Let's鬼退治!

岡智 みみか

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第5章

第2話

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「なによ、あんたやっぱり鬼退治に興味あるんじゃない」

「ないって。チアでバトントワリングやってるからだし」

 さーちゃんはあたしのこん棒を構えている。

「あんたたちみたいなハンパなのが、鬼退治するとか言ってるのが、ムカついてるだけ」

「やっぱあんたには負けらんない」

 さーちゃんといっちーは互いにこん棒を構え向き合う。

あっという間に打ち合いが始まった。

 何だかんだ言っても、この二人は仲良しなんだと思う。

あたしはママのクッキーをかじりながら、二人の様子を見ていた。

まっすぐに突っ込んでいくタイプのいっちーに対して、さーちゃんは柔らかな体の特徴を生かし、ひらひらと身軽にそれを交わしてゆく。

ぶつかり合うこん棒の音は、どこまでも軽やかで新鮮だった。

カツン!

 一段と高く、乾いた木のぶつかる音が響いた。

二人の手から同時にこん棒が弾けとぶ。

丸腰になってしまったいっちーとさーちゃんは、にらみ合い、手刀を構えたまま動けない。

「ね、一緒にクッキー食べよう」

 あたしは相変わらずママのクッキーをかじっている。

「おいしいよ。たくさんあるから、ね」

 その言葉に、ようやく二人は腰を下ろした。

今日はお日さまぽかぽかいい天気。

ケンカをするにはもったいないような日には、仲良くした方がいい。

そのまま芝生の上で三人でクッキーを食べ終えたら、すっかり日の傾いた道を駅まで歩く。

あたしの右側にはいっちーがいて、左にはさーちゃんがいた。

「ね、あたしたちもID交換しようよ」

「好きにすれば」

 放課後はたこ焼きを食べるのがいつものお約束。

フードコートの空いていた席を見つけてそこに座った。

「さーちゃんはなんでそんなに鬼退治を嫌がるの?」

「別に。嫌がってはないよ」

 熱々のたこ焼きの上でかつお節が踊る。

あたしたちはパック詰めのソースを一つ一つのたこ焼きに丁寧にかけている。

「こん棒が恥ずかしいだけ」

 結局まだベルトは買えていなくって、それは未だ丸テーブルの横に立てかけられている。

「別に持ってたって恥ずかしくはないよ。これは決意表明だから。負けませんっていう、証」

 さーちゃんはマヨネーズを端っこにまとめて出すタイプ。

竹串でそれをすくってソースの上にのっけると、プスリと突き刺した。

「そんなもんが決意表明になるんだったら、ラクでいいよね」 

 大きなたこ焼きをあーんと一口。

熱かったのか両手で口を覆ってはふはふしてる。

放課後の時間帯のフードコートは、いつだって人でいっぱいだ。

「なぁあのコ、何か食べ方ヤらしくない?」

 すぐ隣に座る男子高校生のグループからだ。

さーちゃんを見て笑っている。

「なにあの頭。丸坊主だし」

「だっせー。かっこつけてるつもりなわけ?」

「胸でかいのにもったいねー」

「あんなんで鬼退治とかマジ?」

 こちらにわざと聞こえるようにしているのはバレバレだ。

気にしても仕方がないので放置している。

そのうちに話題も変わるかと思っていたのに、向こうにそんな気はないらしい。

かまって欲しいのなら、もうちょっとやり方考えろよとは思う。

言い返そうと振り返ったあたしの腕を、さーちゃんはつかんだ。

「おいしい! こんな熱々でおいしいたこ焼き食べたの久しぶり。病院じゃ出てこないから」

 彼女は目尻を拭う。

「抗がん剤の副作用が強くて、髪も胸もこんなになっちゃったけど、外でものが食べられるってだけでなんか幸せ」

 さーちゃんは微笑む。

いっちーは彼女を見つめた。

「え……。そうだったの?」

「うん。だから……いつも無理言ってゴメンね」

 見つめ合う金髪の坊主頭とミルクティー色の長い髪。

いっちーはさーちゃんの手を取った。

「ご、ゴメン。私、そんなこと全然知らなくって……。それで、それで……」

 いっちーはさーちゃんの手を握りしめたまま涙ぐむ。

あたしは分かりやすく背を反らし、隣のテーブルをのぞき込んだ。

「たこ焼き、おいしいね!」

 そう言ってにらみつけると、ヤジを飛ばしてきた連中はコソコソと立ち上がり、すぐに視界から消えた。

本当に面倒くさい。

「ゴメンね。さーちゃん。私も猿木沢さんじゃなくって、さーちゃんって呼んでもいい?」

 いっちーの頬に涙が流れた。

「わた……、私も、さーちゃんとID交換したい」

 ぽろぽろと涙をこぼすいっちーの手を、ふいにさーちゃんは振り払った。

「って、そんなのウソに決まってんじゃん、あんた本気でバカ?」

「え?」

 あたしはもうどうしていいのか、半分分かんない。

「まぁ、ホントじゃないのは分かるよね。だってさーちゃん元気だし、毎日学校来てるし」

 いっちーはあたしを見下ろす。

その本気でびっくりしている表情に、なんだか申し訳なくなって、無言になってしまった。

いっちーの体は怒りに震えている。
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