『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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7章

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第61話『ゆれる心と、重なる歩幅』

 *

 王都滞在数日目。

 リィナは、迎賓館の書斎でひとりノートを広げていた。

 《“共存大使”――たったひとつの肩書きが、こんなに重いなんて》

 「町に戻れば、また“まあるい日常”が待ってる。
 でも、この場所でも、何かが始まるかもしれない」

 それは、誰かがくれた夢じゃなく、自分が選ぶ道。
 でも、選ぶにはまだ“何か”が足りない気がしていた。

 *

 その頃、王都の広場で――

 「ぴぴーーーっ!? モルが捕まったぁああっ!!」

 「モル、おかね たりなかった! おまわりさん、こわい!」

 どうやら、モルが市場で試食をもらいすぎて「盗み」と誤解されたらしい。

 「モル、わるくない! けど、“魔物”っていうだけで、いろいろいわれた……」

 リィナはすぐに駆けつけ、役人に頭を下げ、事情を説明した。

 ピノはムスッとしながら、「ぴぴぴ(次から金出せるように教えたのに)」と悔しそう。

 それでも、周囲の人たちはひそひそとこうささやく。

 「魔物と暮らしてるって、やっぱり無理あるんじゃ……」
 「共存って、理想論だよな……」

 その声に、リィナは胸が締めつけられるような思いだった。

 *

 その夜、バルコニーでリィナはレオにぽつりと漏らした。

 「……わたし、まだ“みんなの期待に応えられる自信”がないんです」

 「応える必要はありません。“あなた自身が届けたい言葉”があれば、それで十分です」

 リィナはうつむきながら問う。

 「……わたしが王都に残るって決めたら、レオさんは?」

 レオは、即答だった。

 「――あなたの隣に、います」

 リィナの目が見開かれる。

 「王都でも、町でも。あなたが選ぶなら、僕はともに選びます」

 「……でも、レオさんには騎士としての仕事も……」

 「騎士としての責務も、“守りたい人を守る”ことですから」

 言葉が胸に落ちる。
 じわっと、目頭が熱くなった。

 「……ずるいなぁ、レオさんは。
 でも、わたし、今、やっと決められそう」
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