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第4章 侵攻

開戦 勇者vs聖魔兵①

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 その報せが首都サン・ミゲルへ届いたのはある朝のこと。ドラン連邦国の国王レムス・ヌミトルの招集により主だった者達が集まっている。


「それで国王様、やはりまずは異世界勇者で迎え撃ちますか!?」


「うむ、報せが本当ならば他の戦力では太刀打ち出来まい。」


 ドラン連邦国と旧レムリア皇国の国境、そこは依然としてアンデッドの脅威に晒されていた。そのため監視が非常に厳重に行われておりその報告に誤りがあるとは誰も思っていない。


「しかしまさか聖十字国が魔物を手なずけるとは思いもよらなかったな。」


 軍事を担うロンガ・アムリウス公爵の呟きにその場の全員が頷いている。国境付近を見回る兵士達からの報告には当初信じられないような出来事が記されていた。それが魔物が隊をなし進軍している、アンデッド達を連携して討伐しドラン方向へ向かっているというものであった。
 更にはその軍には見た事も無いような魔物の姿が散見された混成軍で、その戦力は想像もつかないという。

 うかつに戦力を出せば敗れるのは間違いない。何せドラン連邦国は異世界勇者を召喚する魔導具の起動に多数の魔術師を生贄にしている。
 今や数少ない上位魔術師は貴重な戦力だ。いくら相手の戦力を測定するためといえど敗色濃厚な戦場になど送り込める訳がない。


「どうやっているのか分からん以上、まずは敵の先鋒を倒す事に集中しよう。ロンガよミユキ殿を呼んで来てくれ。」


 ユーテリア王国との交渉により大きな枷を付けられたドラン連邦国。請求された賠償金はとても一括で払えるものでは無かった。今も分割で支払いしている最中であるが、おかげでドランの国力は現状維持がやっとである。金が無いため兵士は増やせず、糧食は揃わず、兵装も不足している。このような状況ではまともに戦える筈が無い。


「お呼びですか?」


 しばらくして部屋に入って来た2人の異世界人。一人は元穏健派のリーダーであるミユキ・ニシモトである。

 尚、クラウドに捕らえられたナオキ達は莫大な費用を代償に国へと帰ってきている。その際に異世界人達はそれまで対立していた参戦派・穏健派を解体。未知の脅威に立ち向かうために和解し今はミユキとナオキをリーダーにして協力しあっている。


「何か雰囲気がピリピリしてるような。嫌な予感がする・・・」


 同行していたナオキが不安を漏らした。


「察しが良いな。すまんが厄介事が起こってな。」


 国王がそう告げて話しを切り出す。要は相手の戦力調査を兼ねて最前線で戦って欲しいという頼みである。


「「・・・」」


 無言の2人。恐らくは頭をフル回転させているのだろう。彼らもまた召喚されて3年の月日が過ぎた。彼らの中にはこの世界で結婚し家庭を築いたクラスメイトもいる。もう今までのように他人事だから知らないという訳にはいかない。
 加えるなら相手が魔物というのも助かったことだろう。未だに彼らの中には殺人に対して強い忌避感を持つ者が多いのだから。


「分かりました。一度戻って皆と話し合いはしますが、魔物達との戦闘は私達で出来る限りは引きうけるつもりです。」


「そうだな、このままじゃどっちにしろ襲われるだけなんだし。今なら街から遠く離れているから思いっきりやれるし。」


 どうやら彼らは受けるようである。最も、一応はミユキとナオキがリーダーとされているが話し合いの結果どんなことでも全員で多数決を取る事という決まり事がある。


「うむ。急かすようで悪いが急ぎ準備を整えてくれ。お前達が敵わなければこの国も終わる。頼むぞ!」


 国王の言葉を受け2人は異世界人が寝起きする屋敷へと消えていくのであった。




~それから2時間後~

 国境付近の小さな村落に20人の異世界人が揃っていた。尚、異世界人の総数は21人であるが、残りの一人は現在お腹に命が宿っており戦線には来れなかった。ユーテリア王国に捕らわれの身となっていたモモコである。
 余談となるが彼女はドランへ帰ってから自分達の地位を国内で確保するために一生懸命だった。ユーテリア王国では捕虜としてきちんと扱われたが、一度捕えられれば人権など無視して見るも無残な扱いを受けることも十分あり得たのだ。帰国後その事実に気づいたモモコは全員を集め、今後の自分達に対する扱いや戦争時の取り決めなどをレムス国王達と話し合った。
 そんな一生懸命な姿に心を打たれた同級生が彼女に求婚したのであった。

 いわゆるリア充である。恨みがましいクラスメイトの視線を浴びながらも家庭を築くまでに至った夫婦は現在バカップル全開であった。


「よーし、さっさと終わらせてモモちゃんのところに帰らなきゃな!」


 声を上げたのは元穏健派のユウスケである。周囲から「タヒね」や「もげろ」などの声が飛び交う中、遂に魔物の群れが彼らの前に姿を現したのであった。




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