ローザリンデの第二の人生

梨丸

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三章:夢を叶えて

成金

馬車に揺られ、ついた先はヘルム領。街の端にこれまでの家と違い、煌びやかな装飾が施された大きな屋敷がある。それこそが成金おじさんことジェルナ伯爵の屋敷である。

「ようこそお越しくださいました。さ、どうぞどうぞ」

ジェルナ伯爵は夕方に着いた私たちを笑顔で出迎えてくれた。小太りな彼は心なしかほおが艶やかに見える。宝石の詰まったトランクをカルロに持たせて屋敷に入る。私は今日、バーテス子爵家の令嬢として宝石を彼に売る、という名目でこの屋敷に来た。

応接間に連れられた私が紅茶を飲んでいると、ジェルナ伯爵はわざとらしい笑みを貼り付けながら隣の部屋に入って行った。それを確認したカルロが耳うちする。

「ローザリンデ、きみは余計なことは喋らなくていい。とにかく、阿呆で馬鹿な常識の知らない令嬢を演じるんだ」

小さく頷いてそれに応える。暫くすると、ジェルナ伯爵は一枚の紙と算盤を持ってこちらへやって来た。

「バーテス子爵家の……ローザリンデ様、宝石をお見せいただけますか」

待ちきれない、と言わんばかりの彼の表情にくすりと笑って見せる。

「そうですわね。早くお見せしないと」

指をクイ、と曲げて後ろで待機させていたカルロにトランクを開けさせる。因みに、この仕草は馬車の中で習得したものだ。大粒のパールのネックレスにルビーの指輪やラピスラズリの腕輪。模造品ではバレた時にまずいとし、全て本物である。そのためパールのネックレスを持っている私の指は小刻みに震えている。一体いくらするんだ、と。

ジェルナ伯爵は目を輝かせ、食いつくように宝石を凝視する。

「さ、触ってみても?」

「ええ、もちろん」

ジェルナ伯爵が宝石に夢中になっている間、こっそりと彼の姿を盗み見る。
……うーん、どう見ても“成金”。
妙に艶の良い肌に肉がしっかりとついたまんまるボディ。指にはこれでもかと指輪が嵌っており、大量につけられたネックレスは動くたびにジャラジャラと音が鳴る。彼はまさに物語に出てくる“成金”そのものだ。実際、ジェルナ伯爵の今はもうなき父親が国の攻防に尽力したからこの領を与えられたからであって、彼自身はなんの功績も残してはいない。

本当に実在したなんて、と少し感動を覚えながらも紅茶に口をつける。

「ローザリンデ様、これは本当に素晴らしい逸品ですな。いかほどでしょう」

ジェルナ伯爵が光り物を好むというのは事実のようだ。ジェルナ伯爵は揉み手をしながら、擦り寄ってくる。

予想通りの反応に、私は口の端をニッと吊り上げた。

「全てで、五千ポンドですわ」

これらの宝石とは釣り合わないほど破格の値段。ジェルナ伯爵は目を白黒させている。

──作戦はまだ始まったばかり。



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