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16.花売りの花束
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「ただいま」
「ロバート兄ちゃん、お帰り!」
「ロバートさん、お帰りなさい」
ロバートさんは仕事に復帰した。大工の棟梁ということだけあって、病気から復帰してからは忙しい日々を送っているようだ。
「あぁ、そうだ。たまたま、帰り道に花売りがいたので、これをどうぞ」
赤色、紫色、白色など色鮮やかな花束だ。
「きれい! それに良い香り……」
王都では野花を見かけることは少ない。
王宮の庭園には庭師がいた。そして、一年中、季節にあった花が咲いていた。
しかし、花を摘んで私に贈る人などいなかった。
「喜んで貰えて嬉しいです」
花束をもらう。前の世界でも同じだが、花束を贈られたら、嬉しい。
ヨーロッパの中世を思わせる文明レベルのこの世界だけど、不思議と花売りという職業はある。元の世界のような、花屋さんとしてちゃんと店を構えているわけではないのだけれど、花は王都でも売っているのだ。
食事が豊かという世界ではない。むしろ、栄養不足の世界であるかもしれない。元の世界とこの世界では、セト君のような子供は、同じ年齢にしても一回り身体が小さいように思う。衛生的な世界であるわけでもない。
スラム街に住む人たちは、ギリギリの生活水準である。花束というのは、食べられない。
観賞するだけ。花は、嗜好品である。部屋に花を飾らなくても、死にはしない。贅沢な品であるのかもしれない。
だけど、きっと、花売りという職業が成立しているのは、花をもらって喜ぶ、花を愛でる、花を贈りたいと思う人がいる。
その心は、この世界でも、元の世界と同じだからなのだろう。どんな世界でも、変わらないものってある。
どうして、こんな簡単なことに転生してから二十二年間、私は気付かなかったのだろう。インターネットも動画サービスもスマフォもない。無い、無い。
何もかも無い世界。
退屈な世界。
遅れた文明の世界。
野蛮な世界。
王様とか貴族とかが真面目に存在していて偉そうにしている世界。
迷信ばかり信じる愚かな人たちの世界。
どうして、私はそんなふうにしかこの世界を見ることしかできなかったのだろうか。この花束が美しいのと同じように、この世界だって、前の世界と変わらず美しい。
そして、人間が一生懸命生きていることに変わらない。
この世界を私は、心のどこかで見下していたのだろう。つくづく、私は聖女失格だ。追放されて当たり前なのかもしれない。
「今日はどうでしたか?」
ロバートさんも席に着き、野菜の欠片を煮たスープに堅いパンを浸けて食べ始める。
「それが……」
私は口籠ってしまう。貝灰制作が順調ではなかったからだ。
貝殻は、ドットさんが大量に手押し車を使って大量にコゼットさんの家の裏庭に大量に積み上げられている。一日でコゼットさんの家の庭に貝塚が出来てしまった。
セト君も頑張って薪を沢山集めてきてくれた。薪も、裏庭の雨に濡れない場所に保管されている。
材料は揃っている。だけど……昨日と同じ量の貝灰しか作れていない。 ドットさん、セト君、私。今日は三人で協力して作業をした。分業をするということは作業効率を上げるということだ。
だけど、貝灰は昨日と同じ桶一杯しかできていない。
貝殻はどんどん運び込まれてくる。薪も王都の外からセト君が一生懸命集めて、抱えてきてくれる。王都と王都の外を往復もしている。材料は沢山ある。
つまり、私の貝殻を焼くという作業が遅いのだ。私が竃に空気を送り込んで燃焼を早めようとしても、やっぱり時間がかかってしまう。
昨日、私が一人で作業をしたのと、今日、三人で作業したの。成果物は、同じ、貝灰桶一杯分。
私も、作業効率を上げないといけないのに昨日と同じ。
落ち込んでしまう。せっかく手伝ってもらっているのに、私の作業が遅いから、ドットさんやセト君の足を引っ張ってしまっている。
私が今日の状況をロバートさんに説明した。
「じゃあ、専用の炉を作りますか。庭になら多少大きいのを作れますし」
ロバートさんがそう言った。
「ろ?」
「竃の大きいようなものですよ。少し前、王都の郊外で、木炭炉の制作に携わったことがあります。木炭炉というのは、普通の薪を燃やして炭を作る大きな竃のようなものです。大型の炉を作ると、その分、一度にたくさん焼いて作ることができますよ」
竃が小さい……。
あぁ、そうか……。逆なのか。発想が……。
言われたら簡単なことだ。竃が小さいのだ。つまり、生産設備が小さいのだ。材料供給過剰の状態だったのだ。
元の世界では、エンジンなどが動力となり、生産設備、生産能力は非常に大きい。ベルトコンベアからどんどん部品や材料が流れてくる。それは、流れ作業で車を作るのも、流れ作業でパンを作るのだって同じだ。
元の世界での課題は、生産設備をフル稼働させて、生産能力の最大値で大量生産することだ。
そのために、材料の供給を止めない、製造ラインを止めないというのが課題だった。
でも、この世界では逆なのだ。
生産設備が小さいのだ。だから、いくら材料があっても、生産が追いつかない。
単純なことだ。逆なのだ。
胸にストンと落ちた。ロバートさんは天才だ。
なんとなく分かった。この世界がゆったりとしていることも。貧しいけれど、生活はまったりスローライフなのだ。
理由は単純なのだ。この世界の人たちが怠け者ということではない。
せわしく働いても、意味がないからだ。
小麦を、小麦粉にして、パンを作って、販売する、ということを考えてみても分かる。
そもそも小麦の収穫量が少なかったら、粉挽き、パン屋の仕事量は制限される。必然的に、ゆっくりと粉を挽き、まったりとパン屋を営業することになる。
小麦を粉にする粉挽きがいくら大量に小麦粉を作っても、パンを焼く竃が小さければ、小麦粉が無駄になる。だから、粉挽きが生産する量は制限されてくる。
パンを沢山焼いても、それを買う人、消費者が多くいないとパンを焼いても無駄になる。必然的にパンを焼く量が制限されてしまうのだ。
小麦の収穫、粉挽き、パン焼き、消費者。言い方悪いけど、どれかが足を引っ張ると、それに全体が引きずられるのだ。
全てがバランスで成り立っているのだ。自然と、最適解に落ち着く。
みんあ、適度に仕事をするのんびりとなる。さぼっているわけではなく、それ以上働いても仕方がないのだ。
小麦も十分にあり、粉挽き能力も十分で、パンを焼く能力も十分で、消費者も十分にいるとき、パンの生産量は自然と上昇していく。でも、どこかが足りないと、自然とその足りない部分に合わせたものとなる。
それが、この世界のまったりスローライフの正体だ。
元の世界では逆もまたしかりだ。 生産能力がどんどん大きくなっていくから、それに合わせようと忙しく働く。消費量が増えていくから、どんどん大量生産して忙しい。翌日配達なんてあると、物流業者も大忙しだ。だけど、不景気となって消費者が消費できなくなったら、物流業者は暇になる。生産者も製造を止めて暇になるかもしれない。
大量生産を支える資源や材料がなくなったら……生産が制限され、物流も制限され、消費も制限される。元の世界では、高失業率状態ということだけど、この世界では、それは、まったりスローライフということになる。もちろん、生活水準が下がるのだけど。
貝殻を運ぶドットさん、薪を運ぶセト君、貝殻を焼く私。
材料供給は過大。竃が小さい故に、生産能力過小で材料が大量に余ってしまっていたということか。
王宮で生活していたままだったら、絶対に気が付くことができなかっただろう。課題は会議室にあるのではなく、現場に本当の課題と、そして解決方法があるってことなのだろう。
ロバートさんの提案。炉を作るというのは有効な解決策だ。
でも……「炉って、お高いんでしょう?」
炉を作ると簡単に言っても、きっと高価だろう。
この世界って金属とか貴重だ。鍋なども高価だ。
炉を作るだけのお金がどこにあるというのだ。
「いえ……材料のネックは、モルタルなんです。でも、モルタルが手に入るので、あとは、大きめの石を拾って、それを組み上げればいいですし。明日から、庭に作るようにしましょうか」
「え? 作れちゃうんですか?」
「モルタルが固まる時間を考えて……三日でできると思います」
炉を作るって、意外と大変な気がする。
でも、ロバートさんが作れると言うなら作れちゃうのだろう。
「三日で炉を……。ぜひ、お願いします」
ロバートさん、元の世界の知識を持った私よりもチートな気がする。イケメンで、チート能力を持っている。ロバートさんは、どこの物語の主人公なのだろうか。
前の世界にロバートさんがいたら……日曜大工で、ピザ窯を自作したり、ログハウスとか、家の家具とかテーブルとか、リフォームとかできちゃう人。子供が生まれたら、庭にブランコとか作っちゃう旦那さん。ロバートさん、元の世界基準でも、モテそう。やっぱり、街で女性から人気があるのも納得だ。
「ロバート兄ちゃん、お帰り!」
「ロバートさん、お帰りなさい」
ロバートさんは仕事に復帰した。大工の棟梁ということだけあって、病気から復帰してからは忙しい日々を送っているようだ。
「あぁ、そうだ。たまたま、帰り道に花売りがいたので、これをどうぞ」
赤色、紫色、白色など色鮮やかな花束だ。
「きれい! それに良い香り……」
王都では野花を見かけることは少ない。
王宮の庭園には庭師がいた。そして、一年中、季節にあった花が咲いていた。
しかし、花を摘んで私に贈る人などいなかった。
「喜んで貰えて嬉しいです」
花束をもらう。前の世界でも同じだが、花束を贈られたら、嬉しい。
ヨーロッパの中世を思わせる文明レベルのこの世界だけど、不思議と花売りという職業はある。元の世界のような、花屋さんとしてちゃんと店を構えているわけではないのだけれど、花は王都でも売っているのだ。
食事が豊かという世界ではない。むしろ、栄養不足の世界であるかもしれない。元の世界とこの世界では、セト君のような子供は、同じ年齢にしても一回り身体が小さいように思う。衛生的な世界であるわけでもない。
スラム街に住む人たちは、ギリギリの生活水準である。花束というのは、食べられない。
観賞するだけ。花は、嗜好品である。部屋に花を飾らなくても、死にはしない。贅沢な品であるのかもしれない。
だけど、きっと、花売りという職業が成立しているのは、花をもらって喜ぶ、花を愛でる、花を贈りたいと思う人がいる。
その心は、この世界でも、元の世界と同じだからなのだろう。どんな世界でも、変わらないものってある。
どうして、こんな簡単なことに転生してから二十二年間、私は気付かなかったのだろう。インターネットも動画サービスもスマフォもない。無い、無い。
何もかも無い世界。
退屈な世界。
遅れた文明の世界。
野蛮な世界。
王様とか貴族とかが真面目に存在していて偉そうにしている世界。
迷信ばかり信じる愚かな人たちの世界。
どうして、私はそんなふうにしかこの世界を見ることしかできなかったのだろうか。この花束が美しいのと同じように、この世界だって、前の世界と変わらず美しい。
そして、人間が一生懸命生きていることに変わらない。
この世界を私は、心のどこかで見下していたのだろう。つくづく、私は聖女失格だ。追放されて当たり前なのかもしれない。
「今日はどうでしたか?」
ロバートさんも席に着き、野菜の欠片を煮たスープに堅いパンを浸けて食べ始める。
「それが……」
私は口籠ってしまう。貝灰制作が順調ではなかったからだ。
貝殻は、ドットさんが大量に手押し車を使って大量にコゼットさんの家の裏庭に大量に積み上げられている。一日でコゼットさんの家の庭に貝塚が出来てしまった。
セト君も頑張って薪を沢山集めてきてくれた。薪も、裏庭の雨に濡れない場所に保管されている。
材料は揃っている。だけど……昨日と同じ量の貝灰しか作れていない。 ドットさん、セト君、私。今日は三人で協力して作業をした。分業をするということは作業効率を上げるということだ。
だけど、貝灰は昨日と同じ桶一杯しかできていない。
貝殻はどんどん運び込まれてくる。薪も王都の外からセト君が一生懸命集めて、抱えてきてくれる。王都と王都の外を往復もしている。材料は沢山ある。
つまり、私の貝殻を焼くという作業が遅いのだ。私が竃に空気を送り込んで燃焼を早めようとしても、やっぱり時間がかかってしまう。
昨日、私が一人で作業をしたのと、今日、三人で作業したの。成果物は、同じ、貝灰桶一杯分。
私も、作業効率を上げないといけないのに昨日と同じ。
落ち込んでしまう。せっかく手伝ってもらっているのに、私の作業が遅いから、ドットさんやセト君の足を引っ張ってしまっている。
私が今日の状況をロバートさんに説明した。
「じゃあ、専用の炉を作りますか。庭になら多少大きいのを作れますし」
ロバートさんがそう言った。
「ろ?」
「竃の大きいようなものですよ。少し前、王都の郊外で、木炭炉の制作に携わったことがあります。木炭炉というのは、普通の薪を燃やして炭を作る大きな竃のようなものです。大型の炉を作ると、その分、一度にたくさん焼いて作ることができますよ」
竃が小さい……。
あぁ、そうか……。逆なのか。発想が……。
言われたら簡単なことだ。竃が小さいのだ。つまり、生産設備が小さいのだ。材料供給過剰の状態だったのだ。
元の世界では、エンジンなどが動力となり、生産設備、生産能力は非常に大きい。ベルトコンベアからどんどん部品や材料が流れてくる。それは、流れ作業で車を作るのも、流れ作業でパンを作るのだって同じだ。
元の世界での課題は、生産設備をフル稼働させて、生産能力の最大値で大量生産することだ。
そのために、材料の供給を止めない、製造ラインを止めないというのが課題だった。
でも、この世界では逆なのだ。
生産設備が小さいのだ。だから、いくら材料があっても、生産が追いつかない。
単純なことだ。逆なのだ。
胸にストンと落ちた。ロバートさんは天才だ。
なんとなく分かった。この世界がゆったりとしていることも。貧しいけれど、生活はまったりスローライフなのだ。
理由は単純なのだ。この世界の人たちが怠け者ということではない。
せわしく働いても、意味がないからだ。
小麦を、小麦粉にして、パンを作って、販売する、ということを考えてみても分かる。
そもそも小麦の収穫量が少なかったら、粉挽き、パン屋の仕事量は制限される。必然的に、ゆっくりと粉を挽き、まったりとパン屋を営業することになる。
小麦を粉にする粉挽きがいくら大量に小麦粉を作っても、パンを焼く竃が小さければ、小麦粉が無駄になる。だから、粉挽きが生産する量は制限されてくる。
パンを沢山焼いても、それを買う人、消費者が多くいないとパンを焼いても無駄になる。必然的にパンを焼く量が制限されてしまうのだ。
小麦の収穫、粉挽き、パン焼き、消費者。言い方悪いけど、どれかが足を引っ張ると、それに全体が引きずられるのだ。
全てがバランスで成り立っているのだ。自然と、最適解に落ち着く。
みんあ、適度に仕事をするのんびりとなる。さぼっているわけではなく、それ以上働いても仕方がないのだ。
小麦も十分にあり、粉挽き能力も十分で、パンを焼く能力も十分で、消費者も十分にいるとき、パンの生産量は自然と上昇していく。でも、どこかが足りないと、自然とその足りない部分に合わせたものとなる。
それが、この世界のまったりスローライフの正体だ。
元の世界では逆もまたしかりだ。 生産能力がどんどん大きくなっていくから、それに合わせようと忙しく働く。消費量が増えていくから、どんどん大量生産して忙しい。翌日配達なんてあると、物流業者も大忙しだ。だけど、不景気となって消費者が消費できなくなったら、物流業者は暇になる。生産者も製造を止めて暇になるかもしれない。
大量生産を支える資源や材料がなくなったら……生産が制限され、物流も制限され、消費も制限される。元の世界では、高失業率状態ということだけど、この世界では、それは、まったりスローライフということになる。もちろん、生活水準が下がるのだけど。
貝殻を運ぶドットさん、薪を運ぶセト君、貝殻を焼く私。
材料供給は過大。竃が小さい故に、生産能力過小で材料が大量に余ってしまっていたということか。
王宮で生活していたままだったら、絶対に気が付くことができなかっただろう。課題は会議室にあるのではなく、現場に本当の課題と、そして解決方法があるってことなのだろう。
ロバートさんの提案。炉を作るというのは有効な解決策だ。
でも……「炉って、お高いんでしょう?」
炉を作ると簡単に言っても、きっと高価だろう。
この世界って金属とか貴重だ。鍋なども高価だ。
炉を作るだけのお金がどこにあるというのだ。
「いえ……材料のネックは、モルタルなんです。でも、モルタルが手に入るので、あとは、大きめの石を拾って、それを組み上げればいいですし。明日から、庭に作るようにしましょうか」
「え? 作れちゃうんですか?」
「モルタルが固まる時間を考えて……三日でできると思います」
炉を作るって、意外と大変な気がする。
でも、ロバートさんが作れると言うなら作れちゃうのだろう。
「三日で炉を……。ぜひ、お願いします」
ロバートさん、元の世界の知識を持った私よりもチートな気がする。イケメンで、チート能力を持っている。ロバートさんは、どこの物語の主人公なのだろうか。
前の世界にロバートさんがいたら……日曜大工で、ピザ窯を自作したり、ログハウスとか、家の家具とかテーブルとか、リフォームとかできちゃう人。子供が生まれたら、庭にブランコとか作っちゃう旦那さん。ロバートさん、元の世界基準でも、モテそう。やっぱり、街で女性から人気があるのも納得だ。
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