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第3章
第6話
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「……あたしの勝ち」
いっちーはそれでも動かなかった。
勝負はついた。
すぐにそれを脇に戻すとこん棒を下げる。
いっちーはもう、戦う気がなくなった?
あたしは床にひざを付いて座ると、姿勢を正した。
「お願いします。一緒に鬼退治をしてください」
指の先をきっちり丁寧に合わせ、深く頭を下げる。
彼女からの返答はない。
あたしはゆっくりと顔を上げ、彼女を見上げた。
いっちーは制服の上着に手をかけると、それを脱ぎ捨てた。
胸のリボンをほどき、シャツのボタンを外す。
はだけた胸から剥き出しの肩を晒して見せた。
「私のアザよ」
彼女の白い肌が光に透ける。
いっちーの背後から伸びた醜い手が、彼女の肩をつかんだ。
太く長い指が細い肩をわしづかみにし、鋭い爪は肌を貫き切り裂く。
「この痛みが、あんたにも分かるって?」
赤黒くくっきりと浮かぶその痕は今も鮮やかに、確かな痛みを持って彼女に疼き続けていた。
「私はね、いつもこの痛みを抱えてる。あんたと違って毎日毎日、朝起きたら、夜寝る時にも、何を見ても何を聞いても! 私のすぐ側にこいつらはいて、いつだって……『俺の存在を忘れるな』って……そうささやき続けて……」
いっちーの頬を涙が伝った。
「鬼退治なんて、本当に出来るなんて思えない。私にもあんたにも、誰にも」
「その傷の存在を知っても、あんたのお父さんやその道場の奴らは、やっぱりいっちーには自分たちの背中に隠れとけって言うの?」
あたしは立ち上がる。
彼女に近づき、その傷痕にそっと触れた。
「その傷を、今もまだ深くえぐり続けているものはなに?」
目を閉じる。
あたしは泣いているいっちーの額に自分の額をつける。
「大丈夫。あたしたちは戦える」
彼女のむき出しになった肌を覆うためのブラウスのボタンを、一つ一つとめてあげる。
「悔しくはないの? ムカつかない? それで鬼退治が終わったら、どんな顔して『ありがとう』って言うの?」
いっちーの涙は、いっちーだけの涙じゃない。
「あたしは弱くてマヌケでバカだから、殴られたら殴り返されても殴る。たとえ死んでもあいつらだけは許さない。あたしは自分の大切な人が誰かに殴られていたら、自分が死んでもやり返す」
床に落とされたブレザーを拾い、肩にかけてあげる。
あたしはいっちーを抱きしめた。
「悪いのは、あたしやいっちーに傷をつけさせた鬼よ」
「本当に勝てると思ってる?」
「死んでも戦う。そうしないと、自分が後悔するから」
あたしはいっちーに微笑んだ。
「あたしは自分のために戦うの。負け戦になるかもしれないけど、一緒に来てくれる?」
「頼りない」
「はは。いっちーが来てくれたら勝てるかも」
彼女の腕が肩に回って、一緒に泣いた。あたしたちは独りじゃない。
「このこん棒、いっちーのだよ」
差し出した鬼退治用のそれを、彼女は手に取った。
目と目が合って、彼女は静かに微笑む。
「全く。しょうがないな」
そんな彼女の顔はとってもきれいだなと、あたしは改めてそう思った。
いっちーはそれでも動かなかった。
勝負はついた。
すぐにそれを脇に戻すとこん棒を下げる。
いっちーはもう、戦う気がなくなった?
あたしは床にひざを付いて座ると、姿勢を正した。
「お願いします。一緒に鬼退治をしてください」
指の先をきっちり丁寧に合わせ、深く頭を下げる。
彼女からの返答はない。
あたしはゆっくりと顔を上げ、彼女を見上げた。
いっちーは制服の上着に手をかけると、それを脱ぎ捨てた。
胸のリボンをほどき、シャツのボタンを外す。
はだけた胸から剥き出しの肩を晒して見せた。
「私のアザよ」
彼女の白い肌が光に透ける。
いっちーの背後から伸びた醜い手が、彼女の肩をつかんだ。
太く長い指が細い肩をわしづかみにし、鋭い爪は肌を貫き切り裂く。
「この痛みが、あんたにも分かるって?」
赤黒くくっきりと浮かぶその痕は今も鮮やかに、確かな痛みを持って彼女に疼き続けていた。
「私はね、いつもこの痛みを抱えてる。あんたと違って毎日毎日、朝起きたら、夜寝る時にも、何を見ても何を聞いても! 私のすぐ側にこいつらはいて、いつだって……『俺の存在を忘れるな』って……そうささやき続けて……」
いっちーの頬を涙が伝った。
「鬼退治なんて、本当に出来るなんて思えない。私にもあんたにも、誰にも」
「その傷の存在を知っても、あんたのお父さんやその道場の奴らは、やっぱりいっちーには自分たちの背中に隠れとけって言うの?」
あたしは立ち上がる。
彼女に近づき、その傷痕にそっと触れた。
「その傷を、今もまだ深くえぐり続けているものはなに?」
目を閉じる。
あたしは泣いているいっちーの額に自分の額をつける。
「大丈夫。あたしたちは戦える」
彼女のむき出しになった肌を覆うためのブラウスのボタンを、一つ一つとめてあげる。
「悔しくはないの? ムカつかない? それで鬼退治が終わったら、どんな顔して『ありがとう』って言うの?」
いっちーの涙は、いっちーだけの涙じゃない。
「あたしは弱くてマヌケでバカだから、殴られたら殴り返されても殴る。たとえ死んでもあいつらだけは許さない。あたしは自分の大切な人が誰かに殴られていたら、自分が死んでもやり返す」
床に落とされたブレザーを拾い、肩にかけてあげる。
あたしはいっちーを抱きしめた。
「悪いのは、あたしやいっちーに傷をつけさせた鬼よ」
「本当に勝てると思ってる?」
「死んでも戦う。そうしないと、自分が後悔するから」
あたしはいっちーに微笑んだ。
「あたしは自分のために戦うの。負け戦になるかもしれないけど、一緒に来てくれる?」
「頼りない」
「はは。いっちーが来てくれたら勝てるかも」
彼女の腕が肩に回って、一緒に泣いた。あたしたちは独りじゃない。
「このこん棒、いっちーのだよ」
差し出した鬼退治用のそれを、彼女は手に取った。
目と目が合って、彼女は静かに微笑む。
「全く。しょうがないな」
そんな彼女の顔はとってもきれいだなと、あたしは改めてそう思った。
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