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【番外編】小さなお茶会
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ルーシーはいくつかのティーカップをテーブルの上に並べた。
たくさんのスコーンやケーキ、紅茶がテーブルの上に並んでいる。
……なんでこんなことになったんだっけ。
──三時間前。
私はベッドの上に寝転がりながら本を読んでいた。
『アリシーの恋物語』という本だ。
最近巷で噂になっており、買ってみたのだ。
かなり面白い。
本に夢中になっていると、シーフが声をかけてきた。
「ルーシー、少しは外に出てみたらどうですか?ずっと寝転がっていたら体に悪いですよ」
「はーい」
間の抜けた返事を返す。
そんな私にシーフが大きなため息をつき、本を取り上げた。
「ちょ、シーフ!酷だわ」
手を伸ばすがかわされる。
これだから高身長は。
「これは没収です」
その代わりにとシーフが一冊の本を差し出した。
『本格的なお茶会』
思わずため息をつく。
「あのねえ、私が読みたいのはラブロマンスであって……」
「どうしたの?」
「どしたの、どしたの?」
ヤングとミルが膝に乗ってきた。
小精霊の前で醜い争いをするほど私は腐ってはいない。
二人の頭を撫でながら「なんでもないよ」と返す。
二人はシーフのくれた本を見つめ、嬉しそうにこう言った。
「お茶会、するの?」
「するのー?」
しないと返したいところだったが、二人の純粋な眼差しに当てられてしまった。
「う、うん。しようと、思ってたの」
それから私たちはミルとヤングの為にお茶会を開くことにした。
会場は私の家の庭だ。
クッキーを焼き上げ、これくらいでいいかと二人で油断していたところに、ミルとヤングの会話が聞こえてきた。
「ねえ、お茶会ってさ」
「いっぱいお菓子食べるんだよー」
「楽しみだね!」
「楽しみ、楽しみ!」
ハードルを上げられてしまった。
シーフは急いでキャロットケーキを焼き、料理が下手な私は裏方へと回った。
花の精霊の力を借り、庭中の花を咲かせてもらった私は花をいくつか摘み、テーブルの花瓶にさす。
「本当にありがとう!」
私の言葉に花の精霊はふふ、と笑い花畑に戻っていった。
シーフは大量のスコーンを焼き上げる。
私はクッキーやキャロットケーキを皿に盛り付ける。
このような作業を繰り返していると、いつの間にかテーブルの上はお菓子で埋め尽くされていた。
「うわあ!美味しそう!!」
「だね!だね!」
二人とも目を輝かせている。
「そうでしょ!」
「頑張りましたからね」
シーフとハイタッチをする。
こうしてお茶会は始まった。
私と、シーフ、ミルとヤングだけのささやかなお茶会だけれど。
「美味しいですね」
「おいし~い!」
「うまあい!」
「うまうま」
ケーキが美味しくて、思わず顔を綻ばせる。
シーフたちはすごい勢いでお菓子を食べている。
「ちょっとストップ!」
三人を止めてクッキーを回収した。
「このクッキーは町の精霊たちにあげに行きます!」
残念そうな顔をしているが、絆されないぞ。
それからクッキーを奪還しようとしている三人と私の戦いが始まった。
たくさんのスコーンやケーキ、紅茶がテーブルの上に並んでいる。
……なんでこんなことになったんだっけ。
──三時間前。
私はベッドの上に寝転がりながら本を読んでいた。
『アリシーの恋物語』という本だ。
最近巷で噂になっており、買ってみたのだ。
かなり面白い。
本に夢中になっていると、シーフが声をかけてきた。
「ルーシー、少しは外に出てみたらどうですか?ずっと寝転がっていたら体に悪いですよ」
「はーい」
間の抜けた返事を返す。
そんな私にシーフが大きなため息をつき、本を取り上げた。
「ちょ、シーフ!酷だわ」
手を伸ばすがかわされる。
これだから高身長は。
「これは没収です」
その代わりにとシーフが一冊の本を差し出した。
『本格的なお茶会』
思わずため息をつく。
「あのねえ、私が読みたいのはラブロマンスであって……」
「どうしたの?」
「どしたの、どしたの?」
ヤングとミルが膝に乗ってきた。
小精霊の前で醜い争いをするほど私は腐ってはいない。
二人の頭を撫でながら「なんでもないよ」と返す。
二人はシーフのくれた本を見つめ、嬉しそうにこう言った。
「お茶会、するの?」
「するのー?」
しないと返したいところだったが、二人の純粋な眼差しに当てられてしまった。
「う、うん。しようと、思ってたの」
それから私たちはミルとヤングの為にお茶会を開くことにした。
会場は私の家の庭だ。
クッキーを焼き上げ、これくらいでいいかと二人で油断していたところに、ミルとヤングの会話が聞こえてきた。
「ねえ、お茶会ってさ」
「いっぱいお菓子食べるんだよー」
「楽しみだね!」
「楽しみ、楽しみ!」
ハードルを上げられてしまった。
シーフは急いでキャロットケーキを焼き、料理が下手な私は裏方へと回った。
花の精霊の力を借り、庭中の花を咲かせてもらった私は花をいくつか摘み、テーブルの花瓶にさす。
「本当にありがとう!」
私の言葉に花の精霊はふふ、と笑い花畑に戻っていった。
シーフは大量のスコーンを焼き上げる。
私はクッキーやキャロットケーキを皿に盛り付ける。
このような作業を繰り返していると、いつの間にかテーブルの上はお菓子で埋め尽くされていた。
「うわあ!美味しそう!!」
「だね!だね!」
二人とも目を輝かせている。
「そうでしょ!」
「頑張りましたからね」
シーフとハイタッチをする。
こうしてお茶会は始まった。
私と、シーフ、ミルとヤングだけのささやかなお茶会だけれど。
「美味しいですね」
「おいし~い!」
「うまあい!」
「うまうま」
ケーキが美味しくて、思わず顔を綻ばせる。
シーフたちはすごい勢いでお菓子を食べている。
「ちょっとストップ!」
三人を止めてクッキーを回収した。
「このクッキーは町の精霊たちにあげに行きます!」
残念そうな顔をしているが、絆されないぞ。
それからクッキーを奪還しようとしている三人と私の戦いが始まった。
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違ったらすみません
申し訳ありませんでした。
すぐ修正いたします!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ルーシーが強くなってよかった!
すっきりとした文章で読みやすかったです。
感想をいただけて、とても嬉しいです。
近々番外編を投稿しますので、読んでいただけると幸いです。
感想、ありがとうございました。