『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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9章

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第90話『帰る町、のこす輪郭、まだ言わない想い』

 *

 交流祭、最終日。

 広場には笑顔と香ばしい甘い香り、
 そして「ありがとう」の言葉が風のように行き交っていた。



「ピノくん、またアイスつくってね!」

→「ぴ(おれはいつでも、まあるい氷職人だ)」

「モルくん、絵本もっと読んでほしかったな~」

→「モル、つぎは“でんせつの500さつよみ”やるー!」

「ユルさん、声、やっぱりいいね」

→「……ありがとう。声、だすって、たのしい」



 人と魔物の境目が、いつのまにか“輪郭”に溶けていくようだった。

 リィナは小さなメモ帳を開いて、最後に一文を書いた。

 《“共にいる”って、こういうことなんだなって、やっとわかった》

 *

 祭りが終わり、夜。

 分室の灯をゆっくりと落としながら、みんなで小さな打ち上げをした。

 セリル:「おれ、ちょっとだけ“町の人”になれた気がしますっ!!」

 ピノ:「ぴ(うるさいが、少しだけ認めてやろう)」

 ユル:「……また来よう。“この町”にも、“あの町”にも」

 そして、出発の朝。

 看板に鍵をかけ、荷馬車に荷物を詰める。
 王都に残るチラシとマカロンレシピ、そして――笑顔。

 リィナは、最後に振り返って言った。

 「じゃあ……行ってきます。“ただいま”を言いに」

 *

 移動の馬車のなか。

 ピノとモルは爆睡、ユルは静かに窓を眺めている。

 リィナとレオは、並んで座っていた。

 「レオさん……」

 「はい?」

 「……まだ言ってないですよね?」

 「……なにを?」

 「……わかってます。まだ、言葉にしないでって顔してるの」

 「……それなら、しばらくこのままで」

 「……うん。わたし、そういう“間”が、きっと好きなんです」

 馬車がゆっくりと、しろくま通り本店へ向かって走っていく。
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