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第5章
第1話
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やりたいことのある放課後というやつは、どうしてこうも来るのが遅いのだろう。
終業のチャイムが鳴ると同時に、あたしは立ち上がった。
いっちーと肩を並べて進む廊下は、走っているのか踊っているのか分からないくらい。
「ねぇ、昨日送った動画、いいでしょ?」
「見た見た。一緒にアレ、やってみよう!」
鬼と対峙したときの剣の使い方、振り方とその立ち回り。
昔と違って鬼退治をしようとする人は随分減ってしまったけど、それでも居なくなったわけじゃない。
鬼はいる。
姿は見えなくても、まだあちこちに。
鬼退治サークル創立の申請はしているけど、まだ許可が下りているわけじゃない。
創立のための活動許可が下りたら規定に沿ってメンバーを5人以上集め、顧問の先生を探さなければならない。
全ての条件が整ってから再び審査を受け、それに合格してからようやくスタートだ。
校舎裏の芝生に入り込むと、制服を脱ぎ捨てた。
スカートの下に元々半パンを着ていたから大丈夫。
3分で着替え終えたあたしたちは向かい合った。
「動画の初級編、その壱?」
「そっからだね」
こん棒を振り下ろす。
ぶつかり合ったそれはカツンと小気味よい音をたてた。
空高くまで響き渡る。
「やだ、ゆっくりやらないと、ももに当てちゃいそう」
「寸止め寸止め」
いっちーは空手ばかりでこん棒を持ったことはないって言ってたけど、道場でずっと練習している人たちを見ていたから、それなりに上手い。
基礎体力もかなりある。
あたしのはどれも独学の見よう見まねで、なんともならなかった。
すぐに腕もだるくなって、その場に座り込む。
「疲れるー」
校内をぐるりと取り囲む赤茶色の高い壁は、いつでもあたしたちを守ってくれている。
もたれるとひんやりと冷たくて気持ちいい。
「見て。新発売のレモン炭酸」
いっちーはペットボトルの新商品を取り出す。
蓋を開けると爽やかな炭酸が耳に弾けた。
あたしはリュックの中からお気に入りのミルクティーを取り出す。
「あ、うちから持って来たクッキーもあるよ。食べる?」
「ももんちの?」
鬼退治の仲間が出来たってママに言ったら、一緒に食べなさいって持たせてくれた。
「わ、やった!」
袋を開けたら、すぐに甘い匂いが漂う。
「おいしい」
「でしょ?」
こうなってしまったら、もう誰にも止められない。
美味しいお菓子と気の合う友達がいれば、おしゃべりはどこまでも続く。
そっちに夢中になりすぎて、あたしたちは近づいてくる他の人の気配に気づいていなかった。
「ねぇ、サボってんのなら、ちょっと貸してよ」
転がっていたこん棒を取り上げたのは、さーちゃんだ。
いっちーの舌がチッとなる。
「あんた鬼退治に興味ないんでしょ。だったら……」
「いっちー、ストップ」
あたしはいっちーの次の言葉を遮る。
「ふん。あんたたちの頭が悪すぎるから興味あんのよ」
彼女はこん棒を肩に担いだ。
「重た! 何コレ」
そう言ってうれしそうに笑う。
「こんなの担いで振り回したって、体力じゃ鬼に勝てないよ」
さーちゃんはニッとあたしたちを見下ろした。
「鬼のこと、ホントに知ってんの?」
「あたしはさ……」
「うるっさいな、興味ないなら来んなよ!」
いっちーが吠えた。
「テメーに言われる筋合いはねぇ!」
あたしはため息をつく。
それは彼女が一番言われたくない言葉。
「そうやってすぐに吠えるクセ、直しなって言ったよね」
さーちゃんの挑発に、あっさり乗っかってしまう。
いっちーはこん棒を握りしめた。
「私は世界最強女子になるんだから!」
「あはは、なにそれ、おもしろーい」
「いっちー、あたしも! あたしも世界最強女子になる!」
「ももが世界最強になったら、私が世界最強になれないじゃん」
「えぇ、そこは一緒になろうよ」
「う……」
顔を赤らめたいっちーは小さくうなずいた。
「うん。いいよ……」
「なに言ってんの、一番は私よ!」
さーちゃんはこん棒を振り回す。
「あんたたちなんかに、絶対負けないんだから!」
彼女はバトンのようにこん棒をくるくると回転させると、パッと脇に挟んでポーズを決めた。
終業のチャイムが鳴ると同時に、あたしは立ち上がった。
いっちーと肩を並べて進む廊下は、走っているのか踊っているのか分からないくらい。
「ねぇ、昨日送った動画、いいでしょ?」
「見た見た。一緒にアレ、やってみよう!」
鬼と対峙したときの剣の使い方、振り方とその立ち回り。
昔と違って鬼退治をしようとする人は随分減ってしまったけど、それでも居なくなったわけじゃない。
鬼はいる。
姿は見えなくても、まだあちこちに。
鬼退治サークル創立の申請はしているけど、まだ許可が下りているわけじゃない。
創立のための活動許可が下りたら規定に沿ってメンバーを5人以上集め、顧問の先生を探さなければならない。
全ての条件が整ってから再び審査を受け、それに合格してからようやくスタートだ。
校舎裏の芝生に入り込むと、制服を脱ぎ捨てた。
スカートの下に元々半パンを着ていたから大丈夫。
3分で着替え終えたあたしたちは向かい合った。
「動画の初級編、その壱?」
「そっからだね」
こん棒を振り下ろす。
ぶつかり合ったそれはカツンと小気味よい音をたてた。
空高くまで響き渡る。
「やだ、ゆっくりやらないと、ももに当てちゃいそう」
「寸止め寸止め」
いっちーは空手ばかりでこん棒を持ったことはないって言ってたけど、道場でずっと練習している人たちを見ていたから、それなりに上手い。
基礎体力もかなりある。
あたしのはどれも独学の見よう見まねで、なんともならなかった。
すぐに腕もだるくなって、その場に座り込む。
「疲れるー」
校内をぐるりと取り囲む赤茶色の高い壁は、いつでもあたしたちを守ってくれている。
もたれるとひんやりと冷たくて気持ちいい。
「見て。新発売のレモン炭酸」
いっちーはペットボトルの新商品を取り出す。
蓋を開けると爽やかな炭酸が耳に弾けた。
あたしはリュックの中からお気に入りのミルクティーを取り出す。
「あ、うちから持って来たクッキーもあるよ。食べる?」
「ももんちの?」
鬼退治の仲間が出来たってママに言ったら、一緒に食べなさいって持たせてくれた。
「わ、やった!」
袋を開けたら、すぐに甘い匂いが漂う。
「おいしい」
「でしょ?」
こうなってしまったら、もう誰にも止められない。
美味しいお菓子と気の合う友達がいれば、おしゃべりはどこまでも続く。
そっちに夢中になりすぎて、あたしたちは近づいてくる他の人の気配に気づいていなかった。
「ねぇ、サボってんのなら、ちょっと貸してよ」
転がっていたこん棒を取り上げたのは、さーちゃんだ。
いっちーの舌がチッとなる。
「あんた鬼退治に興味ないんでしょ。だったら……」
「いっちー、ストップ」
あたしはいっちーの次の言葉を遮る。
「ふん。あんたたちの頭が悪すぎるから興味あんのよ」
彼女はこん棒を肩に担いだ。
「重た! 何コレ」
そう言ってうれしそうに笑う。
「こんなの担いで振り回したって、体力じゃ鬼に勝てないよ」
さーちゃんはニッとあたしたちを見下ろした。
「鬼のこと、ホントに知ってんの?」
「あたしはさ……」
「うるっさいな、興味ないなら来んなよ!」
いっちーが吠えた。
「テメーに言われる筋合いはねぇ!」
あたしはため息をつく。
それは彼女が一番言われたくない言葉。
「そうやってすぐに吠えるクセ、直しなって言ったよね」
さーちゃんの挑発に、あっさり乗っかってしまう。
いっちーはこん棒を握りしめた。
「私は世界最強女子になるんだから!」
「あはは、なにそれ、おもしろーい」
「いっちー、あたしも! あたしも世界最強女子になる!」
「ももが世界最強になったら、私が世界最強になれないじゃん」
「えぇ、そこは一緒になろうよ」
「う……」
顔を赤らめたいっちーは小さくうなずいた。
「うん。いいよ……」
「なに言ってんの、一番は私よ!」
さーちゃんはこん棒を振り回す。
「あんたたちなんかに、絶対負けないんだから!」
彼女はバトンのようにこん棒をくるくると回転させると、パッと脇に挟んでポーズを決めた。
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