嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸

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四章:貴方のいない未来に

悪役令嬢、上等

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時を遡り、少し前。


アルカーヌムのビリヤード台の上にはマーガレットに関してのたくさんの資料が溢れんばかりに置かれていた。

「もしマーガレットが復讐のためにロベルトに近づいたのだとしたら……胸糞悪いわね」

そのことに特に違和感は覚えなかった。マーガレットの行動の端々に違和感が滲んでいたからだ。

フレイアが腕を組んでいるとエッカルトが笑顔になり、こう言った。

「殺すって言ってたよ」

「……誰が、誰を?」

「マーガレットが、ロベルトを」

にこやかに笑うエッカルトを見て、フレイアは頭痛がするような気がした。頭を押さえながら尋ねる。

「なんで早く言ってくれなかったの?」

「聞かれてないから」

「……、そう」

もう何を言っても無駄だと気付いたのか、フレイアはエッカルトを無視して話を進めることにした。

「殺人計画を阻止しないといけないわね」

「は?殺させとけばいいんじゃねー、ですか。どっちみちクズなんだし」

コレットの厳しい視線に気付いたのか、セレストが急いで敬語に直す。

「あら、何を言ってるの?」

キョトンとしたように頭を傾げるフレイアを訝しげに見るセレスト。そんな彼にフレイアは笑顔でこう言った。

クズだから、助けるんでしょう。簡単に死なれたら困るわ。私の見ていない所で生き地獄を味わっていただかないと」

うふふ、と笑うフレイアを見てセレストが後ずさり、コレットは目尻を下げて笑う。

「お嬢様は、本当に変わりましたね」

「そうかしら」

「そーそー。まさに悪役令嬢、と言った感じですねー」

セレストの嫌味にコレットが睨みを効かせる。

「“悪役令嬢”?」

「悪役令嬢、ってのは貧民街でも娯楽として人気な本に出てくる悪役の女のことですよ」

「セレスト!」

コレットが厳しい視線をセレストに飛ばすが、フレイアはその響きが気に入ったようだ。

「悪役令嬢?上等よ」

そして放置していたエッカルトに向き合い、数本指を立てる。

「報酬はこれくらい払うわ。マーガレットの行動を蜘蛛で探って欲しいの」

「報酬は要らないよ」

「えっ」

エッカルトの言葉にフレイアは思わず声が出てしまった。エッカルトはどんな時でも報酬を重視する男だったからだ。

「復讐もいいと思うけどね、あんまり人は殺すものじゃないよ」

どこか遠くを見つめるエッカルトにフレイアは笑いかけた。

「ありがとう」

「お嬢だけだよ。俺に深く干渉しないの」

どこか安心したようにエッカルトは伸びをした。そして胸ポケットに眼帯を仕舞った。彼の輝く瞳を見て、フレイアは目を見開いた。

「魔法をかけられる前に、マーガレットに蜘蛛を忍ばせといたんだ。俺は有能だからね」

フレイアは自慢げに頬を緩めるエッカルトと目を合わせる。

意識が遠くなり、あらゆる景色が目に映り──、フレイアの意識がスッと戻る。

「ロベルトはかなり遠くにマーガレットと駆け落ちするつもりみたいね」

彼の行動力にはどこか感心するものがある。

「俺の出番だねえ」

エッカルトがどこから出したのか、馬車の御者の服を見せる。

「都合がいい時に馬車があったら乗りたくなるだろうし、いいかもしれないわね。マーガレットの出方によってこちらも手段を変えないといけないわ」

エッカルトがフレイアの指の上に小さな蜘蛛を一匹乗せた。

「これは何?」

「マーガレットがアクションを起こしたら連絡するよ。そしたらお嬢の父上の転移魔法で俺のところに来て」

フレイアが頷くと、エッカルトは小さく手を振った。

「じゃあ、行ってきます」

エッカルトは御者の帽子を深く被り、アルカーヌムを後にした。



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