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第5章
第9話
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世界樹の庭に立ち入ることの出来る人間は、特別に許可された者だけだ。
高い石垣に囲まれた円形の庭は城の中心部にあり、入り口には鉄格子がはめられ、番兵によって常に警備されている。
エマお姉さまの成人を祝うパーティーで開放されたのが、異例中の異例だったくらいだ。
その前は私の誕生を祝う生誕パーティーだったと聞いている。
もう16年前の話だ。
もちろん中にあるものは、枯れ葉一枚土塊一つ、持ち出すことは許されていない。
一日数回の聖女たちの祈りの時間にだけ、門が開き中へ入ることが許されている。
「私がいまここで、お返事出来るものではございませんわ」
「そこをなんとか!」
マセルはボスマン博士を振り返った。
「ブリーシュアの世界樹の庭の土なら、初めての成果となりますよね! 僕がまだここに残って、研究を続けられる成果となりますよね!」
「それは……、なんとも言えない。庭の土から何が出てくるかによる。ただ、世界樹の庭の土を分析し、公表した研究者は、他にいないことは確かだ」
「ルディさま!」
気づけば、全研究員全ての視線が集まっていた。
私だって、協力したい気持ちがないわけじゃない。
ボスマン博士が、白髭で隠れた重い口を開いた。
「私も調べられるのなら調べてみたい、もっとも興味深い場所ではある」
「で、ですから、私の一存では、お返事出来ないと申し上げているのです」
リシャールの紅い目が、私の視線と重なった。
「私からもお願いしたい。どうすればいい?」
「まずは、聖女であるエマお姉さまの許可をいただかないと。そこから王と議会に申請して、許可が出ればあるいは……」
リシャールが不意にピンと背筋を伸ばした。
胸に手を当て、私に向かって丁寧に頭を下げる。
「ルディ王女。エマさまへのお取り次ぎをお願いしたい。私はこの世界の世界樹と、そこに暮らす人々を救うためにここへ来た」
「聖女のためではなくて?」
「聖女もまた国の民だ」
あぁ、ようやく分かった。
この人は私と似ているのだ。
私に聖女としての力がないように、男として生まれたこの人にも瘴気を払う聖女の力はない。
だけど、人々を守りたいと思う気持ちは、同じなんだ。
「分かりました。努力してみましょう」
「本当か!」
研究所内が、一気に湧き上がる。
「ただし、上手く行くかは分かりませんし、すぐにことが運ぶ保証は、どこにもありませんわよ。かけあってみるだけです」
「ありがとうございます!」
赤茶色の髪のマセルが、飛び上がって喜んでいる。
その横で、リシャールは再び私の目を見つめた。
「ルディ。私に出来ることならいくらでも協力する。レランドを代表して、君に感謝する」
「だからまだ、それには気が早いと……」
いくら釘をさそうとしても、もう誰も話を聞いてはいなかった。
ボスマン博士は、庭の土からどんな新発見があるか、子供のように目を輝かせてマセルと語り始めている。
もっと精度のいい分析方法を使って、どんな微量な成分も逃すこと無く測定するつもりのようだ。
そのための分析方法を新しく考えてみようと、すっかり盛り上がってしまっている。
もしこれで土から他にない成分や特徴が発見されれば、それは素晴らしい成果になると。
気の早い所員たちに半ば呆れながらも、微笑ましい気持ちになる。
世界はこうやって、誰かの手によって守られているのだ。
そんななか、ふと視界に入ったのは、厳しい表情を崩さないリンダだった。
高い石垣に囲まれた円形の庭は城の中心部にあり、入り口には鉄格子がはめられ、番兵によって常に警備されている。
エマお姉さまの成人を祝うパーティーで開放されたのが、異例中の異例だったくらいだ。
その前は私の誕生を祝う生誕パーティーだったと聞いている。
もう16年前の話だ。
もちろん中にあるものは、枯れ葉一枚土塊一つ、持ち出すことは許されていない。
一日数回の聖女たちの祈りの時間にだけ、門が開き中へ入ることが許されている。
「私がいまここで、お返事出来るものではございませんわ」
「そこをなんとか!」
マセルはボスマン博士を振り返った。
「ブリーシュアの世界樹の庭の土なら、初めての成果となりますよね! 僕がまだここに残って、研究を続けられる成果となりますよね!」
「それは……、なんとも言えない。庭の土から何が出てくるかによる。ただ、世界樹の庭の土を分析し、公表した研究者は、他にいないことは確かだ」
「ルディさま!」
気づけば、全研究員全ての視線が集まっていた。
私だって、協力したい気持ちがないわけじゃない。
ボスマン博士が、白髭で隠れた重い口を開いた。
「私も調べられるのなら調べてみたい、もっとも興味深い場所ではある」
「で、ですから、私の一存では、お返事出来ないと申し上げているのです」
リシャールの紅い目が、私の視線と重なった。
「私からもお願いしたい。どうすればいい?」
「まずは、聖女であるエマお姉さまの許可をいただかないと。そこから王と議会に申請して、許可が出ればあるいは……」
リシャールが不意にピンと背筋を伸ばした。
胸に手を当て、私に向かって丁寧に頭を下げる。
「ルディ王女。エマさまへのお取り次ぎをお願いしたい。私はこの世界の世界樹と、そこに暮らす人々を救うためにここへ来た」
「聖女のためではなくて?」
「聖女もまた国の民だ」
あぁ、ようやく分かった。
この人は私と似ているのだ。
私に聖女としての力がないように、男として生まれたこの人にも瘴気を払う聖女の力はない。
だけど、人々を守りたいと思う気持ちは、同じなんだ。
「分かりました。努力してみましょう」
「本当か!」
研究所内が、一気に湧き上がる。
「ただし、上手く行くかは分かりませんし、すぐにことが運ぶ保証は、どこにもありませんわよ。かけあってみるだけです」
「ありがとうございます!」
赤茶色の髪のマセルが、飛び上がって喜んでいる。
その横で、リシャールは再び私の目を見つめた。
「ルディ。私に出来ることならいくらでも協力する。レランドを代表して、君に感謝する」
「だからまだ、それには気が早いと……」
いくら釘をさそうとしても、もう誰も話を聞いてはいなかった。
ボスマン博士は、庭の土からどんな新発見があるか、子供のように目を輝かせてマセルと語り始めている。
もっと精度のいい分析方法を使って、どんな微量な成分も逃すこと無く測定するつもりのようだ。
そのための分析方法を新しく考えてみようと、すっかり盛り上がってしまっている。
もしこれで土から他にない成分や特徴が発見されれば、それは素晴らしい成果になると。
気の早い所員たちに半ば呆れながらも、微笑ましい気持ちになる。
世界はこうやって、誰かの手によって守られているのだ。
そんななか、ふと視界に入ったのは、厳しい表情を崩さないリンダだった。
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