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第1章
第2話
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「人生の……過ぎた時間のことを思うと、時々空しくなることはないか?」
普段から誰にも相手にされていないであろうこの小汚いおっさんは、唐突に自分の人生哲学を語り始めた。
こんなんだから嫌われてるってことが、分かっていない。
「誰からも理解されず、認められもせず、ただ己の信念に従って生きる。そんなことは果たして可能なのだろうか。君はどう思う? 俺にはそれはとても、難しいと感じるけどね」
誰からも理解されず認められず、おっさんという生き物は誰しも、こんなふうに面倒くさく仕上がってしまうものなんだろうか。
「俺には関係ないし」
「どうしてそう思う」
変な奴に絡まれたもんだ。
今すぐここから立ち去りたいが、俺にはここを決して離れられない理由がある。
「どう生きるかを決めるのは、自分自身であるはずだ」
「ニートのくせに?」
おっさんはニヤニヤしている。
ここで腹を立てたら負け。
俺は返事の代わりに、もう一度大きく息を吸ってから、吐き出した。
まっすぐに顔を上げ、無視の態度を決め込む。
こんなのを相手にして過ぎる時間の方が、よほど後から空しくなるだけだ。
「兄ちゃん、あんたも変わってんね」
そのセリフを最後に、おっさんは黙りこんだ。
時間だけが刻々と過ぎてゆく。
すっかり西に傾いた太陽は、その光に赤味を帯び始めた。
もう待ち合わせの時間が何時だったのかを、思い出す気にもなれない。
騙されたのか、それとも失敗したのか。
絶望的な感情がぐるぐると俺を支配する。
「磯部重人くん、だったね」
突然のそのセリフに、俺は隣の小汚いおっさんを振り返った。
「おめでとう。これが最終試験だ」
おっさんは立ち上がると、コートについた埃をはらう。
「君の見るこれからの世界が、幸福であることを祈るよ」
「ちょ、ま……」
急いで呼び止めようと、立ち去る背中に手を伸ばす。
声を出そうにも、驚きが突然すぎて声にならない。
そのまま消え去っていくのを、ただ見ているだけしか出来なかった。
これが最終試験? なにをどう試されたんだ?
意味が分からない。
古びた紙バッグが目にとまる。
ベンチの上にあの男が置いていったものだ。
ひったくるようにしてのぞき込むと、中にはプラスチックケースに収められたディスクが2枚入っていた。
ラベルには人気深夜アニメのタイトルが印字されている。
「何だよ、コレ……」
ゴクリとつばを飲み込み、その透明なケースをそっと指でなぞる。
違う。
これはアニメなんかじゃない、見た目に騙されるな。
これこそが最終試験問題だ。
あの言葉の意味とは、そういうことだ。
俺はしっかりとそれを握りしめると、帰宅の電車に飛び乗った。
普段から誰にも相手にされていないであろうこの小汚いおっさんは、唐突に自分の人生哲学を語り始めた。
こんなんだから嫌われてるってことが、分かっていない。
「誰からも理解されず、認められもせず、ただ己の信念に従って生きる。そんなことは果たして可能なのだろうか。君はどう思う? 俺にはそれはとても、難しいと感じるけどね」
誰からも理解されず認められず、おっさんという生き物は誰しも、こんなふうに面倒くさく仕上がってしまうものなんだろうか。
「俺には関係ないし」
「どうしてそう思う」
変な奴に絡まれたもんだ。
今すぐここから立ち去りたいが、俺にはここを決して離れられない理由がある。
「どう生きるかを決めるのは、自分自身であるはずだ」
「ニートのくせに?」
おっさんはニヤニヤしている。
ここで腹を立てたら負け。
俺は返事の代わりに、もう一度大きく息を吸ってから、吐き出した。
まっすぐに顔を上げ、無視の態度を決め込む。
こんなのを相手にして過ぎる時間の方が、よほど後から空しくなるだけだ。
「兄ちゃん、あんたも変わってんね」
そのセリフを最後に、おっさんは黙りこんだ。
時間だけが刻々と過ぎてゆく。
すっかり西に傾いた太陽は、その光に赤味を帯び始めた。
もう待ち合わせの時間が何時だったのかを、思い出す気にもなれない。
騙されたのか、それとも失敗したのか。
絶望的な感情がぐるぐると俺を支配する。
「磯部重人くん、だったね」
突然のそのセリフに、俺は隣の小汚いおっさんを振り返った。
「おめでとう。これが最終試験だ」
おっさんは立ち上がると、コートについた埃をはらう。
「君の見るこれからの世界が、幸福であることを祈るよ」
「ちょ、ま……」
急いで呼び止めようと、立ち去る背中に手を伸ばす。
声を出そうにも、驚きが突然すぎて声にならない。
そのまま消え去っていくのを、ただ見ているだけしか出来なかった。
これが最終試験? なにをどう試されたんだ?
意味が分からない。
古びた紙バッグが目にとまる。
ベンチの上にあの男が置いていったものだ。
ひったくるようにしてのぞき込むと、中にはプラスチックケースに収められたディスクが2枚入っていた。
ラベルには人気深夜アニメのタイトルが印字されている。
「何だよ、コレ……」
ゴクリとつばを飲み込み、その透明なケースをそっと指でなぞる。
違う。
これはアニメなんかじゃない、見た目に騙されるな。
これこそが最終試験問題だ。
あの言葉の意味とは、そういうことだ。
俺はしっかりとそれを握りしめると、帰宅の電車に飛び乗った。
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