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第14章
第3話
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取材は続く。
鹿島の周りに記者が集まり、インタビューと写真撮影が続いている。
お友達の1年軍団にも囲まれて、実に素晴らしい。
きっといい記事になるだろう。
そんな状況の鹿島と、一瞬目があった。
俺はすぐに、視線をそらす。
今日初めてここに来たこの連中たちにとって、俺は一体どんな存在なんだろうな。
ただ居合わせただけの存在か?
「は~い、皆さん、ご苦労さまでしたぁ。取材は以上です。ありがとうございましたぁ!」
なぜか拍手がわき起こる。
ご機嫌な校長たちと取材陣を見送った鹿島は、理科室に残った俺たちを振り返った。
「さぁ、貴重な時間を無駄にした。さっさと制作にとりかかろう」
彼は取材用にきれいに並べられた工具を手に取った。
ここでは狭いから、生徒会本部と学校の協力を得て、体育館の外倉庫を制作場所として使わせてもらうことになったらしい。
明らかに奥川の差し金だ。
もうすでに片付けも終わらせて、使える状態だという。
そんなことすら、俺は知らない。
荷物をまとめて移動を開始しようとする鹿島と、一瞬目があった。
何か言うかと思ったら、そのまま背を向けて出て行いってしまう。
なんだアイツ。
言いたいことがあれば、直接言えばいいのに。
そう思ってるのは、本当に俺だけか?
4月の始めに真っ赤な顔をして、初めてここに現れた時の、鹿島を思い出す。
あいつはあの頃、なんて言ってた?
「あ~、やっと静かになったな」
山崎は俺の横で、のびのびと体を伸ばす。
「これでお前も、ほっとしただろ。ある意味、平和的にあいつらを、ここから追い出せたんだから」
彼は、にっとした間抜けた顔を俺に向ける。
確かに、俺はあいつが嫌いだ。
今でもそう思ってるし、多分一生ずっと死んでも、そう思ってるだろう。
「な、よかったよな。これで満足だろ?」
追い出したかった。
余計なことなんて、何一つやりたくはない。
面倒なことはゴメンだ。
そんなことに夢中になって、なんになる。
くだらない、本当にくだらない。
意味もない、何の役にも立たない、そんなことに、どうしてそんなに必死になれる?
鹿島はたった一人で、俺たちのところにやって来た。
生意気そうにこの辺の棚を見て回り、パソコンがどうのこうのとか言ってた。
帰れと言った俺に、手の平サイズにまで小さく折りたたんだ入部届けを広げながら、『かっこいい』って言ったんだ。
そんな鹿島は、本当にこんな結末を望んでいたのか?
これじゃあまるで、本当に廃部の危機回避のためだけに、アイツらを取りこんだだけみたいじゃないか。
「俺も出る」
「は?」
「俺たちも、ニューロボコンに出場するぞ!」
「はぁ!? 今さらお前、なんだよ! だったらさぁ、そんなこと言わずに……」
「うるせぇ! やるって決めたからには、やるんだよ!」
「いつ? いつそれ決めたの!?」
「い、ま、だ!」
「やだよ、ふざけんな、なんでそんなまた好き勝手……」
俺は抵抗する山崎を引きずって、学生課の事務へと向かった。
鹿島の周りに記者が集まり、インタビューと写真撮影が続いている。
お友達の1年軍団にも囲まれて、実に素晴らしい。
きっといい記事になるだろう。
そんな状況の鹿島と、一瞬目があった。
俺はすぐに、視線をそらす。
今日初めてここに来たこの連中たちにとって、俺は一体どんな存在なんだろうな。
ただ居合わせただけの存在か?
「は~い、皆さん、ご苦労さまでしたぁ。取材は以上です。ありがとうございましたぁ!」
なぜか拍手がわき起こる。
ご機嫌な校長たちと取材陣を見送った鹿島は、理科室に残った俺たちを振り返った。
「さぁ、貴重な時間を無駄にした。さっさと制作にとりかかろう」
彼は取材用にきれいに並べられた工具を手に取った。
ここでは狭いから、生徒会本部と学校の協力を得て、体育館の外倉庫を制作場所として使わせてもらうことになったらしい。
明らかに奥川の差し金だ。
もうすでに片付けも終わらせて、使える状態だという。
そんなことすら、俺は知らない。
荷物をまとめて移動を開始しようとする鹿島と、一瞬目があった。
何か言うかと思ったら、そのまま背を向けて出て行いってしまう。
なんだアイツ。
言いたいことがあれば、直接言えばいいのに。
そう思ってるのは、本当に俺だけか?
4月の始めに真っ赤な顔をして、初めてここに現れた時の、鹿島を思い出す。
あいつはあの頃、なんて言ってた?
「あ~、やっと静かになったな」
山崎は俺の横で、のびのびと体を伸ばす。
「これでお前も、ほっとしただろ。ある意味、平和的にあいつらを、ここから追い出せたんだから」
彼は、にっとした間抜けた顔を俺に向ける。
確かに、俺はあいつが嫌いだ。
今でもそう思ってるし、多分一生ずっと死んでも、そう思ってるだろう。
「な、よかったよな。これで満足だろ?」
追い出したかった。
余計なことなんて、何一つやりたくはない。
面倒なことはゴメンだ。
そんなことに夢中になって、なんになる。
くだらない、本当にくだらない。
意味もない、何の役にも立たない、そんなことに、どうしてそんなに必死になれる?
鹿島はたった一人で、俺たちのところにやって来た。
生意気そうにこの辺の棚を見て回り、パソコンがどうのこうのとか言ってた。
帰れと言った俺に、手の平サイズにまで小さく折りたたんだ入部届けを広げながら、『かっこいい』って言ったんだ。
そんな鹿島は、本当にこんな結末を望んでいたのか?
これじゃあまるで、本当に廃部の危機回避のためだけに、アイツらを取りこんだだけみたいじゃないか。
「俺も出る」
「は?」
「俺たちも、ニューロボコンに出場するぞ!」
「はぁ!? 今さらお前、なんだよ! だったらさぁ、そんなこと言わずに……」
「うるせぇ! やるって決めたからには、やるんだよ!」
「いつ? いつそれ決めたの!?」
「い、ま、だ!」
「やだよ、ふざけんな、なんでそんなまた好き勝手……」
俺は抵抗する山崎を引きずって、学生課の事務へと向かった。
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