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第四十七話 武器屋

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 イワオを抜かした面々は一緒に昼食をとり、その後、各自準備をするためにバラバラにわかれていく。
 街へ出たガレオスは武器を探しに向かった。武源解放することで通常の武器より強力なものを呼び出すことができるが、修道院や砦での戦いの時のように武器を投擲することもあるため、複数の武器を所持しようと考えていた。
「ここが雰囲気がありそうでいいな」
 立ち寄ったのは街にある武器屋の中でもややこじんまりとした店だった。他の店は職人たちが協力して、大きな店を開いているのがほとんどだったが、この店は個人経営であるようで、店のサイズも控えめとなっている。

 だが、店の佇まいから何かを感じ取ったガレオスは躊躇なく中へと入っていく。
「おう、邪魔するぞ」
 ガレオスが声をかけるが、返事は返ってこなかった。だが職人の中には気難しい人物もいて客が来ても最低限の対応しかしない者もいたため、特に気にした様子もなくガレオスは店の中を見回す。
「ふーむ、開いているんだからやってはいるだろうな……」
 そう考えたガレオスは、とりあえず陳列されている武器を端からチェックしていく。

「なかなか悪くない品揃えだな」
 様々な種類の武器が並ぶ棚を見るガレオスの顔は心なしか嬉しそうだった。それは一見して一般的な武器屋と比較して、どれも品質の高いものが並んでいるからだ。しばらく眺めていると、店の中に控えめな人の気配がする。
「あ、あのー、何かご入用ですか?」
 ガレオスに声をかけたのは、店の店員のようだった。気弱な風貌で、細身の彼はおどおどと怯えた様子でガレオスを見ていた。一般的な人から見ても巨体のガレオスの風貌に気圧されているようだった。
「あんたが店員さんか? うむ、ここは品揃えがいいな!」
 食い入るように少し興奮気味で話すガレオスは声が大きくなっており、その勢いに店員はびくっと震えて数歩下がる。

「お、すまんすまん。ついつい声がでかくなっちまったな」
 彼の怯えた様子にガレオスはいつも周りに注意されることのある自分の声の大きさに反省して自分の頭を軽く叩く。
「い、いえ、こちらこそ失礼しました」
 悪意が全く読み取れないガレオスの様子に男は自分が怖がってしまったことを謝罪する。見た目だけで怯えてしまったことを反省していた。
「この店の武器だが、誰が作ってるんだ?」

 興味津々と言ったガレオスの言葉に一瞬キョトンとした店員が、少し顔を伏せ気味にぼそぼそと答える。
「……です」
「ん? なんて言った?」
 店員の声が聞き取れず、ガレオスは耳を店員に向けて再度言ってもらうよう質問する。
「ぼ、僕です」
 ゆっくりと顔をあげて先ほどより少し大きな声で店員が答えた。

「こ、これ全部か?」
 ガレオスは驚いて質問をし、店員はビクビクしながら何度も頷いた。
「……頼みがある!」
 頷いた彼の返事を聞いてガレオスはにやりと笑って彼に近づく。まるで新しいおもちゃを与えてもらった子供のようにその瞳はキラキラと期待に輝いていた。
「ひ、ひい! な、なんですか」
 自分よりも何周りも大きいガレオスが迫ってくることに店員は怯えながらもなんとか返事をする。

「あんたに作ってもらいたい武器があるんだが、ここはオーダーメイドは受け付けているか?」
 この店の品ぞろえを見たガレオスは彼に作ってもらい武器のアイデアがあった。
「は、はい。僕に作れるものなら、ものによってですが数日から一週間程度でできると思います」
 オーダーメイド、と聞いた店員の目には徐々に職人の火が灯り始めていた。

「俺が頼みたいのは……」
「……ふむふむ、それは……でも、こうだったらできるかと」
「それは面白いな。じゃあ、こういう仕組みにできるか?」
「恐らく……いえ、これなら大丈夫です」
 そうして顔を突き合わせた二人はその後しばらくの間、打ち合わせをしていた。
 話をしているうちに店員の男は最初の怯えた様子は次第になくなり、目の前のガレオスが注文するものをどう形にするかそれだけに夢中になっていた。ガレオスの注文はどれも職人の技を試されるようなものばかりで彼の創作意欲を掻き立てていたからだ。

「ふう、なんとかなりそうだな。それで、いくらになる?」
 これまでの経験上彼に見合う武器となるとそれなりの値段になっていたため、ガレオスはある程度のまとまった金をフランから受け取っており、いくらであろうとも言い値で支払うつもりでいる。
「そう、ですね。これくらいでいかがでしょうか」
 ささっと頭の中で制作にかかるお金を計算した店員はそれらを計算する機能のついた魔道具の数値で提示する。
「そんなもんでいいのか? 材料費とかで赤字になりそうな気がするが……」
 提示された金額は明らかに安く、ガレオスが格安の値段に心配するが、店員は大きく横に首を振った。

「とんでもない、ギルドマスターからお達しが来ています。あなたがたが装備を探しにくるかもしれないから、協力するようにと。ですから、お題は最低限の材料費だけで結構です。なにより……創作意欲を刺激されましたからね、作り甲斐があります!」
 店員はガレオスと話しているうちに、目の前の男が話に聞いていたギルドマスターの知り合いなのだろうと理解し、ギルドからの連絡を思い出していた。最初はその巨体に戸惑うばかりであったがそれだけのものを注文された今ならギルドマスターが言っていたことも理解できた。
「そうか。だったら、ありがとうと言おう。俺も自分の考えをしっかりと理解してくれて助かったぞ」
 ガレオスは笑顔で手を前に出し、彼と握手を申し出る。

 店員もガレオスの手を握り、握手を交わす。既に最初の頃の気弱な様子は見る影もなかった。
「完成は五日後くらいになると思いますので、それ以降にいらっしゃって下さい」
 一週間は猶予があることを既に伝えられたため、彼はその範囲内でできるだけ早く仕上げるつもりだった。
「おう、頼んだぞ。完成を楽しみにしている」
 ガレオスはそう言い残すと武器屋を出て、次の店に向かおうとした。

 しかし、外に出てみると日が暮れており、まわりの店も徐々に今日の業務を終えて閉店していた。
「これは、長くかかりすぎたな」
 思っていた以上に武器屋でガレオスは何時間も打ち合わせをしていた。後半はほぼ雑談になっていたが当初の予定以上のいい武器ができそうなことに満足感が満ちている。だがそのため防具を見る時間は既になくなってしまっていた。
「明日見に行くか……」
 そうつぶやくと、一度ギルドへ戻ることにした。

 ギルドへ戻ると、既に他のメンバーは戻ってきており、フランもガレオスの分を含めた道具類の準備を終えているようだった。
「ガレオス、遅かったわね」
 一番最後に帰って来たガレオスを見つけたリョウカの言葉に彼は頬を掻いた。
「あぁ、最初のほうで面白い武器職人がいたもんでな、ついつい話し込んじまった。それでそのままここに直帰ってところだ。防具は別途明日見にいかないとだな」
 その言葉から、一軒にずっといたことがわかった一同は呆れた様子で彼を見ていた。

「それでは隊長、明日は共に防具探しに向かいましょう。私も本日は道具類の用意だけで終えてしまいましたので」
 苦笑交じりのフランのフォローにガレオスは笑顔で頷く。
「そうかそうか、それはよかった。それじゃあ、明日は昼前から回って、昼がどこか外で食うか。俺のおごりだ」
 彼女もまだ防具を見ていないことにガレオスは仲間がいたと考え、喜んでいた。一人フランの気遣いに気付いていないガレオスを他のメンバーは呆れた様子で見ている。
「あ、あの、私も一緒にいいですか?」
 そんな中、エリスがおずおずと同行を申し出た。

「もちろんだ! なあ、フラン構わないよな?」
 すぐにこころよい返事をするが、一応フランに確認を取るところが普段の力関係を表している。
「もちろんです、それでは明日お昼前にここに集合していきましょう」
 そんな三人を見ていたリョウカも共に行くと言おうとしていたが、それはいつの間にか後ろに回り込んだショウによって止められていた。
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