嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸

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二章:貴方に報復を

異様な光景

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──異様だ。この場にいる誰もがそう思った。

ロベルトは婚約者のフレイア、ではなくマーガレットと談笑している。フレイアはぽつん、と一人でホールの端に佇んでいるだけ。最早もはや誰が誰の婚約者なのかわからないまである。

貴族の令嬢たちがあり得ない、とでも言いたげな目線をロベルトに向けている中、フレイアは満面の笑みを浮かべていた。

(このローストビーフ、とても美味しいわ!)

次々と新しい皿に手を伸ばす。これまではロベルトを気にして食事を楽しむなんてことできなかった。
きめ細かく、脂肪が適度に入った牛は極上の逸品。
フレイアがシェフを引き抜こうかしら、なんて考えている時だった。

「ロベルト様!これはどういうことですの!?」

耳をつんざくような悲鳴に似た声がホール中に響き渡った。

その声の主──クラリス侯爵令嬢は憤慨していた。
婚約者を放置し、他の令嬢といちゃついているロベルトに対して。
ツカツカとブーツの音を鳴らしながらロベルトに詰め寄る。

「有り得ないですわ!婚約者のフレイア様を置いて他の令嬢と……令嬢と……」

どんどん声が震えていく。余程頭にきたようだ。

「人目をはばからず親密にするなんて!!」

ざわり、とどよめきが広がっていく。
核心をつかれたロベルトが動揺したように瞳を揺らす。彼女の指摘は、間違ってはいない。

「いや……その……」

(確かクラリス嬢って……、前の人生で毒を盛られた令嬢よね。随分と情熱的な方)

フレイアは劇場を観ているかのような気持ちでクラリスの激しい糾弾を見つめていた。

「先ほどの馬車の件でもそうでしたけれども、もう少し公爵家の自覚をお持ちになっては!?」
(それは私も思うわ。痛いほど)

ホールの中には頷いている令嬢たちも多い。色々と共感出来ることがあるのだろう。
ロベルトはオロオロと戸惑っているばかり。マーガレットはそんな彼を冷たい視線で射抜いている。

「フレイア様のご様子もご覧になっては!?あら、フレイア様……?」

クラリスが辺りを見渡すが、フレイアの姿はどこにもなかった。


(もう少しあのを見ていたかったけれどホールの中、暑すぎるわ)

フレイアは手で顔を仰ぎながらテラスに出ていた。秋とはいえ、人が密集するホールは暑くてたまらない。クラリスの熱弁も相俟あいまって。

真っ白な大理石が敷き詰められたテラスには人気ひとけがなかった。皆ホールの中でクラリスの言葉に聞き入っている。
小さな噴水に腰掛け、周りに咲いている秋桜コスモスを眺める。
コレットにも見せてあげたい。

「綺麗ね……」

「そうですね、フレイア令嬢」

誰かがフレイアの小さな呟きを拾った。

「えっ」

フレイアが顔を上げると其処には月に照らされた男がいた。
白銀の髪が風で揺れる。

「今宵は月が綺麗ですね」



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