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バレンタインデーの悲劇
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雅久は寮の売店のチョコレートの棚の前で、考え込んでいる武を見付けて近寄った。
「武君、何をしてるんですか?」
「あ、兄さん。もうすぐバレンタインデーだろ? 生徒会のみんなにお礼の意味で、チョコ配ろうかなって…」
「ああ…巷ではそうするのですよね?」
「うん…どうしようか迷ってたんだ。 夕麿に上げる分も考えなきゃいけないし…」
「なる程。それで夕麿さまにはどんなチョコレートを? やはりゴディバ? ガレやノイハウスとか?」
「あのね、それじゃ意味ないよ? 本命にあげるチョコは手作りするものだよ?
兄さんはしないの、義勝先輩の為に?」
この時、武と雅久は気付かなかったが、売店にいた生徒全員が聞いていた。 巷の噂や出来事に疎い彼らは、武の言葉に反応したのだ。
「材料…までは売ってないなあ…」
「都市にもチョコレートの専門店がありますよ?」
「そうなの? 行って来ようかな?」
「ひとりではダメです。 高等部の敷地内ならまだしも、都市部にひとりでは行けませんよ、武君」
「じゃ、兄さんも一緒に行ってよ?」
「構いませんが一応、夕麿さまと貴之には連絡をして下さい」
「わかった」
2月…生徒会の引き継ぎが終わり後は月末の交代の儀式を経て、生徒会は武を会長にして新しくなる。言わば最後の月の直中のバレンタインに、全員に感謝の気持ちをチョコレートとという形にしたかったのだ。
夕麿たちとこの学院で過ごせるのも、数ヶ月。 留学する特待生は6月末に卒業を迎える。 特待生は高校必須の単位全てを2年生の間に取り終える。 3年生に在籍するのはあくまでも、進学の準備期間としてなのである。
だから…白鳳会なのだとも言える。
「許可もらったよ?」
かなり渋々許可を出した夕麿に、出来るだけ早く帰ると約束して雅久と都市部へ向かう。
「うわッ…売店より高級チョコばっかり。 俺、手作り用のが欲しいのに…」
武の呟きを聴いた店員がにこやかにこう言った。
「割れたチョコレートなどを材料用として、販売も出来ますが…」
「本当? それ以外の材料はある?」
「ご用意させていただきますが、どれくらいの分量をお望みでいらっしゃいますか?」
「15人分だから…えっと…」
手にしたメモを見せて相談する。 少し待っているとかなりの分量の材料が揃えられた。
「あの…ご自分でお持ち帰りに?」
店員が戸惑う。 実はバスを降りた時から、武には都市警察の警官が護衛について来ていた。 彼らは今、店の前で待っている。 高等部に身分の高い生徒がいる…というのは、都市部にもそれとなく伝わっていて、店員も目の前の人物がそうらしいと読んでいたのだ。
「多分、大丈夫だと思うけど?」
「武君、配達していただきなさい。 そんな重い物を持って帰ったら、夕麿さまに叱られてしまいますよ?」
「面倒くさいなあ…」
「もう少しご自分の立場を考えて下さいね」
「………わかった」
「では高等部の特待生寮の特別室宛で、明日の夕方までに届けて下さい」
「承知いたしました」
深々と頭を下げる店員に背を向けて、雅久は武を連れて店を出た。
「他に行く所はありますか?」
「チョコと一緒に渡すプレゼントは買ってあるし…ないかな?
兄さん、お茶して行く?」
「まだ時間はありますから、そこのカフェにでも入りましょう」
雅久が御園生の養子に迎えられて、兄と呼ぶようになってから数ヶ月。 最近、断片的に記憶が蘇りつつある。
「武君ももうすぐ生徒会長ですね」
「自信ないんだよ、絶対に夕麿と比べられるから。敵うわけないだろう?」
「大丈夫ですよ。夕麿さまと同じ事が出来るわけはないし…あなたが後を引き継ぎやすいように、夕麿さまは様々な事を改変改革されましたから」
「そう…なの?」
「武君が編入する以前から、学院側と交渉されていたものもありますが…」
「例えばどんな事?」
「学院の案内にある、brother partner制を記憶していますか?」
「あ、うん…そういえば、聞かないね?」
「私も義勝に聞いたのですが、一学期で廃止になったそうです」
「えっと…そもそも、それって何?」
「中等部から採用されているシステムで、皇家の学友に近いものだと聞いています」
「兄さんにもいたの?」
「義勝の話だと私は夕麿さまと中等部の途中まで、partnerだったようです。
義勝は貴之とだったと聞いています」
「へぇ…」
「身分や性格などで学院側が選択するもので、届け出をすれば解消したり別の人物と出来たようですが…高等部では一時期、恋人関係の代用だったみたいですね」
「ふうん…で、何で夕麿は廃止させたの?」
「中等部から高等部に上がった時に解消しようとする側と固執する側で、度々問題が起こったから…と聞いています」
「恋人関係はやだって人と、その気がある人の間なら揉めそうだね、それ」
「ええ、だから実質的には本年度初頭から廃止扱いだったみたいですが、正式に廃止になったのは一学期末なんだそうです。 だから来年度の案内には、記載されない事になっています。
多分…高等部で最後に学院側がbrother partner制を実行したのは、あなたが最後だと思うと義勝が言ってました」
「え? 俺? 誰と?」
「知らなかったのですか? 夕麿さまとです」
「あ…それであんなに面倒をみてくれたわけか…」
「学院中が知っていた筈です」
「う…それでみんなに睨まれたんだ、俺…」
「廃止の条件だったと義勝から聞きました」
夕麿との関係は最初からお膳立てされていた…? そうは思ったが今は幸せだからと武は苦笑で済ませる事にした。 一年近く経過して知らされた話。 仕組んだ側は喜んだだろう。
そして雅久は思った。 確かに夕麿なら全ての条件が揃う…と。 伴侶に求められるのは、庶民として育ってしまった武の教育をする事や、いざという時に侍従としての役目が果たせる者。 祐筆として武の為に毛筆による形式書式が使える者。 異性に心を奪われずに、武だけを一途に愛する性格を有する事。 あげて行けば行く程、夕麿以外にはいなかった気がする。
第一、摂関家の血筋で、生母は男系が絶えて廃絶した宮家の末裔…条件が揃い過ぎている程だ。 もっとも継母の嫌がらせで夕麿があそこまで危害を加えられ、それに武が巻き込まれるなどとは予想もしていなかっただろうが。
平穏な日々を本当に取り戻して、武は高等部内ならひとりで行動出来る状態になった。 堅苦しい護衛は都市部に出た時だけ。後数ヶ月、平穏な日々がこのまま続いて欲しいと、雅久は祈らずにはいられなかった。
「はい、義勝先輩。 一年間、お疲れさまです。 そしてありがとうございました」
手作りのチョコを手渡して、ひとり一人に感謝を伝える。 生徒会を去る彼らにはどんなに感謝しても足らない程だった。
「下河辺、これからの一年間、よろしくお願いする。 俺…頼りないかもしれないけど、精一杯頑張るから」
「当然です、武さま。 さもないと遠慮なく怒鳴らせていただきます。 あなたの失敗は前任でありご伴侶であられる夕麿さまの恥になる事を、お忘れなきように努力して下さいませ」
相変わらずの夕麿崇拝者ぶりで武を苦笑させる。 しっかり者で武の身分を知っても、怯まずに意見を言うのが気に入られて、夕麿は彼を武の補佐、副会長に推薦した。 夕麿の薦めを受け入れて、武は下河辺 行長を副会長に任命した。彼らは特待生試験に見事合格して、4月から白い制服を着る。 全員に配り終えて会長執務室に戻ると、夕麿がPCを閉じる所だった。
「終わりましたか?」
視線を合わさないところを見ると、嫉妬して拗ねているらしい。 夕麿には寮に戻ってから渡すと、きちんと言ってあるのに…困ったヤキモチヤキだと武は呆れる。
「終わったよ? 帰ろうよ?夕食も下拵えしてあるし…せっかくのバレンタインデーだから…二人になりたい」
抱き付いて甘えるように言うと抱き返された。
「そうですね」
ほら、もう機嫌が直った。 かわいい。 そそくさと片付けて、鞄を手に執務室を出た。
「えっと…下河辺、今日はもう解散…と言う事で…」
「義勝、戸締まりをお願いしますね」
「おい、夕麿、俺だってバレンタインデーくらい早く帰りたいんだがな? 雅久の手料理が待ってるんだ。お前だけ狡いぞ?」
「はいはい。 戸締まりは僕と下河辺でやっておくから、帰った帰った! 全く、生徒会でノロケ合戦しないでよ~」
麗が悲鳴をあげておどける。 彼らは笑い声に送られて、生徒会から外に出ると…いつの間に集まったのやら、生徒がびっしりと廊下で待っていた。
「何…これ…?」
驚き戸惑う武に全員が揃って頭を下げた。
「武さまにお願いがあります」
「俺に…お願い…? 何…?」
「夕麿さまにチョコレートをお渡ししたいのです」
「はあ!? 夕麿にチョコ!?」
「僕たち、心を込めて手作りしました!」
心を込めて手作りした…と言われても、困る…
「本命チョコ…!? いや、夕麿は俺のだから…無駄だよ、それ?」
この日、風紀委員たちは昼間、大変な騒動に巻き込まれていた。 高等部内の一般生徒たちが、人気のある生徒の手作りチョコの争奪戦を繰り広げ、こもごもの悲喜劇を展開していたのだ。 彼らは殴り合いや掴み合いの喧嘩はしない。 そのかわりに皮肉の応酬で周囲の空気を凍らせる。 敬語や丁寧語、謙譲語で繰り広げられる皮肉。 これはどんな乱暴な言葉よりも恐ろしい。
ここまでにいくと風紀委員たちも背筋に、冷たいものが走るのを感じて怯んでしまった。
そして最も困ったのが…夕麿たちへのチョコだった。 最初で最後のバレンタインのチョコを贈りたい! そう詰め寄られた風紀委員のひとりが、思わず言ってしまったのである。
「武さまが許可されるならば…」 と。
言わば武に全部を押し付けてしまったのだ。 無駄なのはわかっている。 報われないのも充分承知の上で、憧れの人に最初で最後の本命チョコを受け取って欲しい。 そう言われても武にすれば嬉しくないし面白くない。 夕麿が受け取るのは自分のだけで良い。 返事に困っていると、背後の生徒会室の扉が開いた。
「チョコは生徒会で受け取ります」
行長だった。
「中にお持ち下さい。 それと夕麿さまと武さまが寮にお戻りになられます。 道をお開けして下さい」
見事な采配だった。 武は内心思った。 ……俺より下河辺が会長の方が良くない? と。
今一度、集まった生徒を見回す。 やっぱりムカつく。 武は夕麿に向かって、最上級の笑みを浮かべて手を差し出した。
「帰ろう、夕麿」
すると夕麿が驚いた事に、頬を染めてはにかむようにその手を握った。 集まった生徒たちから悲鳴とどよめきが漏れた。 所有欲を満たした武は胸を張って特別棟を後にした。
夕食後のデザートとお茶をリビングに持って行くと、夕麿は熱心に読んでいた本を閉じた。 2~3日前から数冊の本を熱心に読んでいるのだが、どれもカバーがかけられているので何の本かはわからない。もっとも夕麿が読んでいるのだからビジネス書か何かだろう。 武はたいして気にもとめず、チョコとプレゼントの包みを持ってソファに座った。
「夕麿…これ…」
生まれて初めてのバレンタインの贈り物に、少し照れてしまう。
「ありがとう、武」
両手で受け取った夕麿は、自分の傍らに置いていた包みを武に差し出した。
「欧米では男が愛する人に花を贈ります」
「そうなんだ…ありがとう」
二人で一緒に互いのプレゼントの包みを開けた。 武が夕麿に贈ったのは、国内の時計メーカーが受注して製造する、ハンドメイドの最高級腕時計。 文字盤の向こうに精巧な機械が、規則正しく時を刻むのが見える美しい逸品だ。 武はそれの裏側に自分の御印を付け、『 To YUMA. FROM TAKERU』の文字を刻んでもらった。国内メーカーと軽んじてはいけない。 この腕時計は1500万円するのだ。 宝石などの無駄な飾りのない気品ある美しさと、世界トップクラスの技術は時計としての機能も群を抜く。
「何と美しい…ありがとう、武」
「迷ったんだけど…ネットで見付けて、これしかないって思ったから。気に入ってもらえて嬉しいよ」
どこにでも行けば売っている、既製品の高級品は夕麿には似つかわしくないと思っていた。 完全受注品のそれは、さほど有名ではないので所持者はそう多くはない。 それに御印と文字を刻印する事でたった一つのものになった。
唯一無二。 それが武の愛のメッセージ。
そして…夕麿のプレゼントは、樹脂で固められた美しい真紅の薔薇だった。 生花の最も美しい時を、枯れる事のない姿に留めたもの。 真紅の薔薇は愛の証。 樹脂で固めて美しい時を止めた姿にしたのは夕麿なりの誓いだった。 変わる事のない永遠の愛の誓い。
「ありがとう、夕麿。 感動した…凄く嬉しい…」
胸がいっぱいで、言葉がうまく出て来ない。 プレゼントをそっとテーブルに置いて、ソファに膝立ちして口付けた。 貪るように求め合い、唇が離れた時に夕麿が言った。
「武、あなたはプレゼントしてくれないのですか?」
「はあ?」
プレゼントは渡した…筈…?
「このような時は、あなたにリボンを付けて、プレゼントって…」
「ちょっと待った! 何だ、その頭の腐ったような発想は!?」
夕麿は不思議そうに首を傾げた。
「読んだ本にはそう書いてありましたが?」
「本!? 何の本だよ!」
叫ぶ武に夕麿が差し出したのは、先程彼が読んでいた本だった。 BL小説…お約束のアイテムだったりする。
「誰だ、夕麿にこんなもの読ませたのは!?」
「先日、逸見君が楽しそうに読んでいたので、貸してもらったのです。巷ではこんな本があるのですね」
夕麿は嬉しそうに武をソファに押し倒し衣類を剥いでしまう。
「いや、夕麿。 あれは小説だし、普通はそんな事しないから…!」
武の必死の言葉も耳に入らないらしい。 脚を広げられいきなりまだその気になっていないモノを握られ、ゆるゆると扱われると熱がそこに集まり出す。
「ヤ…あン」
思わず漏れた声に夕麿がクスリと笑う。 彼はテーブルの上の先程までプレゼントに付いていた真紅のリボンを手に取り、たった今刺激を受けて勃った武のモノに巻き付けた。
首じゃなくて、そっちか! と内心ツッコミ、我に返って武は慌てた。
「夕麿、やめろって…」
だが彼は自分のやっている事に、すっかり夢中になっていて武の声に耳を貸さない。 次に夕麿が取り出したものを見て武は絶叫した。 彼の手に握られていたのは、ケーキやチョコに文字を書くのに使う、チューブに入ったチョコ。
「どこから持って来た、それ~!!」
一体、どんな内容の小説だったんだ…? ジタバタする武を押さえて、チューブの中身を乳首に塗り始めた。
「ふふ…ケーキみたいですね、武?」
「何を…あッ…」
抗議しようにも夕麿の指先が乳首を転がすようにして、チョコを塗り付けるのに感じてしまう。
「だから…ン…やめろって…ひァ…!」
夕麿の舌先が美味しそうにチョコ塗れの乳首を舐める。
「ヤ…ダメ…あン…夕麿…」
チョコの所為でいつもより執拗に舐められて、武は甘い声を上げて身悶えする。 一体、何本チューブのチョコを用意したのか…身体中にチョコが塗られ夕麿の舌が舐めとって行く。
甘い匂いに頭がクラクラする。
感じ過ぎて怖い。
だが彼のモノは未だにリボンで縛られたままである。 夕麿はそれにもチョコを塗り口に含んだ。
「あンああン…夕麿…イかせて…お願い…」
腰を振って嘆願する。
「まだダメです」
とにべもない返事に啜り泣く。
俯せにされ腰を持ち上げられてさすがに慌てた。
「ヤ…夕麿…そこは…ダメ…!」
蕾にチューブの中身が絞り出され、それを潤滑剤にして指が挿入される。 夕麿は指を増やしながらなおも、チョコを絞、指で開いた蕾の中へ垂らした。 蕾からはいつになく、粘液質の音がする。 指で中をかき混ぜられながら、舌がチョコを舐め啜る。 余りの気持ち良さに、武は見も夜もなく全身を戦慄かせて啜り泣いた。 武の乱れように興奮した夕麿のモノは、いつもより質量を増して蕾を一気に貫いた。
「あッあッあああ!」
同時にリボンを解かれてレザーのソファの上に激しく吐精した。 夕麿はなおも武の奥を抉るように激しく抽挿する。 掴まり所のないソファの上で、掴まる場所を求めて指がレザーを引っ掻く。
熱い…… 体温で水のように溶けたチョコが、抽挿に合わせて溢れ内股を流れ落ちる。 甘い匂いが漂い、武は自分の身体もチョコのように溶けてしまいそうだった。
「夕麿…夕麿…もう…ダメ…イく…」
「私ももう…」
その言葉と共に激しく打ち付けられるようにして抽挿される。
「ああッ…凄い…ヤあッ…怖い…夕麿…夕麿ァ…!!」
今まで感じた事のない強い絶頂に、武は悲鳴を上げて昇りつめた。 ほぼ同時にいつもより奥に、熱い迸りが広がるのを感じて武は意識を失った。
意識が戻ったのは、バスタブの湯の中だった。 夕麿に抱きかかえられて、ぬるめの湯に浸かっていた。
「大丈夫ですか、武?」
「夕麿のばか! 変態!」
「変態は酷いですね、武。 失神する程悦かった癖に…」
「煩い…」
赤面して呟くと夕麿が笑う。 ムカつくが…目一杯感じたの事実。 反論が出来ない。
この後も武の受難は続いた。
シャワーを当てられながら、体液混じりのチョコを掻き出され、再び興奮した夕麿に抱かた。 ベッドに入っても夕麿は、武を抱き続け朝まで啼かされ続けた。 当然、ベッドから起き上がる力は残っておらず、その日は泣く泣く欠席した武であった……
後日、逸見が武に怒鳴られた挙げ句、1ヶ月程口を利いてもらえなかったのは…当たり前の事である。
「武君、何をしてるんですか?」
「あ、兄さん。もうすぐバレンタインデーだろ? 生徒会のみんなにお礼の意味で、チョコ配ろうかなって…」
「ああ…巷ではそうするのですよね?」
「うん…どうしようか迷ってたんだ。 夕麿に上げる分も考えなきゃいけないし…」
「なる程。それで夕麿さまにはどんなチョコレートを? やはりゴディバ? ガレやノイハウスとか?」
「あのね、それじゃ意味ないよ? 本命にあげるチョコは手作りするものだよ?
兄さんはしないの、義勝先輩の為に?」
この時、武と雅久は気付かなかったが、売店にいた生徒全員が聞いていた。 巷の噂や出来事に疎い彼らは、武の言葉に反応したのだ。
「材料…までは売ってないなあ…」
「都市にもチョコレートの専門店がありますよ?」
「そうなの? 行って来ようかな?」
「ひとりではダメです。 高等部の敷地内ならまだしも、都市部にひとりでは行けませんよ、武君」
「じゃ、兄さんも一緒に行ってよ?」
「構いませんが一応、夕麿さまと貴之には連絡をして下さい」
「わかった」
2月…生徒会の引き継ぎが終わり後は月末の交代の儀式を経て、生徒会は武を会長にして新しくなる。言わば最後の月の直中のバレンタインに、全員に感謝の気持ちをチョコレートとという形にしたかったのだ。
夕麿たちとこの学院で過ごせるのも、数ヶ月。 留学する特待生は6月末に卒業を迎える。 特待生は高校必須の単位全てを2年生の間に取り終える。 3年生に在籍するのはあくまでも、進学の準備期間としてなのである。
だから…白鳳会なのだとも言える。
「許可もらったよ?」
かなり渋々許可を出した夕麿に、出来るだけ早く帰ると約束して雅久と都市部へ向かう。
「うわッ…売店より高級チョコばっかり。 俺、手作り用のが欲しいのに…」
武の呟きを聴いた店員がにこやかにこう言った。
「割れたチョコレートなどを材料用として、販売も出来ますが…」
「本当? それ以外の材料はある?」
「ご用意させていただきますが、どれくらいの分量をお望みでいらっしゃいますか?」
「15人分だから…えっと…」
手にしたメモを見せて相談する。 少し待っているとかなりの分量の材料が揃えられた。
「あの…ご自分でお持ち帰りに?」
店員が戸惑う。 実はバスを降りた時から、武には都市警察の警官が護衛について来ていた。 彼らは今、店の前で待っている。 高等部に身分の高い生徒がいる…というのは、都市部にもそれとなく伝わっていて、店員も目の前の人物がそうらしいと読んでいたのだ。
「多分、大丈夫だと思うけど?」
「武君、配達していただきなさい。 そんな重い物を持って帰ったら、夕麿さまに叱られてしまいますよ?」
「面倒くさいなあ…」
「もう少しご自分の立場を考えて下さいね」
「………わかった」
「では高等部の特待生寮の特別室宛で、明日の夕方までに届けて下さい」
「承知いたしました」
深々と頭を下げる店員に背を向けて、雅久は武を連れて店を出た。
「他に行く所はありますか?」
「チョコと一緒に渡すプレゼントは買ってあるし…ないかな?
兄さん、お茶して行く?」
「まだ時間はありますから、そこのカフェにでも入りましょう」
雅久が御園生の養子に迎えられて、兄と呼ぶようになってから数ヶ月。 最近、断片的に記憶が蘇りつつある。
「武君ももうすぐ生徒会長ですね」
「自信ないんだよ、絶対に夕麿と比べられるから。敵うわけないだろう?」
「大丈夫ですよ。夕麿さまと同じ事が出来るわけはないし…あなたが後を引き継ぎやすいように、夕麿さまは様々な事を改変改革されましたから」
「そう…なの?」
「武君が編入する以前から、学院側と交渉されていたものもありますが…」
「例えばどんな事?」
「学院の案内にある、brother partner制を記憶していますか?」
「あ、うん…そういえば、聞かないね?」
「私も義勝に聞いたのですが、一学期で廃止になったそうです」
「えっと…そもそも、それって何?」
「中等部から採用されているシステムで、皇家の学友に近いものだと聞いています」
「兄さんにもいたの?」
「義勝の話だと私は夕麿さまと中等部の途中まで、partnerだったようです。
義勝は貴之とだったと聞いています」
「へぇ…」
「身分や性格などで学院側が選択するもので、届け出をすれば解消したり別の人物と出来たようですが…高等部では一時期、恋人関係の代用だったみたいですね」
「ふうん…で、何で夕麿は廃止させたの?」
「中等部から高等部に上がった時に解消しようとする側と固執する側で、度々問題が起こったから…と聞いています」
「恋人関係はやだって人と、その気がある人の間なら揉めそうだね、それ」
「ええ、だから実質的には本年度初頭から廃止扱いだったみたいですが、正式に廃止になったのは一学期末なんだそうです。 だから来年度の案内には、記載されない事になっています。
多分…高等部で最後に学院側がbrother partner制を実行したのは、あなたが最後だと思うと義勝が言ってました」
「え? 俺? 誰と?」
「知らなかったのですか? 夕麿さまとです」
「あ…それであんなに面倒をみてくれたわけか…」
「学院中が知っていた筈です」
「う…それでみんなに睨まれたんだ、俺…」
「廃止の条件だったと義勝から聞きました」
夕麿との関係は最初からお膳立てされていた…? そうは思ったが今は幸せだからと武は苦笑で済ませる事にした。 一年近く経過して知らされた話。 仕組んだ側は喜んだだろう。
そして雅久は思った。 確かに夕麿なら全ての条件が揃う…と。 伴侶に求められるのは、庶民として育ってしまった武の教育をする事や、いざという時に侍従としての役目が果たせる者。 祐筆として武の為に毛筆による形式書式が使える者。 異性に心を奪われずに、武だけを一途に愛する性格を有する事。 あげて行けば行く程、夕麿以外にはいなかった気がする。
第一、摂関家の血筋で、生母は男系が絶えて廃絶した宮家の末裔…条件が揃い過ぎている程だ。 もっとも継母の嫌がらせで夕麿があそこまで危害を加えられ、それに武が巻き込まれるなどとは予想もしていなかっただろうが。
平穏な日々を本当に取り戻して、武は高等部内ならひとりで行動出来る状態になった。 堅苦しい護衛は都市部に出た時だけ。後数ヶ月、平穏な日々がこのまま続いて欲しいと、雅久は祈らずにはいられなかった。
「はい、義勝先輩。 一年間、お疲れさまです。 そしてありがとうございました」
手作りのチョコを手渡して、ひとり一人に感謝を伝える。 生徒会を去る彼らにはどんなに感謝しても足らない程だった。
「下河辺、これからの一年間、よろしくお願いする。 俺…頼りないかもしれないけど、精一杯頑張るから」
「当然です、武さま。 さもないと遠慮なく怒鳴らせていただきます。 あなたの失敗は前任でありご伴侶であられる夕麿さまの恥になる事を、お忘れなきように努力して下さいませ」
相変わらずの夕麿崇拝者ぶりで武を苦笑させる。 しっかり者で武の身分を知っても、怯まずに意見を言うのが気に入られて、夕麿は彼を武の補佐、副会長に推薦した。 夕麿の薦めを受け入れて、武は下河辺 行長を副会長に任命した。彼らは特待生試験に見事合格して、4月から白い制服を着る。 全員に配り終えて会長執務室に戻ると、夕麿がPCを閉じる所だった。
「終わりましたか?」
視線を合わさないところを見ると、嫉妬して拗ねているらしい。 夕麿には寮に戻ってから渡すと、きちんと言ってあるのに…困ったヤキモチヤキだと武は呆れる。
「終わったよ? 帰ろうよ?夕食も下拵えしてあるし…せっかくのバレンタインデーだから…二人になりたい」
抱き付いて甘えるように言うと抱き返された。
「そうですね」
ほら、もう機嫌が直った。 かわいい。 そそくさと片付けて、鞄を手に執務室を出た。
「えっと…下河辺、今日はもう解散…と言う事で…」
「義勝、戸締まりをお願いしますね」
「おい、夕麿、俺だってバレンタインデーくらい早く帰りたいんだがな? 雅久の手料理が待ってるんだ。お前だけ狡いぞ?」
「はいはい。 戸締まりは僕と下河辺でやっておくから、帰った帰った! 全く、生徒会でノロケ合戦しないでよ~」
麗が悲鳴をあげておどける。 彼らは笑い声に送られて、生徒会から外に出ると…いつの間に集まったのやら、生徒がびっしりと廊下で待っていた。
「何…これ…?」
驚き戸惑う武に全員が揃って頭を下げた。
「武さまにお願いがあります」
「俺に…お願い…? 何…?」
「夕麿さまにチョコレートをお渡ししたいのです」
「はあ!? 夕麿にチョコ!?」
「僕たち、心を込めて手作りしました!」
心を込めて手作りした…と言われても、困る…
「本命チョコ…!? いや、夕麿は俺のだから…無駄だよ、それ?」
この日、風紀委員たちは昼間、大変な騒動に巻き込まれていた。 高等部内の一般生徒たちが、人気のある生徒の手作りチョコの争奪戦を繰り広げ、こもごもの悲喜劇を展開していたのだ。 彼らは殴り合いや掴み合いの喧嘩はしない。 そのかわりに皮肉の応酬で周囲の空気を凍らせる。 敬語や丁寧語、謙譲語で繰り広げられる皮肉。 これはどんな乱暴な言葉よりも恐ろしい。
ここまでにいくと風紀委員たちも背筋に、冷たいものが走るのを感じて怯んでしまった。
そして最も困ったのが…夕麿たちへのチョコだった。 最初で最後のバレンタインのチョコを贈りたい! そう詰め寄られた風紀委員のひとりが、思わず言ってしまったのである。
「武さまが許可されるならば…」 と。
言わば武に全部を押し付けてしまったのだ。 無駄なのはわかっている。 報われないのも充分承知の上で、憧れの人に最初で最後の本命チョコを受け取って欲しい。 そう言われても武にすれば嬉しくないし面白くない。 夕麿が受け取るのは自分のだけで良い。 返事に困っていると、背後の生徒会室の扉が開いた。
「チョコは生徒会で受け取ります」
行長だった。
「中にお持ち下さい。 それと夕麿さまと武さまが寮にお戻りになられます。 道をお開けして下さい」
見事な采配だった。 武は内心思った。 ……俺より下河辺が会長の方が良くない? と。
今一度、集まった生徒を見回す。 やっぱりムカつく。 武は夕麿に向かって、最上級の笑みを浮かべて手を差し出した。
「帰ろう、夕麿」
すると夕麿が驚いた事に、頬を染めてはにかむようにその手を握った。 集まった生徒たちから悲鳴とどよめきが漏れた。 所有欲を満たした武は胸を張って特別棟を後にした。
夕食後のデザートとお茶をリビングに持って行くと、夕麿は熱心に読んでいた本を閉じた。 2~3日前から数冊の本を熱心に読んでいるのだが、どれもカバーがかけられているので何の本かはわからない。もっとも夕麿が読んでいるのだからビジネス書か何かだろう。 武はたいして気にもとめず、チョコとプレゼントの包みを持ってソファに座った。
「夕麿…これ…」
生まれて初めてのバレンタインの贈り物に、少し照れてしまう。
「ありがとう、武」
両手で受け取った夕麿は、自分の傍らに置いていた包みを武に差し出した。
「欧米では男が愛する人に花を贈ります」
「そうなんだ…ありがとう」
二人で一緒に互いのプレゼントの包みを開けた。 武が夕麿に贈ったのは、国内の時計メーカーが受注して製造する、ハンドメイドの最高級腕時計。 文字盤の向こうに精巧な機械が、規則正しく時を刻むのが見える美しい逸品だ。 武はそれの裏側に自分の御印を付け、『 To YUMA. FROM TAKERU』の文字を刻んでもらった。国内メーカーと軽んじてはいけない。 この腕時計は1500万円するのだ。 宝石などの無駄な飾りのない気品ある美しさと、世界トップクラスの技術は時計としての機能も群を抜く。
「何と美しい…ありがとう、武」
「迷ったんだけど…ネットで見付けて、これしかないって思ったから。気に入ってもらえて嬉しいよ」
どこにでも行けば売っている、既製品の高級品は夕麿には似つかわしくないと思っていた。 完全受注品のそれは、さほど有名ではないので所持者はそう多くはない。 それに御印と文字を刻印する事でたった一つのものになった。
唯一無二。 それが武の愛のメッセージ。
そして…夕麿のプレゼントは、樹脂で固められた美しい真紅の薔薇だった。 生花の最も美しい時を、枯れる事のない姿に留めたもの。 真紅の薔薇は愛の証。 樹脂で固めて美しい時を止めた姿にしたのは夕麿なりの誓いだった。 変わる事のない永遠の愛の誓い。
「ありがとう、夕麿。 感動した…凄く嬉しい…」
胸がいっぱいで、言葉がうまく出て来ない。 プレゼントをそっとテーブルに置いて、ソファに膝立ちして口付けた。 貪るように求め合い、唇が離れた時に夕麿が言った。
「武、あなたはプレゼントしてくれないのですか?」
「はあ?」
プレゼントは渡した…筈…?
「このような時は、あなたにリボンを付けて、プレゼントって…」
「ちょっと待った! 何だ、その頭の腐ったような発想は!?」
夕麿は不思議そうに首を傾げた。
「読んだ本にはそう書いてありましたが?」
「本!? 何の本だよ!」
叫ぶ武に夕麿が差し出したのは、先程彼が読んでいた本だった。 BL小説…お約束のアイテムだったりする。
「誰だ、夕麿にこんなもの読ませたのは!?」
「先日、逸見君が楽しそうに読んでいたので、貸してもらったのです。巷ではこんな本があるのですね」
夕麿は嬉しそうに武をソファに押し倒し衣類を剥いでしまう。
「いや、夕麿。 あれは小説だし、普通はそんな事しないから…!」
武の必死の言葉も耳に入らないらしい。 脚を広げられいきなりまだその気になっていないモノを握られ、ゆるゆると扱われると熱がそこに集まり出す。
「ヤ…あン」
思わず漏れた声に夕麿がクスリと笑う。 彼はテーブルの上の先程までプレゼントに付いていた真紅のリボンを手に取り、たった今刺激を受けて勃った武のモノに巻き付けた。
首じゃなくて、そっちか! と内心ツッコミ、我に返って武は慌てた。
「夕麿、やめろって…」
だが彼は自分のやっている事に、すっかり夢中になっていて武の声に耳を貸さない。 次に夕麿が取り出したものを見て武は絶叫した。 彼の手に握られていたのは、ケーキやチョコに文字を書くのに使う、チューブに入ったチョコ。
「どこから持って来た、それ~!!」
一体、どんな内容の小説だったんだ…? ジタバタする武を押さえて、チューブの中身を乳首に塗り始めた。
「ふふ…ケーキみたいですね、武?」
「何を…あッ…」
抗議しようにも夕麿の指先が乳首を転がすようにして、チョコを塗り付けるのに感じてしまう。
「だから…ン…やめろって…ひァ…!」
夕麿の舌先が美味しそうにチョコ塗れの乳首を舐める。
「ヤ…ダメ…あン…夕麿…」
チョコの所為でいつもより執拗に舐められて、武は甘い声を上げて身悶えする。 一体、何本チューブのチョコを用意したのか…身体中にチョコが塗られ夕麿の舌が舐めとって行く。
甘い匂いに頭がクラクラする。
感じ過ぎて怖い。
だが彼のモノは未だにリボンで縛られたままである。 夕麿はそれにもチョコを塗り口に含んだ。
「あンああン…夕麿…イかせて…お願い…」
腰を振って嘆願する。
「まだダメです」
とにべもない返事に啜り泣く。
俯せにされ腰を持ち上げられてさすがに慌てた。
「ヤ…夕麿…そこは…ダメ…!」
蕾にチューブの中身が絞り出され、それを潤滑剤にして指が挿入される。 夕麿は指を増やしながらなおも、チョコを絞、指で開いた蕾の中へ垂らした。 蕾からはいつになく、粘液質の音がする。 指で中をかき混ぜられながら、舌がチョコを舐め啜る。 余りの気持ち良さに、武は見も夜もなく全身を戦慄かせて啜り泣いた。 武の乱れように興奮した夕麿のモノは、いつもより質量を増して蕾を一気に貫いた。
「あッあッあああ!」
同時にリボンを解かれてレザーのソファの上に激しく吐精した。 夕麿はなおも武の奥を抉るように激しく抽挿する。 掴まり所のないソファの上で、掴まる場所を求めて指がレザーを引っ掻く。
熱い…… 体温で水のように溶けたチョコが、抽挿に合わせて溢れ内股を流れ落ちる。 甘い匂いが漂い、武は自分の身体もチョコのように溶けてしまいそうだった。
「夕麿…夕麿…もう…ダメ…イく…」
「私ももう…」
その言葉と共に激しく打ち付けられるようにして抽挿される。
「ああッ…凄い…ヤあッ…怖い…夕麿…夕麿ァ…!!」
今まで感じた事のない強い絶頂に、武は悲鳴を上げて昇りつめた。 ほぼ同時にいつもより奥に、熱い迸りが広がるのを感じて武は意識を失った。
意識が戻ったのは、バスタブの湯の中だった。 夕麿に抱きかかえられて、ぬるめの湯に浸かっていた。
「大丈夫ですか、武?」
「夕麿のばか! 変態!」
「変態は酷いですね、武。 失神する程悦かった癖に…」
「煩い…」
赤面して呟くと夕麿が笑う。 ムカつくが…目一杯感じたの事実。 反論が出来ない。
この後も武の受難は続いた。
シャワーを当てられながら、体液混じりのチョコを掻き出され、再び興奮した夕麿に抱かた。 ベッドに入っても夕麿は、武を抱き続け朝まで啼かされ続けた。 当然、ベッドから起き上がる力は残っておらず、その日は泣く泣く欠席した武であった……
後日、逸見が武に怒鳴られた挙げ句、1ヶ月程口を利いてもらえなかったのは…当たり前の事である。
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