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第2章 異世界勇者
ドラン連邦国①
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三大国のレムリア皇国の東に位置するドラン連邦国。この国は元々三大国の脅威にさらされる中で周囲の弱小国家5国が同盟を結び形成された国である。
同盟は結びながらも個別の国として独立していた国々は長い年月の中で連携を強めるため国を解体。5つの州として自治を持つ連邦国となった。元5国の王族から一人が選ばれ国を統治するドラン連邦国は現在レムス・ヌミトル国王がその座についている。
話しは約1年前に遡る。
当時ドラン連邦国は厳しい状態に置かれていた。ユーテリア王国への侵攻を計画していたレムリア皇国から戦費の徴収令が出たのである。周囲の小国がやむなく従う中、『レムリアに最も近いドランは一番その恩恵を受けている』という理由で膨大な戦費を要求されたドラン連邦国はそれに反発。他国との戦費を負担させようとする大国の驕りを受け入れることが出来なかった。
その思惑にはユーテリア王国との決戦を前に他国に手を出す余裕は無いはずとの甘い考えも多分にあったが、1年近くも要求に応じず減額の交渉を続けた結果ユーテリア王国への侵攻を前に弾みをつけるため、また周辺の小国への見せしめのためにとレムリア皇国から宣戦布告を受ける事態に陥る。
『このままでは国の滅亡は必至』
そこまで追い込まれたドラン連邦国は事態打開のために切り札をきった。
今まで徹底して秘匿されてきたもの。
それはかつての王族が信仰を捧げていた世界神から下賜されたとされるドラン連邦国の国宝である。魔法陣が書き込まれた2枚の|巻物(スクロール)であるが、過去の国王が使用したところ強力な力を持つ異世界の住人を召喚出来たという記録が残っているものであった。
ただし、その使用には非常に大きなデメリットを抱えており、ある意味では一か八かとも言える。
当時の記録によると巻物の使用には多量の魔力が必要であり最低でも上級魔術師が20名以上必要となること、その魔導具を起動させた者達は魔力を吸いつくされ命を落とすこと、当時召喚した者は協力的な者では無かったために交渉が纏まらず国から脱走されたこと等が記されていた。
ただでさえ小国であるドラン連邦国で上級魔術師を20名以上一度に失うなど到底取れるリスクでは無い。なんせ召喚した者が協力してくれる保証もないのだ。しかし、今回事態がひっ迫していることもあり上層部はアイテムの使用を決定する。
非協力的な人間が召喚されたのはアイテムを起動するための魔力をケチった為ではないか?
ある魔術師がそう言いだしたことで、前回のような人物が召喚される可能性を極力避けようとしたドランは贄となる魔術師を30名準備した。
その結果、一度に異世界人が30名召喚されるという予想外の幸運が舞い込んできたのであった。
やはり贄となる魔術師が要であると確信したレムス国王は残る1枚の使用も決定。再度30名の上級魔術師の命を代償に召喚するも出てきたのは1名のみである。
実は魔導具には魔力の過多で発動する効果事態が変わるものは少ない。使用した結果が違ったなら、それは把握している効果が間違っていることの方が圧倒的に多い。
今回使用されたドランの国宝である『召喚の巻物』はランクで言えば|伝説級(レジェンドクラス)のアイテムである。
その効果は『起動に使う魔力が多い程多くの異世界人を召喚する』ことでは無い。
『異世界人1名をターゲットとし、ターゲットを中心に一定の範囲にいる異世界人たちを纏めて転移する(ただしアイテムの起動に使った魔力が大きいほど、上記の範囲は拡大する)』というものである。
つまり過去の使用時と今回の2回目の時は周囲に人が居なかっただけである。とてもではないが10人も上級魔術師を犠牲にして取るリスクでは無かった。
結局召喚した者達はドランが崇める世界神により召喚されたものとして体裁を保つことにしたのだが、レムス国王が困ったのは彼らの要求であった。
元の世界に帰せと言う者もいれば、この国での優遇した生活を要求する者もいる。他の国にも行ってみたいという者まで居たのだ。年齢は全員が16歳・17歳と若い彼ら(彼女ら)は欲望に忠実であった。
それは難しいと断ると「いきなり呼び出しておいて」と態度が硬化する。彼らに詰め寄られた結果、国王を始めとする国の重鎮達は「君たちこそ世界を救う勇者である。我が国に攻め入って来る敵国の討伐に協力してくれるならいかなる特権も約束する」と持ち掛けた。
召喚された31名はこの世界で言えばとっくに成人している歳である。しかし経験した事もない贅沢な暮らしや多数の美女、あるいは美男子をあてがわれ囲い込まれていく彼らのほとんどは欲望をはね除ける程強い自我を持っていなかった。
ある者は多くの美女を自由に出来る肉欲に、ある者は他人を見下せる特権階級に魅入られて戦争に力を貸すことを承諾してしまう。
その後、レムリア皇国が進軍してくるまでのわずか1か月を準備期間として、勇者たちはメキメキと腕を上げていった。どうやら彼らにはランダムで強力な魔法やスキルの適正があるようで通常の兵士や魔術師など比べようもないほどに強かった。
ある者は適正に全属性魔法を持ち、火・風・土・水の各属性と合わせて各種複合属性を自在に操った。しかも、適正持ちはほぼ全員が上級魔法を初日でマスターする程の才能を持っていたのである。
また別の者は身体超強化というスキルを持ち、生身の体で強力な魔物さえ殴り殺したり、鑑定スキルであらゆる物を見通しその本質を見抜いたりとまさに規格外な才能を秘めていた。
ドラン連邦国で勇者の準備が出来上がる頃ついにレムリア皇国がその進撃を開始するも、31名の勇者により完膚なきまでに敗れ去ることになるのであった。
同盟は結びながらも個別の国として独立していた国々は長い年月の中で連携を強めるため国を解体。5つの州として自治を持つ連邦国となった。元5国の王族から一人が選ばれ国を統治するドラン連邦国は現在レムス・ヌミトル国王がその座についている。
話しは約1年前に遡る。
当時ドラン連邦国は厳しい状態に置かれていた。ユーテリア王国への侵攻を計画していたレムリア皇国から戦費の徴収令が出たのである。周囲の小国がやむなく従う中、『レムリアに最も近いドランは一番その恩恵を受けている』という理由で膨大な戦費を要求されたドラン連邦国はそれに反発。他国との戦費を負担させようとする大国の驕りを受け入れることが出来なかった。
その思惑にはユーテリア王国との決戦を前に他国に手を出す余裕は無いはずとの甘い考えも多分にあったが、1年近くも要求に応じず減額の交渉を続けた結果ユーテリア王国への侵攻を前に弾みをつけるため、また周辺の小国への見せしめのためにとレムリア皇国から宣戦布告を受ける事態に陥る。
『このままでは国の滅亡は必至』
そこまで追い込まれたドラン連邦国は事態打開のために切り札をきった。
今まで徹底して秘匿されてきたもの。
それはかつての王族が信仰を捧げていた世界神から下賜されたとされるドラン連邦国の国宝である。魔法陣が書き込まれた2枚の|巻物(スクロール)であるが、過去の国王が使用したところ強力な力を持つ異世界の住人を召喚出来たという記録が残っているものであった。
ただし、その使用には非常に大きなデメリットを抱えており、ある意味では一か八かとも言える。
当時の記録によると巻物の使用には多量の魔力が必要であり最低でも上級魔術師が20名以上必要となること、その魔導具を起動させた者達は魔力を吸いつくされ命を落とすこと、当時召喚した者は協力的な者では無かったために交渉が纏まらず国から脱走されたこと等が記されていた。
ただでさえ小国であるドラン連邦国で上級魔術師を20名以上一度に失うなど到底取れるリスクでは無い。なんせ召喚した者が協力してくれる保証もないのだ。しかし、今回事態がひっ迫していることもあり上層部はアイテムの使用を決定する。
非協力的な人間が召喚されたのはアイテムを起動するための魔力をケチった為ではないか?
ある魔術師がそう言いだしたことで、前回のような人物が召喚される可能性を極力避けようとしたドランは贄となる魔術師を30名準備した。
その結果、一度に異世界人が30名召喚されるという予想外の幸運が舞い込んできたのであった。
やはり贄となる魔術師が要であると確信したレムス国王は残る1枚の使用も決定。再度30名の上級魔術師の命を代償に召喚するも出てきたのは1名のみである。
実は魔導具には魔力の過多で発動する効果事態が変わるものは少ない。使用した結果が違ったなら、それは把握している効果が間違っていることの方が圧倒的に多い。
今回使用されたドランの国宝である『召喚の巻物』はランクで言えば|伝説級(レジェンドクラス)のアイテムである。
その効果は『起動に使う魔力が多い程多くの異世界人を召喚する』ことでは無い。
『異世界人1名をターゲットとし、ターゲットを中心に一定の範囲にいる異世界人たちを纏めて転移する(ただしアイテムの起動に使った魔力が大きいほど、上記の範囲は拡大する)』というものである。
つまり過去の使用時と今回の2回目の時は周囲に人が居なかっただけである。とてもではないが10人も上級魔術師を犠牲にして取るリスクでは無かった。
結局召喚した者達はドランが崇める世界神により召喚されたものとして体裁を保つことにしたのだが、レムス国王が困ったのは彼らの要求であった。
元の世界に帰せと言う者もいれば、この国での優遇した生活を要求する者もいる。他の国にも行ってみたいという者まで居たのだ。年齢は全員が16歳・17歳と若い彼ら(彼女ら)は欲望に忠実であった。
それは難しいと断ると「いきなり呼び出しておいて」と態度が硬化する。彼らに詰め寄られた結果、国王を始めとする国の重鎮達は「君たちこそ世界を救う勇者である。我が国に攻め入って来る敵国の討伐に協力してくれるならいかなる特権も約束する」と持ち掛けた。
召喚された31名はこの世界で言えばとっくに成人している歳である。しかし経験した事もない贅沢な暮らしや多数の美女、あるいは美男子をあてがわれ囲い込まれていく彼らのほとんどは欲望をはね除ける程強い自我を持っていなかった。
ある者は多くの美女を自由に出来る肉欲に、ある者は他人を見下せる特権階級に魅入られて戦争に力を貸すことを承諾してしまう。
その後、レムリア皇国が進軍してくるまでのわずか1か月を準備期間として、勇者たちはメキメキと腕を上げていった。どうやら彼らにはランダムで強力な魔法やスキルの適正があるようで通常の兵士や魔術師など比べようもないほどに強かった。
ある者は適正に全属性魔法を持ち、火・風・土・水の各属性と合わせて各種複合属性を自在に操った。しかも、適正持ちはほぼ全員が上級魔法を初日でマスターする程の才能を持っていたのである。
また別の者は身体超強化というスキルを持ち、生身の体で強力な魔物さえ殴り殺したり、鑑定スキルであらゆる物を見通しその本質を見抜いたりとまさに規格外な才能を秘めていた。
ドラン連邦国で勇者の準備が出来上がる頃ついにレムリア皇国がその進撃を開始するも、31名の勇者により完膚なきまでに敗れ去ることになるのであった。
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