嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸

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四章:貴方のいない未来に

愛の反対は、無関心?

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二人はそのまま宙を舞う──


マーガレットの掌はフレイアの手によって、ロベルトの掌はセレストの足に踏みつけられる形で地面に繋ぎ止められていた。

「少し、遅れてしまったわね」

紺の髪が風でなびく。
マーガレットを引っ張り上げたフレイアは、艶やかな笑みを浮かべた。

「ふれいあ、さま……?」

マーガレットが信じられない、とでも言うように恐る恐る馬車の御者に目を向ける。
彼女に反応したのか、御者の男は帽子をスッと取り、仰々しい礼をしてみせた。

「二度目まして、かな」

赤い髪を露わにした男──エッカルトは帽子を指でクルクルと回し、嬉しそうに呟いた。

「御者の服が役に立つなんて、思ってもみなかったよ」

得意顔で喋るエッカルトとは真反対の表情を浮かべたのが、ロベルトの掌を足で踏みつけているセレスト。

「野郎の手なんてこれ以上踏みたくないんすけど」

セレストは恐怖で震えているロベルトを一瞥した後、大きくため息をついた。
手を一層強く踏まれたのか、ロベルトがか細い悲鳴を上げる。

「助けてくれ……」

「ええ、勿論助けますわ」

「ほ、本当か……!?」

ロベルトの瞳が大きく揺れる。それに呼応するように、フレイアはゆっくりと目を細めた。

「貴方には払って頂く対価がたくさんありますもの」

フレイアの意志を読み取ったのか、ロベルトがガタガタと震え出す。

「おい、震えてたらはずみで落ちるぞー」

セレストのゲーム感覚、といった言葉もロベルトを突き刺した。自分は生きて帰れるのだろうか、と。

「別に、貴方が勝手に生きていようが死んでいようがどうでもいいの。
ですけれど──
もう少し生き地獄を味わってみたらどうですか?」

フレイアは彼の言葉一つ一つが何も響かなかった。彼がどうなろうと、別にどうでも良かった。彼女はわだかまりを取り除く為にこの場に来たに過ぎない。少しでも塵が残っていたら、残りの人生を楽しむことなんてできないから。

ロベルトが絶句していると、マーガレットが我に帰ったように悲鳴とも言える、悲痛な叫び声を漏らした。

「どうして……!どうしてよ……」

声が震え、語気が弱々しくなっていく。唇を噛み、下を向くマーガレット。
そんな彼女の顔を上に上げてから、フレイアは赤子を包み込むように、彼女を優しく抱きしめた。

「今まで、おつかれさま」

それはマーガレットの復讐を終わらせる幕引きの言葉として、十分すぎるものだった。

ぽろぽろ、と涙の粒が桃色の瞳から溢れ出す。
それはフレイアに初めて見せた、彼女自身の表情かおだった。

「セレスト、後は頼むわね」

マーガレットの肩を抱きながら、フレイアはセレストに声をかけ、馬車に乗り込む。
コレットはマーガレットの肩に毛布を掛けた。

「はあ!?俺が貧乏籤引くのかよ」

セレストは頭を掻きながら、ロベルトの方を見やる。
ロベルトはまだ諦めがついていないようで、譫言うわごとのように同じ言葉を繰り返している。

「フレイア……待ってくれ……」


フレイアは、振り返らなかった。



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