ローザリンデの第二の人生

梨丸

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三章:夢を叶えて

初仕事

馬車に揺られながら、私を外を見る。窓に映るのは悪趣味……と言ってはなんだが、あまり趣味の良いとは言えないドレスを着た私の姿だった。豪奢なフリルの付いた袖を一度見てから、目の前にいるカルロに視線を移した。

「カルロ様、私がこの格好をする必要はあったのですか?」

私の言葉に、向かい側に座っているカルロは指で膝をトントンと叩いた。

「カルロ様と呼ぶのはやめて下さい、

カルロのオールバックにした髪を見て、ようやく我に帰った。
そうだった。私は今、“我儘な子爵令嬢”なのだ。正確に言えば、。先日、フライト支部に加入した私はその翌日、つまり今日にとある任務を課された。

『結界を張るついでに成金の爺の家に潜入する』カルロに突然そう言われた時、意味がわからなかった。思わず聞き返すと、とある領ではひとりの成金のおじいさんが富を独裁しているらしい。本来であれば領主が魔導師局に依頼をして結界を張るところが、金をケチった領主の成金おじいさんはその費用でさえも私利私欲のために使っているらしく、その実態を侵入捜査しに行くらしい。そのため、数少ない女性の魔導師が必要だったそう。相手を油断させるために馬鹿な令嬢を演じ、化けの皮を剥がす作戦。

私は我儘な子爵令嬢、カルロは私の執事役で任務をこなす。私たちは宝石の取引を持ちかけると言う名目で屋敷に入り、その陰で成金おじいさんが隠し持っている裏帳簿や証拠をかき集める。最後に結界を張って任務達成、と言った感じだ。

「カルロさ……カルロ、早く、着かないのかしら。私、足が疲れチャッター」

「随分と辿々しいですけど、まあ良しとしましょう」

私の下手な演技にカルロは呆れたようにため息をついてから窓辺に肘を付き、外を眺める。

「あと一刻ほどです」

「そう、ありがとう」

我儘な令嬢の役なんてできるのかな、という不安もあるがまずはやってみるしかない。役作りのために手鏡を手にし、我儘そうな表情を作って笑ってみる。

……正解が、わからない。
悩みに悩んだ末、私はカルロに声をかけた。

「これで大丈夫?」

私の浮かべた最大限の“意地悪で我儘そうな令嬢”の顔がよっぽど可笑しかったらしい。カルロは一瞬キョトンとした後、吹き出した。

「ふ」

カルロは笑った自分に驚いたのか、急いで口元を手で隠す。随分と可愛らしい笑みだ。顔がいいっていいなあ。

「ね、どこが悪いのか教えて」

「別に、ふ、それで、いいんじゃないでしょうか」

笑いを隠しているつもりのようだが、隠しきれていない。自分では表情管理がうまくいったつもりなのだけれど、彼の反応を見てどこが悪いのかますます気になる。

「教えて欲しいんだけど」

彼の態度に少しカチンときた私が尖った言い方で言ってみると、カルロは冗談めかした調子で言った。

「俺は可愛らしくていいと思いますよ」

「こんな時に揶揄わないでください」

初仕事だから緊張しているというのに、カルロのこの態度。私が怒りを隠さずに口を曲げていると、カルロは一瞬だけフリーズした。

「あ、や、さっきのやっぱりなしで」

カルロは顔を片手で隠し、さっと窓の方を向く。“さっきの”とはなんなんだろう。少し疑問に思いながら、私も外の景色を見ることに全神経を集中させた。


──
近頃、作者の諸事情により更新速度が遅くなっています。本当に申し訳ないです。



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