答を待っている。


「あぁ、構わない。ただ、素材探しを手伝ってくれたらな」

 そう口にするやいなや、三体はユーゴの周りを跳ね回る。


「ピーピー!」

「ガウガウガウ!」

「ブルブルブルー!」

 この反応を同意と捉えたユーゴは再度魔力放出器を手に取って魔力を流して、穴倉の中に置く。


「それじゃ、頼んだぞ。またしばらくしたら来る」

 そう言い残してユーゴは彼らの住処をあとにして、自分の小屋へと戻る。


 帰ってからは、自分の魔力量の底上げと森の防衛力強化のために森に結界を張りはじめる。徐々に魔力を放出し、森を覆っていく。

 前回よりも、薄く、広い範囲に結界を張る。効果は低いかもしれないが、まずは結界の範囲を広げることを最優先にしていた。


「ぐっ、この森、広すぎだろ……」

 限界ギリギリまで薄くした結界だったが、ユーゴの魔力が尽きる頃になってもその全域を覆うのは難しかった。


「はあはあはあはあ、これで、限界だ……小屋に、戻るぞ」

 ギリギリ意識を保っている状態で、気合を入れて疲れた身体に鞭打って家の中へと戻って行く。

 ベッドにどさっと身を預け、最後に室内の空気を魔法で適温にしてそのまま意識を失った。







 翌朝、おおよそ九時ごろになってユーゴはやっと目を覚ます。

「もう、朝か……」

 そう言いながら、なんとか身体を起こす。


 昨日は魔力を全て使って気絶したが、気絶する前よりも自らの身体に魔力が満ちているのを感じる。

「確実に魔力量が増えているな。これを繰り返していけば、誰にも負けない魔力が手に入るはずだ」

 手ごたえを感じているユーゴは体内に流れる魔力を感じ取りながら身支度を整える。


 昨日手に入れた大量の素材の買取をしてもらいに冒険者ギルドへと向かうことにする。

 いつもどおり魔法によって移動して、街が近づいてきたところで徒歩に変更する。


 風魔法を使って、周囲を探知しているため未だ誰の目にも、正確にはミリエル以外にはこの移動方法はばれていない。

 それゆえに、門番はいつもユーゴがどこに帰り、どこからやってくるのか疑問に思っていた。

 そんなユーゴを今日も門番は街へ受け入れる。
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