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道中
<11>嵐は突然に
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スラを出て三日。お尻はまだ痛いが、乗馬には少しだけ慣れた。高くなった視点にも。
人気のない街道で馬の背に揺られながら、シャンテナは空模様を気にしていた。あまり整備されていない、草を踏みしだいただけの道の左右には、林が広がっている。その木々の上に広がる空は、暗い。まだ日が落ちるには早い時間なのだが、昼過ぎから真っ黒な雲が増え、雷が鳴り始めていた。この分だと宿をとる予定のシロジに着く前に降り出すかもしれない。
同じことをクルトも考えたようで、「少し急ぎますね」と断り、馬を急がせた。もう一日歩いて疲れているのにとでも言いたそうに、年寄り馬は少し抵抗したが、すぐに歩みを速める。
芦毛のこの牝馬はマルクリルという名前で、クルトが近衛師団に配属されて以来の付き合いだという。今は一線を退き、繁殖馬としても役目を終えている。クルトは普段、職務につくときはマルクリルの息子であるリードに乗っているのだが、彼を一月以上借り出すと怪しまれるからと、マルクリルを連れてきた。それも王太子の指示だという。
シャンテナは詳しくわからないが、近衛師団の全員に馬が支給されているわけではないだろうから、もしかしてクルトはそこそこの地位にいるのではないだろうか。あるいは、それは騎兵と歩兵のような兵種の違いであって、地位は関係ないのだろうか。
余計なことを考えていると、雨が降り出した。最初はぽつぽつと、そしてすぐに桶をひっくり返したような大雨になる。
念のため、雨よけの外套を着込んでいたが、視界も悪いし、フードから出た顔はしとどに濡れて息もし辛い。こんな大雨にぶつかるなんて、なかなかない。不運だ。
「うわー、これはまずい……。雷鳴ってるし、木陰で雨宿りってわけにもいかないし……」
頭の後ろでクルトが困ったようにつぶやくのが聞こえる。シャンテナは、顔に当たる雨を少しでも避けようとうつむき、顔を振った。前髪から水滴が落ちる。外套から出ている腿はぐっしょり濡れて、服が張り付いて不快だ。鞍の前を掴んでいる手は、少しかじかみ始めている。それが少し辛くて、両の手をすり合わせた。
轟音とともに、目を焼く閃光が空間を満たしたのは、そのときだった。
「マルクリル!」
マルクリルのいななきがした途端、背後でクルトが鋭く叫び、体が振り回された。みぞおちがふわっとする嫌な浮遊感。シャンテナは悲鳴を上げたつもりだったが、自分の声も聞こえなかった。
雷で驚いた老馬は、棹立ちになり、めちゃくちゃに走り出した。道の向こうに見える林が燃えている。あそこに落雷したのだろうか。しかしそんなことを悠長に確かめている暇はない。
たてがみにしがみつくものなど、かまっていられないとばかりに、マルクリルは頭を振って襲歩になる。
雨と恐怖で目を開けていられず、シャンテナは前傾姿勢で悲鳴を上げ続けた。凄まじい振動だった。顔に雨が打ち付けるし、雷の音は響いているし、体が上下左右に引っ張られる。
このままじゃ、落馬する。地面に叩きつけられて、踏み潰されるかもしれない。怖い。踏まれたら、どれだけ痛いのだろう。自分でした想像が、恐怖をさらに膨れ上がらせる。
こんな怖い思いするのも、全部、フラスメンのせいだ。
泣きたい気分で、胸中で毒づいた。
一際大きく馬が跳ね上がり、シャンテナの手が滑った。指の隙間から硬いたてがみが離れていくその感触に、血の気が引く。体はあっさり傾いだ。
落ちる。
もう間に合わないとわかっているのに、必死でたてがみにしがみつこうと手を伸ばす。
恐慌状態だった。だから、後ろから回ってきた腕が、馬上に引き戻してくれたことを理解するまで、少し時間を要した。
もう一度マルクリルは棹立ちになって、後ろ足を蹴り上げ、――ようやく歩を緩めた。ざあざあと打ち付ける雨のなか、泥を跳ね上げて停止する。興奮はまだ覚めないようで、鼻を何度も何度も鳴らして、前足で地面を掻いていた。
「どうどう。ほら、落ち着け、マルクリル」
クルトの声がする。その調子は、さっきよりずっと穏やかだった。
シャンテナは恐怖で息を荒げたまま、そろそろと目を開いた。自分の心臓まで跳ね馬のようだ。
土砂降りの雨のなか、遠くの空がまた光る。だが、落雷の様子はなかった。
呼吸を整えるために、深く息を吸って、腹部の圧迫感に気づいた。
クルトの片方の腕が、胸のすぐ下に回されていた。落馬を防ぐために、ぎゅっと自分の体にシャンテナの体を寄せるようにして。密着している彼の胸が、ゆっくり上下しているのまで、濡れた服越しにわかる。
その安定感に、そして乱れない彼の呼吸にほっとし――シャンテナはすぐにはっとした。肋骨を圧迫する彼の手を、ぺちぺちと軽く叩く。
「も、もう大丈夫だから、……その、ありがとう」
「舌噛んだりしてませんか?」
「う、うん」
腕が離れ、シャンテナは胸をなでおろした。落馬しなかったことへの安堵と、いつもの距離感に戻ったことでの緊張からの解放で。
「すみません、普段はおとなしいんですが、雷はちょっと駄目だったみたいです。痛いところはないですか? 姿勢、正せますか?」
首を横に振ったあと、今度は縦に振って、シャンテナはまた背筋を伸ばした。クルトの手綱さばきに従って、マルクリルは再び、ゆっくり歩き出した。
× × × × ×
雨の勢いは緩まず、ふたりはシロジに到着する前に通りがかった、小さな村で一晩の宿を求めた。あいにく、そもそも宿屋がなかったが、親切な村人が納屋なら貸してくれるという。他にも何組かの旅人が立ち往生して、納屋や厩舎、運が良ければ空き部屋を借りて、雨宿りをするようだった。
シャンテナは、クルトが納屋で雨に濡れた装備の手入れをしている間に、隣の厩舎でマルクリルに水と飼葉を与えていた。雨はまだ降り止みそうにない。時折、雷の光や音にぎくっとさせられる。
もしゃもしゃ草をはむ老馬に、先程、村の入口の振り売りから購入した人参を下衣のポケットから取り出して、差し出した。馬はすぐに気づき、それにかぶりついた。そうして、人参の礼なのか、もっとと強請っているのか、シャンテナの頬に湿った唇を押し当ててきた。
「わぶっ」
飼葉がついているし、よだれかなにかでべちゃべちゃだ。シャンテナは思わず後ずさって、そこを拭う。
背後から含み笑いが聞こえ、振り返ると、クルトが立っていた。蹄の手入れをする道具を持って。泥を掻き出してやるのだろう。
「懐かれましたね。美味しいものくれる人は、大好きなんです、マルクリルは。あとは優しくしてくれる人も」
「馬に好かれてもね。嬉しいものなの?」
首を傾げるシャンテナの前で、クルトが道具を広げだす。作業している横顔は、穏やかだった。
「戦場で馬に救われることは結構あるんです。というか、馬に嫌われていると、命にかかわることも。だからってわけじゃないですが、やっぱり相棒とは仲良くしたいじゃないですか。彼らも、自分に好意を持っている人かどうかはわかりますよ。簡単な言葉もわかりますから、なるべく声を掛けるんですが、そうしているうちに愛着もわきますし。ささ、シャンテナさんもマルクリルを可愛がってください」
それって強要されることなのか。疑問を持つが、たしかに、これからまた長い旅路をともにする仲間でもある。嫌な雷の下、無理やり歩かされても、こうして親しみを表現してくれる、気のいい老馬。
シャンテナは恐る恐る手を伸ばし、自分の顔の位置より高いところにあるその鼻面に触れた。人のものより厚い皮膚の感触。温かい。密集した体毛は、少し硬かった。
「一日、お疲れ様。ありがとう。雷、怖かった? びっくりさせてごめんね。……なに笑ってるのクルト」
「いえ、なんだか初々しいなあと思って。ほらマルクリル、こっちの足、上げて」
からかわれたようで憮然としながら、シャンテナは一歩後ろに下がる。マルクリルはおとなしく、クルトの指示に従っていた。
「シャンテナさんも一日お疲れ様でした。怖い思いさせて、すみません。……そうだ、ここのうちの奥さんがお湯を沸かしてくれたらしいので、あとでもらってきますね。手足温めて、風引かないようにしましょう」
「……ええ」
どうかしましたか、と顔を上げたクルトに、シャンテナは首を振って応え、マルクリルを眺める。しゃがみこんだ彼の位置からは、きっと窺い知れなかっただろう。頬が赤くなっていることを。自覚できるほどに顔が熱かった。
マルクリルが暴れたとき、ガラにもなく悲鳴を上げて恐慌状態に陥っていたことも恥ずかしい。それよりなにより、クルトに支えられてほっとしてしまったことを思い出して、たまらなく恥ずかしくなった。
馬に慣れてないんだから恐慌したのも仕方ない、と自分に言い訳し、シャンテナはクルトの作業が終わるまで、そばで待っていた。
これはクルトの言いつけどおり離れないようにしているだけだ。実は雷が苦手だからでは、断じてないのだ、と。何度も言い訳を繰り返しながら。
人気のない街道で馬の背に揺られながら、シャンテナは空模様を気にしていた。あまり整備されていない、草を踏みしだいただけの道の左右には、林が広がっている。その木々の上に広がる空は、暗い。まだ日が落ちるには早い時間なのだが、昼過ぎから真っ黒な雲が増え、雷が鳴り始めていた。この分だと宿をとる予定のシロジに着く前に降り出すかもしれない。
同じことをクルトも考えたようで、「少し急ぎますね」と断り、馬を急がせた。もう一日歩いて疲れているのにとでも言いたそうに、年寄り馬は少し抵抗したが、すぐに歩みを速める。
芦毛のこの牝馬はマルクリルという名前で、クルトが近衛師団に配属されて以来の付き合いだという。今は一線を退き、繁殖馬としても役目を終えている。クルトは普段、職務につくときはマルクリルの息子であるリードに乗っているのだが、彼を一月以上借り出すと怪しまれるからと、マルクリルを連れてきた。それも王太子の指示だという。
シャンテナは詳しくわからないが、近衛師団の全員に馬が支給されているわけではないだろうから、もしかしてクルトはそこそこの地位にいるのではないだろうか。あるいは、それは騎兵と歩兵のような兵種の違いであって、地位は関係ないのだろうか。
余計なことを考えていると、雨が降り出した。最初はぽつぽつと、そしてすぐに桶をひっくり返したような大雨になる。
念のため、雨よけの外套を着込んでいたが、視界も悪いし、フードから出た顔はしとどに濡れて息もし辛い。こんな大雨にぶつかるなんて、なかなかない。不運だ。
「うわー、これはまずい……。雷鳴ってるし、木陰で雨宿りってわけにもいかないし……」
頭の後ろでクルトが困ったようにつぶやくのが聞こえる。シャンテナは、顔に当たる雨を少しでも避けようとうつむき、顔を振った。前髪から水滴が落ちる。外套から出ている腿はぐっしょり濡れて、服が張り付いて不快だ。鞍の前を掴んでいる手は、少しかじかみ始めている。それが少し辛くて、両の手をすり合わせた。
轟音とともに、目を焼く閃光が空間を満たしたのは、そのときだった。
「マルクリル!」
マルクリルのいななきがした途端、背後でクルトが鋭く叫び、体が振り回された。みぞおちがふわっとする嫌な浮遊感。シャンテナは悲鳴を上げたつもりだったが、自分の声も聞こえなかった。
雷で驚いた老馬は、棹立ちになり、めちゃくちゃに走り出した。道の向こうに見える林が燃えている。あそこに落雷したのだろうか。しかしそんなことを悠長に確かめている暇はない。
たてがみにしがみつくものなど、かまっていられないとばかりに、マルクリルは頭を振って襲歩になる。
雨と恐怖で目を開けていられず、シャンテナは前傾姿勢で悲鳴を上げ続けた。凄まじい振動だった。顔に雨が打ち付けるし、雷の音は響いているし、体が上下左右に引っ張られる。
このままじゃ、落馬する。地面に叩きつけられて、踏み潰されるかもしれない。怖い。踏まれたら、どれだけ痛いのだろう。自分でした想像が、恐怖をさらに膨れ上がらせる。
こんな怖い思いするのも、全部、フラスメンのせいだ。
泣きたい気分で、胸中で毒づいた。
一際大きく馬が跳ね上がり、シャンテナの手が滑った。指の隙間から硬いたてがみが離れていくその感触に、血の気が引く。体はあっさり傾いだ。
落ちる。
もう間に合わないとわかっているのに、必死でたてがみにしがみつこうと手を伸ばす。
恐慌状態だった。だから、後ろから回ってきた腕が、馬上に引き戻してくれたことを理解するまで、少し時間を要した。
もう一度マルクリルは棹立ちになって、後ろ足を蹴り上げ、――ようやく歩を緩めた。ざあざあと打ち付ける雨のなか、泥を跳ね上げて停止する。興奮はまだ覚めないようで、鼻を何度も何度も鳴らして、前足で地面を掻いていた。
「どうどう。ほら、落ち着け、マルクリル」
クルトの声がする。その調子は、さっきよりずっと穏やかだった。
シャンテナは恐怖で息を荒げたまま、そろそろと目を開いた。自分の心臓まで跳ね馬のようだ。
土砂降りの雨のなか、遠くの空がまた光る。だが、落雷の様子はなかった。
呼吸を整えるために、深く息を吸って、腹部の圧迫感に気づいた。
クルトの片方の腕が、胸のすぐ下に回されていた。落馬を防ぐために、ぎゅっと自分の体にシャンテナの体を寄せるようにして。密着している彼の胸が、ゆっくり上下しているのまで、濡れた服越しにわかる。
その安定感に、そして乱れない彼の呼吸にほっとし――シャンテナはすぐにはっとした。肋骨を圧迫する彼の手を、ぺちぺちと軽く叩く。
「も、もう大丈夫だから、……その、ありがとう」
「舌噛んだりしてませんか?」
「う、うん」
腕が離れ、シャンテナは胸をなでおろした。落馬しなかったことへの安堵と、いつもの距離感に戻ったことでの緊張からの解放で。
「すみません、普段はおとなしいんですが、雷はちょっと駄目だったみたいです。痛いところはないですか? 姿勢、正せますか?」
首を横に振ったあと、今度は縦に振って、シャンテナはまた背筋を伸ばした。クルトの手綱さばきに従って、マルクリルは再び、ゆっくり歩き出した。
× × × × ×
雨の勢いは緩まず、ふたりはシロジに到着する前に通りがかった、小さな村で一晩の宿を求めた。あいにく、そもそも宿屋がなかったが、親切な村人が納屋なら貸してくれるという。他にも何組かの旅人が立ち往生して、納屋や厩舎、運が良ければ空き部屋を借りて、雨宿りをするようだった。
シャンテナは、クルトが納屋で雨に濡れた装備の手入れをしている間に、隣の厩舎でマルクリルに水と飼葉を与えていた。雨はまだ降り止みそうにない。時折、雷の光や音にぎくっとさせられる。
もしゃもしゃ草をはむ老馬に、先程、村の入口の振り売りから購入した人参を下衣のポケットから取り出して、差し出した。馬はすぐに気づき、それにかぶりついた。そうして、人参の礼なのか、もっとと強請っているのか、シャンテナの頬に湿った唇を押し当ててきた。
「わぶっ」
飼葉がついているし、よだれかなにかでべちゃべちゃだ。シャンテナは思わず後ずさって、そこを拭う。
背後から含み笑いが聞こえ、振り返ると、クルトが立っていた。蹄の手入れをする道具を持って。泥を掻き出してやるのだろう。
「懐かれましたね。美味しいものくれる人は、大好きなんです、マルクリルは。あとは優しくしてくれる人も」
「馬に好かれてもね。嬉しいものなの?」
首を傾げるシャンテナの前で、クルトが道具を広げだす。作業している横顔は、穏やかだった。
「戦場で馬に救われることは結構あるんです。というか、馬に嫌われていると、命にかかわることも。だからってわけじゃないですが、やっぱり相棒とは仲良くしたいじゃないですか。彼らも、自分に好意を持っている人かどうかはわかりますよ。簡単な言葉もわかりますから、なるべく声を掛けるんですが、そうしているうちに愛着もわきますし。ささ、シャンテナさんもマルクリルを可愛がってください」
それって強要されることなのか。疑問を持つが、たしかに、これからまた長い旅路をともにする仲間でもある。嫌な雷の下、無理やり歩かされても、こうして親しみを表現してくれる、気のいい老馬。
シャンテナは恐る恐る手を伸ばし、自分の顔の位置より高いところにあるその鼻面に触れた。人のものより厚い皮膚の感触。温かい。密集した体毛は、少し硬かった。
「一日、お疲れ様。ありがとう。雷、怖かった? びっくりさせてごめんね。……なに笑ってるのクルト」
「いえ、なんだか初々しいなあと思って。ほらマルクリル、こっちの足、上げて」
からかわれたようで憮然としながら、シャンテナは一歩後ろに下がる。マルクリルはおとなしく、クルトの指示に従っていた。
「シャンテナさんも一日お疲れ様でした。怖い思いさせて、すみません。……そうだ、ここのうちの奥さんがお湯を沸かしてくれたらしいので、あとでもらってきますね。手足温めて、風引かないようにしましょう」
「……ええ」
どうかしましたか、と顔を上げたクルトに、シャンテナは首を振って応え、マルクリルを眺める。しゃがみこんだ彼の位置からは、きっと窺い知れなかっただろう。頬が赤くなっていることを。自覚できるほどに顔が熱かった。
マルクリルが暴れたとき、ガラにもなく悲鳴を上げて恐慌状態に陥っていたことも恥ずかしい。それよりなにより、クルトに支えられてほっとしてしまったことを思い出して、たまらなく恥ずかしくなった。
馬に慣れてないんだから恐慌したのも仕方ない、と自分に言い訳し、シャンテナはクルトの作業が終わるまで、そばで待っていた。
これはクルトの言いつけどおり離れないようにしているだけだ。実は雷が苦手だからでは、断じてないのだ、と。何度も言い訳を繰り返しながら。
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