正の終了フラグとは結果が適切であることを意味する言葉らしい

岡智 みみか

文字の大きさ
38 / 120
第14章

第3話

しおりを挟む
取材は続く。

鹿島の周りに記者が集まり、インタビューと写真撮影が続いている。

お友達の1年軍団にも囲まれて、実に素晴らしい。

きっといい記事になるだろう。

そんな状況の鹿島と、一瞬目があった。

俺はすぐに、視線をそらす。

今日初めてここに来たこの連中たちにとって、俺は一体どんな存在なんだろうな。

ただ居合わせただけの存在か?

「は~い、皆さん、ご苦労さまでしたぁ。取材は以上です。ありがとうございましたぁ!」

なぜか拍手がわき起こる。

ご機嫌な校長たちと取材陣を見送った鹿島は、理科室に残った俺たちを振り返った。

「さぁ、貴重な時間を無駄にした。さっさと制作にとりかかろう」

彼は取材用にきれいに並べられた工具を手に取った。

ここでは狭いから、生徒会本部と学校の協力を得て、体育館の外倉庫を制作場所として使わせてもらうことになったらしい。

明らかに奥川の差し金だ。

もうすでに片付けも終わらせて、使える状態だという。

そんなことすら、俺は知らない。

荷物をまとめて移動を開始しようとする鹿島と、一瞬目があった。

何か言うかと思ったら、そのまま背を向けて出て行いってしまう。

なんだアイツ。

言いたいことがあれば、直接言えばいいのに。

そう思ってるのは、本当に俺だけか?

4月の始めに真っ赤な顔をして、初めてここに現れた時の、鹿島を思い出す。

あいつはあの頃、なんて言ってた?

「あ~、やっと静かになったな」

山崎は俺の横で、のびのびと体を伸ばす。

「これでお前も、ほっとしただろ。ある意味、平和的にあいつらを、ここから追い出せたんだから」

彼は、にっとした間抜けた顔を俺に向ける。

確かに、俺はあいつが嫌いだ。

今でもそう思ってるし、多分一生ずっと死んでも、そう思ってるだろう。

「な、よかったよな。これで満足だろ?」

追い出したかった。

余計なことなんて、何一つやりたくはない。

面倒なことはゴメンだ。

そんなことに夢中になって、なんになる。

くだらない、本当にくだらない。

意味もない、何の役にも立たない、そんなことに、どうしてそんなに必死になれる?

鹿島はたった一人で、俺たちのところにやって来た。

生意気そうにこの辺の棚を見て回り、パソコンがどうのこうのとか言ってた。

帰れと言った俺に、手の平サイズにまで小さく折りたたんだ入部届けを広げながら、『かっこいい』って言ったんだ。

そんな鹿島は、本当にこんな結末を望んでいたのか? 

これじゃあまるで、本当に廃部の危機回避のためだけに、アイツらを取りこんだだけみたいじゃないか。

「俺も出る」

「は?」

「俺たちも、ニューロボコンに出場するぞ!」

「はぁ!? 今さらお前、なんだよ! だったらさぁ、そんなこと言わずに……」

「うるせぇ! やるって決めたからには、やるんだよ!」

「いつ? いつそれ決めたの!?」

「い、ま、だ!」

「やだよ、ふざけんな、なんでそんなまた好き勝手……」

俺は抵抗する山崎を引きずって、学生課の事務へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...