無愛想な仕立て屋と、ふわふわ受付嬢 〜ぬいぐるみ仕立て屋さんの日常〜

miigumi

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【第21話:さよなら、さくらのしたで】

 雨が降った翌日、
 “桜のふく”を着ていたベリィの肩に、小さな花びらがくっついていた。

「もう、散っちゃったね……」

 ココはその花びらをそっと摘み取ると、胸元にそっとしまった。

 仕立て屋の店先には、春の名残がまだいくつか残っていたけれど、
 風が変わり、空気が少し軽くなると、どこか“春の終わり”が感じられた。


 その日、常連の子どもがぬいぐるみを連れてきた。

「この服、暑そうだから、涼しいのに変えたいの」

 そう言って差し出したのは、前に仕立てた春色のワンピース。

「次はね、風が通るやつがいいの。水色とか……ふわってなるやつ」

 ココは驚きながらも、にこっと笑った。

「うん、じゃあ“風のワンピース”ね。任せて」

 ゼクが奥から軽く頷き、布棚から新しい生地を選び始める。

 “春”が終わっていくことを、子どもたちもちゃんと感じている――
 その優しい気配が、店にも静かに染みていた。


 夜。ベリィたちは、桜のふくをきれいに畳んでいた。

「また、来年だね」

「うん……来年も、着られるといいね」

 モモが言うと、グルルが少しだけそっぽを向いて言った。

「……洗っとけよな。花粉、ついてんぞ」

「それ言うなら、グルルのおなかのポケットの方が――」

「黙れ!」

 小さなじゃれ合いの声に、ゼクがちらりと目を向けたが、何も言わずに棚に布を戻した。


 その晩、閉店後の店内で。

 ココは、少し高めの棚に“桜のふく”をしまいながら、ぽつりと呟いた。

「季節が変わるの、ちょっと寂しいですね」

「……また来年、着せればいい」

「……うん」

 ココの顔に微笑みが浮かんだ。


 季節は巡る。
 ぬいぐるみも、服も、人の心も――少しずつ、でも確かに。

 春が終わり、夏がくる。

 この店にもまた、新しい風が吹くのだった。
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