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二章:人生の再出発
希望の木
あの日、リステグは快く宿屋で廃棄予定だったベッドを私にくれた。その他にも夜は手料理をご馳走してくれたり、と随分と良い待遇を受けた。対価はもちろん、魔の森に生えている薬草。私たちはこの街の薬屋という商売での共同戦線を張ることにしたのだ。私が珍しい薬草を取ってくる代わりにリステグが私の必要としているものを用意する、というサイクル。
リステグから頂戴した手袋を手にはめて、今日も今日とて魔の森にある薬草を摘んでいく。
魔の森をじっくりと観察すると色々な発見があって楽しい。例えば、毒々しい水玉模様のきのこ。食べられないかと思いきや、リステグは毒抜きをした後ペロリと平らげてしまった。私はもちろん、遠慮しておいた。
共同戦線を張ってから三週間ほどが経った今、私の屋敷はたくさんのもので溢れかえっていた。魔の森から採取した薬草から作った薬には想像以上の効果があったようで、いつも以上に繁盛しているとリステグが満面の笑みを湛えながら報酬を弾んでくれたのだ。おかげさまで、食べ物や水に困ることは一切なくなった。一方、私の方は薬草の採取と並行して荒野に木を植える試みをしている。流石、辺境の中の辺境。クロツェル家の土地とは比べものにならないほどの労力を費やし、やっと一本の苗木を移植することに成功した。
まだまだ小さい木なのだが育つと四メートルをも越えるらしく、この先が楽しみだ。
鼻歌を歌いながら、書斎の扉を勢いよく開ける。書斎の本一冊一冊を付近で拭いて綺麗にしてから、報酬として貰った棚に入れるのが日々の日課となっている。この家の家具などの木材は腐っているものが多く、代えが必要だったのだ。最近では溢れんばかりにあった本が半分ほどなくなり、床が見えるようになってきた。
──書斎ができたら絶対入り浸ろう。
書斎完成のため頑張るぞ、と気合を入れ直して布巾を再び持ち直した時だった。
玄関のベルが、鳴った。こちらのベルもリステグがくれたもので来客用、とのことだ。こんな辺境、しかも魔の森を抜けて来る人間なんていないだろう、と内心思っていたのだが、鳴ってしまった。
風か何かかな、と窓の外を見ても風一つ吹いていない。
足音が、近づいてくる。
私は覚悟を決めて近くにある本の中で一番重そうなものを手に持ち、扉の影に隠れた。
扉に手を置く音が聞こえ、扉が開く──私は思い切り本を振り上げた。
リステグから頂戴した手袋を手にはめて、今日も今日とて魔の森にある薬草を摘んでいく。
魔の森をじっくりと観察すると色々な発見があって楽しい。例えば、毒々しい水玉模様のきのこ。食べられないかと思いきや、リステグは毒抜きをした後ペロリと平らげてしまった。私はもちろん、遠慮しておいた。
共同戦線を張ってから三週間ほどが経った今、私の屋敷はたくさんのもので溢れかえっていた。魔の森から採取した薬草から作った薬には想像以上の効果があったようで、いつも以上に繁盛しているとリステグが満面の笑みを湛えながら報酬を弾んでくれたのだ。おかげさまで、食べ物や水に困ることは一切なくなった。一方、私の方は薬草の採取と並行して荒野に木を植える試みをしている。流石、辺境の中の辺境。クロツェル家の土地とは比べものにならないほどの労力を費やし、やっと一本の苗木を移植することに成功した。
まだまだ小さい木なのだが育つと四メートルをも越えるらしく、この先が楽しみだ。
鼻歌を歌いながら、書斎の扉を勢いよく開ける。書斎の本一冊一冊を付近で拭いて綺麗にしてから、報酬として貰った棚に入れるのが日々の日課となっている。この家の家具などの木材は腐っているものが多く、代えが必要だったのだ。最近では溢れんばかりにあった本が半分ほどなくなり、床が見えるようになってきた。
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風か何かかな、と窓の外を見ても風一つ吹いていない。
足音が、近づいてくる。
私は覚悟を決めて近くにある本の中で一番重そうなものを手に持ち、扉の影に隠れた。
扉に手を置く音が聞こえ、扉が開く──私は思い切り本を振り上げた。
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