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2章
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■第14話『届く声、届いてしまう声』
*
翌朝、リィナは筋肉痛と戦っていた。
「腕が……プリンを……混ぜすぎた……」
ピノは机の上でころころと転がりながら、
「やっぱり手伝うべきだったか」とでも言いたげな目で見上げている。
「でも……楽しかったな、昨日」
おやつ市は大成功だった。
完売御礼。たくさんの「おいしかった」の声。
プリンの空き瓶を持って、再販希望を伝えてくる子どもたちもいた。
「モブ人生なのに……まさか完売って言葉、言う日が来るとは……」
「ぴ」
「まさか“行列ができてます!”ってマダムに言われるとは……」
「ぴ」
「いや、だって、モブなのに!?」
「ぴぴっ!」
ピノのつっこみが激しくなってきたところで、扉がコンコンと叩かれた。
「リィナさーん、いますかー!」
八百屋のマルシェさんだった。
「これ、昨日の“しろくま通り賞”の表彰状と、副賞だって!」
「し……賞?」
ご近所で選ぶ“街角で一番ほっこりした屋台”として、
リィナの屋台が票を集めたらしい。
「このプリン、ほんとに癒されるって評判よ。お客さんも増えそうね~」
「え、えぇっ……でも……そんなに話題に……?」
リィナは動揺しつつ、マルシェさんに紅茶を出した。
「それにね、聞いた話だけど、昨日来てた貴族様の奥方がプリンに目をつけてたらしいのよ」
「え、えっ……貴族……っ!?」
「噂よ、噂。でも、何がきっかけで呼ばれるかわからないからね? 準備はしておいた方がいいわよ~」
マルシェさんはそう言って笑いながら帰っていったが、
リィナの心臓はばくばくと高鳴り続けていた。
(貴族!? ダメダメダメ、目立ったらダメなのに!)
(勇者とか聖女とかの話に巻き込まれるフラグ、これ絶対立ったよね!?)
ピノは、リィナの頭にぽふっと飛び乗り、
「落ち着け」とばかりに頭をくちばしでつついた。
「ぴ」
「……ありがと、ピノ。そうだよね、落ち着いて、逃げる方法を……」
「ぴっ」
「逃げなくていいの!?」
*
その日の夕方、いつものように扉が静かに開いた。
「こんにちは。……プリン、ありますか?」
「……レオさん……!」
来てくれるだけで安心する不思議な存在。
でも今日のレオは、どこか少し“観察”するような眼差しだった。
プリンを一口食べて、彼はふ、と小さく笑う。
「……やっぱり、変わらない味ですね。誰かの気持ちを、静かに動かす味です」
「ありがとうございます……でも、私、ちょっと困ってます」
「聞きましたよ。貴族の奥方が、興味を持たれたとか」
「はい……どうしよう、って感じで……」
レオは少しだけ黙った後、穏やかに言った。
「……気をつけてください。名が知られると、あなたは“誰かのもの”にされる可能性があります」
「……もの?」
「この世界では、“才能”も“味”も、“力”と見なされることがあります」
リィナは、その言葉に、思わず背筋を伸ばした。
(前世では、誰にも気づかれずにいた。
今世では、気づかれることが怖い。
でも――)
「……私、逃げないです。まだ何も決まってないけど、でも……“私の味”を、ちゃんと作りたいから」
レオは、その返事を聞いてから、少しだけ目を細めて言った。
「なら、守ります。……あなたのその、プリンと、ゼリーと、ピノの暮らしを」
「……え?」
「ふふ、冗談ですよ。少し、言ってみたかっただけです」
それでも、その目は冗談のままではなかった。
*
翌朝、リィナは筋肉痛と戦っていた。
「腕が……プリンを……混ぜすぎた……」
ピノは机の上でころころと転がりながら、
「やっぱり手伝うべきだったか」とでも言いたげな目で見上げている。
「でも……楽しかったな、昨日」
おやつ市は大成功だった。
完売御礼。たくさんの「おいしかった」の声。
プリンの空き瓶を持って、再販希望を伝えてくる子どもたちもいた。
「モブ人生なのに……まさか完売って言葉、言う日が来るとは……」
「ぴ」
「まさか“行列ができてます!”ってマダムに言われるとは……」
「ぴ」
「いや、だって、モブなのに!?」
「ぴぴっ!」
ピノのつっこみが激しくなってきたところで、扉がコンコンと叩かれた。
「リィナさーん、いますかー!」
八百屋のマルシェさんだった。
「これ、昨日の“しろくま通り賞”の表彰状と、副賞だって!」
「し……賞?」
ご近所で選ぶ“街角で一番ほっこりした屋台”として、
リィナの屋台が票を集めたらしい。
「このプリン、ほんとに癒されるって評判よ。お客さんも増えそうね~」
「え、えぇっ……でも……そんなに話題に……?」
リィナは動揺しつつ、マルシェさんに紅茶を出した。
「それにね、聞いた話だけど、昨日来てた貴族様の奥方がプリンに目をつけてたらしいのよ」
「え、えっ……貴族……っ!?」
「噂よ、噂。でも、何がきっかけで呼ばれるかわからないからね? 準備はしておいた方がいいわよ~」
マルシェさんはそう言って笑いながら帰っていったが、
リィナの心臓はばくばくと高鳴り続けていた。
(貴族!? ダメダメダメ、目立ったらダメなのに!)
(勇者とか聖女とかの話に巻き込まれるフラグ、これ絶対立ったよね!?)
ピノは、リィナの頭にぽふっと飛び乗り、
「落ち着け」とばかりに頭をくちばしでつついた。
「ぴ」
「……ありがと、ピノ。そうだよね、落ち着いて、逃げる方法を……」
「ぴっ」
「逃げなくていいの!?」
*
その日の夕方、いつものように扉が静かに開いた。
「こんにちは。……プリン、ありますか?」
「……レオさん……!」
来てくれるだけで安心する不思議な存在。
でも今日のレオは、どこか少し“観察”するような眼差しだった。
プリンを一口食べて、彼はふ、と小さく笑う。
「……やっぱり、変わらない味ですね。誰かの気持ちを、静かに動かす味です」
「ありがとうございます……でも、私、ちょっと困ってます」
「聞きましたよ。貴族の奥方が、興味を持たれたとか」
「はい……どうしよう、って感じで……」
レオは少しだけ黙った後、穏やかに言った。
「……気をつけてください。名が知られると、あなたは“誰かのもの”にされる可能性があります」
「……もの?」
「この世界では、“才能”も“味”も、“力”と見なされることがあります」
リィナは、その言葉に、思わず背筋を伸ばした。
(前世では、誰にも気づかれずにいた。
今世では、気づかれることが怖い。
でも――)
「……私、逃げないです。まだ何も決まってないけど、でも……“私の味”を、ちゃんと作りたいから」
レオは、その返事を聞いてから、少しだけ目を細めて言った。
「なら、守ります。……あなたのその、プリンと、ゼリーと、ピノの暮らしを」
「……え?」
「ふふ、冗談ですよ。少し、言ってみたかっただけです」
それでも、その目は冗談のままではなかった。
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