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第4章 侵攻
【世界の終焉】
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そもそもの話しであるがクラウドが今もトント村へ残っているのはタニアとルークを思ってのこと。マーサを亡くして悲しみに暮れた二人が心の整理をするための時間が必要だと考えて今もトント村に残っているのだ。
しかし実のところ2人は既に心の整理を終えている。命を簡単に失うこの世界では死とは身近なものなのだ。
ならば何故2人はそれをクラウドに伝えていないのか?
クラウドが2人が心を整理するのに1年要るだろうと考えたということ、それは言い換えればクラウドもそれだけ大きなショックを受けたという事。つまりクラウドにも同じような時間が必要なのでは?と2人が考えたためである。
ルーク達のように厳しい世界で生きておらず、たった一人で閉じこもっていたクラウドが大事な家族を亡くすことに慣れている筈が無い、それに2人は思い至った。
マーサを亡くして一番悲しみに暮れたのは家族である3人。しかし一番心に傷を負ったのはクラウドではないか?それがルークとタニアが話し合った結果出した結論であった。
だから2人はクラウドに時間をあげたかったのだ。自分達を大事にしてくれる自慢の兄にマーサ婆さんと暮らしたこの家に別れを告げる時間を。
そして現在クラウド自身はルークとタニアの2人から心配されていたという事を日々の暮らしの中で察している。そして2人の心配通り自分自身が思っていたより動揺していた事を実感したことで2人の好意に甘えているというのが真相である。
この話しをルークから聞いた時バダックは自分達もこういう風にお互いを思いやれる家族になろうとエリスと誓い合った事がある。
そして今、バダックは皆でマーサを弔った時の事を思い出していた。
村にある墓地に遺骨を納める際、バダックはクラウドがその遺骨を一部貰い受けたと聞いた。マーサさんが安心して村を見ていられるようにと村を見渡せる場所にその骨を埋めるからと。
それを聞いたバダックは自分もその場所に手を合わせに行きたいとクラウドに伝えたが、そこは家族だけの場所にしたいからと断られたのである。
そして今、自分の目の前にあるスクリーンに写るレンブラントと名のった男が率いる兵達とワイバーンの群れ。
この者達がいる場所もまたトント村を一望出来る小高い丘である。
しかもただの丘では無い。
この丘は不思議なことに荒野の中にありながらその一角にはいくつかの野花が咲いていた。
今は踏み潰されて見る影も無いその花は、とてもではないがこんな場所で花を咲かすものでは無い。つまりこの花は植え替えられたものなのだろう。
いくら村が見渡せようと、人気が少ない場所は寂しいだろうと考えたある魔法使いの手によって。
家の横で蕾を付けた花をここまで運んで咲かせていたのだ。少しでも家の気配を感じて欲しいからと、魔物が犇(ひしめ)く領域をまるで散歩がてらとでもいうようにやって来る男の手によって。
そこまで話しを聞き既にアンドリュー達の顔色は病人のように青ざめている。
「そ・・・それではバダックよ・・・。」
「は。間違いなくレンブラントがいる場所がそうであるかと・・・。クラウド殿がシレストの丘と呼び決して誰も立ち入れさせなかった場所かと・・・」
そう。その丘の名前はシレストの丘。文字通りある女性が身体を休めている場所であり、その正確な場所を知るのはクラウド、ルーク、タニアの3人のみである。
あまりの衝撃で呆けていたがようやく理解が追いついて来た面々。
「つ・・・つまり・・・こいつらが今踏み荒らしている場所は・・・」
アンドリューが震えながら呟く。
『まさか』
『どうか間違いであって欲しい』
そう一縷の望みを掛けて。しかし事実とは無慈悲なものである。
「マ・・・マーサ殿の・・・墓所・・・?」
苦渋の表情のエリックの呟きにバダックが頷くのであった。
「陛下ぁっ!!」
誰よりも先んじて声を上げたのは宰相エリック。事態の大きさを理解した国王の懐刀が即座に動いた。
「うむ!クラウド殿には国同士の争いの巻き添えを食わせてしまった!謝罪の用意と慰謝料を用意せよ!全ての仕事は事後で構わん、今すぐ動くのだエリックッッ!!」
「はっ!!」
まさに阿吽の呼吸でエリックが動き出す。
事ここに居たりまずはスクリーンに映る聖十字国兵達の死刑宣告は確定した。問題はその宣告が何処まで適用されるかである。
実際に墓所を荒らした者達だけか?
彼らを指揮する者もなのか?
聖十字国にも責任を問うのか?
しかしアンドリュー達が何よりも警戒したのはこのケースであろう。
『喧嘩両成敗』
つまり戦争相手のユーテリア王国にも責を問うのか?これである。
謝罪の人選から金品の用意まで。あらゆる準備に頭をフル回転させ始めたエリック。
スクリーンから声が聞こえてきたのはその時であった。
「お前たち・・・
ここで一体・・・・
何をしている・・・」
地の底から響くかのような低音の声がスクリーンに響いた。
「「「「ひぃぃっ!?」」」」
一気に汗が噴き出す面々。バダックでさえもあまりの事に声が出なかった。
すべての表情が抜け落ちたかのような顔でレンブラント達を見ているクラウド。
その目が僅かに右へと動いた。その目にはマーサさんが少しでも安らげるようにと心を砕いて育てた花が踏み躙られた跡が映った。
その目が左へと動いた。そこにはレンブラントに付き従う兵士や魔術師達がいた。丁度良い大きさだったのだろう、ある魔術師が尻を乗せて椅子代わりに使っている石が眼に入った。
泥まみれになりひび割れが入っているその石には小さくであるがこう刻まれている。
『 博愛の女性 マーサここに眠る 』
この時点をもってクラウドの理性は掻き消えた。
「き、き、貴様らぁーーーーーっ!!!」
今までで見たことも無い程の怒りと共にクラウドの怒声が響き渡った。
「「「ひいぃぃっ!?」」」
ユーテリアの王城で悲鳴が上がる。
「な、なんだ貴様は?」
一方シレストの丘ではようやく兵士達がクラウドに気づいた。自国軍の潰走というあまりの自体に混乱しており一人で近づいてくる村人に誰も気づいていなかったようだ。
そして彼らは目にすることとなる。自分達の切り札といえた上位の魔物達を狩り尽くした吸血鬼。その男をもってして「絶対強者」と言わしめる魔法使いの実力を。
「何をしている!邪魔ならさっさと殺してしまえ!!」
レンブラントの副官がそう叫んだときである。
「貴様らが何処の誰だろうと許しはしない。何が起こったかも分からないままに死ね。」
「何を訳の分からん事を言っているのだ!」
怒声を上げて襲い掛かろうとする一人の兵士。しかしその兵士の剣がクラウドまで届くことは無かった。
「【世界の終焉】!!」
不意にシレストの丘から声が途切れた。
元々騒いでいたのはクラウドの近くに居た兵士達のみ。ある程度離れた場所に居た者達は血迷った村人が死ぬ様など気にもしていない。自軍が壊滅したショックでそれどころではないからだ。そのため彼らは何が起こっているか理解できていなかった。「急に静かになったな」そんなことを考えた時である。
カランカラン
乾いた音が周囲に響いた。硬いものが地面に落ちた音。
「誰かが剣でも落としたのか?」
そんな事を誰かが思った時、周囲に凄まじい音が鳴り出した。
カランカランカララァーン
カラカラカラカラカラカラカラーーンッ
ガラガラガラガラララァアァアァアッァァァァァンッ
思わず耳を塞ぎ周囲を見渡す兵士達。彼らがそこで見たものは
骨だった。
地面いっぱいに広がる人骨。カランカランとはそれが地面を転げる音。一瞬何が起きているか分からない兵士達は呆けたように周囲を見ている。
しかしスクリーン越しに全てを見ていたアンドリュー達はその異様な光景を目にしていた。ガタガタと震え出し歯はガチガチと音を立てている。
【世界の終焉】
それは術者の周囲の時間を強制的に加速させる魔法であった。彼らに何が起こったのか?それは非常に簡単である。彼らの身体は僅かな間に数年に匹敵する時間の流れを体感したのである。
彼らは魔法の効果範囲に入ると同時に一瞬で動けない程に衰弱した。
そして一歩も動けない内に飢えて死んだ。
更に膝から崩れ落ちると同時に体中の水分が乾いてミイラになった。
身体が倒れ始める頃には乾いた身体が風化し始めた。
風化した身体が倒れる間に塵へと変わり周囲に散らばり
そして地面に伏す頃には白骨化を終えていた。
ゆっくりと歩き始めるクラウドに合わせて次々に骨が地面を転がる。
カランカランと音を立てて。
「お前らも一枚噛んでるのか?」
不意に足を止めたクラウドがスクリーンに写ったアンドリュー達を睨みつけてそう尋ねる。
「「「「と、とんでもない!!!」」」」
皆一様に必死になって首を振る。
「ならいい・・・」
そう告げたクラウドは更に歩いていく。胸を撫で下ろすアンドリュー達。
すると一度は空に避難していたワイバーン達がクラウドに向かって勢い良く下降してきた。
「むっ、クラウド殿、上だ!」
スクリーンから見ていたバダックがそう注意を促す。しかし襲い掛かろうとしたワイバーン達はある程度近づくと意識を無くし落ちてきた。
「ばっ、化け物だーーっ!!」
「なんだあの野郎!人間じゃねえ!」
「にっ逃げろーーー!」
口々に悲鳴を上げながら逃げ出そうと動き出す。しかし
「【氷結の棺】」
周囲はあっという間に凍りついた。氷により下半身を捕われた兵士と魔術師達。
「なっ!複合属性だと!」
「早く凍りを溶かすんだ!」
「私がやる!少々焦げても文句は言うなよ!炎よ燃えろ。飛来する火球【ファイアーボ-・・・」
氷への対処が間に合う筈も無くあっという間に次々と息絶えていく聖十字国兵達。もっともクラウドが魔力を練り込んだ氷がただのファイアーボールで溶けることなど無いが。
こうしてシレストの丘にいた兵達約500人と聖十字国が誇る翼竜兵団のワイバーン達はクラウドと遭遇してから僅か1分足らずでその生涯を終えることとなるのであった
しかし実のところ2人は既に心の整理を終えている。命を簡単に失うこの世界では死とは身近なものなのだ。
ならば何故2人はそれをクラウドに伝えていないのか?
クラウドが2人が心を整理するのに1年要るだろうと考えたということ、それは言い換えればクラウドもそれだけ大きなショックを受けたという事。つまりクラウドにも同じような時間が必要なのでは?と2人が考えたためである。
ルーク達のように厳しい世界で生きておらず、たった一人で閉じこもっていたクラウドが大事な家族を亡くすことに慣れている筈が無い、それに2人は思い至った。
マーサを亡くして一番悲しみに暮れたのは家族である3人。しかし一番心に傷を負ったのはクラウドではないか?それがルークとタニアが話し合った結果出した結論であった。
だから2人はクラウドに時間をあげたかったのだ。自分達を大事にしてくれる自慢の兄にマーサ婆さんと暮らしたこの家に別れを告げる時間を。
そして現在クラウド自身はルークとタニアの2人から心配されていたという事を日々の暮らしの中で察している。そして2人の心配通り自分自身が思っていたより動揺していた事を実感したことで2人の好意に甘えているというのが真相である。
この話しをルークから聞いた時バダックは自分達もこういう風にお互いを思いやれる家族になろうとエリスと誓い合った事がある。
そして今、バダックは皆でマーサを弔った時の事を思い出していた。
村にある墓地に遺骨を納める際、バダックはクラウドがその遺骨を一部貰い受けたと聞いた。マーサさんが安心して村を見ていられるようにと村を見渡せる場所にその骨を埋めるからと。
それを聞いたバダックは自分もその場所に手を合わせに行きたいとクラウドに伝えたが、そこは家族だけの場所にしたいからと断られたのである。
そして今、自分の目の前にあるスクリーンに写るレンブラントと名のった男が率いる兵達とワイバーンの群れ。
この者達がいる場所もまたトント村を一望出来る小高い丘である。
しかもただの丘では無い。
この丘は不思議なことに荒野の中にありながらその一角にはいくつかの野花が咲いていた。
今は踏み潰されて見る影も無いその花は、とてもではないがこんな場所で花を咲かすものでは無い。つまりこの花は植え替えられたものなのだろう。
いくら村が見渡せようと、人気が少ない場所は寂しいだろうと考えたある魔法使いの手によって。
家の横で蕾を付けた花をここまで運んで咲かせていたのだ。少しでも家の気配を感じて欲しいからと、魔物が犇(ひしめ)く領域をまるで散歩がてらとでもいうようにやって来る男の手によって。
そこまで話しを聞き既にアンドリュー達の顔色は病人のように青ざめている。
「そ・・・それではバダックよ・・・。」
「は。間違いなくレンブラントがいる場所がそうであるかと・・・。クラウド殿がシレストの丘と呼び決して誰も立ち入れさせなかった場所かと・・・」
そう。その丘の名前はシレストの丘。文字通りある女性が身体を休めている場所であり、その正確な場所を知るのはクラウド、ルーク、タニアの3人のみである。
あまりの衝撃で呆けていたがようやく理解が追いついて来た面々。
「つ・・・つまり・・・こいつらが今踏み荒らしている場所は・・・」
アンドリューが震えながら呟く。
『まさか』
『どうか間違いであって欲しい』
そう一縷の望みを掛けて。しかし事実とは無慈悲なものである。
「マ・・・マーサ殿の・・・墓所・・・?」
苦渋の表情のエリックの呟きにバダックが頷くのであった。
「陛下ぁっ!!」
誰よりも先んじて声を上げたのは宰相エリック。事態の大きさを理解した国王の懐刀が即座に動いた。
「うむ!クラウド殿には国同士の争いの巻き添えを食わせてしまった!謝罪の用意と慰謝料を用意せよ!全ての仕事は事後で構わん、今すぐ動くのだエリックッッ!!」
「はっ!!」
まさに阿吽の呼吸でエリックが動き出す。
事ここに居たりまずはスクリーンに映る聖十字国兵達の死刑宣告は確定した。問題はその宣告が何処まで適用されるかである。
実際に墓所を荒らした者達だけか?
彼らを指揮する者もなのか?
聖十字国にも責任を問うのか?
しかしアンドリュー達が何よりも警戒したのはこのケースであろう。
『喧嘩両成敗』
つまり戦争相手のユーテリア王国にも責を問うのか?これである。
謝罪の人選から金品の用意まで。あらゆる準備に頭をフル回転させ始めたエリック。
スクリーンから声が聞こえてきたのはその時であった。
「お前たち・・・
ここで一体・・・・
何をしている・・・」
地の底から響くかのような低音の声がスクリーンに響いた。
「「「「ひぃぃっ!?」」」」
一気に汗が噴き出す面々。バダックでさえもあまりの事に声が出なかった。
すべての表情が抜け落ちたかのような顔でレンブラント達を見ているクラウド。
その目が僅かに右へと動いた。その目にはマーサさんが少しでも安らげるようにと心を砕いて育てた花が踏み躙られた跡が映った。
その目が左へと動いた。そこにはレンブラントに付き従う兵士や魔術師達がいた。丁度良い大きさだったのだろう、ある魔術師が尻を乗せて椅子代わりに使っている石が眼に入った。
泥まみれになりひび割れが入っているその石には小さくであるがこう刻まれている。
『 博愛の女性 マーサここに眠る 』
この時点をもってクラウドの理性は掻き消えた。
「き、き、貴様らぁーーーーーっ!!!」
今までで見たことも無い程の怒りと共にクラウドの怒声が響き渡った。
「「「ひいぃぃっ!?」」」
ユーテリアの王城で悲鳴が上がる。
「な、なんだ貴様は?」
一方シレストの丘ではようやく兵士達がクラウドに気づいた。自国軍の潰走というあまりの自体に混乱しており一人で近づいてくる村人に誰も気づいていなかったようだ。
そして彼らは目にすることとなる。自分達の切り札といえた上位の魔物達を狩り尽くした吸血鬼。その男をもってして「絶対強者」と言わしめる魔法使いの実力を。
「何をしている!邪魔ならさっさと殺してしまえ!!」
レンブラントの副官がそう叫んだときである。
「貴様らが何処の誰だろうと許しはしない。何が起こったかも分からないままに死ね。」
「何を訳の分からん事を言っているのだ!」
怒声を上げて襲い掛かろうとする一人の兵士。しかしその兵士の剣がクラウドまで届くことは無かった。
「【世界の終焉】!!」
不意にシレストの丘から声が途切れた。
元々騒いでいたのはクラウドの近くに居た兵士達のみ。ある程度離れた場所に居た者達は血迷った村人が死ぬ様など気にもしていない。自軍が壊滅したショックでそれどころではないからだ。そのため彼らは何が起こっているか理解できていなかった。「急に静かになったな」そんなことを考えた時である。
カランカラン
乾いた音が周囲に響いた。硬いものが地面に落ちた音。
「誰かが剣でも落としたのか?」
そんな事を誰かが思った時、周囲に凄まじい音が鳴り出した。
カランカランカララァーン
カラカラカラカラカラカラカラーーンッ
ガラガラガラガラララァアァアァアッァァァァァンッ
思わず耳を塞ぎ周囲を見渡す兵士達。彼らがそこで見たものは
骨だった。
地面いっぱいに広がる人骨。カランカランとはそれが地面を転げる音。一瞬何が起きているか分からない兵士達は呆けたように周囲を見ている。
しかしスクリーン越しに全てを見ていたアンドリュー達はその異様な光景を目にしていた。ガタガタと震え出し歯はガチガチと音を立てている。
【世界の終焉】
それは術者の周囲の時間を強制的に加速させる魔法であった。彼らに何が起こったのか?それは非常に簡単である。彼らの身体は僅かな間に数年に匹敵する時間の流れを体感したのである。
彼らは魔法の効果範囲に入ると同時に一瞬で動けない程に衰弱した。
そして一歩も動けない内に飢えて死んだ。
更に膝から崩れ落ちると同時に体中の水分が乾いてミイラになった。
身体が倒れ始める頃には乾いた身体が風化し始めた。
風化した身体が倒れる間に塵へと変わり周囲に散らばり
そして地面に伏す頃には白骨化を終えていた。
ゆっくりと歩き始めるクラウドに合わせて次々に骨が地面を転がる。
カランカランと音を立てて。
「お前らも一枚噛んでるのか?」
不意に足を止めたクラウドがスクリーンに写ったアンドリュー達を睨みつけてそう尋ねる。
「「「「と、とんでもない!!!」」」」
皆一様に必死になって首を振る。
「ならいい・・・」
そう告げたクラウドは更に歩いていく。胸を撫で下ろすアンドリュー達。
すると一度は空に避難していたワイバーン達がクラウドに向かって勢い良く下降してきた。
「むっ、クラウド殿、上だ!」
スクリーンから見ていたバダックがそう注意を促す。しかし襲い掛かろうとしたワイバーン達はある程度近づくと意識を無くし落ちてきた。
「ばっ、化け物だーーっ!!」
「なんだあの野郎!人間じゃねえ!」
「にっ逃げろーーー!」
口々に悲鳴を上げながら逃げ出そうと動き出す。しかし
「【氷結の棺】」
周囲はあっという間に凍りついた。氷により下半身を捕われた兵士と魔術師達。
「なっ!複合属性だと!」
「早く凍りを溶かすんだ!」
「私がやる!少々焦げても文句は言うなよ!炎よ燃えろ。飛来する火球【ファイアーボ-・・・」
氷への対処が間に合う筈も無くあっという間に次々と息絶えていく聖十字国兵達。もっともクラウドが魔力を練り込んだ氷がただのファイアーボールで溶けることなど無いが。
こうしてシレストの丘にいた兵達約500人と聖十字国が誇る翼竜兵団のワイバーン達はクラウドと遭遇してから僅か1分足らずでその生涯を終えることとなるのであった
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