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冬至Ⅱ
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最近、歳月の流れが速くなった……と武は思う。気が付けばクリスマスが近く、今日は冬至だ。
帰宅すると絹子が笑顔でこう言った。
「昨年のように柚子湯にしてございます」
と。
どうやら昨年のように庭の柚子を収穫したようだ。
「夕麿、入ろう」
邪気が微塵も感じられない笑顔で言う武に、夕麿は妖艶な笑みを浮かべながら内心でほくそ笑んだ。
「いい香り……」
懲りずに今年も湯に浮かぶ柚子に武は頬を摺り寄せる。
「柑橘系の皮から抽出できる油は、アンチエイジング効果があると言います」
「そうなのか?」
「私も聞きかじりなので不確かな情報ですが。でも保温効果を上げて湯冷めし難いから冬至の入浴が良いとされるようです」
「確かに後々まで温かいな」
どうやら昨年の自分の所業は忘れている様子だ。夕麿は柚子を一つ手にして軽く握って潰した。強い香りが浴室にパッと広がった。
「潰すともっと香りが増すな」
嬉しそうに自分もとばかりに手に取ろうと伸ばした手を、そのまま夕麿に捕まれた。
「ん??」
訳が分からない、という表情で夕麿を見上げる。すると彼は思わず見惚れるような笑みを浮かべて言った。
「昨年はあなたが私の香りを楽しみましたよね」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「去年……?香りを楽しむ?」
「ええ、忘れてしまったのですか?私はこんなにしっかり覚えているのに」
穏やかな声で妖艶な笑みが怖い。
「別に思い出さなくてもかまいませんよ、武。でも今年はあなたに付いた柚子の香りをいただかせてくださいね」
「え……」
言葉と同時に握り潰したばかりの柚子で、掴んでいる武の腕を撫でる。
「あ!」
「フフッ、思い出したようですね」
サッと血の気が引き、すぐにカッと全身が熱くなった。
「蒼くなったり赤くなったり忙しいですね」
夕麿はとても楽しそうだ。
「ちゃんと全身にあなたの大好きな香りをまとわせてあげます」
「い、いい!いらない!」
逃げ出そうに片腕を掴まれていては無理だ。
「遠慮しないでください」
「してない!わっ!そ、そんなところまで……」
「隅から隅までちゃんと」
「うわあああああ~」
武が悲鳴をあげて抗うも力ではかなわず、その夜は執拗なまでにたっぷりと堪能されたのだった……
いつまで経ってもバカップルなふたりだった。
帰宅すると絹子が笑顔でこう言った。
「昨年のように柚子湯にしてございます」
と。
どうやら昨年のように庭の柚子を収穫したようだ。
「夕麿、入ろう」
邪気が微塵も感じられない笑顔で言う武に、夕麿は妖艶な笑みを浮かべながら内心でほくそ笑んだ。
「いい香り……」
懲りずに今年も湯に浮かぶ柚子に武は頬を摺り寄せる。
「柑橘系の皮から抽出できる油は、アンチエイジング効果があると言います」
「そうなのか?」
「私も聞きかじりなので不確かな情報ですが。でも保温効果を上げて湯冷めし難いから冬至の入浴が良いとされるようです」
「確かに後々まで温かいな」
どうやら昨年の自分の所業は忘れている様子だ。夕麿は柚子を一つ手にして軽く握って潰した。強い香りが浴室にパッと広がった。
「潰すともっと香りが増すな」
嬉しそうに自分もとばかりに手に取ろうと伸ばした手を、そのまま夕麿に捕まれた。
「ん??」
訳が分からない、という表情で夕麿を見上げる。すると彼は思わず見惚れるような笑みを浮かべて言った。
「昨年はあなたが私の香りを楽しみましたよね」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「去年……?香りを楽しむ?」
「ええ、忘れてしまったのですか?私はこんなにしっかり覚えているのに」
穏やかな声で妖艶な笑みが怖い。
「別に思い出さなくてもかまいませんよ、武。でも今年はあなたに付いた柚子の香りをいただかせてくださいね」
「え……」
言葉と同時に握り潰したばかりの柚子で、掴んでいる武の腕を撫でる。
「あ!」
「フフッ、思い出したようですね」
サッと血の気が引き、すぐにカッと全身が熱くなった。
「蒼くなったり赤くなったり忙しいですね」
夕麿はとても楽しそうだ。
「ちゃんと全身にあなたの大好きな香りをまとわせてあげます」
「い、いい!いらない!」
逃げ出そうに片腕を掴まれていては無理だ。
「遠慮しないでください」
「してない!わっ!そ、そんなところまで……」
「隅から隅までちゃんと」
「うわあああああ~」
武が悲鳴をあげて抗うも力ではかなわず、その夜は執拗なまでにたっぷりと堪能されたのだった……
いつまで経ってもバカップルなふたりだった。
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