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第一章 火の魔女
第8話 真夜中の共闘
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「こっちよ!」
クリスティーに腕を掴まれて、アルヴィンは走りだした。
黒煙が急速に濃度を増し、真っ直ぐ走ることさえままならない。
「せいぜい必死に逃げ回ることだ。早々に死なれては、なぶる楽しみがなくなる」
瓦礫に脚をとられながら走る背中に、優越感と悪意に満ちた声がぶつかる。
次に銃声が響いた直後、クリスティーはバランスを崩し、転倒した。
「── っ!!」
苦痛で、顔が歪む。
左脚を射貫かれたのだ。見る間に布が赤く染まっていく。
「このおっ!」
クリスティーの声と共に水の束が生まれ、鞭のようにしなった。それは蛇のようにうねりながら、地面を叩きつける。
もし直撃していれば、ひとたまりもないだろう。
アルヴィンは肩を貸すと、手近な廃墟の影に隠れた。
「やったと思うか?」
「手応えはなかったわ。牽制くらいにはなったかもしれないけれど」
痛みに眉をしかめながら、彼女は傷の応急処置をする。
医師だけあって、この辺りの手際は実にいい。
「あなたも銃を持っているんでしょ? あのイカれたお仲間を、なんとかしなさいよ!」
柳眉を逆立てるクリスティーに、アルヴィンは肩をすくめた。
「模擬弾なんだよ」
「なんですって?」
「僕は審問官見習いだ。見習いに、実弾は支給されない。模擬弾じゃ、至近距離でなければ、致命傷を与えるのは難しい」
「人には噓をつくなって言うくせに、自分はつくのね」
「噓じゃないさ。見習いかって、君は聞かなかっただろう?」
子供じみた言い訳をしながら、アルヴィンは考えを巡らせた。
濃密な黒煙が周囲を取り囲んでいた。
視界は奪われ、クリスティーは負傷し、相手はどこにいるか分からない。
状況は、完全にウルバノに支配されていた。
このままでは、追い詰められるのは時間の問題だろう──
「協力しましょう」
意外すぎる言葉とともに、クリスティーは顔を近づけた。
「あいつは相当な手練れよ。私たちが別々に戦っても、殺されるだけだわ」
「審問官と魔女が手を組むなんて、あり得ない。僕たちは敵同士だ」
「その敵を、私は二回も助けたわよ。恩に着せるつもりはないけど、少しくらい信用してくれてもいいんじゃないかしら?」
彼女は真剣な光を碧い瞳にたたえた。
「初めて会ったとき、魔女の本質は悪だって言ったわね? でも、それは違う。少なくとも私は、人と魔女が共存できる社会を作りたいと思っている。それは、審問官アーロンの願いでもあったのよ」
「── どうして父の名を知っている?」
アルヴィンは顔に、驚きの表情を宿した。
彼女の口にした名は紛れもない、父の名だ。
「今はお互いの立場は置いて、一時休戦としましょう。私たちが力を合わせれば、この事態を切り抜けられるわ」
そう言って、クリスティーは白い優美な手を差し出した。
聞きたいことは山ほどある……が、それを状況が許さない。
二人で乗り切る以外、選択肢がないことは明白だった。
「ウルバノを倒す間だけだ!」
差し出された手を、握手せずにはたく。
「決まりね」
満足そうに笑うと、クリスティーは声をひそめた。
クリスティーに腕を掴まれて、アルヴィンは走りだした。
黒煙が急速に濃度を増し、真っ直ぐ走ることさえままならない。
「せいぜい必死に逃げ回ることだ。早々に死なれては、なぶる楽しみがなくなる」
瓦礫に脚をとられながら走る背中に、優越感と悪意に満ちた声がぶつかる。
次に銃声が響いた直後、クリスティーはバランスを崩し、転倒した。
「── っ!!」
苦痛で、顔が歪む。
左脚を射貫かれたのだ。見る間に布が赤く染まっていく。
「このおっ!」
クリスティーの声と共に水の束が生まれ、鞭のようにしなった。それは蛇のようにうねりながら、地面を叩きつける。
もし直撃していれば、ひとたまりもないだろう。
アルヴィンは肩を貸すと、手近な廃墟の影に隠れた。
「やったと思うか?」
「手応えはなかったわ。牽制くらいにはなったかもしれないけれど」
痛みに眉をしかめながら、彼女は傷の応急処置をする。
医師だけあって、この辺りの手際は実にいい。
「あなたも銃を持っているんでしょ? あのイカれたお仲間を、なんとかしなさいよ!」
柳眉を逆立てるクリスティーに、アルヴィンは肩をすくめた。
「模擬弾なんだよ」
「なんですって?」
「僕は審問官見習いだ。見習いに、実弾は支給されない。模擬弾じゃ、至近距離でなければ、致命傷を与えるのは難しい」
「人には噓をつくなって言うくせに、自分はつくのね」
「噓じゃないさ。見習いかって、君は聞かなかっただろう?」
子供じみた言い訳をしながら、アルヴィンは考えを巡らせた。
濃密な黒煙が周囲を取り囲んでいた。
視界は奪われ、クリスティーは負傷し、相手はどこにいるか分からない。
状況は、完全にウルバノに支配されていた。
このままでは、追い詰められるのは時間の問題だろう──
「協力しましょう」
意外すぎる言葉とともに、クリスティーは顔を近づけた。
「あいつは相当な手練れよ。私たちが別々に戦っても、殺されるだけだわ」
「審問官と魔女が手を組むなんて、あり得ない。僕たちは敵同士だ」
「その敵を、私は二回も助けたわよ。恩に着せるつもりはないけど、少しくらい信用してくれてもいいんじゃないかしら?」
彼女は真剣な光を碧い瞳にたたえた。
「初めて会ったとき、魔女の本質は悪だって言ったわね? でも、それは違う。少なくとも私は、人と魔女が共存できる社会を作りたいと思っている。それは、審問官アーロンの願いでもあったのよ」
「── どうして父の名を知っている?」
アルヴィンは顔に、驚きの表情を宿した。
彼女の口にした名は紛れもない、父の名だ。
「今はお互いの立場は置いて、一時休戦としましょう。私たちが力を合わせれば、この事態を切り抜けられるわ」
そう言って、クリスティーは白い優美な手を差し出した。
聞きたいことは山ほどある……が、それを状況が許さない。
二人で乗り切る以外、選択肢がないことは明白だった。
「ウルバノを倒す間だけだ!」
差し出された手を、握手せずにはたく。
「決まりね」
満足そうに笑うと、クリスティーは声をひそめた。
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