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第2章 異世界勇者
帰りの道程
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<エリックside>
ドラン連邦国の王都サン・ミゲルを出発して10日、ようやくレムリア皇国領土に入ることが出来た。
「あれほどの威容を誇っていたレムリアが今や見る影も無いな。」
変わり果てたかつての隣国の現状を目の当たりにしたヘンリー殿下の感想が馬車の中から聞こえてくる。
「エドワード殿下、よろしいでしょうか?」
「エリックか?どうした?」
「はっ、これより旧レムリア領土に入りますが、その前に報告が御座います。」
「構わん、入ってくれ。」
エドワード殿下の許可を貰い馬車に入る。
「どうしたのだ?」
「はい、これよりレムリア領土を横断いたしますが行き道では国境沿いのこの辺りでアンデッドの大群に遭遇いたしました。それゆえに注意して頂きたいと伝えに参りました。」
「アンデッドの大群だとっ!?」
「一体どれほどの群れに遭遇したの?」
驚いたヘンリー殿下とオリヴィア殿下も会話に入ってきた。
「はい、優に万を超す大群でございました。」
「何っ!!万を超すだと!一体どうやってきり抜けたのだ?」
隠す必要もない。クラウド殿の魔法により剣に浄化の力を宿した騎士達がアンデッドを討伐したと説明する。
「何とっ!剣に浄化の力を宿らせるとは!クラウド殿の魔法は凄いのだな!」
「お言葉ながらヘンリー殿下、あの方の魔法は常識などで測れるものではありません。我々はその力の一端を目の当たりにしました。」
その後の天変地異のような魔法を目撃したと話そうとしたところで、馬車の外から声がかかった。
「エリック様!」
声を掛けてきたのは騎士団長のファンクのようだ。
「どうしたのだファンク?今は殿下たちに報告を行っている最中。失礼であろう?」
「いや、私達は構わない。それよりどうしたんだ?急ぎの報告か?」
エドワードに許可を貰ったファンクが報告の続きを話しだす。それはまさに一大事であった。
「は、斥候に出た部下からの報告です。前方約2km程にデミリッチを確認したとのことです。既に我々を索敵範囲に入れているようで、こちらに向かって来ているとのことです。」
「な、何だとっ!」
「デ、デミリッチ・・・」
魔物には通称国落としと呼ばれ絶対に敵対してはいけないとされるランクがある。
SランクとAランクの魔物がそれに当たり、もし下手に手を出して怒りを買えばその代償は自分の命だけでは済まず、周囲の人、都市、国すらが滅ぼされる可能性がある。
殿下達が驚かれるのも無理は無い。
「こちらも大至急対応しなければ。殿下それではこれにて失礼致します。」
急いで馬車を降りファンクに合流する。しかし、我々が取れる手段など限られているというものだ。
「ファンク、急ぎ進路を変えるぞ。アンデッドは力こそ及ばなくても機動力では我らが上だ。」
「はっ、既に迂回を念頭に入れコースを調べております。斥候は既に向かわせましたので。」
「うむ、それで良い。右か左に進んだ先に魔物が湧いていなければ良いが。分かり次第進むぞ。」
これで良い。殿下達を連れている今、可能な限り危険は回避しなければならん。
そうだ、クラウド殿の耳にも入れておこう。早く帰りたいと繰り返していたクラウド殿だ、進路を変えて迂回して行くことを不愉快に思われるかもしれん。
「クラウド殿、よろしいか?」
馬車からは返事が無い。何故だ?
うん?あいつは確かクラウド殿についていたはず。何を急いで走っているのか?
「クラウド殿はどうした?」
「それが、ついさっき馬車を出ていかれたと思ったらあっという間に姿が見えなくなりまして。」
「なっ!?」
この者は事の重大さが分かっているのか?クラウド殿にどれ程の恩義があると思っているのだ。
「それで、どちらの方向に行かれたのだ!?」
「はい、あちらです。」
指差す方向は今までの進行方向である。
「・・・まさか・・。我らも向かうぞ、ファンクを呼んでこい!」
全く、つくづくこの旅で知ったはずであったのに。
この世界には触れてはいけない相手がいる。
少なくとも、国落としと呼ばれるデミリッチを片手で押さえつけた挙句に振り回し、地面に叩きつけた後に土下座させることなど誰に出来るというのだろうか。
強大な敵には知能を持つ魔物がいると聞いたことがあるが、まさかその魔物が話しをしに来るなど思いもしなかった。しかもだ・・・
「ウガ・・ガ・・・、ジャマシテスイマセンデシタ・・・」
「・・・お、お気になさらず・・・」
「・・・」
誰に言っても信じはすまい。ファンクに至っては言葉さえ出てこないようだ。
いい加減私も疲れてしまった・・・
なるほど、そういうことか。
ふふふ、ようやくクラウド殿の考えていることが理解出来たぞ。
私も早く家に帰りたい・・・
頼むから自分のベッドでゆっくりと休ませてくれ・・・・
ドラン連邦国の王都サン・ミゲルを出発して10日、ようやくレムリア皇国領土に入ることが出来た。
「あれほどの威容を誇っていたレムリアが今や見る影も無いな。」
変わり果てたかつての隣国の現状を目の当たりにしたヘンリー殿下の感想が馬車の中から聞こえてくる。
「エドワード殿下、よろしいでしょうか?」
「エリックか?どうした?」
「はっ、これより旧レムリア領土に入りますが、その前に報告が御座います。」
「構わん、入ってくれ。」
エドワード殿下の許可を貰い馬車に入る。
「どうしたのだ?」
「はい、これよりレムリア領土を横断いたしますが行き道では国境沿いのこの辺りでアンデッドの大群に遭遇いたしました。それゆえに注意して頂きたいと伝えに参りました。」
「アンデッドの大群だとっ!?」
「一体どれほどの群れに遭遇したの?」
驚いたヘンリー殿下とオリヴィア殿下も会話に入ってきた。
「はい、優に万を超す大群でございました。」
「何っ!!万を超すだと!一体どうやってきり抜けたのだ?」
隠す必要もない。クラウド殿の魔法により剣に浄化の力を宿した騎士達がアンデッドを討伐したと説明する。
「何とっ!剣に浄化の力を宿らせるとは!クラウド殿の魔法は凄いのだな!」
「お言葉ながらヘンリー殿下、あの方の魔法は常識などで測れるものではありません。我々はその力の一端を目の当たりにしました。」
その後の天変地異のような魔法を目撃したと話そうとしたところで、馬車の外から声がかかった。
「エリック様!」
声を掛けてきたのは騎士団長のファンクのようだ。
「どうしたのだファンク?今は殿下たちに報告を行っている最中。失礼であろう?」
「いや、私達は構わない。それよりどうしたんだ?急ぎの報告か?」
エドワードに許可を貰ったファンクが報告の続きを話しだす。それはまさに一大事であった。
「は、斥候に出た部下からの報告です。前方約2km程にデミリッチを確認したとのことです。既に我々を索敵範囲に入れているようで、こちらに向かって来ているとのことです。」
「な、何だとっ!」
「デ、デミリッチ・・・」
魔物には通称国落としと呼ばれ絶対に敵対してはいけないとされるランクがある。
SランクとAランクの魔物がそれに当たり、もし下手に手を出して怒りを買えばその代償は自分の命だけでは済まず、周囲の人、都市、国すらが滅ぼされる可能性がある。
殿下達が驚かれるのも無理は無い。
「こちらも大至急対応しなければ。殿下それではこれにて失礼致します。」
急いで馬車を降りファンクに合流する。しかし、我々が取れる手段など限られているというものだ。
「ファンク、急ぎ進路を変えるぞ。アンデッドは力こそ及ばなくても機動力では我らが上だ。」
「はっ、既に迂回を念頭に入れコースを調べております。斥候は既に向かわせましたので。」
「うむ、それで良い。右か左に進んだ先に魔物が湧いていなければ良いが。分かり次第進むぞ。」
これで良い。殿下達を連れている今、可能な限り危険は回避しなければならん。
そうだ、クラウド殿の耳にも入れておこう。早く帰りたいと繰り返していたクラウド殿だ、進路を変えて迂回して行くことを不愉快に思われるかもしれん。
「クラウド殿、よろしいか?」
馬車からは返事が無い。何故だ?
うん?あいつは確かクラウド殿についていたはず。何を急いで走っているのか?
「クラウド殿はどうした?」
「それが、ついさっき馬車を出ていかれたと思ったらあっという間に姿が見えなくなりまして。」
「なっ!?」
この者は事の重大さが分かっているのか?クラウド殿にどれ程の恩義があると思っているのだ。
「それで、どちらの方向に行かれたのだ!?」
「はい、あちらです。」
指差す方向は今までの進行方向である。
「・・・まさか・・。我らも向かうぞ、ファンクを呼んでこい!」
全く、つくづくこの旅で知ったはずであったのに。
この世界には触れてはいけない相手がいる。
少なくとも、国落としと呼ばれるデミリッチを片手で押さえつけた挙句に振り回し、地面に叩きつけた後に土下座させることなど誰に出来るというのだろうか。
強大な敵には知能を持つ魔物がいると聞いたことがあるが、まさかその魔物が話しをしに来るなど思いもしなかった。しかもだ・・・
「ウガ・・ガ・・・、ジャマシテスイマセンデシタ・・・」
「・・・お、お気になさらず・・・」
「・・・」
誰に言っても信じはすまい。ファンクに至っては言葉さえ出てこないようだ。
いい加減私も疲れてしまった・・・
なるほど、そういうことか。
ふふふ、ようやくクラウド殿の考えていることが理解出来たぞ。
私も早く家に帰りたい・・・
頼むから自分のベッドでゆっくりと休ませてくれ・・・・
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