鍛冶師×学生×大賢者~継承された記憶で、とんでもスローライフ!?~

かたなかじ

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第二十一話

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 街に入ると、最初に向かったのは冒険者ギルドではなくミリエール工房だった。

 中には入らずに遠目で確認するが、この間までのように大量の客が押し寄せるようなことはなくなり、落ち着いているようだった。


 棚に並んでいたポーションは全て売れてしまったようだが、納品頻度はそれほど高くしないと約束していたのでそれだけの確認にとどめて店から離れていく。


「落ち着いたみたいでよかった……とりあえず、用事を済ませてからまた顔を出してみよう」

 安心したユーゴは笑顔になって冒険者ギルドへと向かって行く。


 冒険者ギルドに足を踏み入れると、前に来た時よりも多くの冒険者がホール内にひしめき合っている。


「……これは、どういうことだ?」

 時間帯のせいなのか? 何かギルドであったのか? 特別な依頼でも出たのか?

 そんな疑問を頭に浮かべながらも人をかきわけて、なんとか買取カウンターへと到着した。


「はあ、やっと到着した」

 いつもであれば入り口から買取カウンターまで数秒で到着するところだが、人をよけながら進んだため、それよりも時間がかかってしまった。


「おや、あなたはこの間の……なにか御用でしょうか?」

 そこにいたのは前回と同じ狼獣人の男性職員だった。


「あぁ、知ってる顔でよかったよ。ちょっと買取をお願いしたいんだけど……その前に二つ質問」

「はい、なんでしょうか?」

 ユーゴの質問に首を傾げる狼獣人の職員。


「一つ目は名前。俺の名前はユーゴ。冒険者には登録してない、今日は買取の希望でやってきた」

「そういえば自己紹介していませんでしたね。私の名前はグレイ。主に買取カウンターの担当をしています」

 挨拶をしてから、自然と握手を交わす二人。


「それじゃあ続けて二つ目の質問……すごい人数がいるけど、これって普通なのか?」

 ユーゴはホール内にいる冒険者たちに視線を向けながら質問する。


「あぁ、この騒ぎはですね。どうやら北東の山にメタルロックデーモンが大量に現れたそうなんです。ギルドとしても素材を是非手に入れたいところですし、危険なのでギルドとしても早急に対応しなければと依頼を交付するところなのです」

 質問の答えを聞きながらユーゴはカバンに手を入れていた。


 しかし、その手は出てくることなく動きが止まっている。


「あ、あぁ、そうなんだ……」

 明らかに動揺しているユーゴ。

「どうかなさいましたか? 顔色が悪いような……」

 グレイはそんなユーゴの変化に気づいて気遣うように質問する。


「い、いや大丈夫だ。まさかメタルロックデーモンがいるとは思わなくてな」

 額に汗が浮かんでいるが、それを拭おうともしないユーゴ。


「そうですか……それで、どのような素材の買取でしょうか?」

 ユーゴが答えをはぐらかすため、グレイは本来の仕事に戻ることにして素材について質問をする。


「こ、混んでるみたいだからまたあとで来るよ」

 そう言ってなんとかこの場をやり過ごそうとするユーゴ。それと同時にカバンから引き抜いた手。


「あっ……」

 メタルロックデーモンの話を直前までしていた二人。

 ユーゴの頭の中にもメタルロックデーモンという名前が浮かんでおり、そのままの勢いでメタルロックデーモンの表皮の一部を取り出していた。


「えっ……」

 それを見て、目を丸くして驚くグレイ。


 次の瞬間、グレイは大声で驚く。と予想できていたため、ユーゴはグレイの口元に風魔法を発動して音が外に漏れないようにする。


 時を同じくして、メタルロックデーモンの討伐および素材採集の依頼についての説明が始まろうとしていたためギルドホール内はざわついている。


「頼むから大声を出さないでくれ、説明はする」

 ユーゴがその隙にグレイに耳打ちし、グレイは驚いた顔のまま首を縦に何度も振っている。


「どこか、静かに話せる場所はあるか? それと、このカウンターをあけても大丈夫か?」

 二つ質問をするが、グレイはそのどちらにも頷いていた。


 今はギルド内が混雑しており、買取を希望する人物もユーゴ以外にはいない。更には、もう少しあとには交代の職員がやってくるはず。

 何より、ここを空けて買取ができないことよりも、ユーゴが持っていたものについての確認が重要であるとグレイは考えていた。


「それじゃあ、このままの状態で移動しよう。案内してくれ」

 再度グレイは頷くと、カウンターの中にユーゴを招き入れて奥にある部屋へと案内する。


 部屋に入ると同時にユーゴは音が外に漏れないように魔法を発動する。


「案内ご苦労さん。悪かったな、今解除する」

 ユーゴが魔法を解除すると、グレイは自分の口に手をあてて何もないことを確認する。


「ふう、あなたはとんでもない方のようですね。まさか声が出せなくなるとは思いませんでした」

 正確には声が外に漏れないようにする魔法だったが、ユーゴはそれを指摘することはしない。


「あそこで大声を出されても困るからな。それよりもこれ」

 ユーゴは中央にあるテーブルに先ほど出してしまったメタルロックデーモンの素材を乗せる。


「……メタルロックデーモンの皮膚ですね。一体どこでこれを?」

 この質問をした時点でグレイはユーゴが倒したのだろうと既に感づいている。声を出させないようにした魔法も見たことも聞いたこともないものであり、それだけでユーゴの実力の高さを察することができていた。


「……内緒で頼む。これは俺が倒したものだ」

「やはりそうでしたか。もう一つ確認ですが、持っているのはこれ一つだけですか?」

 そこまでわかっているのかと、ユーゴはカバンからいくつかの素材を取り出して並べていく。


「まさか、こんなにも多くの素材を……」

 もちろんそれらは全てではなかったが、グレイを驚かせるには十分な量だった。
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