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3 できる人間がやるのが正しいの?
急いで学園長室に駆けつけた。
ドアをノックする前に、前髪の乱れを直して息を整える。
トントントンと、軽くノックすると、中から返事があった。
「入りたまえ」
一組の担任のエリック先生の声だ。
「失礼いたします」
学園長室に入ると、レリル様もそのペアの子もいなかった。
二組の担任の先生もいない。
これは――どういう状況?
不審に思ったことが顔に出ていませんようにと祈りながら、学園長とエリック先生に挨拶をする。
「一年一組のメーベル・ディジョンです。お呼びと伺いました」
「メーベル君。こちらにかけなさい」
「はい」
ソファーに座っている先生の指示通り、彼の向かい側に腰掛ける。
学園長は部屋の奥に鎮座ましましていた。
執務用の大きなデスクがあるせいで、学園長の胸から上しか見えない。
大きな椅子に座ったまま無表情に私とエリック先生を見ている。
私とエリック先生はドアに近いところのソファーに向かい合って座る格好になっていた。
「学園長。こちらがメーベル君です。一組のリーダーですので彼女が適任かと」
「うむ」
適任? 何の?
何を勝手に決めているんだろう。
「二組の事情は君も聞いているだろう?」
……は?
勝手に噂好きな女子にしないでください。
女生徒同士で少しばかり対立したらしいとは聞いているけれど。
「申し訳ありません。隣のクラスには知り合いがいないので、事情と言われましても……」
エリック先生がイラッとしたことを隠しもしないで私を睨みつけた。
「この俺に説明させるのか?」と言いたげだけど、説明してください。
「明日の孤児院の慰問の件だが、ミルクの発注量に行き違いがあったのだ。我が学園の担当が商売に不慣れな生徒であることを承知の上で協力いただいていたのだが……。二組の担当者が少々多く注文をしてしまってね。相手側は注文分のミルクを準備したので全量を買い取ってほしいと要求してきて、扱いに憂慮している」
え? そんなの、考えるまでもなく買い取る義務がありますよね? だって、こちら側のミスなんだから。
まさか――平民に責任をなすりつけて余った分を負担させるつもりなの?
「二組のご担当者はどなたですか? その方はなんとおっしゃっているのでしょうか?」
実際に担当した生徒抜きで話が進んでいるのが不思議で仕方がない。
それなのに先生は、私を睨みつけている。
「コホン。担当は――二組のレリル君だったのだが、彼女は体調不良でここ数日学園を休んでいて連絡が取れなかったのだ」
「それでも慰問の日は明日に迫っているのですから、自分の担当業務について、家人に頼むなどしてペアを組んでいる方に連絡を取るのが普通だと思うのですけれど」
たまらず意見を述べてしまった。
先生はムッとして、レリル様の代わりに言い訳をした。
「レリル君は――発注業務は完了しているので問題ないと考えていたのではないか? まさか先方から問い合わせが入るなど想定外だろう」
は? 何を言ってんの?
違うでしょう? 逆でしょう?
他の担当はみんな、問題なく納品されるか、こちらから相手側に事前に確認していますけど?
「コホン。担当者であるレリル君には先ほど私から連絡をしておいた。彼女は相当なショックを受けたようだ。まだ体調も元に戻っていないのに、明日は無理をしてでも慰問に参加すると言っている。この件に関して動揺しているようだったし、学園側としては無理をさせたくはないのだが、彼女の熱意を無下にもできないので、今日までしっかり休んで明日に備えてもらうことにした。ということで――」
えぇぇ! どういうことで?
「君に先方への謝罪を頼みたい」
嘘でしょう?!
「どうして私なのでしょうか? それに金銭的な問題も発生しているようですので、生徒ではなく学園として責任を取れる方でないと――」
「はあ。君はどうしてそうなんだ? いつも上からものを言っているが、そんなことでは学園卒業後に苦労するぞ。ミルクについては引き取り手を調整しているところだ。支払いも寄付金の中から出すので問題ない。これは生徒が主体となって実施するイベントなのだから、謝罪も含めて生徒が行うべきだろう」
「二組の――」
「二組のリーダーはミルクの引き取りの方を担当してもらった。弁がたつ君の方が謝罪に向いているだろう。私から見ても、君なら卒なくできると判断して推薦しているのだ。がっかりさせないでくれ」
できるのだからやりなさい?
どうして?
私だって頑張ってできるようになったのに。
できない子はできるまで努力するべきじゃないの?
ショックを受けたからって何よ!
「できません」「無理です」って泣く人間が守られるなんて。
「返事をしなさい。メーベル・ディジョン」
「は――い」
ひどい。
納得いかない。
私に対して、せめて労いの言葉をかけるとか、そういった配慮はないの?
エリック先生は一組の担任なのに、私よりも二組のレリル様の肩を持つなんて……。
「話は以上だ。先方には本件の関係者である生徒が謝りに伺うと伝えてある。お待たせしないよう急ぎたまえ」
「――」
どうしようもなくムカついたけれど、もう逃げられそうにないので、お辞儀だけして学園長室を出た。
ドアをノックする前に、前髪の乱れを直して息を整える。
トントントンと、軽くノックすると、中から返事があった。
「入りたまえ」
一組の担任のエリック先生の声だ。
「失礼いたします」
学園長室に入ると、レリル様もそのペアの子もいなかった。
二組の担任の先生もいない。
これは――どういう状況?
不審に思ったことが顔に出ていませんようにと祈りながら、学園長とエリック先生に挨拶をする。
「一年一組のメーベル・ディジョンです。お呼びと伺いました」
「メーベル君。こちらにかけなさい」
「はい」
ソファーに座っている先生の指示通り、彼の向かい側に腰掛ける。
学園長は部屋の奥に鎮座ましましていた。
執務用の大きなデスクがあるせいで、学園長の胸から上しか見えない。
大きな椅子に座ったまま無表情に私とエリック先生を見ている。
私とエリック先生はドアに近いところのソファーに向かい合って座る格好になっていた。
「学園長。こちらがメーベル君です。一組のリーダーですので彼女が適任かと」
「うむ」
適任? 何の?
何を勝手に決めているんだろう。
「二組の事情は君も聞いているだろう?」
……は?
勝手に噂好きな女子にしないでください。
女生徒同士で少しばかり対立したらしいとは聞いているけれど。
「申し訳ありません。隣のクラスには知り合いがいないので、事情と言われましても……」
エリック先生がイラッとしたことを隠しもしないで私を睨みつけた。
「この俺に説明させるのか?」と言いたげだけど、説明してください。
「明日の孤児院の慰問の件だが、ミルクの発注量に行き違いがあったのだ。我が学園の担当が商売に不慣れな生徒であることを承知の上で協力いただいていたのだが……。二組の担当者が少々多く注文をしてしまってね。相手側は注文分のミルクを準備したので全量を買い取ってほしいと要求してきて、扱いに憂慮している」
え? そんなの、考えるまでもなく買い取る義務がありますよね? だって、こちら側のミスなんだから。
まさか――平民に責任をなすりつけて余った分を負担させるつもりなの?
「二組のご担当者はどなたですか? その方はなんとおっしゃっているのでしょうか?」
実際に担当した生徒抜きで話が進んでいるのが不思議で仕方がない。
それなのに先生は、私を睨みつけている。
「コホン。担当は――二組のレリル君だったのだが、彼女は体調不良でここ数日学園を休んでいて連絡が取れなかったのだ」
「それでも慰問の日は明日に迫っているのですから、自分の担当業務について、家人に頼むなどしてペアを組んでいる方に連絡を取るのが普通だと思うのですけれど」
たまらず意見を述べてしまった。
先生はムッとして、レリル様の代わりに言い訳をした。
「レリル君は――発注業務は完了しているので問題ないと考えていたのではないか? まさか先方から問い合わせが入るなど想定外だろう」
は? 何を言ってんの?
違うでしょう? 逆でしょう?
他の担当はみんな、問題なく納品されるか、こちらから相手側に事前に確認していますけど?
「コホン。担当者であるレリル君には先ほど私から連絡をしておいた。彼女は相当なショックを受けたようだ。まだ体調も元に戻っていないのに、明日は無理をしてでも慰問に参加すると言っている。この件に関して動揺しているようだったし、学園側としては無理をさせたくはないのだが、彼女の熱意を無下にもできないので、今日までしっかり休んで明日に備えてもらうことにした。ということで――」
えぇぇ! どういうことで?
「君に先方への謝罪を頼みたい」
嘘でしょう?!
「どうして私なのでしょうか? それに金銭的な問題も発生しているようですので、生徒ではなく学園として責任を取れる方でないと――」
「はあ。君はどうしてそうなんだ? いつも上からものを言っているが、そんなことでは学園卒業後に苦労するぞ。ミルクについては引き取り手を調整しているところだ。支払いも寄付金の中から出すので問題ない。これは生徒が主体となって実施するイベントなのだから、謝罪も含めて生徒が行うべきだろう」
「二組の――」
「二組のリーダーはミルクの引き取りの方を担当してもらった。弁がたつ君の方が謝罪に向いているだろう。私から見ても、君なら卒なくできると判断して推薦しているのだ。がっかりさせないでくれ」
できるのだからやりなさい?
どうして?
私だって頑張ってできるようになったのに。
できない子はできるまで努力するべきじゃないの?
ショックを受けたからって何よ!
「できません」「無理です」って泣く人間が守られるなんて。
「返事をしなさい。メーベル・ディジョン」
「は――い」
ひどい。
納得いかない。
私に対して、せめて労いの言葉をかけるとか、そういった配慮はないの?
エリック先生は一組の担任なのに、私よりも二組のレリル様の肩を持つなんて……。
「話は以上だ。先方には本件の関係者である生徒が謝りに伺うと伝えてある。お待たせしないよう急ぎたまえ」
「――」
どうしようもなくムカついたけれど、もう逃げられそうにないので、お辞儀だけして学園長室を出た。
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