Let's鬼退治!

岡智 みみか

文字の大きさ
43 / 71
第11章

第2話

しおりを挟む
「細木せんせーい」

 顧問の先生に許可を取ってからじゃないと、何事も出来ないことになっているので、書き上げた書類を持って行く。

細木は相変わらず、誰もいない体育科準備室の机の下に隠れていた。

「な、なんだ。お前らか」

 もぞもぞと這い出してくるのを、あたしといっちーは大人しく待っている。

「学祭の出し物決めたから許可して」

 紙を突き出しても直接受け取ろうとはしない。

机をトントンと指で指すから、そこに置く。

一息入れてからようやく拾い上げ、目を通した。

「なんで俺がこんなこと……」

 ブツブツと文句を言いながらも、顧問の承認印を押す。

「どうでもいいけど、俺に迷惑かけるなよ。問題起こしたら速攻解散だからな」

「はーい」

 ハンコさえもらえれば、コイツにもう用はない。

あたしたちはひたすら練習をして、学園祭当日を迎えた。

 今年の学祭は、去年までと随分雰囲気が違っている。

共学化に伴う、数十年ぶりといかいう一般公開も話題になって、とにかく人の数が多い。

鬼退治サークルのチャンバラ対決場には、小さな立て看板を一つ置いていた。

そこに開催時間が書いてある。

それまではクラスのお手伝い。

「いらっしゃいませー」

 あたしといっちーは裏方で、ひたすらヨーヨー釣りの風船を膨らましていた。

おまけでついてきたエアポンプなんて、ほとんど役に立たない。

膨らました風船を、ゴム紐でぐるぐる巻き付けてクリップで綴じたらお終い。

隣のクラスが自分たちの宣伝にやって来た。

「お疲れ~。うちにも遊びに来てねー!」

 隣の三組はコスプレ喫茶だ。

派手な格好をした連中の間に交じって、見慣れない奴がいる。

「え、さーちゃん?」

「そうだよー」

 いつもの金髪坊主の上に、黒髪のふんわり縦巻きカールのカツラをかぶっている。

白雪姫の衣装が、背の低い彼女によく似合う。

「かっわい~!」

「でしょ!」

 一緒に来ていたむーちゃんは、得意げにさーちゃんの肩に手を置いた。

「うちの最高傑作なんだから」

 真っ白な肌にツンと高い鼻は、ハーフっぽいとは思ってたけど、青いカラコンを入れたら本当に異世界から転生してきたお姫さまみたいだ。

しかも巨乳。

「まぁね」

 さーちゃんもそのふんわり巻いた髪をさらりと後ろに流す。

「私って、実はこんなにかわいいって知らなかった?」

「あー、はいはいはいはい。カワイーデスヨー」

 笑い声があふれる。

さーちゃんも楽しそうに笑った。

「ねぇ、貴重な姿だから、一緒に写真撮ろう」

「いいよ」

 さーちゃんがそう言うと、あっという間にみんなが彼女の周りに群がった。

「ねぇ、後で一人だけのサービスショットとツーショットほしい」

「いいけど、ちゃんとうちのクラスにも遊びに来てね」

 なぜ自分たちのクラスでやらないのかとか、そんなことは誰も思わない。

他クラスのお祭り屋台の会場で始まった、身内だけの撮影会だ。

一般参加の人たちはまだ体育館や野外の出し物に引きつけられていて、校舎の中には少ない。

さーちゃんは大きな顔でニッと笑ったり、一緒に写る友達と合わせてポーズをとったり、とにかくはしゃいでいた。

「ねぇ、あたしも、あたしも!」

「いいよ。もも」

 さーちゃんと、こんな風に過ごせるのが楽しい。

なんだかんだでいっちーも、さーちゃんをパシャパシャ撮りまくっている。

だって、かわいいものはかわいいんだから仕方がない。

「いやー。いいもん見させてもらったわ」

「うん。アレにしては上出来だった」

 普段はあんまり仲良くないくせに、いっちーまでさーちゃんと写真撮ってるのに、あたしはバレないようにこっそり笑ってる。

チャンバラ対決まではまだ時間があるから、あたしたちはヨーヨー釣りの水槽の前で接客のお手伝い。

来てくれた小さな男の子に、彼が挑戦して取れなかった風船を、代わりにすくってプレゼントしてあげる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...