42 / 120
第16章
第1話
しおりを挟む
前日に約束をしておいた待ち合わせ場所に、奥川がやってきた。
学校終わりから部活までの時間、今日は生徒会活動のない日だから、絶対大丈夫。
時間よりやや遅れてやってきた彼女のスカートが、ふんわりと場所を空けた俺の隣に舞い降りた。
「で、何のよう?」
「別に」
そう言ってその場を誤魔化したけど、奥川は特に動じる様子はなかった。
退屈そうに両手をベンチにつき、前を向いて足をぶらぶらさせている。
しまった。
紙パックのジュース、こいつ用に買っておけばよかった。
「俺もさ、出ることにしたんだ。ニューロボコン」
放課後独特の、にぎやかな喧噪が響く。
どこかの運動部のかけ声と、吹奏楽部のラッパの音出し、廊下を駆け抜ける無数の足音。
校庭の上空を、何かの鳥が飛んでいた。
なんの鳥だろう、カラスじゃないだろうし、大きめの鳥だ。
「へー」
彼女が、電子制御部に入部してくれたのは、うれしい。
俺が彼女に対して、あれこれと何かを言う権利はなくて、もともとこの部活にはあんまり興味なかった奴だし、名前をかりるだけで、いいと思っていた。
だから入部しても、全然顔を出さなくてもいいし、真面目に活動しろなんて言わない。
「入部、したんだよね」
足元を一匹の蟻が歩いている。
ちょこまかと触覚を動かして、忙しそうな奴だ。
「そうだよ」
入部届けを出してから、彼女が理科室に顔をだしたのは、取材の時以来、一度もない。
今は1年は体育倉庫の方に拠点を移しているから、俺はそっちの方は、何も知らない。
そうだ、そうだった。
学校終わりから部活までの時間、今日は生徒会活動のない日だから、絶対大丈夫。
時間よりやや遅れてやってきた彼女のスカートが、ふんわりと場所を空けた俺の隣に舞い降りた。
「で、何のよう?」
「別に」
そう言ってその場を誤魔化したけど、奥川は特に動じる様子はなかった。
退屈そうに両手をベンチにつき、前を向いて足をぶらぶらさせている。
しまった。
紙パックのジュース、こいつ用に買っておけばよかった。
「俺もさ、出ることにしたんだ。ニューロボコン」
放課後独特の、にぎやかな喧噪が響く。
どこかの運動部のかけ声と、吹奏楽部のラッパの音出し、廊下を駆け抜ける無数の足音。
校庭の上空を、何かの鳥が飛んでいた。
なんの鳥だろう、カラスじゃないだろうし、大きめの鳥だ。
「へー」
彼女が、電子制御部に入部してくれたのは、うれしい。
俺が彼女に対して、あれこれと何かを言う権利はなくて、もともとこの部活にはあんまり興味なかった奴だし、名前をかりるだけで、いいと思っていた。
だから入部しても、全然顔を出さなくてもいいし、真面目に活動しろなんて言わない。
「入部、したんだよね」
足元を一匹の蟻が歩いている。
ちょこまかと触覚を動かして、忙しそうな奴だ。
「そうだよ」
入部届けを出してから、彼女が理科室に顔をだしたのは、取材の時以来、一度もない。
今は1年は体育倉庫の方に拠点を移しているから、俺はそっちの方は、何も知らない。
そうだ、そうだった。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く
Bu-cha
恋愛
親同士の再婚予定により、社宅の隣の部屋でほぼ一緒に暮らしていた。
血が繋がっていないから、結婚出来る。
私はお兄ちゃんと妹で結婚がしたい。
お兄ちゃん、私を戴いて・・・?
※妹が暴走しておりますので、ラブシーン多めになりそうです。
苦手な方はご注意くださいませ。
関連物語
『可愛くて美味しい真理姉』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高13位
『拳に愛を込めて』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高29位
『秋の夜長に見る恋の夢』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高17位
『交際0日で結婚!指輪ゲットを目指しラスボスを攻略してゲームをクリア』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『幼馴染みの小太郎君が、今日も私の眼鏡を外す』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高8位
『女社長紅葉(32)の雷は稲妻を光らせる』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 44位
『女神達が愛した弟』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高66位
『ムラムラムラムラモヤモヤモヤモヤ今日も秘書は止まらない』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高32位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる